著者
清水 裕子 井上 一由 森松 博史 高橋 徹 山岡 正和 大森 恵美子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヘム代謝の律速酵素であるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)は横紋筋融解症性急性腎傷害に対して保護効果を示すと報告されている。BTB and CNC homology 1 (Bach1)はヘム依存性の転写因子で、HO-1の発現を制御している。今回我々は、横紋筋融解症ラットモデルの急性傷害腎においてHO-1 mRNAとHO-1タンパクが有意に増加し、ヘム合成の律速酵素であるALAS1のmRNAの発現が抑制されることを確認し、さらに横紋筋融解症性急性傷害腎において、細胞内遊離ヘムの増加に伴い核内Bach1タンパクが核外へ移行し、本研究は腎臓のBach1発現の動態をin vivoで初めて明らかにした。
著者
森 恵美 前原 澄子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.22-32, 1991-06-10 (Released:2012-10-29)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

産婦の不安の軽減のために, 分娩準備教育のプログラムの1構成要素であるRelaxationの技法に関して, 自律訓練法を教授することにより, その効果を検証することを目的として研究を行った.自律訓練法習得群(11名), 自律訓練法未習得群(21名), 自律訓練法未訓練群(12名)の3群について,分娩経過に沿って, 状態不安・産痛・血圧・脈拍数・神経筋コントロール力・ラマーズ法評価を測定し, 評価した. その結果, 自律訓練法習得群と他の2群との間には, 分娩第1期の終わりである極期において, 状態不安・産痛の感覚的評価指数・神経筋コントロール力判定結果・ラマーズ法評価得点に, 明らかな差がみられた.陣痛間歇期の血圧・脈拍数においては, 自律訓練法習得群の平均値が他の2群より低かったが, 有意差はなかった.以上により, 産婦の不安の軽減や産痛の緩和のために, 分娩前からRelaxationの技法を教授することにより, 産婦の不安の軽減や産痛の緩和に有効であることが明らかになった.
著者
高橋 徹 清水 裕子 井上 一由 森松 博史 楳田 佳奈 大森 恵美子 赤木 玲子 森田 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.252-256, 2007-10-01
被引用文献数
9

昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.<br>
著者
江守 陽子 前原 澄子 工藤 美子 森 恵美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

母子相互作用において、近年もっとも注目されているのは母子の行動心理学的な作用であろう。見つめあい、タッチング、抱いて揺するなどは効率よく子供の注意を喚起する効果が認められている。こういった相互作用によって母と子がしっかりと結ばれ、また、それによって子供の成長が促進されるのであれば、看護者はできるだけ長く、かつ有効にその機会を持つような援助を考えるべきであろう。本研究では母親が子どもを抱いてあやすという行動に着目し、それが児にどのような影響を及ぼすのかを観察した。その結果は以下の5点に要約できた。1.抱くという刺激は児を泣きやます効果が認められる。2.たて抱きは、刺激直後の児の覚醒状態を急激に下げ、その後、穏やかに下降させる。すなわち、児を泣きやますには即効性があり、敏活な状態にする効果が認められる。3.横抱きは、刺激直後の児の覚醒状態は穏やかに下降し、その後(40〜80秒後)、さらに下降する。4.抱き上げずに布団を掛けるだけでは児の覚醒レベルの変化は認められなかった。5.啼泣の中止や敏活性を高める目的では運動感覚に対する刺激が有効である。
著者
北村 美紀 森 恵美 前原 邦江
出版者
一般社団法人 日本母性看護学会
雑誌
日本母性看護学会誌 (ISSN:1345773X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.9-16, 2022-10-28 (Released:2022-10-29)
参考文献数
16

