著者
石盛 真徳 岡本 卓也 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.22-29, 2013 (Released:2013-09-03)
参考文献数
27
被引用文献数
1 9

本研究では27項目で構成されるコミュニティ意識尺度の原版の利便性を高めることを目的として短縮版の開発を行なった。その目的を達成するために392名の調査回答者(平均年齢40. 9歳,男性50. 3%・女性49. 7%)のデータを収集した。短縮版12項目は,原版のコミュニティ意識尺度と同じく連帯・積極性,自己決定,愛着,および他者依頼の4つの下位尺度から構成されている。各下位尺度はいずれも3項目から構成されているが,それらの項目については原版を用いた先行研究において一貫して同一の下位尺度に負荷している項目から選定を行なった。短縮版の探索的因子分析を実施した結果,短縮版が原版と同じ4因子構造を保持していることが示された。次に検証的因子分析を実施した結果,短縮版の4因子構造モデルが十分な適合度を持つことが示された。したがって短縮版は原版の半分以下の項目数でコミュニティ意識という構成概念を測定し得ることが示されたといえる。今後は,利便性の向上した短縮版を積極的に活用し,現実のコミュニティにおける課題の解決に向けた実証的研究を進めていくことが必要である。
著者
岡本 卓也 藤原 武弘 野波 寛 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-16, 2008 (Released:2008-11-14)
参考文献数
43
被引用文献数
1

本研究の目的は,マクロレベルでの集団間の関係性を測定,図示,解析することである。そのため,ある集団やそのメンバーに対して人びとが抱いているイメージ,情報,認知を元にして集団と集団の境界を決定しようとする集団共有イメージ法を提案する。従来の集団研究では,マクロな関係である集団間の関係性を表す際,ミクロデータを代用することが多かった。そこで,対象集団に関するイメージをもとに対応分析を行うことで,マクロレベルでの集団間の関係性の分析を試みた。大学生274名を対象にSIMINSOC(広瀬,1997)を実施した結果,イメージの類似性による集団間の関係性の認知マップが描かれた。またその座標を元にクラスター分析を行うことで集団間の境界線が抽出された。さらに小杉・藤原(2004)の等高線マッピングを応用することで,集団間の関係性(マクロデータ)と個人の好意度(ミクロデータ)の関係を分析した。これらの方法によって測定された集団間の関係性について,好意度や交流時間などのその他の指標との対応を検討した結果,本研究で用いた手法は十分な妥当性を持つものと判断された。最後にこの分析手法の成果や今後の展望について議論した。
著者
池田 敬 野瀬 紹未 淺野 玄 岡本 卓也 鈴木 正嗣
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.141-149, 2022 (Released:2022-08-10)
参考文献数
33

To reduce the population size of sika deer, efficient operation of snare traps is necessary. However, there have been few studies on the sika deer’s response to snare trap capture. We aimed to compare sika deer’s vigilance behavior and stay time at the trap sites before and after snare trap captures. We also monitored the frequency of appearance at trap sites and in the surrounding area. This study was conducted from August 2019 to February 2020 to collect data on the vigilant behaviors, stay time, and frequency of appearance in photographs. We found that vigilance behavior during the capture phase was higher than before the capture phase and remained high afterwards. Although the frequency of appearance in photographs at the capture sites was highest before the capture phase, no significant differences were detected in the frequencies at the surrounding sites throughout the study period. This result indicates that it would be desirable to relocate snare traps and bait from trap sites to the surrounding areas after capturing sika deer in the target area. Consequently, it is possible that snare traps can continue to be used to capture sika deer and effectively reduce their population.
著者
岡本 卓也
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.26-36, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

本研究は既存集団のもとへ他の集団(参入集団)が参入した時,既存集団成員が内集団の影響力を過小評価することを確認し,この過小評価の発生量の規定要因として内集団アイデンティティ(内集団Id)と共通内集団アイデンティティ(共通集団Id)の効果を明らかにした。実験1では,実験参加者36名から12個の3人集団を構成し,半数を既存集団に,残りを参入集団に割り当てた。集団ごとにある課題について討議・決定させた後,既存-参入集団を組み合わせた6人集団(上位集団)を構成し,再度同一課題について意思決定を求めた。その結果,既存集団は参入集団に比べて再決定時の自分達の影響力を過小評価していた。実験2では参入集団をサクラが演じ,49名の参加者を全て既存集団とし内集団Id(高・低)と共通集団Id(形成・無し)を操作した。その結果内集団Id高群で影響力の過小評価が認められた。共通集団Idの高さは過小評価の発生には影響を与えず,相手集団との対立度を低く認知させた。両実験の結果に基づき,既存集団における影響力の過小評価および対立度の認知と集団Idとの関係について考察した。
著者
岡本 卓也 長谷川 剛 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.384, pp.13-18, 2002-10-11
被引用文献数
2

