著者
加藤 博文 石田 肇 吉田 邦夫 佐藤 孝雄 米延 仁志 ハドソン マーク 米田 穰 安達 登 増田 隆一 長沼 正樹 深瀬 均 木山 克彦 江田 真毅 岡田 真弓 木山 克彦 江田 真毅 岡田 真弓 長沼 正樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

本研究では、アイヌの集団的・文化的形成過程において海洋狩猟民文化の強い影響が社会文化伝統にも、集団的にも、存在したことを示唆する豊富な資料を提供することができた。浜中2遺跡の調査では、海獣儀礼の伝統が先行する先史文化から連続して継承、発展されアイヌ文化の中へ取り込まれていくことが考古学的に提示された。集団的な系統性については、先行研究で示唆されていたオホーツク文化の関与を補強する資料を得ることができた。提示されたアイヌ民族の集団形成性の複雑さは、集団のアイデンティティの形成過程や変遷についても、社会・経済・政治的文脈での検討の必要性を示唆している。今後も得られた資料の調査研究を進めていく。
著者
江田 真毅 樋口 広芳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.263-272, 2012 (Released:2012-11-07)
参考文献数
41
被引用文献数
3 3

アホウドリPhoebastria albatrusは北太平洋西部の2つの島嶼域で繁殖する危急種の海鳥である.2006~2007年度の繁殖期の個体数は約2,360羽で,約80%の個体が伊豆諸島の鳥島で,残りの約20%が尖閣諸島の南小島と北小島で繁殖する.本種は暗黙のうちに1つの保全・管理ユニットとみなされており,国際的な保護管理プロジェクトでもその集団構造には関心が払われてこなかった.しかし,これまでの研究から,約1,000年前のアホウドリに遺伝的に大きく離れた2つの集団があったことが明らかになった.19世紀後半以降の繁殖地での乱獲によって個体数と繁殖地数が大きく減少した一方,2つの集団の子孫はそれぞれ主に鳥島と尖閣諸島で繁殖していることが示唆された.現在鳥島では両集団に由来する個体が同所的に繁殖しているものの,鳥島で両集団が交雑しているのかはよくわかっていない.鳥島と尖閣諸島に生息する個体群はミトコンドリアDNAのハプロタイプ頻度が明らかに異なっていることから,それぞれの個体群は異なる管理の単位(MU)とみなしうる.尖閣諸島から鳥島への分散傾向は繁殖地での過狩猟によって強まった可能性も考えられるため,それぞれのMUの独自性の保持を念頭に置いた保護・管理が望まれる.アホウドリの2つのクレード間の遺伝的距離はアホウドリ科の姉妹種間より大きく,また断片的ながら鳥島と尖閣諸島に由来する個体では形態上・生態上の違いが指摘されている.今後,尖閣諸島と鳥島で繁殖する個体の生態や行動の詳細な比較観察と遺伝的解析から,この種の分類を再検討する必要がある.
著者
川上 和人 江田 真毅
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.7-23, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
158

鳥類の起源を巡る論争は,シソチョウArchaeopteryxの発見以来長期にわたって続けられてきている.鳥類は現生動物ではワニ目に最も近縁であることは古くから認められてきていたが,その直接の祖先としては翼竜類やワニ目,槽歯類,鳥盤類恐竜,獣脚類恐竜など様々な分類群が提案されてきている.獣脚類恐竜は叉骨,掌骨や肩,後肢の骨学的特徴,気嚢など鳥と多くの特徴を共有しており,鳥類に最も近縁と考えられてきている.最近では羽毛恐竜の発見や化石に含まれるアミノ酸配列の分子生物学的な系統解析の結果,発生学的に証明された指骨の相同性,などの証拠もそろい,鳥類の起源は獣脚類のコエルロサウルス類のマニラプトル類に起源を持つと考えることについて一定の合意に至っている.一般に恐竜は白亜紀末に絶滅したと言われてきているが,鳥類は系統学的には恐竜の一部であり,古生物学の世界では恐竜は絶滅していないという考え方が主流となってきている.このため最近では,鳥類は鳥類型恐竜,鳥類以外の従来の恐竜は非鳥類型恐竜と呼ばれる. 羽毛恐竜の発見は,最近の古生物学の中でも特に注目されている話題の一つである.マニラプトル類を含むコエルロサウルス類では,正羽を持つ無飛翔性羽毛恐竜が多数発見されており,鳥類との系統関係を補強する証拠の一つとなっている.また,フィラメント状の原羽毛は鳥類の直接の祖先とは異なる系統の鳥盤類恐竜からも見つかっており,最近では多くの恐竜が羽毛を持っていた可能性が指摘されている.また,オルニトミモサウルス類のオルニトミムスOrnithomimus edmontonicusは無飛翔性だが翼を持っていたことが示されている.二足歩行,気嚢,叉骨,羽毛,翼などは飛行と強い関係のある現生鳥類の特徴だが,これらは祖先的な無飛翔性の恐竜が飛翔と無関係に獲得していた前適応的な形質であると言える.これに対して,竜骨突起が発達した胸骨や尾端骨で形成された尾,歯のない嘴などは,鳥類が飛翔性とともに獲得してきた特徴である. 鳥類と恐竜の関係が明らかになることで,現生鳥類の研究から得られた成果が恐竜研究に活用され,また恐竜研究による成果が現生鳥類の理解に貢献してきた.今後,鳥類学と恐竜学が協働することにより,両者の研究がさらに発展することが期待される.
著者
江田 真毅 小池 裕子 佐藤 文男 樋口 広芳
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.57-64, 2011-09-30 (Released:2013-09-30)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