本研究の目的は、生後4か月までの双子の親の子育てにおけるソーシャル・サポート体験を明らかにすることであった。双子の親22名を対象に半構造化面接を行い、質的帰納的に分析した。その結果、8テーマ:【双子の子育て奮闘中の私への自分時間の享受】、【双子の子育て奮闘中の私に対する寄り添いへの感謝と不満】、【連携・協働による双子一人ひとりを尊重した私なりの子育てへの自信】、【双子の子育ての協働・巻き込みに対する申し訳なさと感謝】、【私と双子の子育てに関する専門的・情報的支援に対する満足と要望】、【双子の親同士の交流による子育て体験の共有と情報の活用】、【私たち夫婦なりの双子の子育てにおける協働の自信】、【双子の子育てに対する私たち夫婦なりの多様な資源の活用】が見出された。双子の親やその家族に対し、妊娠期から産後の子育て生活に関する具体的な情報提供、支援の必要性の理解促進、悩みや不安を相談できる場の提供等の看護支援の必要性が示唆された。
著者
藤原 由紀子 町田 治彦 田中 功 福井 利佳 平林 望 白石 くみ子 岸田 弘美 森 恵美子 増川 愛 上野 惠子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1166-1172, 2010 (Released:2012-04-21)
参考文献数
10

背景および目的: 64列multidetector-row CT(MDCT) 心臓検査は, 非侵襲的に冠動脈の詳細な形態評価が可能であるが, 放射線被曝による発癌リスクの増加が問題視されている. これに対し, 被曝低減技術の活用と画質劣化の回避のため, しばしば, β遮断薬経口投与による心拍数の低減が図られる. 今回, われわれは, 本検査の安全性の評価と合理的なワークフロー確立のため, β遮断薬投与後の心拍数の経時的変化と検査前後の血圧変動について検討した.方法: 対象は, β遮断薬経口投与下に64列MDCT心臓検査前を施行した連続551例. 投与前, 投与後15~90分, 撮影直前の心拍数と投与前と撮影直後の血圧を測定し, 投与前心拍数に応じた最低心拍数到達時間, 心拍数, および血圧低減率, ならびに心拍数40bpm以下の高度徐脈, 急激な血圧低下に伴うショックなどの重篤合併症の出現頻度を検討した.結果: β遮断薬投与後, 心拍数は経時的に低下し, 最低心拍数到達時間は, 投与前心拍数80bpm未満で60分, 80~89bpmで75分, 90bpm以上で90分であり, 心拍数低減率(最低心拍数)は, 投与前心拍数70bpm未満で16.4%(54.9bpm) , 70~79bpmで20.3%(58.2bpm), 80~89bpmで24.4%(62.9bpm), 90bpm以上で27.7%(69.5bpm)であった. 血圧低減率は, 収縮期血圧において, 80bpm未満で4.3%, 80~89bpmで5.0%, 90bpm以上で4.8%, 拡張期血圧においては70bpm未満で0.7%, 70~79bpmで1.5%, 80~89bpmで1.0%, 90bpm以上で2.8%であった. また, 本剤投与による重篤な合併症はなかった.結論: β遮断薬経口投与下MDCT心臓検査は安全に遂行可能であった. また, 投与前心拍数に応じた心拍数の経時的低減効果が判明し, 検査の流れの予測が可能となった. 今後, これらを踏まえ患者の不安の軽減や待機時間の短縮などに生かしていきたい.
著者
重松 英朗 中村 吉昭 古閑 知奈美 森 恵美子 大野 真司
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.3069-3073, 2008 (Released:2009-06-11)
参考文献数
10
被引用文献数
8 8

