著者
内田 真紀子 蜂須賀 研二 小林 昌之 堂園 浩一朗 田中 正一 緒方 甫 野田 昌作
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.326-329, 1996-05-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
15

We report a 19-year-old man suffering from acute poliomyelitis induced by the attenuated strain of type 3 polio virus. As he had severe muscular weakness in the right lower limb and slight weakness in the left lower limb, we prescribed the following rehabilitation program: active assistive or manual resistive exercises for his right lower limb, resistive exercises for his left lower limb, and gait training with a knee-ankle-foot orthosis. As only two or less than two cases of acute poliomyelitis a year have been reported in Japan, we are following up this patient from the standpoint of preventing post-polio syndrome.
著者
白木 啓三 今田 育秀 佐川 寿栄子 緒方 甫 浅山 〓 森田 秀明
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.279-288, 1982-09-01

ヒトの上肢あるいは下肢が切断された時には, 体温調節の重要な役割を演じている体表の面積がかなり減少することになる. 体の一部分を喪失した患者の体温調節機序に特異性があるとすれば, リハビリテーション医学においても重要な関心事となる. 両股離断者(BHD)では夏期に著しい多汗を示すことが観察されていたが, 実証的に裏付けがなされていなかった. 2名のBHD(体表面積の40%喪失)を26℃, 30℃および33℃の人工気候室にて安静にせしめ各々の分割体熱測定を行った. 中性温域ではBHDの呼気からの水分喪失量は正常対照者より増加したが, 皮膚からのそれは低下した. 熱負荷(33℃)によりBHDの中心部体温および皮膚温は対照者よりも上昇し, このことが汗量の増加に関係することが実証された. BHDの体温調節は中性温域ではよく保持されるが, 温熱負荷により影響を受け易いことが判った. 更にBHDでは体表面積当りでは正常者より高い産熱があること, 体中心部から被殼部への熱伝達性が高いことおよび体熱放散が様式変化することが判明した.
著者
大川 裕行 坂野 裕洋 梶原 史恵 江西 一成 田島 文博 金森 雅夫 緒方 甫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.E0782, 2005

【はじめに】車いすマラソンは障害者スポーツの中でも過酷な競技の一つである.選手のコンディションを把握できれば安全な競技運営に加え,高いパフォーマンスの発揮を可能にすることが考えられる.そこで,マラソン競技の前後で選手の疲労度とストレス,免疫機能を調査し若干の知見を得たので報告する.<BR>【方法】第23回大分国際車いすマラソン大会出場選手中,協力の得られた選手59名を対象とした.その中でデータの揃っている者46名(平均年齢37.3±10.4歳,フルマラソン出場選手22名,ハーフマラソン出場選手24名,男性44名,女性2名,クラス2;7名,クラス3;39名)の結果を検討した.調査項目は,心拍数,血圧,主観的疲労度,コルチゾール,免疫グロブリンA(IgA),競技順位とした.心拍数と血圧は競技前日に測定した.競技前日,競技開始直前,競技終了直後,競技翌日に主観的疲労度をvisual analog scaleで測定し,同時に採取した唾液からコルチゾール,IgAを測定した.調査実施に際しては十分な説明を行い,文書による同意を得て行った.<BR>【結果】測定期間中にコルチゾール,IgAともに正常範囲から逸脱した選手はいなかった.選手の競技前日の心拍数と競技順位,コルチゾールには有意な相関関係が認められた(p<0.05).競技前日を基準として競技直前,競技直後,競技翌日の変化率を求めたところ,主観的疲労度は45.6%,214.1%,58.7%,コルチゾールは73.5%,91.0%,30.0%,IgAは2.0%,5.0%,10.0%に変化していた.競技前日の主観的疲労度,血圧,IgAと競技順位には関係を認めなかった. <BR>【考察】選手の主観的疲労度は競技終了直後にピークを示し,競技翌日にも競技前日の値に戻っていなかった.選手は競技翌日にも中等度の疲労を感じていた.一方,ストレスホルモンであるコルチゾールは競技翌日に競技前日の値に戻っていた.選手の主観的疲労度と客観的なストレス指標には乖離があることが分かった.競技前日のコルチゾールが競技前日の心拍数と有意に相関し,競技順位と有意に相関したことは,トレーニングにより一回拍出量が増加し安静時心拍数が低下している選手,競技開始前に落ち着きを保っている選手は競技成績が優れているという結果を示すものである.IgAの値は競技翌日にピークを示した.選手の主観的疲労度とは異なり車いすマラソンにより高まった選手の免疫機能は運動後にさらに向上していた.選手にとって車いすマラソンは免疫機能を高める適度な運動強度である事が示唆された.さらに詳細な調査を続けることで選手の安全管理と競技力向上へ有益な情報が提供できる可能性がある.
著者
田中 宏太佳 緒方 甫 蜂須賀 研二 合志 勝子 丸山 泉
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.459-463, 1990-11-18
被引用文献数
5

