- 著者
-
松原 宏
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.4, pp.219-235, 2006-12-30 (Released:2017-05-19)
1980年代以降,少子高齢化とグローバル化の進展が著しいが,両者は関連しあいながら日本の地域構造に大きな影響を与えてきた.バブル崩壊後の90年代の不況期には,東京一極集中が終わったかにみえたが,近年では「東京再集中」と「都心回帰」が顕著で,東日本と西日本との地域経済格差も顕在化してきている.少子高齢化問題は,地域的差異を伴って今後深刻化していくと考えられる.大都市圏では,都市型高齢者の量的増大と遠隔な郊外での高齢化の進行・住宅地の空洞化が,地方圏では高齢化率などの数値の大きさに問題の深刻さがみられ,中心市街地の空洞化が問題に拍車をかけている.こうした少子高齢化に加え,グローバル化,財政危機の下で,日本の地域政策は転機を迎えている.地域経済の自立や国際競争力の強化が政策課題として重視され,国土形成法や産業クラスター計画などの新たな政策が提起されているが,共通するのは,官民協働や産学官連携など政策主体の幅を拡げるとともに,政策の地域スケールとして地方ブロックを重視してきている点である.広域化の一方で,日常生活圏においては,「互助・共助」を強調した「コミュニティ」の役割が重視されてきている.