著者
劉 沙紀 孫 陶洋子 蔡 祺 岩宮 眞一郎
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.87-100, 2015 (Released:2022-01-12)
参考文献数
20

音楽と画像の調和感に関する文脈効果を明らかにするために,「陽気な」あるいは「陰気な」印象の音楽と画像を用いて調和感の評定実験を行った。連続した2場面よりなる視聴覚刺激において,両場面とも音楽と画像の印象が類似し,両方の印象とも一貫している場合には,後半に呈示した場面の調和感が高まった。2場面とも,音楽と画像の印象が反対の刺激においては,後半に呈示された場面の不調和感が和らいだ。音楽と画像の印象が一貫している場合には,不調和感の緩和効果がより顕著だった。音楽と画像の印象が類似している場面と反対である場面の組み合わせでは,後半に呈示された類似している場面の調和感,反対である場面の不調和感が抑制された。
著者
岩宮 眞一郎 関 学 吉川 景子 高田 正幸
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.292-299, 2003
被引用文献数
2

テレビ番組や映画などで, ある映像シーンから別の映像シーンへ場面を転換するとき, 様々な切り替えパターンが用いられる. 本研究では, 効果音が各種の切り替えパターンの印象に与える影響を, 印象評定実験によって明らかにした. 一般に,「明るい」印象の連続的なスケール状の効果音が, 各種の切り替えパターンと調和する. とりわけ, 上昇系列の音列と拡大系の切り替えパターン, 下降系列の音列と縮小系の切り替えパターンの調和度が高い. 本研究で認められた音と映像の調和感は, 音と映像の変化パターンの一致に基づく構造的調和によるものと考えられる. さらに, 音と映像の調和度が高い視聴覚刺激は映像作品としての評価も高い. これは, 音と映像が一体となって互いの効果を高め合う協合現象によるものと考えられる. 音と映像の構造的な変化パターンの一致が調和感をもたらし, 視聴覚情報が一体のものとして理解されることで, 評価が高まるのであろう.
著者
永幡 幸司 前田 耕造 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.77-84, 1996-02-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
1

俳句に詠み込まれた音環境を, 統計的に分析することで, 日本のサウンドスケープの時代変遷を調査した。日本におけるサウンドスケープの変化は, 江戸時代から昭和にかけては緩やかであったのに対し, ここ十数年の変化は急激であり, その変遷の内容は, 自然空間のサウンドスケープから人間の生活音によるサウンドスケープへというものであることが分かった。更に, 日本の音文化には, 音を季節の象徴として敏感に読みとり, そこから情緒を感じるというものがあったが, 時と共に, そのような文化が廃れていきつつあるということが示唆された。しかし, 寺の鐘や祭の音などによる, 社寺仏閣によっわるサウンドスケープは, 時代変遷の影響をあまり受けていない。
著者
岩宮 眞一郎 関 学 吉川 景子 高田 正幸
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.292-299, 2003-12-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

テレビ番組や映画などで, ある映像シーンから別の映像シーンへ場面を転換するとき, 様々な切り替えパターンが用いられる. 本研究では, 効果音が各種の切り替えパターンの印象に与える影響を, 印象評定実験によって明らかにした. 一般に,「明るい」印象の連続的なスケール状の効果音が, 各種の切り替えパターンと調和する. とりわけ, 上昇系列の音列と拡大系の切り替えパターン, 下降系列の音列と縮小系の切り替えパターンの調和度が高い. 本研究で認められた音と映像の調和感は, 音と映像の変化パターンの一致に基づく構造的調和によるものと考えられる. さらに, 音と映像の調和度が高い視聴覚刺激は映像作品としての評価も高い. これは, 音と映像が一体となって互いの効果を高め合う協合現象によるものと考えられる. 音と映像の構造的な変化パターンの一致が調和感をもたらし, 視聴覚情報が一体のものとして理解されることで, 評価が高まるのであろう.
著者
岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.649-657, 1992-09-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
18
被引用文献数
5

