- 著者
-
白岩 祐子
唐沢 かおり
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.1, pp.12-21, 2013 (Released:2013-09-03)
- 参考文献数
- 42
- 被引用文献数
-
2
近年,裁判員制度や被害者参加制度が刑事裁判に導入され,一般市民の法的判断を規定する要因が注目され始めている。本研究では,被害者参加人のタイプや表出感情,被害者参加制度に対する個人の態度が,量刑判断にどのような影響を及ぼすのかを検討するため,大学生・大学院生などを対象にシナリオ実験を行なった。その結果,誰が被害者参加人を務め,どのような感情を表出するかという要因と,個人の量刑判断との間に関連はみられなかった。また,「他者は自分よりも被害者参加人の言動に影響される」という社会的影響の非対称な認知が確認され,この判断バイアスは,被害者参加制度に対する態度が否定的であるほど大きくなった。さらに,制度に対する態度は,非対称な認知のうち自己への影響認知を媒介して量刑選択に影響を及ぼしていた。具体的には,被害者参加制度に反対するほど被害者参加人の発言による自己への影響が否定され,それによって短い量刑が選択された。以上の結果を踏まえ,量刑判断の規定因研究における展望と課題が議論された。