著者
松尾 隆佑
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_356-2_375, 2016 (Released:2019-12-10)
参考文献数
66

集合的自己決定としてのデモクラシーには, 決定の主体たるべきデモスの境界画定という根本的な決定を民主的に行うことの困難が伴う。本稿では, こうした 「境界問題」 を解決する指針として, 決定の影響を被る者によってデモスを構成するべきとする 「被影響利害原理」 が有力であることを論じ, この原理に基づく 「グローバル・ステークホルダー・デモクラシー (GSD) 」 の構想を検討することで, 新たな民主的秩序化の可能性を示す。被影響利害原理の解釈は, 1) 影響の意味, 2) 影響の不確定性, 3) 影響を被る者への発言力の配分, などをめぐって多様でありうるが, GSDは, 諸個人の自律を脅かすような影響を蓋然的にもたらす国家的・非国家的な公共権力を, 等しい発言力を認められたステークホルダー間の熟議により統御すべきとする立場である。被影響利害原理に基づく場合にもデモスの境界をめぐる争いは避けられず, GSDが主権国家秩序に取って代わりうるわけでもないが, その制度化は従来の法的デモスに加えて, 機能的・多元的なデモスを通じた集合的自己決定の回路を新たに整備するものであり, より適正な境界画定を導く構想として規範的に擁護しうる。
著者
木川 大輔 髙橋 宏和 松尾 隆
出版者
首都大学東京大学院経営学研究科経済経営学会
雑誌
経済経営研究 (ISSN:2434690X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-22, 2020-03-20

This paper reviews the theoretical background and recent trends within ecosystem research. Although the concept of an ecosystem is attracting attention these days, its definition remains ambiguous. Thus, we aim to clarify what makes ecosystem so ambiguous, and what makes ecosystem different from other research streams — the real features. The results of our reviews highlights that is based on the fact that ecosystem has developed from two different perspective : “Organizational Approach (given the existence of a central actor (leader) responsible for the overall value proposition of the ecosystem, leaders can connect directly with complemental actor to control and coordinate them directly)” and “Structural Approaches (an agreedupon interorganizational relationship that does not assume the existence of a central actor (leader) which does not necessarily link actors directly)” and that “structural approach” has developed by incorporating various elements. We also derive that the ecosystem concept is characterized by “Multilateral, nongeneral, non-hierarchical complementarity”.
著者
新村 浩一 大塚 雅之 松尾 隆史 杉浦 佑紀
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成29年度大会(高知)学術講演論文集 第1巻 給排水・衛生 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.73-76, 2017 (Released:2018-10-20)

限られた敷地でZEBを目指すためには、太陽光発電の効率を向上させることが有効である。一般的な太陽光パネルは、日射熱によるモジュールの温度上昇が、発電効率を低下させる。そこに、天然の蒸留水である雨水を散水し、冷却することが考えられる。本報では、そのシステム概要を提示し、長期間の実測評価を行った。
著者
松尾 隆佑
出版者
法政大学サステイナビリティ研究所
雑誌
サステイナビリティ研究 = Research on Sustainability : The Academic Journal of the Research Center for Sustainability (ISSN:2185260X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-43, 2017-03-15

和文:原発事故被災地の再生へ向けては、放射性物質により汚染された大量の廃棄物への対処が不可避の課題となる。本稿では、汚染廃棄物処理政策の枠組みを整理し、汚染度の高い廃棄物を長期保管する中間貯蔵施設の建設計画に伴う問題点を分析した上で、広域に拡散した「住民」の合意に基づく対処のために必要な考え方を提示する。福島県内での中間貯蔵施設の建設は予定地住民への追加的加害である上に、廃棄物の早期搬出を求める他地域住民とのあいだで、被災者同士の分断を引き起こしうる。また、中間貯蔵後の県外最終処分の見通しは全く立っておらず、施設の跡地利用をめぐる不透明性も大きい。実施主体である環境省は、汚染濃度の低減により大部分の廃棄物は再生利用が可能になると見込むが、多くの自治体では低濃度の廃棄物であっても住民に配慮して処分できない状況が続いている。広義の加害をもたらす汚染廃棄物を発生させた東京電力の責任が曖昧にされる一方で、中間貯蔵は福島や地権者の問題として矮小化されやすい。だが、将来の県外処分や再生利用、あるいは12都県で発生した指定廃棄物、最終処分場の候補地選定が進む高レベル放射性廃棄物などを考慮すれば、汚染廃棄物への対処が局地的・一時的な問題でないことは明らかである。民主的合意に基づく汚染廃棄物への対処を推進するため、日本学術会議が示す多段階の合意形成プロセスを参考に、広域の協議枠組みを整備する必要がある。
著者
松尾 隆史
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.556-560, 2007-06-15

