- 著者
-
松浦 博一
内藤 篤
- 出版者
- 日本応用動物昆虫学会
- 雑誌
- 日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.1, pp.45-48, 1991-02-25 (Released:2009-02-12)
- 参考文献数
- 7
- 被引用文献数
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ハスモンヨトウの中∼老齢幼虫と蛹を0°C以下に冷却し,虫体凍結温度と低温致死温度を調査した。1) 過冷却点は幼虫では-8°C前後で,齢期による顕著な差違はなかった。蛹は過冷却点が-16°C前後のグループと-9°C前後のグループに分かれた。後者は前者より蛹齢が5∼6日若かった。2) 冷却時間の長さと幼虫の虫体凍結の関係については,0°Cでは48時間でも凍結しなかったが,-5°Cでは36時間で,-10°Cではわずか2時間で全個体が凍結した。凍結した個体はすべて死亡し,耐凍性はみられなかった。3) 冷却時間の長さが蛹化に及ぼす影響については,-5°Cの場合,3時間では蛹化に異常はみられなかったが,24時間では半数が,36時間では全個体が蛹化できずに死亡した。-10°Cの場合,2時間の冷却で全個体が蛹化できずに死亡した。-5°Cは本種の生存を左右する重要な低温であった。4) 蛹は幼虫に比べて凍結しがたく,-5°Cに48時間さらしても8割以上の個体が凍結しなかった。しかし,これらの個体は加温飼育の途中ですべて死亡し,回復不能な低温障害を被った。5) 湿った土や湿らせた濾紙上に置いた幼虫は,低温冷却に伴う植氷により,風乾土や乾いた濾紙上に置いた幼虫に比べて虫体凍結する個体が多かった。