健常中高年男性を対象に,万歩計での歩行量の測定と体部CTでの大腿中央部の筋横断面積の算出,それにCybex IIでの大腿四頭筋とハムストリンクスの筋ピーク・トルク値の計測を行った.日常生活の活動性中等度群(1日平均歩行量4.0×10^3以上8.0×10^3未満)の大腿四頭筋の筋ピーク・トルク値の平均は,軽度群(1日平均歩行量4.0×10^3未満)に比べて有意に大きかった.筋横断総面積やハムストリンクスの横断面積の値は,日常生活の活動性中等度群では軽度群に比べて有意に大きかった.したがって健常中高年者では廃用性筋萎縮を防ぐために,1日約4.0×10^3以上の日常生活の活動性を維持することが大切である.
著者
安藤 徳彦 上田 敏 石崎 朝世 小野 浩 大井 通正 緒方 甫 後藤 浩 佐藤 久夫 調 一興 菅井 真 鈴木 清覚 蜂須賀 研二 山口 明
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.979-983, 1991-10-10

はじめに 障害者が健常者と同様に働く権利を持っていることは現在は当然のこととされている.国連の「障害者の権利に関する宣言」(1975年12月9日)第7条には「障害者は,その能力に従い,保障を受け,雇用され,また有益で生産的かつ十分な報酬を受け取る職業に従事し,労働組合に参加する権利を有する」と述べられている.また国際障害者年(1981年),国連障害者の10年(1983~1992年)などの「完全参加と平等」の目標を実現するための行動綱領などにも常に働く権利が一つ重要なポイントとして掲げられている. また現実にも,障害者,特に重度の障害者の働く場はかなり拡大してきている.障害者の働く場は大きく分けて①一般雇用,②福祉工場,授産施設など,身体障害者福祉法,精神薄弱者福祉法,精神保健法などの法的裏づけのある施設での就労(福祉工場では雇用),③法的裏づけを欠くが,地域の必要から生まれた小規模作業所での就労,の3種となる.このうち小規模作業所は,共同作業所全国連絡会(以下,共作連)の調査によれば,全国に約3,000か所,対象障害者約3万人以上に及んでおり,この数は現在の授産施設数およびそこに働く障害者数のいずれをも上回っている.小規模作業所で働いている障害者は,一般雇用はもとより,授産施設に働く障害者よりも障害が重度であったり,重複障害を持っている場合が多い.その多くは養護学校高等部を卒業しても,その後に進路が開けなかった人々であり,彼らの就労の場として小規模作業所が開設されたわけであるが,それは親たちや養護学校の教師たちの運動で自主的につくられてきた施設が多い.また最近まで就労の道が開かれていなかった精神障害者に対し,以前から広く門戸を開いてきたのも小規模作業所であり,その社会的役割は非常に大きい. しかし,障害者が働くことに関しては,医学的側面から見て種々の未解決の問題が存在している.現在もっとも重要視されていることの一つは,重度の身体障害者,特に脳性麻痺者における障害の二次的増悪である.すなわち,以前から存在する運動障害が,ある時期を境として一層悪化し始める場合もあれば,感覚障害(しびれ,痛みなど)が新たに加わる場合も多い.そして,その結果,労働能力が一層低下するだけでなく,日常生活の自立度まで低下し,日常生活に著しい介助を必要とする状態に陥る者も少なくない. すでに成人脳性麻痺者,特にアテトーゼ型には二次的な頸椎症が起こり,頸髄そのものの圧迫または頸髄神経根の圧迫により種々の症状を生ずることが知られている.しかし,二次的な障害増悪がすべてこの頸椎症で説明できるものではないようであり,さらに詳細な研究が必要である. また逆に,働くことがこのような二次障害の発生を助長しているのかどうかという問題も検討する必要がある.廃用症候群の重要性が再認識されつつある現在,たとえ重度障害者であっても働くことには心身にプラスの意味があるに違いない.しかし一方,働きすぎ(過用,過労)がいけないことも当然である.問題は重度障害者における労働が心身の健康を増進するものであって,わずかなりともそれにマイナスとなるものでないように,作業の種類,作業姿勢,労働時間,労働密度,休憩時間,休憩の在り方などを定めることであり,それには労働医学的な研究が十分なされなければならない. 以上のような問題意識をもって,1990年,共作連の調査研究事業の一部として障害者労働医療研究会が結成された.同研究会には脳性麻痺部会と精神障害部会を置き,前者においては主として上述の二次障害問題を,後者においては精神障害者にとっての共同作業所の機能・役割,また障害に視点を当てた処遇上の医療的な配慮などについての研究を進めている. そして,障害者労働医療研究会の最初の仕事として,以上のような問題意識に基づいて脳性麻痺者の二次障害の実態調査を行った.その詳細は報告書としてまとめられているが,ここではその概要を紹介する.なお,この研究では小規模作業所と授産施設との間の差を見る目的もあって,前者の全国的連合体である共作連と授産施設の全国連合体である社団法人全国コロニー協会(以下,ゼンコロ)との協力を得て行った.
著者
浅山 滉 中村 裕 緒方 甫 森田 秀明 児玉 俊一 畑田 和男
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.121-130, 1984-06-01
被引用文献数
1