市販のレーザ・ディスク作品、及び、別の作品の音と映像を組み合わせた素材を用いて、AVメディアを通しての情報伝達における、視覚と聴覚の相互作用に及ぼす、音と映像の調和度の影響を検討した。音と映像の重畳が、音と映像の印象を良くする、協合的な相互作用においては、音と映像の調和度が高いほど、その効果が大きい。視覚と聴覚に共通する性質(通様相性)が同方向に変化する、共鳴現象に関しては、通様相性の処理レベルに依存し、明るさのように、低次の処理による性質では、調和度とは関わりなく、共鳴現象が生ずるが、引き締まり感、きれいさのような、高次の処理を必要とする性質では、調和度が高くないと、共鳴現象が生じない。
著者
岩宮 眞一郎 渡邊 正智 高田 正幸
出版者
公益社団法人 日本騒音制御工学会
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.425-436, 2008-12-01 (Released:2020-01-29)
参考文献数
7

オートバイの排気音に関するアンケート調査及び音質評価実験を行い,通常オートバイを利用するライダーと利用しない非ライダーの排気音に対する意識の違いを検討した。ライダーは,力強い走りを連想させる低音域が優勢で迫力感あふれるアイドリング音,音量が大きく高音域が優勢な走行音を好む。ライダーの評価には,音から連想されるオートバイのイメージの影響がみられた。非ライダーの評価にはそのような影響はなく,排気音全般に対して不快な印象を持ち,音量が大きいほど排気音を嫌っていた。ライダーが理想とする排気音と非ライダーが不快感を覚える排気音の擬音語に共通の表現がみられることからも,両者の意識の違いが分かる。
著者
岩宮 眞一郎 柳原 麻衣子
出版者
The Institutew of Noise Control Engineering of Japan
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.267-273, 1999-08-01 (Released:2009-10-06)
参考文献数
11

外国人が日本の音環境をどのように認識しているのかを明らかにするために, 福岡市内の大学に通うアジア系の留学生を対象とした音環境調査を行った。日本で聞こえ本国では聞くことのない音として,「暴走族の音」「飛行機の音」「カラスの鳴き声」「盲人用音響信号」などの回答を得た。これらは,「お寺の鐘の音」「山笠の音」といったステレオタイプの日本の音, 福岡の音ではない。日常ひんぱんに聞く音である。これらの音が, 外国人にとっての日本の音風景を特徴づけているのである。本国で聞こえ日本ではあまり聞くことのない音としては,「自動車の警笛」「会話」などがあげられた。日本の音環境の全般的な印象は, おおむね, 良好であった。
著者
岩宮 眞一郎 柳原 麻衣子
出版者
社団法人 日本騒音制御工学会
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.267-273, 1999

外国人が日本の音環境をどのように認識しているのかを明らかにするために, 福岡市内の大学に通うアジア系の留学生を対象とした音環境調査を行った。日本で聞こえ本国では聞くことのない音として,「暴走族の音」「飛行機の音」「カラスの鳴き声」「盲人用音響信号」などの回答を得た。これらは,「お寺の鐘の音」「山笠の音」といったステレオタイプの日本の音, 福岡の音ではない。日常ひんぱんに聞く音である。これらの音が, 外国人にとっての日本の音風景を特徴づけているのである。本国で聞こえ日本ではあまり聞くことのない音としては,「自動車の警笛」「会話」などがあげられた。日本の音環境の全般的な印象は, おおむね, 良好であった。
著者
岩宮 眞一郎 小杉 経平 北村 音一
出版者
Acoustical Society of Japan
雑誌
Journal of the Acoustical Society of Japan (E) (ISSN:03882861)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.73-82, 1983 (Released:2011-02-17)
参考文献数
17
被引用文献数
8 9

When we listen to vibrato tones, we perceive not only frequency fluctuation but also somewhat steady pitch. This pitch sensation of vibrato tones is defined as “principal pitch.” The principal pitch of vibrato tones is located around its carrier frequency, by a method of adjustment. As the location of principal pitch of vibrato tones has the width proportional to its extent of frequency changing, it is impossible to be located more precisely. The principal pitch of symmetrical trill tones is located around its carrier frequency, too. The location of principal pitch of asymmetrical trill tones is shifted in the direction of the longer one between high frequency interval and low frequency interval. This means that the location of principal pitch of frequency modulated tones is defined not only by higher and lower extremes of modulation extent but also by the whole process of frequency changing. It is more shifted than the simple time average of frequency changing. From these experimental results we suppose the pitch averaging mechanism in the auditory process to perceive principal pitch of frequency modulated tones. In this process, this mechanism samples pitch changing continuously, registers in sensory store, and averages every certain moment. When a pitch distribution of frequency modulated tones is asymmetrical, this mechanism accomplishes its function after emphasizing the large part of the distributio.
著者
蘇 勲 金 基弘 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.555-562, 2009
参考文献数
13
被引用文献数
4

