著者
小西 恵美子 デービス アンJ
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.84-91, 2000-09-13 (Released:2017-04-27)
参考文献数
6
被引用文献数
4

「死ぬ権利」とは、終末期の患者が、さらなる治療を拒否して死を早めることを自らの意思で決定できる権利をさす。「死ぬ義務」とは、終末期の患者や老人は、家族の負担や医療コスト等の社会的要因から、延命のための治療は拒否して死を早める義務があると感じることである。日本、欧米の生命倫理に関心をもつ看護婦、医師および生命倫理学者それぞれ121名、64名を対象に、この二つの概念に対する意識を調査した。結果、死ぬ権利は欧米は全員、日本も大多数が支持した。死ぬ義務については、欧米の支持率は高かったが、日本は支持しない人のほうが多かった。自由記述からしばしば出現したテーマは、「自己決定」、「命の意味」、「公正」、「患者と家族との愛」である。それらの意味の両群の相違点と類似点を探索し、終末医療の問題をかかえる日本と欧米が相互に学ぶ必要を示唆した。
著者
小西 恵美子 デービス アンJ
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.84-91, 2000-09-13
被引用文献数
4

「死ぬ権利」とは、終末期の患者が、さらなる治療を拒否して死を早めることを自らの意思で決定できる権利をさす。「死ぬ義務」とは、終末期の患者や老人は、家族の負担や医療コスト等の社会的要因から、延命のための治療は拒否して死を早める義務があると感じることである。日本、欧米の生命倫理に関心をもつ看護婦、医師および生命倫理学者それぞれ121名、64名を対象に、この二つの概念に対する意識を調査した。結果、死ぬ権利は欧米は全員、日本も大多数が支持した。死ぬ義務については、欧米の支持率は高かったが、日本は支持しない人のほうが多かった。自由記述からしばしば出現したテーマは、「自己決定」、「命の意味」、「公正」、「患者と家族との愛」である。それらの意味の両群の相違点と類似点を探索し、終末医療の問題をかかえる日本と欧米が相互に学ぶ必要を示唆した。
著者
小西 恵美子 和泉 成子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.46-51, 2006-09-25 (Released:2017-04-27)
参考文献数
25
被引用文献数
5

原則の倫理と徳の倫理は、生命倫理および看護倫理の最も主要なアプローチである。原則の倫理の焦点は行為にあり、徳の倫理は行為する人の特質やふるまいを吟味する。本研究の主題は徳の倫理であり、看護の実践・教育でめざす倫理的理想像、「よい看護師」を韓国、中国、台湾との共同研究として探求している。その一環として、日本の患者がとらえる「よい看護師」の特質を探索した。結果を報告し、あわせて、「よい看護師」探求の意義を述べる。Van Kaamの現象学的手法を用い、病名を知らされている26名のがん患者に半構成的インタビューを行った。結果、対象者らは、「よい看護師」とは、人としての関わりができ、かつ、専門職としての特質を備えた看護師であるとした。また、患者らは、看護師との人と人との関係性に価値をおいていた。「よい看護師」の探求は、東洋における徳の倫理の学問的発展に寄与する。また、ケアを受ける人にとっての「よい」ということの意味を明らかにすることも、「よい看護師」探求の意義である。
著者
田中 真木 小西 恵美子
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.51-55, 2021-03-20 (Released:2021-05-29)
参考文献数
7

「よい看護師国際共同研究プロジェクト」の一部として本稿の第一著者がインタビューした日本のがん患者14名の語りから、よい看護師が患者に向き合う姿勢を論考した。論考では、上記プロジェクトのデータ分析における抽象化の過程で沈んでいった患者の生の語りと、語る際に患者が見せた表情や口調、仕草に光をあてている。患者たちは、自分たちがおかれた立場がいかに弱いものかという心身両面での脆弱性を述べ、その脆弱性をポジティブな方向へ転換させてくれる看護師が、患者にとってのよい看護師であるとした。その語りは具体的かつさまざまな表現で、なぜその看護師をよい看護師と認識したのかを述べていた。看護ケアの受け手である患者の生の声は看護師が学ぶべきことを指し示しており、そこに光をあてる意義を論じた。
著者
Chris GASTMANS 八尋 道子 宮内 信治 小西 恵美子
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.59-70, 2022-03-20 (Released:2022-04-13)

過去20年間の看護倫理の文献をふりかえると、顕著なことが2つ認められます。1つは、データ収集を基本とする実証研究が非常に多いいっぽう、思考を基本とする議論研究がとても少ないことです。もう1つは、議論研究であっても、生命倫理の4原則に依拠する議論が支配的で、看護ケアの重要な側面への関心が相対的に薄いことです。この傾向は今後も続くのでしょうか。私の講演は、この問題提起から出発し、看護実践の核はケアであること、ケアは患者・家族・医療者等の人々が関わりあいながら進むプロセスであること、したがって看護倫理の基盤はケアに根差す必要があることを述べます。そしてその視点に立って、看護倫理の枠組みの基本を提示します。まず、看護ケアの重要な側面をなす次の3つを、看護倫理の枠組みの背景として位置付けます。すなわち、ケアに関係する人々(患者・家族・医療者等)が具体的に感じ・経験する「生きられた体験」、これら当時者が対話し解釈し理解を共有しあって患者本人のケアニードに対する適切な答えを見つけていく「対話的解釈的プロセス」、および、ケアする義務とよいケアを規定する「規範的基準」の3つです。その背景のもとに、倫理的な看護実践において常に配慮する必要のある主要概念として、「脆弱性」、「ケア」、「尊厳」の3つを特定します。この3つの概念に基づき、看護の倫理的な本質は、人間の「尊厳」を可能な限り維持、保護、促進するために、人間の「脆弱性」に対応する「ケア」を提供することである、と主張します。
著者
小西 恵美子 小野 道実 小泉 彰 河内 典子 吉沢 康雄
出版者
Japan Health Physics Society
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.594-602, 1969 (Released:2010-03-15)
参考文献数
5

