- 著者
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松井 道昭
永岑 三千輝
廣田 功
上杉 忍
浅井 良夫
小野塚 知二
- 出版者
- 横浜市立大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
松井は、普仏戦争において、最初の国民戦争=総力戦の要素を抉り出した。この戦争において交戦国双方において兵站力が増せば、自ずと戦争は長期化し、持久消耗戦に転化していく可能性がすでに存在したことを摘出できた。永岑は、ヒトラーの戦略と領土膨張構想を秘密文書と国会演説で解きほぐし、第一次大戦と戦後再建のあり方の相互連関を明らかにすると同時に、戦争と復興が内面的に関連することを摘出した。廣田は、「連続性」を指摘されるフランスの福祉国家成立史において、第1次大戦がフランスの経済社会に与えた影響の重要性を明らかにした。小野塚は、1930年代中葉から戦時にかけて、社会主義・労働運動系の音楽運動が活力を回復した要因と、その過程に表れた新たな特質を明らかにして、戦後復興のもう一つの国際連帯の側面を明らかにした。本宮は、横浜における戦後復興の過程に関して、市内神奈川区大口地区を事例に採り上げ、それをとりまく地域社会との関係性も意識しながら、戦後復興過程の具体的様相を考察し、都市横浜における戦後復興過程の研究に奥行きを持たせる上での詩的素材を豊かにした。浅井は、ワシントンの国立文書館で占領後の対日援助政策とその実態に重点を置いて検討を行ない、占領後においても、対日援助が重要な役割を果たしたことを明らかにした。上杉は、冷戦期の黒人公民権運動とその圧力を受けて進められたとされてきた連邦政府の公民権政策の転換に関する近年の研究動向を概観し、(1)この公民権政策の外交戦略的側面への注目が重要であること、(2)冷戦下の「赤狩り」によって公民権運動の軌道が規定されたこと、(3)さらに直接的大衆行動に立ち上がった南部の頑迷な白人人種差別主義者をアメリカ史の逸脱としてとらえるのではなく、アメリカ社会の基本的構成要素としてこれを社会史的に分析することが求められていること、を指摘した。上原は、第二次世界大戦後のフランスが、国力の疲弊という構造的制約のもとで、いかにしてpuissanceパワーを獲得するために、近代化優先政策を展開したプロセスを分析した。小島は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって占領され,戦後に経済復興を遂げたベルギーについて,欧州統合との関係を視点として検討し、ヴァンゼーラントを発掘して、ベルギーの戦後復興にけるイニシアティヴを解明した。