著者
早川 洋行
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.28-40, 2015 (Released:2020-03-09)

今日、実証データを示すことは、学問の世界のみならず世間一般でも重要視されている。しかし、実証すること自体が価値を帯びたり、データが捏造される事件も起きている。本稿はそうした現状を踏まえて、社会学史における実証研究に関する議論を整理し、社会学研究(社会学者)と「実証すること」の関係について考察したものである。 コントは、社会学は形而上学的段階から実証的段階に進化すべきだと考えていた。その際、重視されるのは何より「観察」だった。J. S. ミルはコントの主張に対して、概念が客観的世界から遊離してしまう点と、眼に見えない心理的なものの観察方法が示されていない点を批判した。またドイツ実証主義論争において、アドルノは、内容に対する方法の優位、方法の多様性による社会の全体性の解体、イデオロギー化を指摘するとともに、哲学の復権を主張し、一方、ポパーは、主観による観察の構築を指摘して、批判的合理主義を主張した。 以上4人の議論を見田宗介が用いた言葉を再定義して整理すれば、「引出されたデータ」に固執する問題、「引出されたデータ」「見出されたデータ」「未知のデータ」の関係の問題、「引出されたデータ」の恣意性の問題に整理できる。結論として、社会学者は「見出されたデータ」の世界に身を置きつつ、「引出されたデータ」と「未知のデータ」に関心を保ち続けることが大切であると主張する。
著者
宮本 亮祐 岡田 力 山根 明典 森 和也 早川 洋平 山田 祐輝 和田 友孝 大月 一弘 岡田 博美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.449, pp.253-258, 2010-02-25
被引用文献数
1

火災・地震などの災害発生時に,大型建造物内より迅速に避難できないため数多くの犠牲者を出す事態がしばしば生じている.本研究は,情報通信技術を用いてこのような問題を解決あるいは軽減することを目的としている.すなわち,GPS付き携帯端末間のアドホック通信により建造物内の人々の位置情報を自動的に交換し,災害発生時の人の動きにより周囲の状況を把握・共有し,リアルタイムな災害発生検知および適切な避難路検索・表示を実現する非常時緊急通信(ERUC)システムの開発を目指す.本稿ではERUCの実現を目指し,災害時に周囲の人々と同じ行動を取ろうとする心理的な同調偏向によるパニック行動の伝搬性を考慮した、正確かつ迅速な災害発生位置推定法を提案する.災害発生検知の正確性や迅速性および災害避難時の有効性をシミュレーションにより検証する.
著者
宗原 弘幸 古屋 康則 早川 洋一 後藤 晃 後藤 晃
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

交尾は、肺呼吸、四足歩行と並んで、ヒトを含む脊椎動物が陸圏に進出する際の前適応である。交尾の進化過程を再現するため、近縁種に交尾種と非交尾種を含んだカジカ上科魚類をモデルとして、雄間の競争、特に精子競争の影響に焦点を当てて、実験的に調査した。行動形質の評価指標として繁殖成功度に注目した。その結果、射出精子量、交尾の順番が、繁殖成功度に影響し、先にたくさんの精子を雌に渡すという行為が交尾の進化動因であることが示唆された