In spite of the increasing use of electron microscopes, very few considerations have been given to the emission of radiation from the equipment. This is mainly due to the fact that the radiation is emmitted as “an unwanted by-product”of the equipment. Radiation surveys were carried out on twelve epuipments of Japanese manufacture. Informations obtained from the surveys were;1) Radiation leakage was observed from eight equipments.2) Electron gun, viewing window and photo-chamber were main locations where radiation leakage was observed.3) Structural defects in the equipment were important causes of radiation leakage.Following opinions were offered from a health physics standpoint;1) The equipment is required to be constructed and installed so as to provide adequate protection.2) A legalistic radiation safety standard is neededfor theequipment manufacturer.3) In a radiation safety program, it is important to obviate any radiation leakage rather than to assess the doses liable to be incurred.
著者
小西 恵美
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.27-52, 1996-10-25

18世紀のイングランドには様々な時代に起源を持つ,大小様々な権限の行政組織が混在し,地方政府と呼べる機関は存在しなかったが,その中で最も発達した形態をとり地方政府に近い働きをしていた機関は都市コーポレーションであった。そこでは市長とオルダーメン,カウンシラーから構成される市議会が全ての決定権を持っていたが,コーポレーションの資産が饗宴や俸給などメンバーの私的利益の追求に使用されたとして,しばしば批判の的となってきた。ここでは港湾都市の1つであるキングス・リンを取り上げ,収入役会計簿と市議会議事録を中心とする一次史料を分析することにより,コーポレーションが具体的にどのような活動を行っていたかを検討する。キングス・リン・コーポレーションは通常,不動産や賦課金,市場や上水道,波止場等の使用料から収入を得ており,必要に応じて年金証券や債券の発行,借入によって収入を補填していた。その資金は河川・港湾施設を中心とするインフラ整備や慈善活動の他に,俸給や利子の支払い,祭典・饗宴,訴訟を含む行政費に使われていた。また,市民(freemen)や施療院,そしてとくに港湾労働者の管理もその活動の重要な部分を占めていた。従来の研究では「地方政府」にいかに近い性格を持ち合わせるか,すなわちいかに公共利益に沿った活動を行っているかがコーポレーションを判断する際の規準となっていた。これに基づいてキングス・リン・コーポレーションを判断すると,他の都市と同様に,それは清掃や街灯,警備のような都市サービスについて市民の要求にははとんど応えておらず,慈善活動も決して十分なものではなかったが,その公共施設への投資は評価でき,比較的機能していたという結論を導き出すことができる。しかし,1835年を境に地方行政機関のあり方が大きく変化したことは明らかである。そうであるならば「地方政府」の規準からではなく,私的利益追求団体としての別の見地からコーポレーションの活動を追究することが今後の課題として提起される。
著者
前田 樹海 深山 智代 小西 恵美子 野坂 俊弥 田中 高政 STANLEY Grace
出版者
長野県看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

わが国では多くの地方公共団体で骨密度測定事業が実施されている。骨検診において、限られた資源や時間の中でより教育効果を高めるための方策について、提供者および利用者の両側面から研究を行なった。提供者側からのアプローチとしては、教育効果の高い生活指導に資する問診票、および健康教育に携わる保健師、栄養士、運動指導員が一定の共通認識を持って一貫性のある指導を行うための解説書の開発とその評価を実施した。問診票の項目は、WHO等が公表している国際的なリスク要因に基づき、利用者が記入しやすい、スタッフが指導しやすいという観点から厳選し、マークシート式のものを作成し評価を行なった。利用者側からのアプローチとしては、骨健診において、骨の健康について理解を深めるための解説書の作成および、骨量減少リスクを自己評価するためのツール開発を実施した。このようなツールは世界中ですでに数種類開発されているが、日本女性に特化したツールがない点、感度を高めるために特異度が犠牲になっている点が課題と考えられた。そこで、研究者らが開発した問診票からのデータをもとに、決定木による場合分けを行ない、最終的には年齢、食事、体重、20代の身長という説明変数で、骨量減少を予測するモデルを作成した。86%の精度で骨量減少を予測し、感度は91%、特異度は81%を示した。一般化のためにはさらなるデータの蓄積と検討が必要と考えられたが、地域住民が骨検診への動機付けを高めるためのツールとしては一定の役割を果たすことが推察される。上記研究成果の一部を、International Osteoporosis Foundation World Congress on Osteoporosis 2006(Toronto, Canada)およびInternational Council for Nurses Conference 2007(横浜市)にて発表した。また、第33回日本看護研究学会学術集会(盛岡市)および、日本医療情報学連合大会(神戸市)にて発表予定である。
著者
中野 忠 道重 一郎 菅原 秀二 唐澤 達之 小西 恵美 山本 千映 真保 晶子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

消費文化や印刷文化の浸透を背景とする18世紀のイギリスの都市化は、人々の社会関係のあり方に新しい次元をもたらすとともに、古い制度や組織が担ってきた機能を新たな社会関係資本のネットワークのもとに再編する過程として進行した。都市社会はよりオープンになり、貧困や犯罪は中位層以上の市民が対処すべき社会問題となる一方で、社会的な差異を作り出す新たな力が作用し、参加型の地域社会もその性格を変えていった。