著者
大内 裕和
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.440-454, 2007-12-28 (Released:2018-12-26)

この論文では、1947教育基本法がいかに「改正」されたのか、そして「改正」された2006教育基本法の下で望まれる教育とはどのようなものかということを考察する。教育基本法「改正」によって、道徳教育や「愛国心教育」の徹底、格差社会の拡大・固定化、教育の公共性の変質、教育振興基本計画による新自由主義・国家主義の制度化などが行われる危険性が高い。しかし2006教育基本法成立以後も、日本国憲法や子どもの権利条約などの国際人権条約が存在する。2006教育基本法の解釈・運用は当然ながらそれらの精神に即して行われる必要がある。日本国憲法や子どもの権利条約に可能な限り適合的な解釈を行う2006教育基本法の実践的な読みを通じて、ミクロ、ミドル、マクロのそれぞれのレベルで望まれる教育のあり方を論じる。それらは、1947教育基本法に書き込まれながらも十分に根づいて来なかった、教育の公共性を主権者のものとするプロセスに他ならない。
著者
大内 裕和
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.69-86, 2015-05-29 (Released:2016-07-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

この論文の目的は,大学生の奨学金問題を検討することである。 奨学金利用者の数は,1990年代後半以降に急増した。1990年代半ばまで,奨学金利用者の比率は全大学生の20%ほどであった。その後,2012年には全大学生の52.5%に達した。 奨学金利用者の増加は,1990年代以降の4 年制大学への進学率の上昇を背景としている。女性の短大進学者が減り,高卒の就職者数も減少した。民間企業労働者の平均年収と世帯所得は,2000年~2010年にかけて急激に減少した。 近年の奨学金制度の変化も,奨学金をめぐる社会状況に大きな影響をもたらした。1984年の日本育英会法の改定によって,有利子の貸与型奨学金が創設された。有利子の貸与型奨学金の増加に拍車をかけたのが,1999年4 月の「きぼう21プラン」であった。2004年に日本育英会は廃止され,日本学生支援機構への組織改編が行われた。日本学生支援機構は,奨学金制度を「金融事業」と位置づけ,その中身をさらに変えていった。 この奨学金制度は,1990年代後半からの4 年制大学進学率の上昇に貢献したことは間違いない。しかし,この有利子を中心とする奨学金制度の拡充は,奨学金返済の困難という問題をもたらしている。 現在の奨学金制度には改善すべき課題が存在している。第一に奨学金返還の困難を解決することである。第二に貸与型中心の制度から給付型中心の制度へと変えることである。
著者
大内 裕和
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.69-86, 2015
被引用文献数
2

この論文の目的は,大学生の奨学金問題を検討することである。<BR> 奨学金利用者の数は,1990年代後半以降に急増した。1990年代半ばまで,奨学金利用者の比率は全大学生の20%ほどであった。その後,2012年には全大学生の52.5%に達した。<BR> 奨学金利用者の増加は,1990年代以降の4 年制大学への進学率の上昇を背景としている。女性の短大進学者が減り,高卒の就職者数も減少した。民間企業労働者の平均年収と世帯所得は,2000年~2010年にかけて急激に減少した。<BR> 近年の奨学金制度の変化も,奨学金をめぐる社会状況に大きな影響をもたらした。1984年の日本育英会法の改定によって,有利子の貸与型奨学金が創設された。有利子の貸与型奨学金の増加に拍車をかけたのが,1999年4 月の「きぼう21プラン」であった。2004年に日本育英会は廃止され,日本学生支援機構への組織改編が行われた。日本学生支援機構は,奨学金制度を「金融事業」と位置づけ,その中身をさらに変えていった。<BR> この奨学金制度は,1990年代後半からの4 年制大学進学率の上昇に貢献したことは間違いない。しかし,この有利子を中心とする奨学金制度の拡充は,奨学金返済の困難という問題をもたらしている。<BR> 現在の奨学金制度には改善すべき課題が存在している。第一に奨学金返還の困難を解決することである。第二に貸与型中心の制度から給付型中心の制度へと変えることである。
著者
大内 裕和 水溜 真由美 石原 俊 長 志珠絵 黒川 みどり 鳥羽 耕史
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1950年代が、戦前や戦時期との連続性を持ちながら、戦後の社会システムや大衆意識の形成にとって、決定的な意味を持っていたということを、当時の史資料から明らかにした。これらについて、多数の雑誌論文の執筆、学会発表、図書の刊行を行った。また、1950年代を再検討することによって、<現代>が戦後社会の転換点であることを、より明確にすることができた。これらについても、多数の雑誌論文の執筆、学会発表、図書の刊行を行った。
著者
大内 裕和
出版者
岩波書店
雑誌
世界 (ISSN:05824532)
巻号頁・発行日
no.920, pp.121-128, 2019-05
著者
廣田 照幸 田原 宏人 筒井 美紀 本田 由紀 小玉 重夫 苅谷 剛彦 大内 裕和 本田 由紀 小玉 重夫 苅谷 剛彦 大内 裕和 清水 睦美 千田 有紀
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1990年代から現在に至る約20年の教育社会学の研究成果と教育現実の変動との関係の見直しの必要性が明らかになった。政治のレベルでの55年体制、経済のレベルでの日本的雇用システムを、暗黙の前提とした研究枠組みを脱する必要が浮かび上がった。特に、教育政策の立案-実施の過程に働く政治的な諸力が、1990年代初頭から大きく変容したこと、また、卒業生の受け皿である労働市場や雇用システムが、1990年代半ば以降、大きく変容したこと、その二つが、教育政策をめぐる議論に対しても、学校や生徒の現実に対しても、大きな意味を持っていた。とはいえ、実証性を研究の主要なツールとしてきた教育社会学は、そのような大きな構造変動を理論や研究枠組みのレベルで適切にとらえきれないまま、2000年代の教育改革の中で、部分的・断片的な実証データをもとにした推論を余儀なくされる状況に陥ってきたといえる。こうした検討を踏まえて、本研究から明らかになったのは、新たな政治・経済の枠組みをとらえた社会科学の知見を、教育社会学内部に取り込む必要性である。特に、グローバル資本主義の展開が政治や経済のあり方を左右する際、どういう選択肢が理論レベルであり得るのかをふまえ、それらの選択肢が教育政策に及ぼす影響を予測することの重要性が、明らかにされた。
著者
大内 裕和
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.440-454[含 英語文要旨], 2007-12

この論文では、1947教育基本法がいかに「改正」されたのか、そして「改正」された2006教育基本法の下で望まれる教育とはどのようなものかということを考察する。教育基本法「改正」によって、道徳教育や「愛国心教育」の徹底、格差社会の拡大・固定化、教育の公共性の変質、教育振興基本計画による新自由主義・国家主義の制度化などが行われる危険性が高い。しかし2006教育基本法成立以後も、日本国憲法や子どもの権利条約などの国際人権条約が存在する。2006教育基本法の解釈・運用は当然ながらそれらの精神に即して行われる必要がある。日本国憲法や子どもの権利条約に可能な限り適合的な解釈を行う2006教育基本法の実践的な読みを通じて、ミクロ、ミドル、マクロのそれぞれのレベルで望まれる教育のあり方を論じる。それらは、1947教育基本法に書き込まれながらも十分に根づいて来なかった、教育の公共性を主権者のものとするプロセスに他ならない。
著者
大内 裕和
出版者
松山大学
雑誌
松山大学論集 (ISSN:09163298)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.329-349, 1999-10-01