Corynebacterium kroppenstedtii感染により発症し乳癌との鑑別を要したgranulomatous mastitisの1例を経験したので報告する.症例は47歳,女性.1カ月前より右乳房腫瘤を自覚し当科受診.右乳房A領域に3cm大の腫瘤を認めた.理学的所見,画像所見より右乳癌が疑われたが針生検組織診で確定診断が得られなかったため外科的生検術を行った.病理組織所見では肉芽腫の形成と多核巨細胞を含む炎症細胞浸潤を認め悪性所見は認められなかった.細菌培養にてCorynebacterium kroppenstedtiiを認め,Corynebacterium kroppenstedtii感染により発症したgranulomatous mastitisと診断した.治療として排膿ドレナージ後,塩酸ミノサイクリン内服治療を3週間施行し治癒を認めた.Granulomatous mastitisの診療においてCorynebacterium kroppenstedtii感染の可能性を考慮することが必要と考えられた.
著者
森田 亜希子 森 恵美 石井 邦子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.425-432, 2010-07-01
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究の目的は,初めて親となる男性における,産後の父親役割行動を考える契機となった体験を明らかにすることである。妊娠34週以降の妊婦をもつ夫21名を対象に,半構成的面接法によって研究データを収集した。データを質的・帰納的に分析した結果,産後の父親役割行動を考える契機となった体験は,父親役割モデルとの出会いや想起により,自分なりの理想的な父親像について考える,妊娠・出産する妻への愛情を再確認して,夫/父親として協力する気持ちが芽生える,周囲から育児に関する情報を受けて,仕事と家庭内役割のバランスについて考えるなど,10の体験が明らかになった。導かれた産後の父親役割行動を考える契機となった体験の3つの特徴と,この体験をもつための前提条件から,父親としての自己像形成に必要な素材の内容を把握し提供すること,妊娠・出産をする妻に対して関心を高めるよう促すこと,仕事と家庭内役割の役割調整の必要性に気づくよう促すこと,が示唆された。
著者
岩田 裕子 森 恵美 土屋 雅子 坂上 明子 前原 邦江
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.71-79, 2017-08

[抄録] 目的:日本では高年初産婦が珍しくなくなってきているが,これらの女性は産後うつに対して脆弱であることが示唆されている。本研究の目的は,産後1か月時に産後うつスクリーニング陽性である日本人高年初産婦の母親としての経験を記述することである。方法:本研究はケーススタディであり,2011年の6月から12月の期間に3つの病院で健康な単胎児を出産した21人の高年初産婦を対象とした。質的データと量的データを収集し,量的データはうつのハイリスク女性を抽出し,さらに質的データの補完的解釈に用いた。量的データとしては,1)アクティグラフを用いて測定した客観的睡眠の質と,2)日本語版エジンバラ産後うつ病自己調査票(EPDS)により測定したうつ症状の,2つのデータを収集した。日本語版EPDSで9点以上の得点者を,うつのハイリスク女性とした。うつのハイリスク女性の母親としての経験に関しては,半構成的面接によりデータ収集し,質的に分析した。ナラティブ統合により,個々の女性の文脈の中で質的データと量的データを解釈した。結果:うつのハイリスク女性は5名であった。本研究の結果から,高年初産婦の経験を理解するために重要な以下のテーマが抽出された。1)身体的健康状態の維持,2)子どもの世話:実践,気がかり,対処,3)ソーシャルサポートの利用,4)基本的ニーズの充足,5)新しい生活への適応。考察:母親個々の状況の中での母親としての経験を理解することが,適切なケア提供につながると考えられる。[ABSTRACT] Purpose: Older primiparae have become more common in Japan. It has been suggested these women are vulnerable to post-partum depression. The present study aimed to describe maternal experiences of older Japanese primiparae with a positive screen for depression at 1 month post-partum. Methods: This case study examined 21 older primiparae who delivered healthy singletons at three Japanese hospitals from June to December 2011. We used qualitative and quantitative data, with quantitative data for selecting women at high risk for depression as complementary to qualitative data. Quantitative data included: 1) objective sleep quality measured by actigraphy and 2) depressive symptoms measured by the Japanese version of the Edinburgh Postnatal Depression Scale (EPDS). Women who scored 9 or more on the EPDS were considered to be at high risk for depression. Semi-structured interviews were conducted to explore maternal experiences of women at high risk for depression and analysed qualitatively. Narrative integration was used by interpreting qualitative and quantitative findings in each woman's individualized context. Results: Five women were at high risk for depression. Our findings support the importance of understanding older primipara's experiences of: 1) maintaining physical well-being; 2) childcare: practice, concern, and coping; 3) utilizing social support; 4) meeting basic needs; and 5) adjustment to a new life. Discussion: Understanding maternal experiences in each individualized context will lead to providing appropriate care.
著者
本田 優子 梶原 まどか 堀川 ひかり 森 恵美加 一期崎 直美
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育学部紀要 (ISSN:21881871)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.239-251, 2013-12-12

