- 著者
-
天野 雅男
魚住 超
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1996
平成8-10年の三年間にわたり,漁船,イルカウオッチング船の協力で,タッパナガの回遊を知る目的で目撃情報を収集した.その結果,7,8月に三陸沖に現れ,9,10月には北海道南岸まで分布を広げるが,その後南下し,1から4月ごろまで三陸沖から姿を消すことが判明した.毎年,7月から9月に三陸沖,室蘭沖でタッパナガ群の直接観察調査を行った.行動調査では,タッパナガは日周的な行動パターンを示さず,一つの行動パターンが長時間連続する傾向が明らかとなった.個体識別用の写真は,現在解析中であるが,予備的な解析から,群れ間でオトナオスの割合に5-12%と変動があり,オトナオスが群れ間を移動している可能性が示唆された.また,子連れのメスの割合は15-21%であり,従来の報告より高いことが見いだされた.吸盤タグによる潜水行動の調査では,6時間にわたる潜水データが得られ,コビレゴンドウの潜水行動を初めて明らかとすることができた.装着個体は,日中は浅い潜水を行っていたが,日没後,100mを越える潜水を繰り返していた.多くの潜水は200秒以下に保たれており,また,深度と持続時間の関係が200秒付近を境に変化することから,代謝に関係するなんらかの制限がこのあたりに存在すると考えられる.潜水プロファイルは二つのパターンに分かれることが明らかになり,タッパナガが異なった潜水パターンを使い分けていることが示された.鳴音調査では,同じグループで同じ音(コール)が頻繁に聞かれる一方,群れ間では同じコールが聞かれないことから,個体または群れの識別機能を持った音声の存在が示唆された.