著者
小松原 宏子
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.31-52, 2021-03-31

2014 年、学研の「10 歳までに読みたい世界名作」シリーズ出版において、19 世紀米文学の名作『若草物語』(ルイザ・メイ・オルコット作)の編訳をする機会に恵まれた。Little Women という原題のこの物語は、日本ではA tale of young grass という意味の、『若草物語』というタイトルで翻訳されている。1934 年の矢田津世子の抄訳出版と、キャサリン・ヘップバーン主演のキューカー監督作品である映画(1933 年アメリカ)の公開時に吉屋信子によって選ばれた、と言われるこの邦題について考察し、命名の理由についての仮説を立ててみた。
著者
松原 宏
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.346-359, 2016-12-30 (Released:2017-12-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

2014年9月に「まち・ひと・しごと創生本部」が設けられて以降,地方創生関連の新たな施策が次々に打ち出されてきた.本稿の目的は,そうした政策策定の経緯を明らかにするとともに,地方創生交付金や政府関係機関の移転などの政策を取り上げ,政策内容の特徴と今後の課題を検討することにある.     リーサスを活用し先駆的な事業計画を提案した地方自治体に対して,優先的に地方創生交付金が配分されることになったが,グローバル化と人口減少の下で,地域経済の自立化と国際競争力の強化が,重視されてきている.東京一極集中の是正に関しては,民間企業や国の研究機能の地方移転により,現地の大学や試験研究機関との連携が強まることで,新たな産業や雇用の創出につながることが期待される.     2014年10月には「基本政策検討チーム」が設けられていたが,過去の政策や海外の政策を十分に検証する時間的な余裕がなく,また省庁の連携も十分ではなかった.今後は,地方創生を一過性のブームに終わらせず,地域政策として高めるとともに,体系的に再構築していくことが求められる.
著者
松原 宏
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.219-235, 2006-12-30 (Released:2017-05-19)

1980年代以降,少子高齢化とグローバル化の進展が著しいが,両者は関連しあいながら日本の地域構造に大きな影響を与えてきた.バブル崩壊後の90年代の不況期には,東京一極集中が終わったかにみえたが,近年では「東京再集中」と「都心回帰」が顕著で,東日本と西日本との地域経済格差も顕在化してきている.少子高齢化問題は,地域的差異を伴って今後深刻化していくと考えられる.大都市圏では,都市型高齢者の量的増大と遠隔な郊外での高齢化の進行・住宅地の空洞化が,地方圏では高齢化率などの数値の大きさに問題の深刻さがみられ,中心市街地の空洞化が問題に拍車をかけている.こうした少子高齢化に加え,グローバル化,財政危機の下で,日本の地域政策は転機を迎えている.地域経済の自立や国際競争力の強化が政策課題として重視され,国土形成法や産業クラスター計画などの新たな政策が提起されているが,共通するのは,官民協働や産学官連携など政策主体の幅を拡げるとともに,政策の地域スケールとして地方ブロックを重視してきている点である.広域化の一方で,日常生活圏においては,「互助・共助」を強調した「コミュニティ」の役割が重視されてきている.
著者
松原 宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.294, 2020 (Released:2020-03-30)

本発表は、2019年の台風15号と19号による被害の特徴を指摘するとともに、国土政策や産業立地政策との関係を考察しようとするものである。台風15号の被害は、千葉県を中心に、停電が長く続いたが、これには森林の荒廃が関係している。台風19号の被害は、広域にわたる大河川の氾濫を特徴としており、これには戦後の国土政策の歴史が関わっている。また、郡山の工業団地の水没には、テクノポリス政策の進め方と関わっているように思われる。今後の国土政策を考える上では、災害に備えることを重視する必要がある。
著者
鎌倉 夏来 松原 宏
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.118-137, 2012-06-30 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
1

