著者
岩崎 仁 萩原 博光 小泉 博一
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度は、国立科学博物館植物研究部保管の南方熊楠菌類図譜の調査とスキャニングによるデジタルファイル化をおこない、その結果3,800点余となった。同時に図譜記載英文の調査と翻字作業をおこなった。平成16年度はまず、1901年から1911年にかけて描かれた菌類図譜デジタルデータ130点ほどを中心に、図譜記載英文テキストおよび当時の日記テキストを関連づけて組み込んだ公開用画像データベース(試作版)を構築し、龍谷大学オープンリサーチセンター展示「南方熊楠の森」(平成16年6月7日〜8月1日開催)において一般公開した。南方熊楠旧邸保管の写真類、画像関連資料についてもおおむねデジタルファイル化を終了した。さらに、書簡類および日記についても早急なデジタルファイル化の必要性を感じたため平成16年度の後半はこの作業に力を注いだ。特に土宜法竜との往復書簡については新資料が大量に発見されたこともあり、この作業が今後の熊楠研究に寄与するところは大きいと考える。また、図譜記載英文については現在3,200点ほどについてテキストファイル化が終了したが、その後も京都工芸繊維大学工芸学部と国立科学博物館植物研究部の両者で進行しており、その完了は当分先になる見込みである。インターネット上での公開については菌類標本の所有・管理者である国立科学博物館、平成18年4月に開館が予定されている南方熊楠顕彰館を運用する和歌山県田辺市、および研究代表者の三者で環境を整えるための協議をおこない、龍谷大学人間・科学・宗教オープンリサーチセンターホームページにて公開用画像データベースを近々公開することが決まり、現在その準備中である。このように、菌類図譜デジタルデータは、その範囲を全ての菌類図譜へと拡大した画像閲覧データベースの整備がほぼ終了し、今後はテキストファイルと連携した統合型の南方熊楠データベースへと発展させる予定である。
著者
鈴木 圭 岩崎 仁史 渡辺 文亮 大森 教成 石倉 健 畑田 剛 鈴木 秀謙
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.756-762, 2007-11-15 (Released:2009-02-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

症例は79歳の男性。受診数時間前からの増悪する嘔気, 腹痛, 左背部痛, 意識障害のために当院搬送となった。来院時ショックの状態で, 血液検査では急性腎不全, 肝機能障害, 血清アミラーゼ値の上昇がみられ, 出血傾向を伴う著しい代謝性アシドーシスが認められた。画像検査では軽度の肺炎像が認められたが, 下大静脈の虚脱がみられた他にはショックの原因となる疾患を指摘できなかった。ショックに対する初期治療の後, 集中治療室へ入室となった。腹痛の病歴と採血検査所見より, 急性膵炎に準じ治療を行った。補液及び人工呼吸管理により利尿がつき始め, 肺炎球菌尿中抗原検査 (NOW Streptococcus pneumoniae, Binax Inc., USA以下尿中抗原検査と略す) を施行したところ陽性を呈した。膵炎に準じ既に抗菌薬投与を行っていたことから同様の治療を継続したが, 多臓器不全が進行, 播種性血管内凝固症候群を併発し, 入院後8時間あまりの激烈な経過で死亡した。血液及び喀痰培養検査では有意細菌を検出できなかったが, 尿中抗原検査は偽陽性がきわめて少なく, 自験例の病態の根本は劇症型肺炎球菌感染症による敗血症性ショックとすることが妥当であると考えられる。劇症型肺炎球菌感染症は, 発症時に必ずしも肺炎像を呈するとは限らず, 原因不明の劇症型感染症の鑑別診断として重要である。このような症例の診断は血液培養の結果に依存せざるを得ないが, 迅速性に欠け, 感度も高いとはいえない。原因不明のショックの症例においては, 肺炎像が明らかでなくとも, 積極的に尿中抗原検査を用いた診断を行うことは, 自験例の如く血液培養が陽性とならない敗血症例ではとくに大きな意義があると考えられ, 今後の症例の蓄積が必要である。また, 尿中抗原検査で陽性を呈するショック症例は, 劇症型の経過をたどることが危惧され, いかに有効な治療手段を講じるかが今後の検討課題となると考えられる。
著者
岩崎 仁美 幸田 利敬 武中 美佳子 松本 尚子 山根 学 矢本 富三 助川 明 武富 由雄 高田 哲
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G2Se2067, 2010

