著者
森田 裕介 中村 彰宏 室田 高志 瀧川 幸伸 長谷川 秀三 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.377-379, 2001-08
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

水位変動をともなう冠水, 湛水条件下が近畿地方に分布するヤナギ属8種の成長および生理特性に与える影響評価を行った。冠水, 湛水条件下では, 下流域を中心に分布するカワヤナギ(Salix gilgiana), オオタチヤナギ(Salix pierotii), タチヤナギ(Salix subfragilis)の成長抑制が小さく, 山地に分布するヤマナギ(Salix sieboldiana)は12時間冠水によって枯死した。このように, 分布が氾濫の多い下流域に近いほど, 冠水, 湛水に対する耐性は大きくなることが明らかになった。
著者
陣門 泰輔 佐藤 治雄 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.397-402, 2000-05-20
被引用文献数
10 5

本研究では森林表土の持つポテンシャルを評価し, その利用法を検討することを目的とした。大阪府茨木市のアベマキ林, モウソウチク林, 千早赤阪村のシイ林, 泉佐野市のコナラ-アオモジ林, 兵庫県西宮市のアカマツ林の森林表土を荒廃地のモデルとした土壌基盤に播きだし, 活性炭素混入, 施肥, 土壌基盤・マサ土との混合, コバノミツバツツジの追加播種などの追加処理を行い, 全木本発芽個体の消長, 高さ・葉張りを追跡調査した。どの森林表土からもアカメガシワなどの先駆木本種の発芽がみられ, 成長を続けた。森林表土播きだしが荒廃地における早期の植生回復に有効であり, 施肥によってより早期の植生回復が望めることがわかった。
著者
那須 將 深町 加津枝 森本 幸裕
出版者
Japanese Institute of Landscape Architecture
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.619-622, 2011
被引用文献数
1

Shinsen are offerings offered at Shinto shrines on the occasion of shrine festivals. We investigated shinsen offerings made at Kyoto's Kamo-wake-ikazuchi-jinja (also known as Kamigamo Shrine) between June 2009 and May 2010. We surveyed all offered items and investigated which biological resources were used, and how and from where they were supplied. We found that totally 2243 items were offered. There were 137 different kinds. 105 kinds of biological resources were used as ingredients. Some of the supply routes for shinsen ingredients were based on ancient customs. The Adogawa region in northern Shiga Prefecture, for example, was a supply area for the shrine based on a system through which the shrine bestowed the region with river fishing rights and rice farming land as a compensation for its supply of ayu fish (Plecoglossus altivelis altivelis) used as items in shinsen offerings. Through shinsen offerings, a great variety of biological resources were used in a sustainable way. We found, however, that some biological resources used in shinsen such as the futabaaoi (Asarum caulescens) are difficult to obtain today.
著者
夏原 由博 三好 文 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.523-526, 2002-03-30
被引用文献数
4 7

開発や保護がカスミサンショウウオの絶滅確率におよぼす影響について,メタ個体群存続可能性分析によるシナリオ分析を行った。調査地は滋賀県南部の面積約200haの孤立した丘陵で,かつては全ての谷が水田であったが,現在では大部分が耕作されていない。1歳到達仔数および上陸後の生存率と移動率を変化させ,土地利用のシナリオを変えてシミュレーションをおこなった。その結果,全面開発された場合,小規模な保護区を設けても絶滅リスクは緩和できないこと,部分開発でも絶滅リスクは増加することが示唆された。また,現状維持でも孤立したパッチには個体群が回復しないこと,耕作放棄の影響は部分開発よりも大きいという結果が得られた。
著者
田端 敬三 橋本 啓史 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.97-102, 2015 (Released:2016-04-19)
参考文献数
43
被引用文献数
1 4

京都下鴨神社の社叢,糺の森全域において2002年と2010年に実施した幹直径10 cm 以上の全樹木対象の毎木調査結果から,アラカシ,シラカシの断面積成長量に対する初期サイズおよび周辺競争個体の影響を検討した。その結果,アラカシ,シラカシのいずれも断面積の初期値と断面積成長量は有意な正の相関を示した。アラカシでは半径6 m,シラカシは半径8 m 範囲内までに位置する競争個体が対象個体の成長に影響していた。アラカシでは初期サイズと周辺の競争個体からの被圧の2要因による成長への影響が強く見られ,これらを説明変数とする成長モデルの説明力は54%であった。一方,シラカシでは41%にとどまり,他の要因の影響も示唆された。
著者
中村 彰宏 小杉 緑子 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.507-518, 2002-02-28
被引用文献数
2 2 2