国際障害者年を記念して, 初の大分国際車いすマラソン大会(ハーフマラソン:21.1km)が催された. 参加各国選手から任意に選んだ選手を対象に, 大会における選手の体力医学的検討を行った. 脊髄損傷による対麻痺者は体力の向上が望まれるが, 病態生理学的に問題が多く, 持久的体力を必要とする運動には危惧の念があった. 予備試験で車いすトレッドミルの負荷テストを行い, 各人の心拍数と酸素消費量(V0_2)の相関式を得て, 実際のレース時に装着した心拍数記憶箱から得られた値を基に, レース中の推定V0_2を得た. (結果)平均87.1±9.1分間(n=5)にV0_2-34.17+8.11ml/kg/minであり,レース中の高い心拍数(191-152拍/分)の割には低いV0_2であった, 脊損者は事故もなくこの持久運動に十分に耐え, 車いすマラソンは対麻痺者の体力向上に優れたスポーツであると考えられたが, 被検者は体力向上の余地があると思われた.
著者
河津 隆三 田島 文博 牧野 健一郎 大川 裕行 梅津 祐一 赤津 嘉樹 緒方 甫
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-21, 1999-03-01

これまで,車いすフルマラソンでは,選手の握力などの上肢筋力がレースタイムに影響することが報告されている。しかし,車いすハーフマラソンでは上肢筋力とレースタイムの関係を調査した報告はない。今回我々は大分国際車いすハーフマラソン部門に参加した4人の選手を対象にして,肘伸展筋力の等運動性筋力測定を,毎秒60°,120°,240°の角速度で行った。選手は全員完走し,そのレースタイムとピークトルク値を比較した。我々の測定では肘伸展筋力と車いすマラソンレースタイムとの間には全ての角速度において有意な相関を認めたが,肘屈曲筋力については相関はみられなかった。この結果より,車いすハーフマラソンにおいて幅広い角速度での筋力強化がレースタイムの改善に有用であることが考えられた。
著者
緒方 甫 田島 文博
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

障害者スポーツは、脊髄損傷対麻痺者(脊損者)の精神・身体的能力の強化などを助け、身体障害者の社会参加、社会復帰につながる。一方、脊損者では易感染性が指摘され、一般に免疫力低下も危惧されている。免疫系の中で、Natural killer(NK)細胞は免疫能の一つの指標として広く、その活性は運動の影響を受けやすい。そこで、脊損者において車いすスポーツが免疫系に与える影響の一端を調査する目的で、過酷な運動である車いすフルマラソン(フル)と比較的適度な運動であるハーフマラソン(ハーフ)におけるNK細胞活性を測定した。被験者は大分国際車いすマラソン大会フル部門参加の男性脊損者9名とハーフ部門参加の男性脊損7名、コントロールとして競技に参加しない脊損7名とした。フル・ハーフ競技者は競技前日、終了直後、翌目に血液を採取し、コントロール群も同一のプロトコールで採血を施した。フル競技者のNK細胞数(310±130/μl)およびNK細胞活性(42.6±3.0%)は、それぞれ133±61/μlと38.2±3.2%へ競技直後低下し(P<0.05)、翌日には前値に回復した。血中アドレナリン、コルチゾール濃度は競技直後に増加し(P<0.05)、翌日には前値に戻った。一方、ハーフ競技者では、NK細胞数は競技直後も翌日も変化を認めず、NK細胞活性が45.5±7.5%から56.1±5.1%へ上昇(P<0.01)し、翌朝も上昇が保たれた。血中アドレナリン濃度はレース直後上昇し(P<0.05)、翌朝には前値に回復した。コルチゾールは変化しなかった。コントロール群ではいずれの項目も変化を認めなかった。NK細胞活性がフルでは低下しハーフでは上昇する結果は、運動負荷量の違いによるものであると考えられる。機序としては、コルチゾール濃度がフルのみで上昇したため、これがNK細胞活性低下に寄与したと推察される。本研究の結果から、ハーフでは特に格段の配慮は必要ないようであるが、フル競技者はゴール後も少なくとも翌日までは感染に留意することが推奨される。以上のように、本研究は障害者スポーツおける免疫動向を実用的な側面で予想を上回る成果をあげることができた。
著者
田中 正一 緒方 甫 蜂須賀 研二
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.369-372, 1990-09-01
被引用文献数
3

北九州市における地域リハビリテーション・システムを検討する目的で, 北九州市立障害福祉センターが行っている巡回機能訓練の実態調査を行った. 対象は巡回機能訓練に参加している52名(男性30名,女性22名)で平均年齢は61.2歳であった. 調査として, 面接による参加者のプロフィール, ADL評価(Barthel Index), QOL評価を行った. 訓練には満足している人が多く, その理由として, 同病の仲間の存在や外出の機会となる点をあげている反面, 訓練回数が少ないという不満があった. ADL評価は高得点でほぼ自立していたが, QOL評価は中等度の得点であった. 今回の調査から, 匡療との適切な業務分担と連携, 医療とは異なった観点からの訓練プログラムの作成, 訓練参加メンバーの長期固定化という検討課題が明らかとなった.(1990年5月15日 受付,1990年6月12日 受理)