交通系・金融系など民需サービスで多く使われているFeliCa 技術に関して説明を行う.基本的な技術スタックの説明に加え,縮退鍵を用いた高速認証技術等のFeliCa に特徴的な技術を解説する.また,Type A 規格との融合であるNFC (Near Field Communication)や,マルチサービス利用技術等の最新動向も必要に応じて取り込む.以降でサービス例について触れるため,ここでは技術に関する記述を中心とする.
著者
松尾 隆佑
出版者
法学志林協会
雑誌
法学志林 = Review of law and political sciences (ISSN:03872874)
巻号頁・発行日
vol.117, no.1, pp.136(37)-107(66), 2020-03-24
被引用文献数
1
著者
原田 洋平 森﨑 みなみ 松尾 隆徳 内田 美代子 阿佐美 美保子 井戸 裕彦 洲加本 節子
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.87, 2016 (Released:2016-11-22)

【はじめに】当院では、自閉スペクトラム症児に対し、主に対人意識を高めることを目的に、ESDMを参考にした小集団での療育を実施している。療育の効果判定として、PEP-Ⅲを使用し、療育効果について検討したので報告する。今回の報告について対象者へ口頭で説明を行い了解を得ている。【対象】平成25~27年度に、当院通院中の児の中で、早期集団療育開始時、終了時にPEP-Ⅲによる評価ができた、自閉スペクトラム症児33名(男性21名、女性12名)。開始評価時平均月例29.1±6.66、終了評価時平均月例34.2±4.45。全例とも「呼びかけても反応しない」「視線が合わない」など、行動面や対人面における対応能力の低さから、集団生活場面で困り感がある場合が多かった。【方法】1回約1時間の療育を週1回の頻度で、12~24回実施。1グループ最大3名の児に「児の対人意識、特に保護者への意識を高め、愛着形成を促すこと」「保護者が児の特性を理解し、適切な対応方法を学び、実戦できるようになること」を目標に実施。感覚運動遊び等の自由遊び(スイング、すべり台、ラダー、トンネル等)、挨拶、名前呼び、親子遊び(リトミックやマッサージ等)、保護者への振り返り等を行った。保育士、言語聴覚士、心理士合計6名でグループ活動を行い、作業療法士は、言語聴覚士と交互に、隔週で活動に入り、感覚面や姿勢運動面を中心にアセスメントや保護者へのライブコーチングを行った。アセスメント結果に基づく目標設定やホームエクササイズ等について、スタッフや保護者へアドバイスを行った。【方法】療育開始時と終了時にPEP-Ⅲと養育者レポート評価を実施し、比較検討した。有意差検定はT検定により行い、解析にはFree JSTATversion13.0を使用した。【結果】PEP-Ⅲの10領域のうち「認知/前言語」「表出言語」「理解言語」「微細運動」「粗大運動」「視覚―運動模倣」「感情表出」「対人的相互性」「運動面の特徴」「言語面の特徴」の10領域において効果が得られた(有意差1%未満)。特に「粗大運動」「視覚―運動模倣」では、4ヶ月以上の発達年齢向上が見られた。養育者レポートの3領域のうちでは、「適応行動」においてのみ、有意水準1%で効果が得られた。「気になる行動」「身辺自立」において、特に有意差は見られなかった。【考察】感覚運動遊び等の自由遊びをとおして、心身の発達が促され、空間内でダイナミックに自己の身体を利用した運動の経験をとおして、PEP-Ⅲのスコア向上に繋がった可能性がある。特にスタッフや保護者や他児の遊びを模倣すること、援助要求のやりとりを行うこと、モデルを見ながらの集団活動の経験をとおして、「対人的相互性」のスコア向上に繋がったと思われる。養育者レポートの「適応行動」に有意差が見られた背景としては、「ホームワーク等をとおして、生活場面において養育者の対象児への関わりがなされやすくなった。PEP-Ⅲは視覚的検査課題が多く盛り込まれており、視覚課題での効果判定がしやすい反面、言語課題等での効果判定がしにくい一面もあると思われ、今回の報告の限界であると考える。【まとめ】主に対人意識を高めることを目的とした小集団での療育によって、PEP-Ⅲのスコアにおいて変化が見られ、有意な効果が見られた。その長期効果については、今後も検討が必要。症例数を増やし、生活場面での変化や長期的なスコアの変化を追跡していくことが必要。【倫理的配慮,説明と同意】今回の報告について対象者へ口頭で説明を行い了解を得ている。