著者
山森 邦夫
出版者
日本水産工学会
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.121-126, 1992 (Released:2011-02-03)
著者
山森 邦夫
出版者
北里大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

フグ毒(TTX)や麻痺性貝毒(STX)は強力な神経毒であるが, ヒトにとっては無味・無臭であるといわれている. 一方カナダ産のニジマスやキョクイワナの味覚器はTTXやSTXに応答し, しかも両毒に対する応答性は両魚種が近縁であるにもかかわらず, かなり異なった. このことは, 魚類が餌料中の毒の存在を味覚によって感知可能であり, しかもその感知能力は魚種によって異なることを示唆している. そこでサケ科の3魚種, ニジマス, イワナ, ヤマメおよび海産魚, クロソイの各味覚器のTTX, STXに対する応答性を調べた. また両毒の魚毒性や両毒を含有する餌料に対するこれらの魚種の摂餌行動を調べ, 味覚との関連性を検討した. 成果は以下の通りである. 1.サケ科3魚種の味覚器はTTXに応答した. TTXに対する応答閾濃度はイワナが最も低く(10^<-7>M), ついでヤマメ, ニジマスの順であった. 上記3魚種はSTXにも応答したが, 各魚種ともTTXの場合に比較して応答は小さく, また応答閾濃度も高かった. 一方, クロソイは5x10^<-4>MのTTXに応答しなかったが, 10^<-〓>M以上のSTXに応答した. 2.サケ科3魚種ともTTX含有餌料を忌避した. 半数が忌避する餌料中のTTX濃度は, 応答閾濃度の約100倍に相当し, イワナで最も低く(10^<-5>M), ついでヤマメ, ニジマスの順であった. 一方, 上記3魚種は, 10^<-4>M以下の濃度のSTXを含む餌料を忌避しなかった. 3.経口投与時の半数致死毒量はTTXの場合は, イワナ, ヤマメでは300MU/20g前後, ニジマスでは300〜600MU/20g以上と異なり, STXの場合は, 3魚種とも150MU/20g以上であったが, 決定まで至らなかった. 4.以上から, 毒に対する味覚応答性は魚種や系統によって異なることが示唆され, また毒に対する味覚や毒に対する抵抗性と忌避行動の生ずる濃度との間に相関性のみられることが示唆された.
著者
山森 邦夫 松居 隆 河原 栄二郎 天野 勝文
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

タイ国ではカブトガニ類の卵巣を食べる習慣があり、これに伴う食中毒死事件がたまに起こる。原因毒はフグ毒(TTX)や麻痺性貝毒(PSP)などの麻痺性毒である。カブトガニ類は原始的な節足動物であり、世界には3属4種が現存している。アメリカカブトガニ、カブトガニ、ミナミカブトガニ、マルオカブトガニである。タイには後2者が生息しているが、食中毒はもっぱらマルオカブトガニによるものであり、ミナミカブトガニによる中毒例はない。そこで本研究ではマルオカブトガニの毒化機構を明らかにする研究の一部として、カブトガニ類のTTXおよびサキシトキシン(STX)に対する抵抗性を調べ、比較検討した。TTX投与時の最小致死量は、ミナミカブトガニ成体では60〜150MU/20g 体重、アメリカカブトガニ幼体では50〜100MU/20g体重のかなり高い抵抗性を示したが、マルオカブトガニ成体では約900MU/20g体重、幼体では3600MU/20g体重以上となり、前2者を大きく上回った。一方、STXに対する抵抗性はマルオカブトガニ幼体およびアメリカカブトガニ幼体のいずれにおいても100〜200MU/20g体重とかなり高いが、差はなかった。TTX結合タンパク質がクサフグの血漿からDEAEセルロース処理、硫酸アンモニウム分画、Sephad exゲル濾過,Sephacryl S-200とCellulofine A-500によるカラムクロマトグラフィーを経て精製された。TSK G-3000SLカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによる最終精製物は単一のタンパク質ピークを示した。そのタンパク質の分子量はSDS-PAGEおよびmass spectrometryで、それぞれ、116,000および96,000と推定された。精製されたタンパク質のアミノ末端側アミノ酸配列はAla-Pro-Ser-Pro-?-?-?-His-?-Leu-The-Lys-Pro-Val-と推定された。
著者
山森 邦夫
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.922-923, 2002-11-15
被引用文献数
2
著者
佐々木 陽 久保田 史 高橋 亨 梅津 芳雄 成田 榮一 森 邦夫
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.316-324, 1997-05-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

