著者
大須 理英子
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.217-222, 2005 (Released:2011-07-05)
参考文献数
14

脳が手足を制御するときに解決すべき問題は、制御プログラムが手足のあるロボットを制御するとき解決すべき問題と類似している。計算論的神経科学では、このような視点から、脳に実装されていると思われる機構を同定する。これまでの研究により、例えば速くて正確な腕の運動を実現するためには、フィードフォワード制御が必要であることがわかってきた。このためには、制御対象(例えば腕)のダイナミクスを表現する内部モデルが脳内に獲得されていなければならない。リハビリテーションが必要な状態というのは、このような脳内の制御機構に何らかの異常を来したか、その制御対象である手足に異常を来したのかどちらかであることが多い。いずれの場合にも、速くて正確な運動を取り戻すには、内部モデルの再構築が必要である。これまでのリハビリテーション訓練は、フィードバック制御を必要とする運動が多く、内部モデルを再構築するには最適ではない可能性がある。このような視点からリハビリテーション手法を見直すことでよりよい機能回復がはかれる可能性がある。
著者
荒井 一樹 松浦 大輔 杉田 翔 大須 理英子 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11245, (Released:2017-07-19)
参考文献数
17

【目的】延髄外側梗塞患者において自覚的視性垂直位(以下,SVV)と静止立位バランス,歩行非対称性の関係を検討する。【方法】Body lateropulsion(BL)を呈する延髄外側梗塞患者9 名において,SVV 値と立位重心動揺計の総軌跡長,矩形面積,足圧中心左右偏位および加速度計より算出した歩行非対称性との関係をSpearman の相関係数を用いて検討した。【結果】SVV 値は平均7.4(SD:9.5)度であった。SVV 値と開眼足圧中心偏位とは相関しなかったが,閉眼足圧中心偏位と相関を認めた(r = 0.75, P < 0.05)。また,SVV 値の絶対値は歩行非対称性と有意な相関を認めた(r = –0.78, P < 0.05)。【結語】BL を呈する延髄外側梗塞患者において,SVV 偏位は閉眼の静止立位バランスと歩行非対称性と関連した。その因果関係については今後の検証が必要である。
著者
吉田 太樹 伊藤 大将 渡邉 翔太 大須 理英子 大高 洋平
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.468-477, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
45
被引用文献数
2

要旨:脳卒中患者におけるリハビリテーション(以下,リハ)のモチベーションに関する知見をシステマティックレビューを用いて整理した.PubMed,CENTRAL,医中誌Webのデータベースから1,930文献が検索され,適格基準・除外基準を満たした13論文が抽出された.脳卒中患者のモチベーション評価には,リハのモチベーションに特化していない尺度や医療者による観察評価が用いられていた.モチベーションとリハの相互作用については,モチベーションに影響を与える要因,モチベーションが機能や活動に及ぼす影響について報告されていたが,報告の質・量共に不十分であった.今後は脳卒中患者のリハに対するモチベーションの概念形成や評価尺度開発が必要である.
著者
數田 俊成 武田 湖太郎 田中 悟志 小田柿 誠二 大須 理英子 大高 洋平 近藤 国嗣 里宇 明元
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.18-22, 2013-02-01 (Released:2015-02-20)
参考文献数
16

経頭蓋直流電気刺激 (transcranial direct current stimulation: tDCS) は頭蓋上に配置した電極から微弱な電流を与える刺激法で, 脳機能を促進あるいは抑制すると言われている。本研究は15単語の記銘・再生を繰り返すRey’s Auditory Verbal Learning Test (RAVLT) を用い, tDCSが聴覚言語性記憶に及ぼす影響について検証した。健常者12名 (21–32歳) を対象とし, RAVLTの記銘2回目からtDCSを用いて左頭頂葉下部, 後部側頭葉を刺激した (刺激強度: 2 mA) 。陽極刺激条件では10分間, 偽刺激条件では15秒間刺激を与えた。RAVLTの2回目再生数は, 陽極刺激条件が偽刺激条件より有意に多かった。健常者においてtDCS陽極刺激により聴覚言語性記憶の有意な増強が認められた。tDCSは記憶機能賦活に役立つ可能性がある。
著者
荒井 一樹 松浦 大輔 杉田 翔 大須 理英子 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.364-371, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
17

【目的】延髄外側梗塞患者において自覚的視性垂直位(以下,SVV)と静止立位バランス,歩行非対称性の関係を検討する。【方法】Body lateropulsion(BL)を呈する延髄外側梗塞患者9 名において,SVV 値と立位重心動揺計の総軌跡長,矩形面積,足圧中心左右偏位および加速度計より算出した歩行非対称性との関係をSpearman の相関係数を用いて検討した。【結果】SVV 値は平均7.4(SD:9.5)度であった。SVV 値と開眼足圧中心偏位とは相関しなかったが,閉眼足圧中心偏位と相関を認めた(r = 0.75, P < 0.05)。また,SVV 値の絶対値は歩行非対称性と有意な相関を認めた(r = –0.78, P < 0.05)。【結語】BL を呈する延髄外側梗塞患者において,SVV 偏位は閉眼の静止立位バランスと歩行非対称性と関連した。その因果関係については今後の検証が必要である。
著者
南部 功夫 和田 安弘 大須 理英子 大須 理英子
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、直感的で操作が容易な脳情報バーチャルキーボード構築に向けた基礎検討を行った。最初に、脳波(EEG)を用いて、運動実行時および想起時の個々の指運動(想起)を予測できる可能性を明らかにした。次に、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)により、運動準備時には対側の運動前野や補足運動野に高精度な指運動情報(系列)が含まれることがわかった。最後に、機能的近赤外分光計測(fNIRS)を用いた運動情報の抽出を目指し、fNIRS信号に混在する頭皮血流アーチファクトを除去し、脳活動の推定精度を向上させる手法を開発した.以上の結果は、脳情報を利用したバーチャルキーボード構築に貢献すると期待される。