【目的】医療専門家の教育は、1965年に提唱されたBloomらの3分野、認知領域・精神運動領域・情意領域に基づいており、理学療法士養成は概ね知識と技術、専門的態度の3つから構成されている。近年、医療界全体で医療従事者の対人スキル・コミュニケーション、専門家としての態度をいかに養うかが大きな課題となり、その到達目標も定められてきている。一方、目標達成のためには、個々の学生が指導者側の指導をどのように受け止めるかも重要で、受け止め方の傾向を熟知し、学生の特性に応じた指導を行うことが大切である。そこで我々は、理学療法実習を終了した学生を対象に絵画連想法であるP‐Fスタディを実施し、実習における態度評価との関連を検討した。<BR><BR>【方法】平成20年度に実習を全て終了し、卒業が見込まれた学生のうち協力が得られた69名、男性50名(20~47歳、平均28.9歳)、女性19名(20~49歳、平均27.6歳)を対象とした。心理テストはP-Fスタディを用い、自分が起こした事象に対する他者からの指摘と、他者が起こした事象によって生じるフラストレーションに対する反応を採点し、評点因子毎に標準得点を算出した。実習態度評価については、「指導者の助言を受け入れることができる」という項目に着目した。実習評価者による差を排除するため複数の実習における平均値を個人の得点とし、その中央値よりも高い24名を上位群、低い15名を下位群とした。P‐Fスタディより得られた各評点因子を、実習評価の上位群・下位群間で比較し、Mann-WhitneyのU検定(p≦0.05)を用いて分析した。<BR><BR>【説明と同意】本研究が単位取得に関わらないことを示すため、実施は単位認定後とし、今後の臨床実習指導に役立てる旨を伝え、同意の得られた学生にのみ実施した。尚、得られた情報は、個人の特定が不可能な状態で研究に使用し、解析後は破棄した。<BR><BR>【結果】(1)上位群では、「問題解決を図るために他の人が何らかの行動をしてくれることを強く期待する反応」が下位群より有意に高かった。(2)同様に、上位群においては、「自責・自己非難の気持ちの強さに関係する反応」が下位群より高い値をとった。(3)「一般の常識的な方法で適応できるかをみるための指標」についても上位群が下位群より高得点であった。(4)他の指標に関しては両群間に有意差を認めなかった。<BR><BR>【考察】上位群では適度な自己反省心を持ち、問題解決に向けて自分から援助・助力を求めることができるが、下位群では自己反省心にやや乏しい傾向があり、適切に必要な助力を求めることができず、問題解決のための積極的姿勢が乏しいのではないかと示唆された。原因を自分に求め、自分の努力によって問題を解決しようという反応や、規則や習慣に従って解決を待つという忍耐強さに関わる反応においては両群間で有意差がないことからも、単に反省して従順であることではなく、困難な場面では助力を求める積極的な姿勢が指導者に評価されていた。一方、自己反省心が強すぎる場合には、自分自身を過度に攻撃する可能性、また他者への期待が高すぎる場合には、依存心の強さと捉えられる場合もあるため、評価にあたっては個別に判断する必要があると思われた。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】今後は、実習前後での変化や、実習中に問題が生じる学生についても検討し、学生の特性に応じた指導に繋げていきたい。
著者
三宅 義和 牟田 哲也 石塚 勝也 白石 智之 岩崎 仁 森 康維
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.929-935, 1995-09-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
12

水溶液中でのテトラクロロ金 (III) 酸のアセトンジカルボン酸による還元反応を紫外・可視分光光度計で測定した.金イオン濃度の減少速度は, 210nmでの吸光度の時間変化から得られ, その反応速度は金イオンとアセトンジカルボン酸濃度に比例した.その速度定数の活性化エネルギーの値が-21.2kJ/molと得られ, この過程が金コロイドの核生成過程に対応していると推論された.一方, 生成した金コロイドは530nm付近に最大吸収波長があり, その波長での吸光度の時間変化は誘導時間を有し, シグモイダル曲線で表された.誘導時間は金イオン濃度, アセトンジカルボン酸濃度及び温度の増大につれ減少した.この過程の活性化エネルギーの値は85kJ/molであり, この誘導期間中に金コロイドの成長が進行することが示唆された.
著者
岩崎 仁志 福沢 英明 佐橋 政司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MR, 磁気記録 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.189, pp.1-7, 1999-07-16
被引用文献数
2

本報告では、フリー層の極薄化による再生出力向上に向けて、高導電層を積層した極薄CoFeフリ一層と積層フェリ型ピン層を用いた新方式の「スピンフィルタースピンバルブ(SFSV)」GMRヘッドを提案する。SFSVにより、極薄フリー層においても、フリー層へのセンス電流磁界低減による安定したバイアスポイントおよび高MR比が可能になるSFSVは3〜5mVpp/μm の高出力ポテンシャルを有し、20〜40Gbpsi に向けてのアドパンストGMRヘッドの有力候補である。
著者
岩崎 仁 萩原 博光 坂東 忠司 安田 忠典 中瀬 喜陽 土永 浩史 土永 知子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

驚異的な「博物学的知識」が南方熊楠の第一の特徴であるが、一方で彼は日本の先駆的自然保護活動家として評価されている。本研究によって、彼の自然保護活動は、熊野地方を対象とした緻密な自然生態系調査、特に1900~1904 年の那智における植物標本採集を中心としたフィールド調査を絶対的な基礎としていることが明らかとなった。さらに、この時期の植物・生態学的な研究活動が、後に形成される熊楠の思考体系全体、民俗学や宗教学的側面にまで深く影響していることがわかった。