映像メディアにおいて,あるシーンが別のシーンに転換するとき,様々な切り替えパターンが用いられ,切り替えパターンを効果的にするために効果音が付加される。本研究では,映像の切り替えパターンと音高の変化パターンを組み合わせたときの調和感を,日本人・韓国人・中国人を対象とした印象評価実験によって検討した。上下方向の映像の切り替えに関しては,映像と音高の変化方向が一致している場合に高い調和感が得られる。拡大縮小パターンでは,拡大パターンには音高の上昇,縮小パターンには音高の下降が調和感を形成する。左右方向の映像の切り替えに関しては,右方向の移動と音高の上昇,左方向の移動と音高の下降の組み合わせが調和する。
著者
入交 英雄 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.127, pp.29-34, 2008-12-12
参考文献数
3

オーケストラの録音において、ミキシング・エンジニアが最も好ましいと判断する残響音レベルを考察するため、 無響室録音のオーケストラ音源を用い電子残響を付加する実験を行った。調整法に準じた方法で残響音を最も好ましいレベルに調整し、そのときに含まれる残響音成分の割合を知るために建築音響で使用される直接音と間接音のエネルギ比の一種である C 値 (クラリティ・インデックス) という物理指標を導入した。その結果、残響音の最適ミキシングレベルにおいて、残響時間、及びモノ、ステレオ、クワドラフォニックという再生方法に関係なく C 値が一定となること、しかし楽曲の要因によって C 値が変動することが判った。The most preferable reverberation level for the recording of orchestra sounds by recording engineers was studied by a psycho acoustical experiment. The most preferable electric reverberation level to the orchestral sounds recorded in an anechoic chamber was measured by a method of adjustment. A physical index of C (Clarity Index) was used to measure the energy ratio between the direct sound and the indirect sound of the adjusted sounds. The obtained values of C from the most preferable reverberation were different among the music pieces. The reverberation time and the reproduction method (monophonic, stereophonic or quadraphonic) did not affect the C value.
著者
濱村 真理子 青野 まなみ 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.65-72, 2015-02-01

BGM,サイン音とアナウンス,自然環境音の丁度よいと感じられる音量(最適聴取レベル)を調整法により測定し,その男女差の有無を検討した。BGM,サイン音,アナウンスの最適聴取レベルに男女差が認められ,女性よりも男性の方が最適聴取レベルを高く設定していた。自然環境音の場合には最適聴取レベルに男女差は認められなかった。同一音圧レベルを女性よりも男性の方がより小さいと感じるため,男性が要求する音の大きさを満たすためには女性よりも聴取レベルを高く設定する必要が生じたと考えられる。しかし,自然環境音の最適聴取レベルは実際に聴いて記憶された音量に合わせて設定されたために,男女差が生じなかったのであろう。
著者
岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.649-657, 1992-09-01
被引用文献数
29

市販のレーザ・ディスク作品、及び、別の作品の音と映像を組み合わせた素材を用いて、AVメディアを通しての情報伝達における、視覚と聴覚の相互作用に及ぼす、音と映像の調和度の影響を検討した。音と映像の重畳が、音と映像の印象を良くする、協合的な相互作用においては、音と映像の調和度が高いほど、その効果が大きい。視覚と聴覚に共通する性質(通様相性)が同方向に変化する、共鳴現象に関しては、通様相性の処理レベルに依存し、明るさのように、低次の処理による性質では、調和度とは関わりなく、共鳴現象が生ずるが、引き締まり感、きれいさのような、高次の処理を必要とする性質では、調和度が高くないと、共鳴現象が生じない。
著者
岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.533, pp.39-46, 2002-12-12
参考文献数
18
被引用文献数
4

一般に、映画やテレビのような映像メディアは、映像だけでは成り立たない。必ず音を伴っている。映像に伴う音は、映像作品の一部と言っていいであろう。我々は、一連の印象評定実験により、音が映像の印象に、映像が音の印象に影響を及ぼすことを明らかにしてきた。実験結果は、視聴覚の処理レベルに応じた、様々な視覚と聴覚の相互作用の存在を示唆するものであった。また、音と映像の調和感には、構造的調和と意味的調和の2つの側面があることが確認できた。我々が得た知見は、新しいタイプの映像メディアにおける効果的な視聴覚コミュニケーションの構築に寄与するものと期待できる。