関西旅客ターミナルビルのアトリウム空間を対象に,アトリウムの構造,トップライトの透過特性,太陽位置,屋外の光量子量の推定値を用いて,快晴日の透過光量子量を算出するモデルを作成した。算出値は,アトリウム内で得られた実測値の日および季節変化を良好に再現した。アトリウム植栽樹木,屋外の植栽樹木,室内に生育する観葉植物の光合成,呼吸速度の実測値と,このモデルによる透過光量子量から,アトリウムへ導入した植物の生育特性評価を行うために,成長量の指標となるCO_2収支を個葉レベルで算出した。またアトリウムの天井高,植栽場所を変化させた場合の透過光量子量およびCO_2収支も算出した。観葉植物のCO_2収支は,植栽場所やアトリウムの構造から受ける影響が少なく,低光量条件下での植栽利用が容易と考えられた。いっぽう,低光量条件下で順化したモッコク,カラタネオガタマでは,CO_2収支の変化が大きいため,アトリウム構造や植栽場所を十分検討してから,緑化に用いる必要があると考えられた。
著者
中村 彰宏 衣笠 斗基子 陣門 泰輔 谷口 伸二 佐藤 治雄 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.79-84, 2002-08-31
被引用文献数
12 15 17

関西地方の18箇所の森林から表土を採取し,撒き出し施工および実験を行った。多くの森林に生育していたコナラ,アベマキの実生出現頻度は小さかったが,ヒサカキの群落および実生出現頻度はともに大きかった。群落での出現頻度の小さかったアカメガシワ,ヌルデなどの実生出現頻度は大きく,平均埋土種子密度も7個/m^2以上と大きく,表土撒き出し緑化によって,これらの先駆種からなる群落形成の可能性が示された。複数のサブプロットの組み合わせで算出した種数,多様度指数-面積曲線によって,異なる面積のプロット間での多様性の比較が可能となった。低密度出現種の多いプロットでは,出現種数は面積の影響を大きく受けるため,種多様性評価を行う場合には大面積の調査が必要であることが明らかとなった。
著者
今西 亜友美 柴田 昌三 今西 純一 寺井 厚海 中西 麻美 境 慎二朗 大澤 直哉 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.641-648, 2008 (Released:2009-11-30)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

ヒノキ林化した都市近郊二次林をアカマツまたは落葉広葉樹主体の林相に転換させることを目的として,母樹を残した小面積 (0.06~0.09 ha) の伐採を行った。3 つの伐採区 (上部,中部,下部) のいずれにおいても伐採後に消失した種はなく,伐採後3 年目には10 種以上の種数の増加が確認された。中でも,落葉広葉樹林の主要構成要素を含むブナクラスの種が上部と中部では6 種,下部では4 種増加し,林相転換に一定の効果が得られたと考えられた。前生稚樹は伐採後にほとんどの個体が枯死し,伐採後の林相には大きく寄与していなかった。散布種子についてはその大部分がヒノキで占められており,風散布種であるヒノキはプロット内に多量の種子を散布することで伐採後の林相に大きな影響を与えると考えられた。また,伐採後3 年目には新たな種の出現がほとんどみられなかったことから,林相が単純なヒノキ林では周囲からの新たな種の供給は少ないと考えられた。伐採面積の最も大きかった上部の伐採区 (0.09 ha) では,相対日射量が60% 以上あり,ヒノキの発芽と生存率が抑制されたと考えられ,アカマツとヒノキの混交する林相への転換が期待された。一方,中部と下部の伐採区では,全実生個体数のうちヒノキが50% 以上を占めており,今後,選択的除去などの人為的な管理が必要であると考えられた。
著者
徐 英大 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.56-60, 1996-08-29
参考文献数
11
被引用文献数
1 4

歴史的に美しい日本庭園のデザイン要素が定量的に把握できれば, 日本庭園のデザインの特質が明らかになり, 日本庭園の再構築の可能性も考えられる。そこで本研究では, 日本の代表的な日本庭園である桂離宮庭園を中心に自然的な形態の把握手法として, フラクタル理論を適用し, 庭園の重要なデザイン要素である池の形と樹木, 庭石, 建物の分布の特性について検討した。その結果, 各デザイン要素にフラクタル性が存在していることが明らかになり, それらをフラクタル次元として定量化することができ, その次元は池の形の定量的な比較や樹木, 建物, 庭石の分布のデザイン特徴を表わすのに有効である可能性が認められた。
著者
青木 達司 柴田 昌三 森本 幸裕
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.447-450, 2011 (Released:2012-09-05)
参考文献数
10

The Katsura Hedge, a bamboo hedge, and its rear stand of Phyllostachys nigra var. Henonis at the Katsura Rikyu (the Katsura Imperial Villa) in Kyoto were investigated. For the hedge, the number of culms was 815, and the mean diameter at breast height (d.b.h.) of these culms was 4.3cm. The mean d.b.h. of culms at its rear stand was 5.0cm in 2004 and 5.1cm in 2005. The culms for the hedge were thinner than those at the rear stand irrespective of the location, perhaps this is because thinner culms are easy to make into the hedge. For the stand, the mean d.b.h. differed according to location, with culms at flat sites and slopes neighboring flat areas thicker than those on slopes not adjacent to flat sites. Different maintenance may be needed according to the location.
著者
中本 学 関岡 裕明 下田 路子 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.585-590, 2002-03-30
参考文献数
33
被引用文献数
15 15

