著者
斎藤 真
出版者
中部大学現代教育学部
雑誌
現代教育学部紀要 (ISSN:18833802)
巻号頁・発行日
no.1, pp.55-66, 2009-03

朝鮮民主主義人民共和国の幼児教育・初等教育についての日本国内の研究は非常に少ない。限られた研究者しか取り組むことができない韓国と環境は異なるにもかかわらず、非常に乏しい状況であり、ここに研究の意義がある。共和国の特徴は幼稚園1年間を含む11か年にわたる無償義務教育である。首領と党への絶対的服従のなか、全体主義的な活動場面において幼児期から徹底的に共産主義建設の成員として扱われる。ゆえに、国家のねらいに沿う有能な人間を育てる一方で、自由な発想を持つ人間を育てることは難しいのではないか。音楽活動では政治的指導者を誉め称える歌を通じながらも音楽的歌唱能力を培っている。西洋音楽にも通じる和音の聴取能力育成や、革命の象徴である赤い星を用いた子どもへの賞賛方法がとられるなど、政治と音楽教育がきわめて密接な関係であることが明らかとなった。うたと踊りを生活に位置づけ、相互の生活化を図る画期的な日課も設定されている。映像実況資料分析からは、党と指導者を賞賛する内容がほぼすべてを占める実態がわかった。民族楽器と西洋楽器の双方を一緒に用いることは国の方針であり、すでに幼児期音楽教育から行われていることが実証された。今後はピアノやソルフェージュ指導について、テキストをもとに研究にあたりたい。
著者
津止 正敏 斎藤 真緒
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の焦点はケアとコミュニティである。介護者を中核として組織されるボランタリーなアソシエーション(会や集い等)が、ケア包摂型ともいうべき新たなコミュニティ開発の動力装置として機能するかという極めて実践的なテーマを設定した。近年増加が著しい男性介護者の会や集いにそのフィールドを求めた。活動への参与観察、主宰者へのインタビューや交流等を通して、介護者の会や集いは「ひとりじゃない」という確かな実感に溢れ、同じような立場の人との交流は、介護生活で失いつつあった社会との接点や連帯を修復する「場」となっていることが確認された。
著者
大寺 真史 吉田 直史 佐久間 秀明 佐藤 博志 斎藤 真一 佐藤 弘一 手代木 昌宏 齋藤 弘文 半沢 伸治
出版者
福島県農業総合センター
雑誌
福島県農業総合センター研究報告 (ISSN:18825613)
巻号頁・発行日
no.3, pp.29-45, 2011-03

(1)2009年に「あぶくまもち」として品種登録出願され、福島県で糯米品種として奨励品種(特定品種)に採用された。(2)1993年に福島県農業試験場において、「ふ系172号」を母、「奥羽糯347号」を父として交配された。F1~F3世代は温室で集団養成、F4世代では個体選抜、F5世代以降は系統育種法により選抜および固定が図られた。(3)「あぶくまもち」の特性は以下のとおりである。A 出穂期、成熟期ともに「ヒメノモチ」よりも2日前後早く、「こがねもち」よりは10日程度早い。福島県の熟期区分では'中生早'に属する。B 草型は'中稈・穂重型'で、耐倒伏性は「こがねもち」よりも強く、「ヒメノモチ」並の'やや弱'である。C いもち病真性抵抗性遺伝子型は'Pia, k'と推定され、圃場抵抗性は葉いもち、穂いもちともに「こがねもち」よりも強く、「ヒメノモチ」並の'強'と判定された。D 障害型耐冷性は'極強'で、「ヒメノモチ」および「こがねもち」より3ランク強い。E 穂発芽性は'やや難'で、「ヒメノモチ」および「こがねもち」より3ランク優る。F 収量性は「ヒメノモチ」並で、粒大はやや小さい。品質に関して、青未熟粒がやや目立つが、形質や色沢、白度等を加味すると、総合的に「ヒメノモチ」および「こがねもち」と同等である。G 餅つき後の硬化が「ヒメノモチ」よりも早く、切り餅および丸め餅に対する加工適性に優れる。H 食味は丸め餅でコシが強く、伸びは悪いが、総合的には「ヒメノモチ」並である。また、おこわでは「ヒメノモチ」を上回る評価である。(4)栽培普及地帯は県内の阿武隈山間地域である。(5)耐倒伏性がやや弱く、青未熟粒により品質が低下する場合があるため、多肥栽培は避け、適期刈取りに留意する。
著者
大平 肇子 町浦 美智子 斎藤 真 村本 淳子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.497-504, 2013-01
参考文献数
31

