著者
加藤 将 種市 幸二 松林 圭二
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.688-688, 2004-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
4
被引用文献数
12 18

A patient died of fulminant hepatitis E in our hospital. To our surprise, a son of the patient was also infected with HEV. By executing a family study, it was revealed that 7 out of 13 relatives of the patient, all of whom had participated in a Yakiniku party, had infection markers for HEV. Our results corroborate previous report suggesting pig liver to be an important infection source in Hokkaido, Japan.
著者
松林 圭
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.171-182, 2019 (Released:2019-12-24)
参考文献数
78
被引用文献数
3

種分化とは、生物の多様性を生み出す原動力であり、“潜在的に交配可能な集団間に、交配を妨げる遺伝的機構(=生殖隔離)が進化すること”と定義できる。生物学的種概念を基礎とするこの種分化の定義は、広く進化生物学において受け入れられてきたが、実際の生物にこの基準を適用することには困難が伴う場合が多い。異なる個体群が、果たして異なる種にあたるのか否かは、進化生物学、生態学のみならず、分類学的にも重要な問題であった。この“種のちがい”を定量化する試みは、遺伝子マーカーを使用するものや形態的相違を判別形質とするものなど、様々な手法が使われてきた。これらはどれも、生殖隔離の存在やその強度を間接的に推定するものである。最近では、野外観察や行動実験を通して生殖隔離を直接測定する手法が普及しており、隔離障壁の進化やメカニズムに関する理解が大きく進んでいる。本総説では、種のちがいを量る方法として生殖隔離の定量化に着目し、近年になってこの分野で得られた知見を紹介する。
著者
松林 圭 藤山 直之
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.561-580, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
159

要旨: 適応と多様化との関係を問う“生態的種分化”は、古典的な仮説でありながらも現代進化生態学において大きな進展を見せている。“異なる環境への適応によって隔離障壁が進化する”というこの仮説は、いわば伝統的な自然選択説の現代版であり、生態学の各分野で蓄積された膨大なデータを、進化生物学分野で培われてきた適応と種分化に関するアイディアによって俯瞰する形で成り立っている。生態的種分化は、進化学や生態学、遺伝学といった複数の分野を横断する仮説であるが、近年のこれらの分野における概念的統合およびゲノミクスとの融合に伴い、理論的に洗練された検証可能な作業仮説として、いまや多様性創出機構の議論に欠かすことのできないものとなってきた。日本の生物多様性の豊かさを考えたとき、潜在的に多くの生態的種分化の事例が潜んでいるものと思われるが、残念ながら日本の生物を対象とした実証研究は、今のところあまり多くない。このような状況を踏まえ、本総説では特に生態学者を対象として、生態的種分化のもっとも基礎的な理論的背景に関して、その定義、要因、地理的条件、特徴的な隔離障壁、分類群による相違を解説し、また、その対立仮説である非生態的種分化との違いを説明する。さらに、現在の生態的種分化研究の理論的枠組みにおける弱点や証拠の薄い部分を指摘し、今後の発展の方向性を議論する。
著者
阿部 敏紀 相川 達也 赤羽 賢浩 新井 雅裕 朝比奈 靖浩 新敷 吉成 茶山 一彰 原田 英治 橋本 直明 堀 亜希子 市田 隆文 池田 広記 石川 晶久 伊藤 敬義 姜 貞憲 狩野 吉康 加藤 秀章 加藤 将 川上 万里 北嶋 直人 北村 庸雄 正木 尚彦 松林 圭二 松田 裕之 松井 淳 道堯 浩二郎 三原 弘 宮地 克彦 宮川 浩 水尾 仁志 持田 智 森山 光彦 西口 修平 岡田 克夫 齋藤 英胤 佐久川 廣 柴田 実 鈴木 一幸 高橋 和明 山田 剛太郎 山本 和秀 山中 太郎 大和 弘明 矢野 公士 三代 俊治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.384-391, 2006-08-25
被引用文献数
18 56

極く最近まで殆んど不明状態にあった我国のE型肝炎の実態を明らかにする目的で,我々は全国から総数254例のE型肝炎ウイルス(HEV)感染例を集め,統計学的・疫学的・ウイルス学的特徴を求めてこれを解析した.その結果,[i]HEV感染は北海道から沖縄まで全国津々浦々に浸透していること;[ii]感染者の多くは中高年(平均年齢約50歳)で,且つ男性優位(男女比約3.5対1)であること;[iii]我国に土着しているHEVはgenotype 3とgenotype 4であるが,後者は主に北海道に偏在していること;[iv]年齢と肝炎重症度との間に相関があること;[v]Genotype 3よりはgenotype 4による感染の方が顕性化率も重症化率も高いこと;[vi]発生時期が無季節性であること;[vii]集積症例全体の約30%は動物由来食感染,8%は輸入感染,2%は輸血を介する感染に帰せしめ得たものの,過半の症例(約60%)に於いては感染経路が不明のままであること;等の知見を得た.<br>
著者
田中 亜美 星 友二 長谷川 隆 坂田 秀勝 古居 保美 後藤 直子 平 力造 松林 圭二 佐竹 正博
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.531-537, 2020-06-25 (Released:2020-07-17)
参考文献数
23
被引用文献数
2 5

