著者
藤井 彩恵 内山 彰 梅津 高朗 山口 弘純 東野 輝夫
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.3601-3611, 2008-10-15

本論文では,正確な位置情報を発信する固定ノード(ランドマーク)や他の移動ノードとの遭遇情報を収集し,それらを用いて移動ノードの軌跡をオフライン(非リアルタイム)で推定する手法を提案する.提案手法では,ランドマーク間を最も直線に近い軌跡で移動したと考えられるノードの移動軌跡を推定し,その移動軌跡を他のノードの軌跡の推定に用いるという処理を繰り返す.さらに,シミュレーテッド・アニーリング(SA)を用いて,全移動端末の軌跡を一括して修正することにより,移動軌跡の精度を向上させる.シミュレーション結果より現実的な環境下で推定誤差が最大無線到達距離の40%程度に抑えられることを確認した.In this paper, we design and implement an algorithm to estimate the movement of wireless terminals. The proposed method relies on the history of ad hoc wireless communication between those terminals and the landmark stations to track the movement of each terminal. The principle of the algorithm design lies in iterative refinement of their positions so that they finally settle in appropriate positions that satisfy the constraints derived from the given communication history. We have evaluated the performance of our algorithm by simulations and confirmed that the average position estimation error was less than 40% of the wireless range with realistic settings.
著者
谷 清隆 梅津 高朗
雑誌
研究報告高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS) (ISSN:21888965)
巻号頁・発行日
vol.2017-ITS-68, no.14, pp.1-9, 2017-02-21

滋賀県琵琶湖では戦後の経済発展に伴い,様々な環境問題にさらされており,近年では外来水草の大繁茂が問題視されている.今研究では人工衛星 LANDSAT の衛星画像を利用して,水草が新たに繁殖している場所を事前に調査員が知ることで巡回 ・ 確認作業を簡略化することを目指す.衛星画像としてアメリカの人工衛星である LNADSAT8 のデータを利用し,衛星画像を加工し水草の濃い緑色という特徴を抽出する手法の検討を行った.検討作業は OSS の GIS ソフトである GRASS GIS を用い,様々なパラメータを試して実現可能性を探った.はじめに可視光線による人間の目でみる画像に近い画像を生成する手法であるトゥルーカラー合成画像と事前に用意した琵琶湖南湖で繁茂しているオオバナミズキンバイを撮影した GPS 情報付きの写真データ 1179 枚で琵琶湖南湖に繁茂しているオオバナミズキンバイの位置を確認した.次に,実際の色とはかけ離れた色合いで表現した画像で,赤色部分に緑葉素などを効果的に抽出できるフォールスカラー合成画像を生成し,水草の特徴である濃い緑色を抽出しようとしたが,琵琶湖の水の色と水草の色が近いため特徴の抽出が難しかった.しかし,LANDSAT8 のバンド 5 に RGB の真ん中で水草の色である緑色を細かく分類することができる,EU でコカインの土地被覆を調べる際に用いられるカラーマップ (Corine) を用いることで,水草の濃い緑色を抽出し,琵琶湖の水の色と分割することができた.これを応用し,フォールスカラー合成画像生成と同様に実際の色彩とは違うが,水草を青色で着色し,その他の場所は緑色に着色することで,より水草の位置を判別しやすくなる新手法の画像処理方法を開発した.
著者
谷村 亮介 廣森 聡仁 梅津 高朗 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム(MBL) (ISSN:21888817)
巻号頁・発行日
vol.2015-MBL-75, no.32, pp.1-8, 2015-05-21