アホウドリ Diomedea albatrus は伊豆諸島の鳥島と尖閣諸島の南小島や北小島で繁殖する危急種の海鳥である。1979年以降,鳥島で生まれたほとんどの個体が両脚に標識をされているにもかかわらず,1996年以降,鳥島の初寝崎において未標識の1個体が観察されている。2005年度の繁殖期まで,アホウドリ誘致用に設置された特定のデコイのそばに毎年巣をつくったこの鳥は,デコイにちなんで「デコちゃん」と呼ばれている。若鳥のうちに標識が両脚から外れることは考えにくいため,この鳥は尖閣諸島で生まれた個体であると考えられてきた。近年の私たちのミトコンドリアDNAの制御領域2を用いた研究によって,アホウドリには2つの系統的に離れた集団(クレード1とクレード2)が含まれていたこと,尖閣諸島で採集された資料はクレード2の個体からなること,鳥島で生まれた個体の多くがクレード1に属することが示唆されている。この鳥の巣で羽毛を採取して解析した結果,この鳥の制御領域2の配列は,これまでに知られていた配列とは異なるものの,クレード2に属することが明らかになった。このことは,デコちゃんの出生地が鳥島ではなく,尖閣諸島であることを支持するものである。デコちゃんは鳥島で生まれた個体とつがいを形成し,2009年度の繁殖期までに2羽の雛を巣立たせている。しかし,2つの系統が交配しているかどうかを判断するためには,両性遺伝する遺伝子マーカーによる研究が必要である。
著者
川上 和人 江田 真毅
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.7-23, 2018

鳥類の起源を巡る論争は,シソチョウ<i>Archaeopteryx</i>の発見以来長期にわたって続けられてきている.鳥類は現生動物ではワニ目に最も近縁であることは古くから認められてきていたが,その直接の祖先としては翼竜類やワニ目,槽歯類,鳥盤類恐竜,獣脚類恐竜など様々な分類群が提案されてきている.獣脚類恐竜は叉骨,掌骨や肩,後肢の骨学的特徴,気嚢など鳥と多くの特徴を共有しており,鳥類に最も近縁と考えられてきている.最近では羽毛恐竜の発見や化石に含まれるアミノ酸配列の分子生物学的な系統解析の結果,発生学的に証明された指骨の相同性,などの証拠もそろい,鳥類の起源は獣脚類のコエルロサウルス類のマニラプトル類に起源を持つと考えることについて一定の合意に至っている.一般に恐竜は白亜紀末に絶滅したと言われてきているが,鳥類は系統学的には恐竜の一部であり,古生物学の世界では恐竜は絶滅していないという考え方が主流となってきている.このため最近では,鳥類は鳥類型恐竜,鳥類以外の従来の恐竜は非鳥類型恐竜と呼ばれる.<br> 羽毛恐竜の発見は,最近の古生物学の中でも特に注目されている話題の一つである.マニラプトル類を含むコエルロサウルス類では,正羽を持つ無飛翔性羽毛恐竜が多数発見されており,鳥類との系統関係を補強する証拠の一つとなっている.また,フィラメント状の原羽毛は鳥類の直接の祖先とは異なる系統の鳥盤類恐竜からも見つかっており,最近では多くの恐竜が羽毛を持っていた可能性が指摘されている.また,オルニトミモサウルス類のオルニトミムス<i>Ornithomimus edmontonicus</i>は無飛翔性だが翼を持っていたことが示されている.二足歩行,気嚢,叉骨,羽毛,翼などは飛行と強い関係のある現生鳥類の特徴だが,これらは祖先的な無飛翔性の恐竜が飛翔と無関係に獲得していた前適応的な形質であると言える.これに対して,竜骨突起が発達した胸骨や尾端骨で形成された尾,歯のない嘴などは,鳥類が飛翔性とともに獲得してきた特徴である.<br> 鳥類と恐竜の関係が明らかになることで,現生鳥類の研究から得られた成果が恐竜研究に活用され,また恐竜研究による成果が現生鳥類の理解に貢献してきた.今後,鳥類学と恐竜学が協働することにより,両者の研究がさらに発展することが期待される.
著者
江田 真毅
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

家禽(ニワトリ、シナガチョウ、アヒル)の飼育は、新石器時代の中国北部で最初に始まったとされ、とくにニワトリの飼育は約10,000年前まで遡るとされてきた。本研究では、家禽化プロセスの解明のために、中国中部・北部の新石器時代と青銅器時代を中心に計23遺跡から出土した鳥類骨を調査した。その結果、新石器時代前期および中期の遺跡ではニワトリの可能性のある骨は皆無であり、また新石器時代後期や青銅器時代の遺跡でもニワトリの可能性のある骨の出土は稀だった。このことは、新石器時代前期や中期におけるニワトリの飼育を否定するとともに、青銅器時代においてもニワトリの利用は稀であったことを示唆すると考えられた。