This investigation was conducted in order to clarify relation of the conforming behavior in a junior high school student, and anthropophobia mentality, and it obtained the following conclusions. The tendency of conforming behavior was high in the woman or the second grader also in the junior high school student. Moreover, the tendency to take the conforming behavior mended externally on the whole was high. In the boy, the second grader, or the student that thinks "it is not good in the atmosphere of a class", the tendency was high. Also in anthropophobia mentality, the tendency for him to be superfluously conscious of especially himself and others was high. The boy's tendency which fears a look was higher than the woman, and the second grader woman was difficult to speak in public. The student who thinks that the atmosphere of its class is good was superfluously conscious of himself or others, and the student who thinks that atmosphere of its class is not good thought that he was weak-willed. Anthropophobia mentality was as high as the student it is easy to take conforming behavior. Especially the student with high anthropophobia mentality was not the student that aligns positively but a student who aligns externally.
著者
石原 三妃 大森 恵美 水野 尚子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.65-73, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
12

管理栄養士・栄養士養成施設に適した調理学実習の必要度について管理栄養士・栄養士を対象にアンケート調査を行い調理の学習内容について検討した。 アンケートは,選択回答法と自由回答法を用いて行い,施設種類ごとの評価を分析した。 その結果,いずれの施設でも基本の料理や知識が大切であることが示された。また,施設種類によって必要な調理操作や料理は異なった。特に対象となるライフステージにより,必要な料理が異なり,病院,高齢者施設および乳幼児を対象とする保育園・幼稚園ではやわらかい料理の必要度が高かった。 調理操作においては,魚の下処理に関する操作は行政では必要度が高く,他の病院,高齢者施設など給食施設では低かった。切砕操作は,日常食に用いる基本の切り方は,いずれの施設でも有意差なく,必要度が高いと評価されていた。
著者
石原 三妃 水野 尚子 大森 恵美
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.405-415, 2015 (Released:2016-01-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1

管理栄養士・栄養士養成施設に適した調理学実習内容の必要度について,給食施設と非給食施設に勤務する管理栄養士・栄養士にアンケート調査を行い,調理の学習内容について検討した。アンケートは,選択回答法と自由回答法を用いて行い,給食施設と非給食施設の評価を分析した。その結果,料理については,“味噌汁”,“青菜のお浸し”の必要度が高かった。調理操作について,給食施設では非給食施設より浸漬操作と茹で操作の必要度が高かった。また,いずれの施設でも基本の料理や知識が大切であることが示された。切砕操作のなかでも,日常食に用いる基本の切り方は,いずれの施設でも有意差なく,必要度が高いと評価されていた。だしを取る操作は非給食施設で給食施設より必要度が高かった。大量調理と少量の調理では,調味料の重量や調理時間が異なることが推察された。
著者
岩田 裕子 森 恵美 Iwata Hiroko Mori Emi イワタ ヒロコ モリ エミ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.49-55, 2004-06-30
被引用文献数
3