冬季に多量の積雪がみられる積雪都市においては,降積雪が交通流に大きな影響を及ぼしている.路面上に雪が堆積することにより,自動車が道路を走行しにくくなるだけでなく,堆積した雪が道路脇に積み上げられることで道路の幅員が狭くなるため,その道路の交通容量は大きく低下する.降積雪が道路交通に与える影響の把握は,積雪都市における交通計画管理上重要な課題である.本研究では,世界有数の積雪都市である札幌市において,ブローブカーデータから得られる道路交通情報,及び降雪量や積雪量などの気象データを収集し,これらのデータを重回帰分析によって分析することで,気象条件の変化に伴う道路交通速度の変動を推定するモデル式を作成する手法を提案する.札幌市内の実道路上のプローブカーデータを用いて提案手法によるモデル構築を行った結果,重相関係数が 0.844 の重回帰式を作成でき,雪道の交通速度の低下は気象データによってある程度説明可能であることを示した.また,複数の路線を対象にしたモデル構築の結果から,ある路線では積雪量以外にも前日最高気温が速度低下に影響を与えていたのに対し,別の路線では前日日照時間が速度低下要因となることなどがわかった.
著者
東野 輝夫 梅津 高朗 安本 慶一 内山 彰 山口 弘純 廣森 聡仁
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

今年度は次のような研究を実施した。(1)屋内空間における高精度トラッキング技術と都市街区や公共交通機関におけるトラッキング・状況理解技術の開発を行った。特に、駅構内(大阪駅など)や列車内の混雑度や乗客の行動を複数人のスマートフォンを用いて高精度に推定する技術などを開発し、その結果をユビキタス系難関国際会議PerCom2018などで発表した。また、(2)都市街区の移動ノードやデータの偏在性、モビリティの偏向性がもたらす課題とそれに対する堅牢で柔軟なフレームワークの構築手法を考案し、その成果が分散システムに関する難関国際会議IEEE ICDCS2018に採録された。さらに、(3)都市街区に多数配置されたマイクロモジュール間の通信機能や超分散型の時空間情報集約機能(自律的ロードバランス、モビリティの自動把握・調整など)をEdge Computingベースで構築し、DCOSS 2017国際会議やMobile Information Systems誌で発表した。また、災害支援のための包括的プラットフォームに関する成果をSMARTCOMP 2017国際会議での招待講演や分散システムに関する国際会議IEEE ICDCS2017で発表した。現在、(4)複数のマイクロモジュールを対象環境に配置し、十数名のモバイルユーザにより人や車のモビリティ収集実験を行うと共に、大阪大学吹田キャンパスでの実証実験を目指した取り組みを開始した。実証実験では、数十台の固定カメラやLIDAR、ドライブレコーダー、スマートフォンなどを併用した包括的プラットフォームを開発し、携帯電話網が部分的に機能しなくなった場合を想定し、(a) 安否確認メッセージなどの伝達、(b) 写真などの災害関連情報の収集、(c) 各エリアでの人流センシングに基づいた実時間空間情報の把握と可視化、などに必要な要素技術の開発を行っている。
著者
木山 昇 楠田 純子 藤井 彩恵 内山 彰 廣森聡仁 梅津 高朗 中村 嘉隆 大出靖将 田中 裕 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.1916-1929, 2010-09-15
被引用文献数
2

本論文では,大規模事故や災害時に発生する多数の傷病者の生体情報(バイタルサイン)をリアルタイムで一括監視し,現場での救命活動を支援する電子トリアージシステムの設計開発について述べる.本システムでは,IEEE802.15.4および生体センサを備えたセンサノードを傷病者に装着し,それらの間でアドホックネットワークを構築する.これを介して傷病者の生体情報をリアルタイムに収集すると同時に,センサノード間の無線通信情報を基にノードの位置推定を行い,%救命活動従事者医療従事者に対して傷病者の病状と大まかな位置に関する情報を提供することで救命活動を支援する.開発したシステムを大学附属病院で実施されたトリアージ演習などで使用し,システムの有用性を確認するとともに今後の改良に向けた情報収集を行った.In this paper, we consider situations where many persons are simultaneously injured in large accidents and disasters, and propose an advanced electronic triage system called e-Triage for sensing physical condition of those injured persons and collecting the sensed data in IEEE802.15.4-based wireless ad-hoc networks. The e-Triage system presents dynamic change of injured persons' location and physical condition on monitors in real time. We have evaluated our system through a triage training held in a hospital. From the experimental results, we have confirmed the effectiveness of the e-Triage system and obtained feedback from doctors and nurses.
著者
浦部 弘章 塚本 淳 佐藤 和基 梅津 高朗 東野 輝夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.260, pp.13-18, 2005-08-30

