- 著者
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田村 實
上田 恵介
- 出版者
- Yamashina Institute for Ornitology
- 雑誌
- 山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.2, pp.86-90, 2000-12-29 (Released:2008-11-10)
- 参考文献数
- 19
- 被引用文献数
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一般に鳴禽類では,メスの囀りは一般的ではないが,著者らは1998年5~7月に,山梨県清里において,コルリの繁殖生態を調査中に,コルリのメスが囀るのを観察•記録することができた。観察したのは繁殖期の後半(6月下旬)で,2つのなわばり内の巣で,メスが巣内ビナに給餌を行っていた時期と,巣立ち雛を連れている時期に観察され,ビデオ撮影•録音された。またヒナが巣立った直後に発見した別のなわばり内の巣のメスも,巣立ちビナを連れながら,さえずっているのが観察された。メスの囀りにもいくつかのレパートリがあったが,オスの囀りと異なり,囀り4パターンの中,2パターンにおいて,オスの囀りに特徴的な「チッ,チッ,チッ…」という前奏が聞かれなかった。メスはオスよりも低い声で,また,オスよりも弱い声で囀っていたが,囀りのパターンは部分的にはよく似ている傾向が見られた。メスが囀ることの意味は,まだよくわからないが,人の巣への接近という状況下で起こっていることから,メスによる巣の防衛行動に関連した機能があると思われた。