筆者らは,福井県敦賀市中池見の休耕田において,コナギやアゼナなど小型で一年生の水田雑草を保全するための管理手法を検討した。植生調査は,耕起を再開した1997年に開始し,復田を行った2000年まで継続した。耕起を停止した場合には,サンカクイなど特定の多年生草本が著しく増加するため,耕起の継続は不可欠であった。さらに,耕起を継続しても増加する多年生草本を減少させるには,復田が有効であった。このことから,生物の保全を目的とする休耕田の管理手法として,耕起の継続に加えて数年に一度の復田を組み入れるシステムを提案した。
著者
吉田 寛 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.269-277, 2005 (Released:2007-03-12)
参考文献数
37
被引用文献数
2 3

厚層基材吹付工により中国産コマツナギ(Indigofera spp.)と常緑広葉樹(イボタノキ(Ligustrum obtusifolium Sieb. et Zucc.),シャリンバイ(Rhaphiolepis umbellata Makino),ヤブツバキ(Camellia japonica L.),サザンカ(Camellia sasanqua Thunb.))が混生する植物群落を形成した切土法面について,施工後約9年間の追跡調査を行った。その結果,これらが混生する植物群落を早期に形成させることにより,1)発芽・成立した常緑広葉樹は,林冠が中国産コマツナギに鬱閉された場合でも林床植生を形成して法面表層を保護できること,2)中国産コマツナギと常緑広葉樹との競合により,中国産コマツナギの密度と基底面積が低下する傾向が認められ,常緑広葉樹主体の群落への遷移を促す効果が示唆されること,3)林床植生として形成された常緑広葉樹は,イボタノキのような半常緑性の種を除いて,中国産コマツナギの落葉期においても緑量を持続できることから,特に周辺の森林が常緑性の樹木で構成されている場合には景観保全という観点からも有効であることが確認された。こうした改善効果は,今回使用した中国産コマツナギのほか,法面緑化で広く用いられているヤマハギ(Lespedeza bicolor Nakai.)やイタチハギ(Amorpha fruticosa L.)等を使用した場合においても発揮されると考えられ,マメ科低木群落が有していた,林床植生の衰退,単純林化,遷移の停滞,および落葉期の景観保全上の問題等を比較的容易に改善する手段のひとつとして有望と思われる。
著者
藤田 洋輔 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.266-269, 2007-08-31

環境アセスにおけるミティゲーション(自然環境保全措置)において,総量としての自然環境の水準を維持することを目的とした,代償ミティゲーションの制度であるミティゲーション・バンキングは,軽微な自然環境のロスの集積を代償し,開発圧力を利用して戦略的な生態系の保全を目指す社会システムのひとつとしてアメリカで長年の実績があるが,日本では導入が進んでいない。日本ではこの制度について賛否両論があることから,実態を調べるため, 2つのミティゲーション・バンクのケース・スタディを行った。その結果,二次的自然のミティゲーション・バンクや,絶滅危惧種を対象としたコンサベーション・バンク,クレジット計算方法の実態などが明らかとなり,日本においても里地里山の保全など,維持管理を必要とする自然環境の保全にも応用できることを指摘した。
著者
中村 太士 森本 幸裕 夏原 由博 鎌田 磨人 小林 達明 柴田 昌三 遊磨 正秀 庄子 康 森本 淳子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

森林、河川、農地生態系について、物理環境を基盤とした生息場評価手法を確立した。また、それぞれの生態系において、生息場の連結性や歴史的変化、倒木などの生物的遺産を考慮する新たな復元手法を開発し、実験的に成果を得た。また、魚類、昆虫、植物、両生類、鳥類、貝類、哺乳類など様々な指標生物を設定し、モニタリングや実験結果によりその成否を評価する手法を確立した。環境経済学や社会学的立場から、再生事業や利用調整地区の導入に対する地域住民、利用者の考え方を解析し、将来に対する課題を整理した。
著者
関岡 裕明 下田 路子 中本 学 水澤 智 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.491-494, 2000-03-30
被引用文献数
20 23

筆者らは,中池見(福井県敦賀市)の耕作放棄水田において,デンジソウ,ミズアオイ等の希少な水生植物および湿生植物を本来の生育状態で保全する手法を確立するための研究をおこなった。上記の種は,かつて,耕地整備がおこなわれる以前の水田や水路などに広く生育する普通種であったため,保全事例が少なかった。そこで,本研究では上記の種の保全に有効な手法を確立することを目的として保全計画を立案・実施し,モニタリンクをおこなった。本研究により,上記の種の保全には,田起こしや水管理・草刈りなど,生育地における従来の営農作業に準じた維持管理作業の実施が有効であることが明らかになった。