- 著者
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巣籠 悠輔
大澤 昇平
松尾 豊
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.2, pp.744-752, 2015-02-15
近年,ビジネスの現場において,ソーシャルネットワークサービス(SNS)を人脈構築に利用するケースが増加してきている.特に,人脈形成に特化したSNSはビジネスSNSと呼ばれる.ビジネスSNS上での人脈の構築は,新規顧客開拓や転職先の確保など,何らかの効用を得ることを目的として行われるのが一般的である.ここでいう効用とは,地位や収入などのステータスが高い人と知り合いであることによって,よい取引に一緒に参加する,何か自分の身に不都合が生じた際に助けを求めることができたり,転職などにおいて自分に有利な情報を得ることができたりするなどの経済的なメリットを得られることを指す.人脈の持つ性質として,人脈の維持に時間的な制約が存在することから,1人の人物が持てる人脈の量に限りがあることがあげられる.また,人脈から獲得できる効用は必ずしも一定ではなく,時間軸に沿って変動する.そのため,人脈の構築は期待効用とリスクという2つの尺度に沿って行う必要がある.本研究では,期待効用とリスクの2つの尺度から人脈の最適化を行うことを目的とし,金融工学の理論の1つである現代ポートフォリオ理論をビジネスSNS上の人脈に適用する枠組みについて提案する.また,本研究はビジネスSNSの1つであるWantedlyのデータに対して実験を行い,クラスタ係数の大きな人脈ほど,リスクが高く最適ポートフォリオから乖離していることを示す.