本稿の目的は,多国籍企業による海外研究所の立地とその地域的影響に関する研究成果を整理し,グローバル化の下での研究開発機能の経済地理学研究の方法と課題を明らかにすることにある.従来の研究では,海外研究所が基礎研究を行うのか,現地市場向けの製品開発を行うのか,子会社化しているのか否か,といった機能や組織の違いによるR&D立地の差異,国のイノベーションシステムとの関係が主に扱われてきた,しかしながら,多国籍企業は,現地市場に対応する開発拠点のみならず,ローカルな知識を吸収し,それらをグローバルに結合する研究拠点を展開してきた.また先進国から新興国へと研究開発拠点を拡大するとともに,コストを節約しながら研究開発人材の活用を図ってきている.今後の研究課題としては,国内と海外の研究所との国際分業関係の変化を把握するとともに,知識のフローや研究開発人材の育成と定着にとって,研究開発機能の地理的集積が果たす役割を明らかにしていくことがあげられる.
著者
松原 宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.33-36, 2014 (Released:2014-11-29)
参考文献数
18
被引用文献数
1
著者
遠藤 泰生 中野 勝郎 増井 志津代 荒木 純子 松原 宏之 橋川 健竜 肥後本 芳男 佐々木 弘通 森 丈夫 中野 由美子 久田 由佳子 金井 光太朗 CHAPLIN joyce CAPOZZOLA christopher GOODMAN david JAFFEE david HALL david
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

「公民的要素」「政治的要素」「社会的要素」他の要素に市民権を分別しその成長を直線的に理解することに西欧の市民社会理解は特徴付けられる。しかし、19世紀前半のアメリカ合衆国における市民編成原理の歴史を理解するには、そのような枠組みは図式的すぎる。19世紀前半の合衆国における市民編成原理の追求は、領土の拡大と不断の移民の受け入れ、消費革命の浸透、奴隷制度の是非をめぐる論争などの問題に直面しながら行われた。本研究ではその歴史を、手稿請願、読書習慣、教会説教、大西洋世界における図像リテラシー他を媒体とする非公式の政治行為に携わる市民をも包摂する、巨視的視野から検討する。
著者
加藤 千香子 橋本 順光 松原 宏之 小玉 亮子
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、まず世紀転換期における特徴的な国民規範形成のプロセスの検証がなされた。日本における「青年」の構築と組織化、アメリカでの性にかかわる問題、ドイツにおける「少子化」問題、イギリスでの黄禍論や「武士道」概念といった焦点を浮かび上がらせ、それらが同時代の世界との緊密な関係のうえに登場したことが検証された。他方、国民規範が企図した社会秩序の安定化については、必ずしも果たされたわけではないことも明らかにされた。

1 0 0 0 OA 科学教室

著者
松原宏遠 著
出版者
春陽堂書店
巻号頁・発行日
1942

1 0 0 0 立地論入門

著者
松原宏編著
出版者
古今書院
巻号頁・発行日
2002
著者
松原 宏之
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1930年代に成立するとされるアメリカ型福祉国家の起源を探るには、国内史だけでなく、網の目をなすトランス・ナショナルな人と情報の流通を1900年代から1910年代に遡って視野に入れねばならない。
著者
遠藤 泰生 荒木 純子 増井 志津代 中野 勝郎 松原 宏之 平井 康大 山田 史郎 佐々木 弘通 田辺 千景 森 丈夫 矢口 祐人 高橋 均 橋川 健竜 岡山 裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

領土の拡大と大量移民の流入を規定条件に建国後の国民構成が多元性を増したアメリカ合衆国においては、社会文化的に様々の背景を持つ新たな国民を公民に束ねる公共規範の必要性が高まり、政治・宗教・経済・ジェンダーなどの植民地時代以来の社会諸規範が、汎用性を高める方向にその内実を変えた。18世紀と19世紀を架橋するそうした新たな視野から、合衆国における市民社会涵養の歴史を研究する必要性が強調されねばならない。