硫化水素型合成温泉水 (湯花の抽出溶液) を用い木材を長時間煮沸処理すると, 蒸留水で処理した場合よりも, 重量の減少が大きく, 空隙率の高い木材が得られた. その時の抽出溶液を液体クロマトグラフで分析した結果, 針葉樹ではアラビノース, キシロースが, 広葉樹ではキシロースが確認され, いずれも合成温泉水処理した溶液で顕著に認められた. 抽出された糖類は木材の非晶部分であるヘミセルロースが加水分解されたもので, 合成温泉水処理によりさらに分解が進んだ結果と考えられる. スギの100時間煮沸処理では, ホロセルロースが蒸留水の場合約18%, 温泉水の場合22%減少し, また, リグニンはこれらの処理において, 見かけ上前者で18%, 後者で20%増加していることから, 熱水処理によるリグニンの分解溶出は認められなかった. 合成温泉水処理により, 水溶性の非晶部分が加水分解されるため, 水に対する木材の膨潤性が改善され, 寸法安定に優れた木材が得られることが分かった.
著者
谷本 親伯 岸田 潔 小沼 栄一 森 邦夫
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.44, no.502, pp.862-868, 1995-07-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
8
被引用文献数
3 3

The Great Sphinx-Giza, Egypt was carved out of Middle Eocene limestone formations. The upper part of the statue, including the neck and the head, consists of soft and marly formations (named Maadi Formation). They are highly porous and cavernous showing the evidence of having been greatly affected by water erosion. At present, the Great Sphinx as one of the most important World Heritages is being seriously subjected to aggressive deterioration of limestone members.Since it was not possible to employ any specimen sampled from the immediate site of the Sphinx, it was tried to investigate the process of deterioration of marly limestone in terms of Mokkatam Limestone (called Pyramid Stone) which is considered to be a little older than Maadi Formation. In the present study the process of recrystallization of salt substance on limestone surface and the transportation of salt and water through micro-pores were observed for the period of three months. The electron microscopic scanning was used to illustrate the pore-size, pore distribution and recrystallization of salt. The same test as described in this paper is recommended to be applied to the Maadi Formation for the feasibility study on the preservation of the Great Sphinx.
著者
出口 貴久 近森 邦夫
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2005年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.539-540, 2005-09-15 (Released:2006-04-18)

本研究はチタン系を電解研磨法により鏡面仕上げすることを目的としている。これまでに高低2種類の極間電圧による電解工程と電解を休止して皮膜を除去する工程を持つことを特徴とした方法を開発した。しかしこの方法で使用していたアルコール系電解液は引火性があり、また劇物を含むものであった。今回、現場での取り扱いが容易で安全性に優れる電解液エチレングリコール–塩化ナトリウム溶液でチタンの鏡面電解研磨に成功した。
著者
森 邦夫 高松 成亮 渡辺 明
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.52-60, 1989 (Released:2008-04-16)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

フッ素ゴム加硫物と金属板を一定荷重下で接触させておくと, ゴム層破壊が生じるほど高い固着強度が発生することが明らかとなった. フッ素ゴム分子の金属への吸着による初期の固着は, フッ素原子と金属表面のOH基の間で水素結合が生成した結果であると推測した. 引き続き界面で化学反応が起こり, 両者間に一次結合が生成するためゴム層の破壊が起こるほど強い固着強度が発生した. 界面の反応は加硫時に生成したフッ素ゴム主鎖の不飽和基及び側鎖の活性な官能基と金属表面のOH基の間で起こる反応を主な内容としている. したがって, 固着強度は加硫系の影響を強く受ける. 固着を防止する目的で, ブルーム法と表面処理法によるフッ素ゴム加硫物の表面改質を行った結果, 反応性シリコンと塩化白金酸のアセトン溶液で表面処理する方法が固着防止に特に有効であった. 反応性シリコンは数個のSiH基をもち, これがフッ素ゴム加硫物表面の不飽和基や活性な側鎖と反応し, 生成したシロキサンの薄膜が上記の界面反応を防止するためシリコン処理が固着防止に有効であることが明らかとなった.
著者
山森 邦夫 出口 進 前原 栄世 松居 隆
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1157-1162, 1992 (Released:2008-02-29)
参考文献数
17
被引用文献数
8 14

