著者
澤田 晋一
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.458-467, 2011-12-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
13

東日本大震災後の復旧・復興作業を遂行する上で,夏の暑さと冬の寒さは不可避である.その上,がれきの撤去作業や除染作業では,粉じんや電離放射線からの防護と安全対策のために,マスク,ヘルメット,防護服,安全手袋,安全靴などの労働衛生保護具を着用しなければならない.これらの作業条件は夏季には作業者への暑熱ストレスを過酷なものにする.冬季の復旧・復興作業は特に被災地の大半が東北地方の太平洋沿岸の寒冷地域であることから,しばしば風雪や冷たい降雨に曝されて厳しい寒冷作業になる.本稿では,このような復旧・復興作業を遂行する上で懸念される暑熱,寒冷負担と健康障害の病因,病態,兆候について,温熱生理学的観点から概説した.またこれらの健康リスクを予防するための方策について,暑熱,寒冷ストレスの測定・評価法とそれにもとづく労働衛生管理対策のありかたに焦点をあてて論じた.
著者
下田 麻子 澤田 晋一 秋吉 一成
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.108-115, 2014-03-25 (Released:2014-06-25)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

新たな細胞間コミュニケーションツールとして、細胞外ベシクルが注目されている。ベシクルの種類は、その発生機序、サイズにより大きく分けて3つに分類できる (エクソソーム:30~200nm、マイクロベシクル:100~1000nm、アポトーシス小体: 1~5μm)。特に、エクソソームに関してはその内部にタンパク質やmicro RNAを含有していることから、疾患治療や予後診断、バイオマーカーとしての応用が期待される。本稿では、細胞外ベシクルの基礎的概念、単離方法や機能評価法などを紹介する。
著者
榎本 ヒカル 澤田 晋一 安田 彰典 岡 龍雄 東郷 史治 上野 哲 池田 耕一
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.7-13, 2011 (Released:2011-09-30)
参考文献数
17
被引用文献数
4 2

熱中症予防のためには水分摂取が重要であることが指摘されているが,その水分補給量の目安は明確に定められてはいない.そこで,ISO7933に採用されている暑熱暴露時の暑熱負担予測のための数値モデルであるPredicted Heat Strain(PHS)モデルに着目し,暑熱環境における水分補給量の違いが人体に与える影響を検討し,PHSモデルから算出される水分補給量の妥当性を検証した.健常な青年男性8名を被験者とし人工気象室を用いて水分摂取条件を3水準(無飲水,PHSモデルによる飲水,ACGIHガイドラインに基づく飲水),運動条件を2水準(座位,トレッドミル歩行)設定し,生理的指標として皮膚温・体内温(直腸温,耳内温),体重,指先血中ヘモグロビン濃度,心電図,血圧・脈拍数,視覚反応時間,心理的指標として温冷感に関する主観的申告,疲労に関する自覚症しらべを測定した.その結果,暑熱環境での作業時には飲水しないよりも飲水するほうが体温や心拍数が上昇しにくく,生理的暑熱負担が軽減されることが示唆された.また,PHSモデルによる体内温と体重の変化量の予測値と本研究での実測値を比較したところ,PHSモデルは作業時の水分補給の目安の一つになりうることが明らかになった.
著者
時澤 健 岡 龍雄 安田 彰典 田井 鉄男 ソン スヨン 澤田 晋一
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.79-82, 2015-09-30 (Released:2015-10-08)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

暑熱環境における作業は体温上昇をまねき,熱中症の発症を誘発する.作業中には身体冷却の方法が制限されることや,作業による筋活動の熱産生を抑えることは難しいことから,作業前や休憩中に身体冷却を行い,体温を低下させておくことが重要となる.我々は,労働現場で実施することが可能な実用的で簡便な方法による身体冷却について最近研究を行ってきた.従来,実験的な身体冷却方法は冷水への全身浸漬であり,大量の冷やした水とバスタブが必要であった.これは少数人に施す前提で大きな装置を必要とし,身体への寒冷ストレスが大きいというデメリットがあった.したがって,労働現場において多くの作業者が限られたスペースで実施でき,さらに寒冷ストレスがマイルドな身体冷却方法を考案する必要があった.本文では,扇風機とスプレー,少量の水による手足の浸漬とクールベストの着用の組み合わせによる身体冷却方法が,深部体温をどの程度減少させ,作業中の暑熱負担を軽減させるかについて我々の研究成果を中心に述べる.
著者
前田 俊輔 伊達 豊 西村 貴孝 新村 美帆 林 政伸 青柳 潔 澤田 晋一 前田 享史
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.155-163, 2018 (Released:2019-01-17)

To prevent heat stroke, we aimed to clarify the relationship between core body temperature and physiological measurements during incremental load test under hot environment. Subjects exercised under hot environment (33°C for air temperature, 60% for humidity) with measuring rectal temperature and other physiological measurements. In results, the increase of heart rate correlated with not only increase of rectal temperature at the same point in time but also the value after 5 or 10 minutes. Our results suggested that heart rate was useful physiological value as related or estimated core temperature.