著者
齋藤 岳人 井上 和哉 樋口 大樹 小林 哲生
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.4, 2022 (Released:2022-04-20)

本研究の目的は,記憶や流暢性現象(真実性効果など)において重要な要因と考えられている書体の読みやすさに書体への接触,使用経験が関与するのか明らかにすることである。そこで,大学生を対象として,無意味文字列に対する書体の読みやすさと接触頻度,使用頻度のWeb調査(7件法のリッカート法)を行い,これらの関係を検討した。書体ごとの評定値を平均し,相関係数を算出したところ,読みやすさと接触頻度で.69,読みやすさと使用頻度で.77の高い正の相関が有意であった。しかし,特徴的な形態の書体や,特定の種類の書体では接触,使用頻度に関係なく,読みやすさが判断されていた。この結果は,普段から目にすることが多く,使用する機会の多い書体が読みやすいと判断される一方で,形態的要因から読みやすさが判断される書体も存在することを示唆する。
著者
小林 哲生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.625, pp.71-76, 2003-01-27
参考文献数
32
被引用文献数
1

両眼視野闘争とは、物理的には左右の網膜上に視覚刺激が与えられ続けているにも関わらず、競合する視覚刺激が交互に知覚され、一方の刺激が知覚されている時、他方の刺激が意識にのぼらないという視知覚現象であり、視覚的意識の脳内機構を実験的に調べる上で、主観的体験を定量的に観測できる稀少な現象であるとして重要性が再認識されるようになってきた。ここ数年、特に機能的MRIや脳磁図、事象関連電位といった脳機能イメージング研究により、その機構解明の手がかりとなる重要な結果が報告されるようになってきており、視野闘争には、一次視覚野のみでなく、高次視覚野、頭頂連合野、前頭連合野といった複数の部位が関わっており、相互に結合している機能領域間の情報統合プロセスの結果生ずるらしいことが明らかになってきている。
著者
樋口 大樹 奥村 優子 小林 哲生
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.113-120, 2019
被引用文献数
3

<p>本研究では,幼児のひらがな読み書き習得における文字特性の影響を検討した.具体的には,文字の視覚的複雑度,大規模絵本コーパスを用いて求めた文字頻度,五十音表順位を文字特性の指標として用い,これらと国立国語研究所が公開している4・5歳児の読み書き正答率順位との関連を分析した.その結果,ひらがな読み正答率順位は,絵本中の文字頻度,五十音表順位と有意な相関を示した.一方,ひらがな書き正答率順位は,絵本中の文字頻度,五十音表順位に加え視覚的複雑度と有意な相関を示した.さらに,ひらがな文字を読みおよび書き正答率を基に正答率高,中,低群に分け,読み・書き正答率群を予測する文字特性を順序ロジスティック回帰分析を用いて検討した.その結果,ひらがな読みには文字頻度,ひらがな書きには文字頻度と視覚的複雑度が予測因子として有意であった.これらの結果は,ひらがな読み習得と書き習得で関与する文字特性が異なることを示しており,ひらがなの読み習得には絵本における文字への接触,書き習得には文字への接触に加え視覚処理が重要な役割を果たすことを示唆する. ただし,幼児の発話や自分の名前に含まれる文字の影響など検討されていない要因があり,幼児のひらがな読み書き習得の全体像を明らかにするためにはさらなる検討を行う必要がある.</p>
著者
白井 良成 松田 昌史 藤田 早苗 小林 哲生 岸野 泰恵
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1660-1679, 2020-11-15

位置情報ゲームをWWWをフィールドとして実現するゲームの概念,WBG(WWW-based games)を提案する.膨大なコンテンツが存在し,多くの人が日常的に利用するWWWをフィールドにしたゲームを構築することで,WWW上のデータを利用したヒューマンコンピュテーション,Webコンテンツを利用した能力開発,Webサイトへの集客効果など様々な効果が実現できる.一方,その構築においては,実世界とは異なるWWWの特徴を考慮する必要がある.本論文では,実世界を対象とした位置情報ゲームとの対比からWBGの概念を整理し,また,WWW上の文字列を擬人化してWebサイトを奪い合うゲーム,テキストモンスターを題材に,WBGによる新たなゲーム体験の実現性,構築によって得られた設計に関する知見,副次的効果の実現可能性について論じる.
著者
服部 正嗣 澤田 宏 殿岡 貴子 坂田 岳史 藤田 早苗 小林 哲生 亀井 剛次 納谷 太
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.3M1GS1203, 2020 (Released:2020-06-19)

児童や生徒は、期末テストや模試等で問題を解くことによってその時点での学習状況を把握している。これに加えて共通の問題を解いた集団のテスト結果を適切に分析できれば、テスト後の学習に有用な情報を得ることができると考えられる。本研究では、集団のテスト結果を対象にVariational Autoencoderを適用し、児童生徒の各問題への回答傾向および同様の解かれ方をしている問題の集合について分析する。具体的には、生徒一人ひとりが各問題に正答したか誤答したかを入力とし、同じ出力を得られるようAutoencoderを学習する。学習の際に、従来の損失関数に加えて入力がすべて0、1(誤答、正答)であるならば潜在変数もすべて0,1となるような制約など、潜在変数が正答率と相関するような複数の制約を加えた。このことによって得られたVariational Autoencoderの潜在変数を用いると児童生徒や問題についての解釈を加えることが可能であり、問題の集合や解くために同様の能力を要求されると考えられる問題の集合や各児童生徒が前述の問題の集合のいずれが得意でいずれが不得意かについての知見が得られた。
著者
川口 浩和 小林 哲生
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.551-557, 2011-08-10 (Released:2012-01-18)
参考文献数
10

