著者
浅井 純二
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.13-25, 2015-08-31

本論は,伊勢湾台風被災地である名古屋市南区に設置されたヤジエセツルメント保育所を中心にして救援活動の展開を整理し,被災から復旧・復興に向けた学生・保母・父母・支援者の役割と活動要素,評価を明らかにしている.役割と活動要素は,学生の人道性・開拓性,保母の専門性・継続性,父母の自発性,支援者の協同・連帯性である.保育要求は災害によって顕在化した生活問題とともに働く親の願いと捉えており,保育活動は子どもの利益を守り,地域を組織化するものである.活動の特徴は,被災と貧困という二重の条件を踏まえ,保育活動が,救援から発達保障を求める活動へ変化し,保育活動の多面的な発展のうえで歴史的な起点となったことである.
著者
浅井 純二
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.16-28, 2010-02-28

本稿は,伊勢湾台風被災地における南医療生活協同組合の設立経過を1次資料でたどり,被災住民と救援者の信頼関係を確認し,セツルメント活動の流れに位置づけられることを示した.南医療生活協同組合の活動は,先駆性・開拓性・人権性を示す活動である.設立賛成者の約9割が南区に居住する人々であり,設立趣意は平等によい医療が安く受けられることにある.これを支えた力は,医療従事者や支援者がセツルメント活動の経験をもっていたこと,地域で人々が自発的に地域課題の解決のために立ち上がり,支援者と共同・協同したことである.これにより,住民主体の被災者復旧・復興活動が進められた.
著者
中川 有夏 田嶋 佐妃 浅井 純 竹中 秀也 加藤 則人 山田 稔
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.415-420, 2014 (Released:2015-05-02)
参考文献数
36

47歳,女性。ウガンダに渡航して7日目に右前腕屈側にそう痒を伴う紅色丘疹が出現した。帰国後,紅色丘疹が増加したため渡航20日目に近医皮膚科を受診した。副腎皮質ステロイド含有軟膏の外用を開始したが,右肩と腰部の紅色結節が増大し疼痛を伴うようになったため,渡航24日目に当院を受診した。数日後紅色結節の中心に虫体を認め,局所麻酔下に4匹の虫体を摘出した。虫体はクロバエ科のヒトクイバエの3齢幼虫と同定した。摘出1ヶ月後,潰瘍は上皮化し,その後症状の再燃は認めていない。ヒトクイバエは衣服や布団などに付着した虫卵を介して寄生する。寄生を予防するためにはヒトクイバエの生息地域への渡航後は衣服にアイロンをかけることが重要であり,ハエ症を疑った際には,身近な人の渡航歴も聴取する必要があると考えた。(皮膚の科学,13: 415-420, 2014)