著者
白井 聡
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

報告者の平成18年度中の研究成果として最も特筆すべきことは、これまでのレーニンに関する研究をまとめた単著を刊行するめどをつけることができたことである。この著作は『未完のレーニン-<力>の思想を読む』と題され、5月10日に講談社選書メチエ・シリーズの一冊として刊行される予定である。本著作の内容の多くの部分は、報告者がこれまで雑誌等に発表してきた諸論考を元としているが、今回一冊の書物に編むにあたって、随所に大幅な改稿がなされた。本書は大枠として、レーニンの二つの著作、すなわち『何をなすべきか?』および『国家と革命』を精読するという体裁をとっているが、単に政治思想史的研究にとどまることなく、現代国家論・現代資本主義論・現代イデオロギー論といったアクチュアルな隣接諸領域についても踏み込んだ考察を行なっている。また、本書は読者への簡便性を考慮した選書シリーズの一環として刊行されるため、一般読者に対するわかり易さも考慮して書かれている。ゆえに、本書はマルクス主義思想への一種の入門書としても機能しうることが期待される。以上により、本書は古典的マルクス主義の思想についての内在的研究となっていると同時に、現代的諸課題について意義ある問題提起を行ないえている、と言えるだろう。また、報告者は2006年10月21日に社会思想史学会の第31回研究大会の<セッションA=マルクス主義の展開>において、「レーニンを再読する」と題した研究報告を行なった。同報告においては、今日レーニンの思想・ロシア革命を再検討する意義に関して、多くの社会思想研究者と意義深い意見交換を行なうことができた。
著者
白井 聡
出版者
一橋大学
巻号頁・発行日
2010

博士論文
著者
白井 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度に発表された主たる業績は、黒滝正昭・相田愼一・太田仁樹編『ポスト・マルクス研究-多様な対案の探究』に収録された論文「経済学と革命-宇野弘蔵におけるレーニン」である。本論文は、日本において独自のマルクス経済学の体系を築いた宇野弘蔵の理論形成におけるレーニンの決定的な影響を考察することを主題としている。宇野理論におけるいわゆる三段階論(原理論、段階論、現状分析)が形成されるにあたって、原理論と段階論とを峻別するという根本着想を与えたのがレーニンの『帝国主義論』であったことは、よく知られている。しかしながら、従来の研究において、「科学とイデオロギーの峻別」を強調した宇野がいかなる思想的意味合いでレーニンから強い影響を受けたのか、ということはほとんど問われてこなかった。本論文は、この点の探究を進めたことに大きな意義がある。また、両者の影響関係を考察することによって、宇野理論が持ったとされる政治的含意(すなわち、ともに極端な静観主義と主意主義)が出現した必然性を明らかにしつつ、宇野の理論には、こうした両極端とは異なる政治的含意が含まれていることを明らかにした。具体的には、原理論と現状分析の悪循環的性格・無制限性を指摘したうえで、かかる性格を体系構築め初発においてすでに否定している段階論の性格、すなわち、それが歴史における現在をつねにすでに「永遠に繰り返される」悪循環の世界から切断しているということを指摘し、かかる方法がレーニンから受け継がれたものであることを示した。本研究は、レーニンと彼の同時代思想家との対比を行なうという本研究計画の手法をより現代的な局面に対して応用したものである。
著者
片山 杜秀 白井 聡
出版者
K&Kプレス
雑誌
月刊日本
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.36-43, 2018-06
著者
白井 聡
出版者
一橋大学
雑誌
一橋研究 (ISSN:0286861X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.81-96, 2003-01-31

論文タイプ||論説
著者
長野 泰彦 菊澤 律子 西尾 哲夫 武内 紹人 高橋 慶治 立川 武蔵 白井 聡子 池田 巧 武内 紹人 池田 巧 高橋 慶治 立川 武蔵 白井 聡子 本田 伊早夫 桐生 和幸 R. LaPolla M. Prins 戴 慶厦 G. Jacques 才譲 太 S. Karmay M. Turin 鈴木 博之 津曲 真一
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2004

