著者
平田 雅之 柳澤 琢史 松下 光次郎 Shayne Morris 神谷 之康 鈴木 隆文 吉田 毅 佐藤 文博 齋藤 洋一 貴島 晴彦 後藤 哲 影山 悠 川人 光男 吉峰 俊樹
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.541-549, 2012-07-20

ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)は脳信号から運動意図・内容を読み取って外部機器を制御する技術である.われわれは脳表電極を用いたBMIにより,筋萎縮性側索硬化症等の重症身体障害者に対する機能再建を目指して研究開発を行っている.これまでにγ帯域活動を用いた連続的な解読制御手法により,ロボットアームのリアルタイム制御システムを開発し,脳表電極留置患者による物体の把握・把握解除に成功した.感染リスク回避のためにはワイヤレス体内埋込化が必須であり,ワイヤレス埋込装置のプロトタイプを開発した.今後は,重症の筋萎縮性側索硬化症を対象として,有線・ワイヤレス埋込の2段階での臨床試験を経て実用化を目指す.
著者
小池 康晴 川人 光男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.193-203, 1994-01-25
被引用文献数
19

従来人腕のモデルとして,関節トルクだけを考慮したモデルがよく用いられてきたが,実際は筋肉の発生する張力により関節トルクが生じる.筋肉が関節トルクを生じて運動が起きるモデルを構築するためには,筋肉の非線型な性質(長さ-張力曲線,短縮速度-張力曲線)や,腕のキネマティクス・ダイナミックスなどを考慮に入れなければならない.本論文では,これらの性質を考慮に入れて表面筋電信号から関節角加速度を推定する神経回路モデルを学習により獲得した結果とそのモデルをリカレント接続することにより平面内運動軌道を生成した結果について報告する.特に異なる運動では,運動指令の生成のされ方,筋肉の使われ方が異なるという仮説にのっとりモジュラ学習を取り入れた.
著者
川人 光男 銅谷 賢治 春野 雅彦
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.24, no.38, pp.57-64, 2000-06-22

言語などのヒトの高次認知機能を神経科学の研究対象とするためには、サルなどの動物実験で得られた神経科学のミクロなレベルの知識を、計算理論を媒介として、ヒトを対象にした脳活動の計測データや、言語学などの研究と統合する必要がある。このための新しい計算理論とそれを支持するデータを紹介する。我々の提唱するアプローチの対極となる、Chomskyが構築した生成文法研究で大前提とされる仮定に対する批判を行いながら、研究の全体像を俯瞰する。
著者
今水 寛 宇野 洋二 川人 光男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.932-941, 1996-05-25
被引用文献数
14

計算論的なアプローチでは, 生体が外部座標(視覚の作業座標など)と身体座標(関節角や運動指令など)との間の座標変換に対応する内部モデルを獲得し, 速く正確な運動制御を可能にしていると考えられている. 本研究では身体座標を含む座標変換の内部モデルが適応的に変化するかどうかを調べるため, 位置計測装置とCRT画面を用いて, 肘と肩の関節角をそれぞれ0.5倍, 1.25倍するように視覚環境を変換した条件下で, 被験者に繰り返し到達運動の訓練を行わせた. 到達運動の正確さは次第に向上し, 学習が起きていたことを示していた. 更に, 実際に使っている腕とは反対側の腕の関節角変換を学習させたところ, 実際に使っている腕の関節角変換よりも難しかった. また, 実際に使っている腕の関節角変換を両腕で交互に学習するときには, 学習効果の両手間転移があることがわかった. 以上の結果は, 被験者が上記のような変換を身体座標での線形変換として学習していたこと, 中枢神経には身体座標を含む座標変換の内部モデルが存在し, 外部環境や筋骨格系の変化に応じて, 比較的短時間で適応的に変化することを示唆している.
著者
本郷 節之 乾 敏郎 川人 光男
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.14, no.54, pp.1-6, 1990-10-23
被引用文献数
3

Illusions sometimes give us the keys to understand the mechanisms of the visual information processing. But, the mechanisms of the brightness illusions, for example the Mach band of the Craik-O'Brien effect, are not clear yet. In this paper, the role of the filling-in process on the brightness perception is explained. Its computational theory is discussed. And a neural network model of the filling-in process on the brightness perception is constructed based on the computational theory. Some properties of the Mach band and the Craik-O'Brien effect are simulated with the model, and its behavior is similar to some psychological experiment results.
著者
川人 光男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.123-130, 2008-02-01
被引用文献数
9

最近20年間に脳科学は著しく進展し,脳活動を非侵襲的に計測する新手法の開発,分子生物学の実験手法の導入,計算理論の発展などの進歩により,基礎科学として新しい様相を呈するにとどまらず,コミュニケーション技術,経済活動,先端医療などに大きく貢献する可能性が示された.一般の人々の普段の生活に,脳科学が大きな影響を与える応用科学としての側面が顕著になったといえる.本稿では,筆者らが提案している脳と情報ネットワークを直接つなぐ新しいインタフェース:ブレイン・ネットワークインタフェースについて解説する.
著者
琴坂 信哉 柴田 智広 川人 光男
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.204-208, 2000

近年の脳神経系研究の進歩により,様々な脳神経系の持つ機能や役割が明らかになりつつある.しかしながら,単に一つの神経や器官の働きの解明を積み重ねるだけでは,その機能の全貌が把握できるわけではないことも理解されてきている.脳神経系の持つ学習や言語能力といった高次脳機能の仕組みを理解するためには,計算論的な立場からの研究を欠くことができない.著者らのプロジェクトでは,この考え方に基づき,モデルに基づく神経生理学的側面からの研究,非侵襲脳活動計測に基づく学習メカニズムの研究などと共に,ヒューマノイドロボットの開発,および運動学習や運動生成に関する研究への応用を行っている.本プロジェクトで開発したヒューマノイドロボットの紹介と,最新の研究トピックスに関して紹介する.