Lethal effects of tetrodotoxin (TTX) and saxitoxin (STX) on 6 species of nontoxic marine crabs, as well as effects of the toxins on their nerves, were investigated. There was wide variance among species examined for the lethal effect of TTX and STX. The tolerances of nerves are almost compatible to lethal tolerance with the exception of Hemigrapsus sanguineus. This species showed relatively high resistance to TTX, but its nerve was at almost the same level of tolerance as those of other TTX-sensitive crabs. In order to elucidate the mechanism for high TTX-resis-tance in H. sanguineus, nerve tolerance was measured in the presence of its body fluid. The body fluid reduced the effect of TTX on the nerves, while no effect was observed for STX. It is also con-firmed that pre-injection of the body fluid of H. sanguineus into a mouse was effective to some extent in protecting the mouse from TTX attack.
著者
山森 邦夫
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

岩手県越喜来湾には夏〜秋に毒性の高いフグ科魚類稚魚が出現する。そこでフグの毒化原因は天然餌生物中にあると仮定し、無毒の養殖クサフグ稚魚を籠に収容して同湾の海中に吊るし、籠目から入る天然餌生物を同稚魚に摂食させて飼育し、毒化が起こるかどうかを調べた。実験は同湾内の鬼沢漁港と袖の沢沖の2ヶ所で、2001年〜2003年に実施した。体重0.1〜1.6gの稚魚数十尾をプラスチック製魚籠(80×56×37cm)に収容して上記2ヶ所の水面下1mに吊るし、7月頃〜11月頃まで2週間〜1ヶ月間の飼育実験を繰り返した。回収後の供試魚の毒性はマウス試験で調べた。袖の沢沖では3年間、計14回の飼育実験で1回も毒化しなかった。一方、鬼沢漁港では計14回中、年により異なるが8月11日から10月3日までの期間内の5回の飼育実験で毒化した。毒化個体の毒性は、4.0〜76.5MU/gであった。以上から養殖クサフグ稚魚は特定の時期に特定の場所で海中籠飼育することにより毒化することが分かった。上述の海中籠飼育実験で無毒の養殖クサフグ稚魚を毒化させる原因となった餌生物を特定する目的で次ぎの実験を行なった。鬼沢漁港の陸上に養殖クサフグ稚魚飼育水槽2個を設置した。水中ポンプを使用して汲み上げた海水(流量120l/m)を0.335mmおよび0.1mmの2段階のプランクトンネットで濾し、大型および小型のプランクトン部分に分けて濃縮し、それぞれを稚魚飼育水槽に流した。2003年7月から11月まで両水槽に各数十尾の養殖クサフグ稚魚を収容して2週間-1ヶ月間飼育し、飼育終了後の稚魚の毒性を調べた。両水槽中のプランクトンの一部は毎日採集・保存した。大型プランクトン水槽では10月1日-10月15日飼育の9検体中2検体が毒化した。小型プランクトン水槽では8月12日から10月15日までの期間内の4回の飼育実験で25検体中13検体が毒化した。毒性は4.3〜7.3MU/gであった。以上はプランクトン摂食による養殖フグの毒化を示唆する。毒化原因プランクトン種の絞り込みは進行中である。
著者
中川 一郎 中村 佳重郎 田中 寅夫 東 敏博 藤森 邦夫 竹本 修三
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

ジオイドは、地球表面におけるさまざまな測地学的測定の基準面であるばかりでなく、その起伏が地球内部の構造と状態とを反映することから、ジオイドの精密決定は、測地学のみならず、地球物理学においても、きわめて重要で、かつ、基礎的な課題の一つである。本研究は、人工衛星アルチメトリィ・データや海上重力測定データや検潮データに加えて、陸上における重力測定やGPS精密測位および水準測量などのデータを総合し、西南日本におけるジオイドの起伏を精密に決定するとともに、得られたジオイドの起伏と地殻および上部マントルの密度異常との関係を明らかにし、その物理的な意義を解明することを目的として、つぎの研究を実施した。1.西南日本におけるジオイド面の起伏を精密に決定にするためのデータ・ベースとして、重力測定データ、水準測量データ、鉛直線偏差データならびに検潮データなどに加えて、トペックス・ポセイドン衛星のアルチメトリィ・データを収集した。2.近畿地方から九州地方にかけての東西約600kmの範囲内で選定された26地点において、可搬型GPS受信機6台を用いたGPS観測を実施し、これらの地点の楕円体比高を求めるとともに、水準測量によって標高を決定した。その結果、すでに得られている結果とあわせて、西南日本における合計57地点のジオイド比高が決定された。3.鳥取,別府,紀伊半島および西国の各地域におけるGPS観測点において、ラコスト重力計を用いた精密重力測定を実施した。4.気象庁および大学の地震観測データを用いて、西南日本の地震波速度異常の3次元的構造を決定することを試みた。5.ジオイド面ならびに3次元地震波速度構造の空間表示を行なうための面像処理プログラムの開発を行なった。