著者
小川 眞
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.57-65, 1988-12-30 (Released:2017-10-20)
著者
小川 眞
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.73-79, 1999-10-01 (Released:2017-05-31)
参考文献数
4
被引用文献数
1

インドネシアでフタバガキの根に外生菌根菌が共生すると,苗の生長と植栽後の生長がよくなることや粉炭がこの菌の増殖に効くこともわかり,現在では実用的な育苗技術として,きのこと炭がとりあげられている。マメ科樹木やモクマオウなど空中窒素を固定する微生物と共生する植物にも木炭粉やモミガラくん炭が効く。炭を土壌に加えると明らかに根粒や放線菌根がつきやすく,VA菌根もつくので苗の生長がよくなる。チーク,ゴムノキ,ドリアン,アブラヤシでもVA菌根菌を接種すると苗の生長がよくなったという。しかし,共生微生物を考えに入れた育苗・植栽技術はまだできあがっていない。また外来種を植え続けると,養分の収奪が激しく,土壌とその中の生物相が変化してしまう。今後持続的な熱帯林業をすすめるためには,土壌微生物や小動物の保全も考えた土壌管理が必要になるだろう。炭を利用するのもひとつの重要な方法である。近年モミガラくん炭や粉炭を簡便に生産する炉やプラントが開発され,炭も土壌改良材として広く使用できるようになった。炭は根粒菌やVA菌根菌を固定するのに適しており,ペレット状の接種源や炭を含んだ肥料も使われるようになった。炭は共生微生物だけでなく,アゾトバクターやバイエリンキアを増殖させるのにも役立つ。インドネシアでモミガラくん炭と石灰を使うと,第一作目のダイズだけでなく,第二作目のトウモロコシでも高い収量が得られたという。ちなみに熱帯では,どこで土壌を採っても空中窒素固定菌がほぼ100%出現するが,日本では30〜50%が通常である。熱帯で焼畑が可能なのも,この微生物の分布に負っているらしい。熱帯や亜熱帯の自然の潜在力,言いかえれば微生物の力をいかに有効に使うかという点に,将来の人口増加と食料供給問題を解決する鍵があるように思える。炭を農林業に用いることは,単に植物の生長や収穫を増やすのによいというだけではない。CO_2の増加による地球温暖化も年々地球規模で深刻化しており,樹木の枯死や異常気象などとなって現れている。CO_2固定のアイディアは多いが,大量かつ効果的に固定する方法は,森林や緑地を作る以外にない。しかし植物が光合成によって同化固定した炭素も,そのままでは燃えたり腐ったりして再びCO_2に戻ってしまう。そのため固定された炭素を不活性化し,封じ込める方法を見いださなければならない。炭を農林業に利用するというこのアイディアは単純だが,炭素の封じ込めには最も効果的なものである。過去の地球上で植物が光合成によって同化し,石炭や石油として土の中に閉じ込めたものを掘り出して燃焼させれば,地球の大気が過去の状態へ戻ってしまうことは誰にでもわかる。もし植物やその残廃物をすべて炭化し,これを土壌に還元し,自然の力によってさらに植物や樹木を育て,炭素の封じ込めと資源のリサイクルを同時に実行することができれば,地球温暖化の防止にいささかでも役立つのではないだろうか。熱帯で実行できる方法を提案する。
著者
河野 銀子 小川 眞里子 財部 香枝 大濱 慶子 横山 美和
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

「女性研究者の実態と支援政策の国際比較研究」は、欧米やアジアの女性研究者の実態およびその支援政策の動向を比較検討することによって、日本の女性研究者の実態を国際的に位置づけ、科学・学術分野における女性の低参画率の背景を探ることを目的としている。具体的には、a) EU・米国・中国の女性研究者割合等に関する推移の統計的把握および、b) 各国や地域の女性研究者支援政策の系譜の作成、c) 女性研究者割合の増加を阻害する要因と具体的解決策の検討、d) 女性研究者増加の阻害要因と政策に関する理論的検討を行うものである。研究代表者・分担者・研究協力者(大坪久子・日本大学)が、国際ジャーナルへの掲載や国際会議での発表、科学技術社会論学会でのセッションの開催などを通して、研究成果を広く社会に還元しながら実施した。2年度目の平成29(2017)年度はすでに初年度に開始していた a)、 b)、c)、d)のそれぞれを掘り下げた。4調査における具体的な実施状況は下記の通りである。a) については、中国やEUのデータについて、入手可能なデータの整理をし、女性研究者数や割合の特徴を捉えた。 b) については、米国と中国で訪問調査を行い、女性研究者を増やすための政策がどのように始まり、どのような困難があり、その困難をどのように乗り越えたのか、など、量的調査ではとらえることができない実態や背景を把握するためのインタビュー調査を実施した。 c) については、国際比較を可能とするため、公表されている行政資料や国内外の報告書類を収集し、女性研究者支援政策の流れと具体的内容の整理に着手した。また、オーラルヒストリー分析も開始した。 d) については、前年度に行った「パイプラインセオリー」に関するシステマティック・レビューをベースに、特に理論の限界等についてジェンダーサミット10で発表した。
著者
藤井 わか子 藤堂 雅恵 小川 眞紀子 山下 広美 我如古 菜月 人見 哲子 槙尾 幸子 畦 五月 青木 三恵子 大野 婦美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】岡山県は,地形からみると県北の中国山地,県中部の吉備高原,県南の平野・丘陵地帯,瀬戸内沿岸・島しょ地帯の四地域からなる。各地域には異なった作物が生み出され,特色ある食文化が伝承されていると言われている。一方で歴史的には,岡山県は備前,備中,美作と呼ばれてきた。そこで,現在の県民局(備前,備中,美作)の管轄で分け,年中行事・通過儀礼の地域による違いを把握することを目的とした。【方法】平成21~23年日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-行事食・儀礼食-」の調査データから,岡山県に10年以上居住している者334名を対象に,岡山県を3地域に分けて認知度・経験度・喫食経験等について集計し検討した。検定はカイ二乗検定を行った。【結果】岡山県の年中行事・通過儀礼の認知・経験度は,全国調査結果と類似していた。3地域でみると,認知度では秋祭りと人日,重陽の節句(p<0.01)に,経験度ではお月見(p<0.05),秋祭り(p<0.01)で3地域間の差がみられた。正月では,お雑煮の喫食割合は地域差がみられなかった。すまし仕立てが最も多く,丸もち,茹でて食べており,3地域において差異がないことがわかった。お節料理は,黒豆,かまぼこが全体的に最も高い結果であった。次いで,数の子,昆布巻き,煮しめが高かった。その他の年中行事の食べ物は,節分のいわし料理(p<0.01),端午の節句のちまき(p<0.01),盂蘭盆と七夕の麺 (p<0.05),お月見のだんご(p<0.01),大晦日の尾頭付きいわし料理(p<0.01)等で地域間に差が認められた。通過儀礼の認知・経験度は,出産祝い(p<0.01),百日祝い(p<0.01),厄払い(p<0.05)で,またその食べ物では,お七夜と初誕生の赤飯・小豆飯,厄払いのもち(p<0.01)において差がみられた。
著者
小川 眞里子 OGAWA Mariko
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 = Bulletin of the Faculty of Humanities and Social Sciences,Department of Humanities (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
no.31, pp.47-59, 2014