現在のインターネットにおいては、Webプロキシサーバを経由したWebサーバへのアクセスが数多く存在する。Webプロキシサーバはその性質上、WebクライアントホストからのTCPコネクションおよびWebサーバへのTCPコネクションを収容しなければならないため、Webプロキシサーバにおいて効率的な資源管理が必要になる。そこで本稿では、Webプロキシサーバの高速・高機能化を実現するための資源管理方式を提案する。提案方式は、Webプロキシサーバの特性を考慮し、WebプロキシサーバがWebサーバからドキュメントをダウンロードする際に、各TCPコネクションのネットワーク状況に応じた大きさのTCP受信バッファを動的に割り当てる。したがって、ネットワーク帯域が大きいTCPコネクションにはより多くの受信ソケットバッファを割り当て、またネットワーク帯域が小さいTCPコネクションにはより少ない受信ソケットバッファを割り当てることが可能となるため、Webプロキシサーバの資源を効率的に利用することができる。本稿では、提案方式の有効性をシミュレーションを用いて検証した。その結果提案方式を用いることによって、Webプロキシサーバの特性を考慮した効率的な資源管理を行うことができ、資源管理をしない従来方式と比較して最大2倍のスループットが得られ、応答時間も約1/4に短縮できることを示す。
著者
小出 昌秋 渡邊 一正 神崎 智仁 植田 ちひろ 岡本 卓也 古田 晃久 森 善樹 中嶌 八隅 金子 幸栄 井上 奈緒 村上 知隆
雑誌
第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2015-04-21

【背景】成人先天性心疾患に心房細動(AF)を合併するケースが少なくない。AFは放置すれば脳梗塞のリスクとなるため、可能であれば積極的に治療することが望ましく、当院では以前より積極的にメイズ手術を行っている。【目的】当院におけるメイズ手術の成績について報告する。【対象と方法】2000年1月~2014年12月に経験した成人先天性心疾患手術88例(平均年齢40.5±17.2歳)を対象とし後方視的に検討。メイズ手術はCox Maze IIIに準じてCryoとRFにて行った。【結果】88例中21例(23.9%)に術前AF(慢性または発作性)を合併しており、AF合併例の平均年齢は55.7±15.6歳でAF非合併例の35.7±14.8歳と比較して有意に高齢であった。AFは慢性12例、発作性9例であった。AF合併例の心内病変はASD 6例、ASD+TR±MR4例、VSD1例、術後残存ASD1例、AVSD術後MR3例、VSD術後TR1例、TOF術後PR±MR2例、PPA術後1例、MR1例。全例で右房拡大を認め、左房径も43.9±10.5mmと拡大傾向がみられた。21例中初期の2例とAtrial Standstillであった1例を除く18例に対してメイズ手術を行った。手術死亡なし。メイズ術後観察期間平均36.0ヶ月(1~101ヶ月)で、1例で術直後からATが持続して術後5ヶ月でカテーテルアブレーションを行い洞調律に復帰。1例で術直後洞不全ありAAI PM植込み施行。1例で術後7年目に心房粗動となりカテーテルアブレーションを計画中。残りの15例では洞調律を維持しており発作性AFの出現もなかった。AF症例でメイズ手術を行わなかった3例のうち1例が術後遠隔期に脳梗塞を発症し死亡した。【考察】成人先天性心疾患手術症例の約1/4にAFを合併しており、メイズ手術を行った全例でAFは消失した。術後上室性不整脈に対してはカテーテルアブレーションやペースメーカーで対処することが有効であった。AFを合併した成人先天性心疾患症例に対するメイズ手術の成績は良好であり、積極的に行うべきであると考えられた。
著者
岡本 卓也 林 幸史 藤原 武弘
出版者
日本コミュニティ心理学会
雑誌
コミュニティ心理学研究 (ISSN:13428691)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.21-41, 2014-09-30 (Released:2019-04-27)
参考文献数
26
被引用文献数
1

This study aimed to reveal the differences between children's hazard perception and those of adults, using the photo projective method (PPM) developed by Noda (1988). PPM is a new technique based on a projective method that captures subjects' perceived environments through photographs. Thus, this method helps us understand an individual's internal mental world. To evaluate the patterns of children's hazard perception and safety awareness, we first asked 23 children (4th graders) and 19 mothers to take photographs of hazard points or areas that caused anxiety in the children during their commute to school. The results show that children perceived traffic hazards as being less hazardous than adults did. Second, to assess the development of children's safety awareness, we asked 139 children (1st trough 6th graders) and 106 adults, the children's parents, to take photographs of hazard points or areas that caused anxiety in the children during their commute to school. The results revealed certain patterns of the children's developmental process relative to hazard perception and safety awareness. The differences in the photographs reflect the development of hazard perception ability in the children. It was observed that children above the ages of 9 and 10 have perception patterns similar to those of adults.