E型肝炎ウイルス(HEV)の輸血感染対策を検討するため,輸血後E型肝炎感染患者として,既報(Transfusion 2017)の19例も含め,2018年までに判明した34症例について解析した.原因献血者は全国に分布し,関東甲信越での献血者が半数以上を占めた.原因血液の88.2%(30例)がHEV RNA陽性かつHEV抗体陰性で,多くはHEV感染初期と考えられた.分子系統解析の結果,原因HEV株の遺伝子型は3型が29例(90.6%),4型が3例(9.4%)で,それぞれ異なるクラスターに存在し,多様性に富むことが示された.一方,輸血後感染34症例中少なくとも16例(47.1%)は免疫抑制状態にあった.多くは一過性急性肝炎であったが,確認できた半数(8例)でウイルス血症が6カ月以上持続した.臨床経過中の最大ALT値の中央値は631IU/lで,輸血による最少感染成立HEV RNA量は2.51log IUと推定された.輸血されたウイルス量や遺伝子型と,最大ALT値に相関は認められなかった.HEV RNAスクリーニングの全国導入はHEV輸血感染対策として有効と考えられる.
著者
小林 悠 飯田 樹里 坂田 秀勝 松林 圭二 佐藤 進一郎 生田 克哉 紀野 修一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.740-747, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
24

E型肝炎ウイルス(HEV)はE型肝炎の原因ウイルスであり,本邦では遺伝子型3型と4型が検出されている。北海道では高病原性である4型が他地域よりも高率に検出されるため,われわれは3型と4型を迅速に鑑別可能なマルチプレックスreal-time RT-PCR法(鑑別PCR)を開発した。今回,遺伝子型およびHEV RNA濃度既知の献血者由来検体を対象に,リアルタイムPCR試薬であるQuantiTect Probe RT-PCR Kit(従来試薬)およびReliance One-step Multiplex RT-qPCR Supermix(BIO-RAD,A試薬)を用いて,鑑別PCRにおいて感度などに変化があるかを検討した。各遺伝子型のリニアダイナミックレンジは,3型に対しては同等で,4型に対してはA試薬が従来試薬よりも線形区間が10倍広範囲であった。PCR効率は,3型で109.9% vs. 108.3%,4型で89.7% vs. 97.1%であり,血漿1,000 μL使用時の検出感度は,3型で20 IU/mL vs. 19 IU/mL,4型で66 IU/mL vs. 16 IU/mLであった(いずれも従来試薬vs. A試薬)。A試薬により4型に対するPCR効率および検出感度は向上し,高病原性である4型の感染者において遺伝子型情報をより早期に提供可能であり,その後の治療に有用と考えられた。
著者
田中 亜美 星 友二 長谷川 隆 坂田 秀勝 古居 保美 後藤 直子 平 力造 松林 圭二 佐竹 正博
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.531-537, 2020
被引用文献数
5

<p>E型肝炎ウイルス(HEV)の輸血感染対策を検討するため,輸血後E型肝炎感染患者として,既報(Transfusion 2017)の19例も含め,2018年までに判明した34症例について解析した.</p><p>原因献血者は全国に分布し,関東甲信越での献血者が半数以上を占めた.原因血液の88.2%(30例)がHEV RNA陽性かつHEV抗体陰性で,多くはHEV感染初期と考えられた.分子系統解析の結果,原因HEV株の遺伝子型は3型が29例(90.6%),4型が3例(9.4%)で,それぞれ異なるクラスターに存在し,多様性に富むことが示された.</p><p>一方,輸血後感染34症例中少なくとも16例(47.1%)は免疫抑制状態にあった.多くは一過性急性肝炎であったが,確認できた半数(8例)でウイルス血症が6カ月以上持続した.臨床経過中の最大ALT値の中央値は631IU/<i>l</i>で,輸血による最少感染成立HEV RNA量は2.51log IUと推定された.輸血されたウイルス量や遺伝子型と,最大ALT値に相関は認められなかった.</p><p>HEV RNAスクリーニングの全国導入はHEV輸血感染対策として有効と考えられる.</p>