月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)は多くの女性が経験し,女性のquality of Lifeを低下させている。PMS症状はストレスと関連するため, PMS症状の緩和にはストレス反応を和らげる方法の1つであるリラクセーション法が有効であると考えられる。本研究の目的は, PMS症状を有する女性(以下, PMSの女性とする)に対する呼吸法のリラクセーション効果を明らかにすることである。20〜38歳のPMSの女性(呼吸群20人,対照群20人)を対象に,呼吸法の実施前後に生理学的および心理学的指標を用いリラクセーション効果を測定した。なお,測定は1月経周期(約1ヵ月間)の呼吸法の練習期間を経た後に行った。その結果,呼吸法実施後は,実施前に比べ副交感神経活動の指標であるHFが有意に増加し(P=0.006),ストレス指標である唾液コルチゾールは有意に低下した(P=0.010)。気分状態を示すMOODの「緊張と興奮」「爽快感」「疲労感」「抑うつ感」「不安感」では全因子において有意な変化がみられた(P=0.000)。とくに呼吸群の「爽快感」は対照群と比較して有意に増加した(P=0.036)。以上の結果からPMSの女性に対して呼吸法は,リラクセーション効果をもたらすことが明らかとなった。
著者
津止 正敏 斎藤 真緒
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は近隣コミュニティとその動力を焦点化している。従来の堅固で安定的なコミュニティ開発の中核的動力は、階層化を伴いつつ不安定で流動化という変容過程にある。コミュニティ開発を担うボランタリーアソシエーションもNPO等新たな主体も影響力を強めている。開発主体の変容は、「エリア・テーマ・クラス」の三位一体型コミュニティ・タイプから、「エリア」「テーマ」「クラス」それぞれに分離独立あるいはクロスオーバーする複雑なコミュニティ・タイプを不可避としている。
著者
鈴木 豊 杉山 学 斎藤 真哉 會田 一雄 隅田 一豊 筆谷 勇
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

国・地方自治体及び国・公営機関に対するアカウンタビリティの履行要求がわが国においても急速に高まっている。その理由は、税金の使途に対する国民、納税者の不満である。国・地方自治体は、租税収入及び公金収入そしてこれらの支出及び使途について法規準拠性のみならず近年では行政成果又は政策評価についてそのアカウンタビリティの履行を積極的に諸外国では開示し、監査を受けている。開示の基準が公会計基準であり、監査の基準が公監査基準である。公監査の内政府、自治体に対するものが政府監査基準である。本研究は、政府監査の構造とあるべき政府監査基準についてわが国及び諸外国の制度を研究し、わが国で今後設定されるべき基準を構築すべく検討したものである。第一年度は、各委員が分担して諸外国の制度と基準を研究した。第二年度は、これらをもとに総合的に論点をまとめわが国には存在しない、一般に認められた政府監査基準を構築するための研究を行った。これらにより下記の知見が得られこれを第一部「政府監査基準の構造と体系」にまとめ、第二部「政府・自治体外部監査の諸制度と基準」にまとめ最終報告とし、平成17年5月に書物として公刊した。第一部では、政府監査の基礎構造として特に、パブリックアカウンタビリティ、政府監査目的の類型化、政府監査人の独立性、政府監査公準、情報の保障、法律的、会計的、社会科学的、経営的アプローチを明らかにした。ついでこれら基礎概念をもとに政府監査の(1)一般基準、(2)財務監査基準、ここではリスクアプローチ、内部統制、(3)準拠性監査基準、ここでは、合規性、合法性の監査基準、(4)業績監査基準では、3E監査、VFM監査、業績(行政監査)について検討し、最後にあるべき政府監査基準の体系を提示した。第二部は、諸外国の制度と基準について、その特徴とわが国への導入の論点を包括的に研究したものである。