今やノーベル賞量産国とまで言われる日本で、なにゆえこれほどまでに科学や工学の女性研究者が少ないのか。まずは学部学生の現状について概観し、次に理工系研究者の重要な人材プールである博士課程修了者について見る。これによれば次世代を担う人材はけっして十分に育ちつつある状況ではない。研究者については、まずわが国には性別の十分な統計資料が整備されておらず、これが大きな問題である。そもそもの問題の所在、原因を考える上で、あるいは他国と比較する上で統計の不備は大きな障害である。そして女性研究者支援のプログラムを実施することもきることながら、女性の活躍を保証する法的整備が重要であろう。Over the past several years, Japan has become the most productive country for Nobel Prizes after the US. However, all Japanese Laureates are male. We may rightly say that Japan is successful in producing male laureates. Why have there been no female laureates in Japan? It is now known world-wide that the percentage of female researchers in Japan is very small, almost the smallest among its peers, even though Japan is a democratic country with a national commitment to science and technology. To increase the number of female researchers, the number of female PhD graduates provides the human resources available for female researchers. But She Figures 2012 data showed that compared to all EU countries Japan is ranked lowest but one. The lowest is Malta and lowest but two is Cyprus. According to the details for these lowest three countries, the number of female PhD graduates is 3 in Malta, 4508 in Japan, and 11 in Cyprus. The low female percentage in Japan is shockingly behind the times. In addition to the low proportion of female PhD graduates, a quarter of these are foreign students. In fact, not a few post-doctoral students eventually return to their own countries. Increasing the number of native female PhD graduates is an urgent necessity for Japan. The next problem for human resources is Japanese researchers' social consciousness. The rate of dual-income to single-income households is now about 1.2. However, it is totally different in the academic sphere. Data on the jobs of researchers' spouses show that more than half of male researchers have full-time housewives. MEXT's efforts are not effective in such a conservative environment. If MEXT is to increase the number of female researchers, not only is a support system relying on male colleagues' cooperation required, but also legal action, such as a quota system, should be taken. In the US and EU, there are a lot of dual-career academic couples and they are a driving force for solving female researchers' problems. In Japan a few PhD female students plus the traditional tendency of male researchers with full-time housewives hampers the increase of dual-career academic couples. It is a shortcut to build a gender equal society to raise talented female researchers with the potential to win the Nobel Prize.
著者
小川 眞里子 片倉 望 山岡 悦郎 伊東 祐之 久間 泰賢 遠山 敦 秋元 ひろと 斎藤 明
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は平成11年度から13年度の3年間のプログラムによって、「物語としての思想-東西の思想を物語の観点から読み直す-」をテーマに総勢10名を超えるメンバーの参加をもって始められた。参加者の専門は西洋、日本、インド、中国の思想分野にわたり、比較思想的探求を行う際の共通の切り口として「物語」という切り口は面白いのではないかと考えた。たしかに、物語は文字をもつ以前から口承の形で受け継がれてきており、人間存在と切り離しがたく普遍的に存在する。それにもかかわらず従来の哲学からは「物語」への取り組みの糸口が見出しにくく分担者は苦闘を強いられた。そうした中で、東北大学の野家啓一氏を招き講演会を開き、その成果を文字に起こして研究分担者がきちんと共有できたことは、各自の研究を進める上で大きな助けとなった。とくに今回の講演で示された科学的実在と物語の関係は大変示唆的であった。また東洋思想の観点からお話をしていただいた田辺和子氏の「原始仏教聖典の中の物語」は、先に述べたごとく「物語」がいかに本質的に人間存在と結び合ってきたものであるかを納得させるものであった。こうした経緯をへて各自が報告の作成に取り掛かり、桑原は野家氏の中心的テーマであった歴史の反実在論から説き起こしそれとキリスト教徒の問題に切り込み、武村は物語と哲学との比較という非常に興味深いテーマに行き着ついた。その他各自がこのユニークな研究の端緒をいかに完結させるかが今後の課題である。