本研究の目的は,父親役割への適応を促す看護援助を明らかにすることであり,国内外の研究論文および専門書の内容を質的に分析することにより,父親役割への適応に関する看護援助を抽出した。医学中央雑誌,CINAHL,MEDLINEを利用したコンピューター検索により,1990年以降の文献を抽出し,最終的に和文献16,英語文献24,専門書9を分析対象とした。質的分析の結果,父親役割への適応を促す看護援助は,妊娠中に行う援助としては,1)アタッチメントの促進,2)父親役割への準備,3)夫婦間コミュニケーションの促進,4)役割調整のための夫婦間の話し合い促進,5)胎児・乳児についての情報提供の5つが抽出された。分娩時に行う援助は,父親になる男性へのサポートとしてまとめられ,妊婦だけでなく,父親になる男性にも焦点をおいた援助をすべきであるということが示された。出産後に行う援助としては,1)育児相談・教育,2)父親間での感情の共有,3)夫婦間コミュニケーションの促進の3つが抽出された。また援助を行う時期に関係なく抽出された一般的原理は,1)援助者の姿勢,2)物理的環境の調整,3)援助する際の工夫の3つであった。本研究において明らかとなった父親役割への適応を促す看護援助は,移行期の父親にケアを提供する看護実践者にとって,援助の指針となるものである。また,抽出された看護援助の内容をさらに検討あるいは精錬していくことは,日本文化を反映した新たな看護援助の指針を開発することにつながると考える。The purpose of this study was to clarify nursing care that would promote men's adjustment to fatherhood. Literature search was conducted to retrieve relevant articles written either in Japanese or English. Igakuchuouzasshi, CI-NAHL, and MEDLINE were searched since 1990. The results of 16 Japanese articles, 24 English articles, and 9 books were analyzed focusing on their content to extract nursing care that would promote men's adjustment to fatherhood. The analysis resulted in various nursing care that could be provided during pregnancy, labor, and after birth. Nursing care during pregnancy were: 1) promoting the expectant father's attachment, 2) preparing for the father's role, 3) promoting marital communication, 4) promoting marital communication for the adjustment of parental roles between the couple, and 5) providing necessary information about fetus and infant. Nursing care during labor could be categorized as providing support to the expectant/new father that emphasized men as clients. Nursing care after birth were: 1) consultation/education about parenting, 2) sharing feelings among fathers, and 3) promoting marital communication. The following three basic principles were also extracted: 1) attitudes of care providers, 2) arrangement of physical environments, and 3) consideration of care providers. The result could be a knowledge base to develop new nursing interventions that are sensitive to the Japanese culture and effective in promoting men's adjustment to fatherhood.
著者
高橋 徹 清水 裕子 井上 一由 森松 博史 楳田 佳奈 大森 恵美子 赤木 玲子 森田 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.252-256, 2007 (Released:2007-10-12)
参考文献数
38
被引用文献数
6 9

昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.
著者
三隅 順子 前原 澄子 森 恵美 Misumi Junko Maehara Sumiko Mori Emi ミスミ ジュンコ マエハラ スミコ モリ エミ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.16-22, 1996-06-28

本研究では,夫付き添い分娩において産婦の不安の軽減に効果のある夫の関わり方を明らかにすることを目的とした。対象は,研究協力の得られた25組の夫婦であり,医学的に問題のない18歳から35歳までの初産婦とその夫であった。産婦の不安を測定するために分娩中に主観的な不安と痛み,そして生理的指標として血圧・脈拍について測定し,また夫の関わり方については,極期において約90分の観察とコード記録を行った。その結果,夫の「手を握る」関わりの割合と産婦の状態不安の変化には相関(r=-0.66, p<0.05)があり,夫が産婦と共に過ごし「手を握る」ことは産婦の不安の軽減に役立っていたことがわかった。また,産婦の不安には産婦の性格や夫との関係が影響していることが考えられた。The purpose of this study was to evaluate the effects of husband's attendance attitude to reduce maternal anxiety in labor and delivery. The subjects who expressed informed consents were 25 married women and their husbands. Women were 18 to 35 years old primiparas, with no complicating medical or obstetrical conditions, and no physiological and psychosocial ploblem. In order to measure maternal anxiety, the self reported anxiety and labor pain were provided during labor and delivery. And also blood pressure and puls were measured. Husband's attendance attitude was observed and coded about 90 munites at labor room. Finding was that husband's attitude as ""taking wife's hand"" was beneficial effects to reduce maternal anxiety. This means that it's very important that husband stay with wife with feeling the sympathy of her experience. And characters of women and marital adjustment were produce effects on maternal anxiety.