災害発生に対して, 被災者の迅速な救助・安否確認が求められる.一方で, 既存の連絡方法はインフラの破壊により利用不可能となる可能性が高く, インフラに依存しない救助支援システムが求められる.そこで本稿では, 災害時において被災者の位置情報を収集・追跡するためのMANETシステムを提案・評価する.提案手法では, 被災者は無線LAN機能などの近距離無線通信機能を有する端末を保持し, それらや自動車に搭載される端末がアドホック通信を用い, 避難所に設置される基地局に被災者情報を収集する.システムの評価は被災者情報の登録数と通信量を対象とし, 車両の導入による影響を比較した上で, システムの有用性を示す.
著者
内山 彰 藤井 彩恵 梅津 高朗 山口 弘純 東野 輝夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.98, pp.25-32, 2007-09-27

本稿では,我々の研究グループが提案している移動端末の位置推定法 UPL を用いたデータ転送プロトコルの検討を行う.UPL では,各移動端末が自身の推定存在範囲を定期的に周辺端末に通知し,その情報を互いに利用することで,位置推定を行う.一方,多くの位置情報ルーティングでも,隣接端末の位置情報を利用するため各端末は定期的に Hello メッセージを送信する.従って,そのような位置情報ルーティングの Hello メッセージに推定存在範囲を付加し,各移動端末に UPL に基づく位置推定を行わせることで,位置情報を低コストで取得しながら効率良くデータ転送を行えるプロトコルを実現できる.位置情報ルーティング GPSR に対して,UPL を適用した場合と,正確な位置情報が取得できる場合との比較を行い,性能がどのように変化するかを調査した.その結果,グリーディ・モードでは正確な位置情報を適用した場合と遜色ない性能が達成でき,ペリミータ・モードでは性能が約 20%低下することが分かった.In this paper, we investigate geographic routing protocols using a localization algorithm called UPL. In UPL, landmarks that provide accurate location information to mobile nodes are assumed. Then using hello messages exchanged by the mobile nodes, they inform each other of their possible areas of presence and localization is done by themselves based on the information. Knowing the fact that in many geographic routing protocols, mobile nodes exchange hello messages in order to collect their neighbors' information, we consider the integration of those geographic routing protocols with UPL to mitigate the cost of acquiring positions on mobile nodes. We have applied UPL to a known geographic routing protocol GPSR and evaluated its performance compared with GPSR where accurate positions were obtained by mobile nodes periodically through simulation. The experimental results have shown that the combination of GPSR and UPL could achieve reasonable performance in the greedy mode while its performance decreases 20% in the perimeter mode.
著者
桐村 昌行 梅津 高朗 山口 弘純 東野 輝夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.25, pp.37-42, 2008-03-07

本稿では,モバイルアドホック通信によって伝播させた車両情報を利用した効率的なリアルタイム信号機制御手法を提案する.提案手法では複数の車両のブロードキャストによって伝播した車両情報に応じてスプリットの配分やサイクル長の調整を行うことを特長としている.また,車両感知器未設置区間における車両状況把握や,前方だけでなく後方や直交方向の信号機に車両情報を伝播することにより交通状況に合った信号制御を実現している.また,従来の信号制御手法と比較し,本手法の有効性を検証する.In this paper, we propose an efficient real-time traffic signal control algorithm using inter-vehicle ad-hoc communication. In our method, each vehicle broadcasts their vehicle information, while the signals calculate the split and cycle time needed for the signal control by using the broadcasted vehicle information which is transmitted by some vehicles. By using our method, we can detect the traffic situation of the area where there is no vehicle detector. Also our method realizes effectual traffic signal control by transmitting the vehicle information forward and backward. In addition, we verify the usefulness of our method compared with conventional technology.