チベット・ビルマ語族は、中国・青海省からパキスタン東北部にわたる広い地域に分布する。この語族の歴史はその大枠がようやく明らかになってきたものの、未解読文献言語や記述のない言語が多数残っている。本計画は(1)未記述言語の調査、(2)未解読古文献(シャンシュン語)の解読、(3)チベット語圏の言語基層動態解明、を目標として研究を行い、幾つかの知られていなかった言語を発見して記述、新シャンシュン語(14 世紀)語彙集集成、古シャンシュン語の文法的特徴の抽出、に成功しただけでなく、歴史言語学方法論に接触・基層という視点を導入することの意義に関して提言を行うことができた。
著者
青柳 利隆 高木 和久 白井 聡 大村 悦司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.527, pp.65-68, 2003-12-12

インターネットトラフィックに代表される通信需要の急増に答えるには,85℃を超える環境温度で10Gb/sアンクールド動作が可能なDFB-LDの提供が必須である.我々は,10Gb/s動作に必要な高い緩和振動周波数の得られる構造として,短共振器と高い結合係数を有するλ/4位相シフトDFB-LDを提案してきた.また,光結合損失が増大し易いパッシブアライメント実装に適した高スロープ効率のDFB-LD構造として非対称な結合係数を有する回折格子構造が適していることを実証した.更に,今回,高温動作に有利なAlGaInAs MQW DFB-LDを作製し,105℃でもOC-192のアイマスクをクリアでき,85℃での信頼性についても良好な結果が得られたので,上述のアクティビティと併せて報告する.
著者
青柳 利隆 高木 和久 白井 聡 大村 悦司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OPE, 光エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.524, pp.65-68, 2003-12-12

インターネットトラフィックに代表される通信需要の急増に答えるには,85℃を超える環境温度で10Gb/sアンクールド動作が可能なDFB-LDの提供が必須である.我々は,10Gb/s動作に必要な高い緩和振動周波数の得られる構造として,短共振器と高い結合係数を有するλ/4位相シフトDFB-LDを提案してきた.また,光結合損失が増大し易いパッシブアライメント実装に適した高スロープ効率のDFB-LD構造として非対称な結合係数を有する回折格子構造が適していることを実証した.更に,今回,高温動作に有利なAlGaInAs MQW DFB-LDを作製し,105℃でもOC-192のアイマスクをクリアでき,85℃での信頼性についても良好な結果が得られたので,上述のアクティビティと併せて報告する.
著者
庄垣内 正弘 熊本 裕 吉田 豊 藤代 節 荒川 慎太郎 白井 聡子 間野 英二 梅村 坦 樋口 康一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、ロシア科学アカデミー東方学研究所サンクトペテルブルグ支所に保管されている中央アジア古文献の調査と整理、未解明文献の解明であった。この目的を遂行するために研究代表者あるいは分担者は度々ロシアに出向いて調査し、また、ロシアから専門家を招いて共同研究をおこなった。また中01央アジア古文献研究に携わるロシア以外の国へも出向き、当該国の研究者を招聘して研究の推進に役立てることもした。研究代表者庄垣内はロシア所蔵の未解明ウイグル語断片について研究し、『ロシア所蔵ウイグル語文献の研究』(2003,374p.+LXXVII)を出版した。ロシア科学アカデミー東方学研究所E.クチャーノフ教授は荒川慎太郎の協力を得て、『西夏語辞典(夏露英中語対照)』(2006,800p.)を出版した。語彙を扱った世界初の西夏語辞典である。一方、同研究所上級研究員A.サズィキンは、樋口康一の協力も得て、『モンゴル文「聖妙吉祥真実名経」』(2006,280p.)、『モンゴル語仏典カタログ』(2004,172p.)を出版した。吉田豊と熊本裕はそれぞれソグド文献、コータン語文献研究に従事した。また梅村坦等はロシア所蔵文献カタログ作成に取り組んだ。間野英二はチャガタイ語文献『バーブルナーマ』ロシア所蔵写本を、藤代は同じくシベリア言語資料を、白井聡子はハラホト出土のチベット語仏教仏典をそれぞれ研究し、解説とテキストを出版した。研究成果の詳細についてはメンバーによる論文集CSEL vol.10、及び報告書冊子を参照されたい。古文献の研究には膨大な時間と労力を必要とする。本研究も予定の計画を完遂できたとはいえないが、とりわけロシア人研究者の協力をえて、一般に公開できる程度の質を保持したかなりの量の成果をあげたものと満足している。