Eye-blink activities are major artifacts for electroencephalogram (EEG) measurements. Various methods have been reported for removing eye-blink artifacts from EEGs. Almost all previous methods focus on how much eye-blink artifacts are removed. However, they concurrently remove a part of EEGs together with eye-blink artifacts. Instead, we focus on how much true EEGs remains, and proposed a localized removal method for eye-blink artifacts. The proposed method is based on the combinations of independent component analysis (ICA). empirical mode decomposition (EMD) and Kalman filter. In addition, we proposed a novel simulation model to test performances of the proposed and previous methods. This simulation model indicates that the proposed method shows the best performance and reduces information loss of EEGs than previous methods.
著者
池田 彩夏 小林 哲生 板倉 昭二
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.8-21, 2016-03-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
41

In the field of language development, one interesting issue is how Japanese-speaking children acquire the case markers that play a role in understanding a sentence’s struc-ture, because previous studies reported that caregivers often omit them when talking to their children (e.g., Rispoli, 1991). Although grasping the characteristics of parental input on case markers is crucial for understanding a child’s acquisition process of them,the studies so far have shown insufficient data to clarify the qualitative and develop-mental characteristics of case marker inputs because of small sample size or a limited target age. This study used a larger sample of mothers (N=52) with children who ranged from 1 to 3 to measure their tendency to talk to their children using a struc-tured production-elicited task. Our results revealed that Japanese-speaking mothers tended to omit case markers more frequently when speaking to children than to adults. The omission rate also differed depending on the child’s age, the type of case mark-ers, verb transitivity, and maternal views about speech to children. Additionally, the mothers tended to omit arguments more frequently when speaking to children, sug-gesting that Japanese-speaking children have fewer opportunities for listening to case markers because of sentence simplification. These findings have important implications for investigating the relationship between parental language input and child language development.
著者
池田 彩夏 小林 哲生 板倉 昭二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.412, pp.89-94, 2013-01-17

オノマトペとは、音、動き、質感など様々な感覚表現を表す言葉であるが、その一部に複数の感覚に由来するものが存在する。例えば、「ざらざら」は視覚と触覚の両方のイメージを喚起するが、このことを幼児も大人と同じように理解できるかはよくわかっていない。本研究では、視触覚表現を表すオノマトペを対象に、日本人4歳児がオノマトペの示す視覚表現及び触覚表現をどの程度理解しているかをクロスモーダルマッチング法を用いて検討した。その結果、4歳児はオノマトペと視覚及び触覚のマッチング課題に成功し、両課題に正答する幼児も多かった。また課題成績は対象年齢内でも月齢とともに上昇し、その個人差は幼児の語彙力や母親の言語入力との関連を示した。これらの結果から、4歳児はオノマトペの示す視触覚表現とそのクロスモーダルな表現をすでに理解しているが、この時期にそれらの理解をより精緻なものに向上させていることが示唆された。
著者
小林 哲生 笈田 武範 伊藤 陽介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

本研究では,神経・精神疾患などの診断支援や治療効果を定量的に評価できる新規医用イメージングシステムの開発を目的として,超高感度な光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)の深化とモジュール化,ならびにこのセンサによるMRI撮像を超低磁場で実現し他の様々な計測手法とのマルチモダリティ計測を可能とするシステムに関する研究を行った. OPAMについてはK原子とRb原子のハイブリッド型により高い空間的均一性を実現できることを示し,さらに新たな多点同時計測法を開発した.また,モジュール型OPAMによるMR信号の直接計測手法の提案を行い数値実験によりその妥当性を示すなど多くの成果を挙げる事ができた
著者
鄭 址旭 小林 哲生 李 玉文 栗城 眞也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.1084-1092, 2002-06-01
被引用文献数
5

本研究では,視覚刺激におけるテクスチャによるターゲットとグラウンドの分離・認知にかかわる脳内プロセスの解明を目指し,視野内におけるターゲットの呈示領域と分離・認知されるまでに要する反応時間との関係を調べた.また,課題遂行時の事象関連電位を頭皮上63箇所で同時計測し,更にスプライン・ラプラシアン解析を行い脳活動の検討を行った.その結果,ターゲットの呈示される領域によって反応時間に有意な差が生ずることが明らかとなった.また,課題遂行に伴い潜時の異なる四つの事象関連電位成分が観測された.事象関連電位のスプライン・ラプラシアン解析により,これらの成分の信号源は左右両半球の後頭葉,頭頂葉,前頭葉にあり,このうち反応時間との関連から,潜時約270ms以降の前頭葉の活動が主にターゲットの認知にかかわる脳内プロセスを反映していると推察された.