著者
越智 光宏 大橋 浩 蜂須賀 研二 佐伯 覚
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.215-221, 2017-09-01 (Released:2017-09-14)
参考文献数
12
被引用文献数
3 5

脳卒中のリハビリテーションにおいて,心身機能・身体構造・活動・参加の状態に基づき総合的な健康状態を把握することは重要である.Stroke Impact Scale (SIS)は脳卒中に特異的な,新しい総合的な健康状態の評価法であり,Duncanらの開発により現在version 3.0が発表され,リハビリテーションのquality of life (QOL)を中心とした評価などに広く用いられている.SIS version 3.0は9つの大項目の質問 (筋力,手の機能,日常生活動作/手段的日常生活動作,移動,コミュニケーション,感情,記憶と思考,参加,回復)からなる.回復以外の8項目には小項目の質問があり,過去1から4週間に患者自身が経験した,各質問項目を完了する難しさを1-5点の5段階尺度で評価し,回復は1から100までのビジュアルアナログスケールで,原則,患者自身が評価し回答する.各項目の値 (素点)をマニュアルに沿い,100点満点の大項目スコアに換算する.SIS version 3.0の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を慢性期脳卒中片麻痺患者32例を対象として検討した結果,十分な内的整合性 (Cronbachʼs α < 0.70) と再検査信頼性 (intraclass correlation coefficient 0.86-0.96)を認めた.SIS version 3.0の身体スコアは片麻痺の評価法であるBrunnstrom stage (0.49 < r < 0.53) と,健康関連QOLの評価であるshort form 8 (r = 0.82) との間に有意な相関 (Spearmanの順位相関係数,P < 0.05) を認め,十分な収束的妥当性を認めた.SIS version 3.0の臨床的有用性は高く,リハビリテーションの治療効果判定などで活用されることが期待される.
著者
賀好 宏明 舌間 秀雄 木村 美子 佐伯 覚 蜂須賀 研二
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.71-79, 2009-03-01

重度な四肢麻痺を呈し,回復が遅延した軸索型ギランバレー症候群の4例を報告する.症例はいずれも男性であり,臨床経過,電気生理学的検査などにより軸索型ギランバレー症候群と診断された.3例において痛みが問題となり,2例においてクレアチンキナーゼの著明な上昇を認めた.1例に手指の拘縮を認め,2例が呼吸筋の麻痺により人工呼吸器管理となった.極期から退院までの機能的重症度分類において改善を認めたのは2例であった。同様に日常生活活動で改善を認めたのは2例であった.軸索型ギランバレー症候群の急性期理学療法においては疾患特性をよく理解し,患者の心理面に配慮したアプローチが重要であると考えられた.
著者
蜂須賀 研二
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.642-647, 2002-10-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
30
被引用文献数
7 5
著者
内田 真紀子 蜂須賀 研二 小林 昌之 堂園 浩一朗 田中 正一 緒方 甫 野田 昌作
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.326-329, 1996-05-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
15

We report a 19-year-old man suffering from acute poliomyelitis induced by the attenuated strain of type 3 polio virus. As he had severe muscular weakness in the right lower limb and slight weakness in the left lower limb, we prescribed the following rehabilitation program: active assistive or manual resistive exercises for his right lower limb, resistive exercises for his left lower limb, and gait training with a knee-ankle-foot orthosis. As only two or less than two cases of acute poliomyelitis a year have been reported in Japan, we are following up this patient from the standpoint of preventing post-polio syndrome.
著者
森 俊子 岡崎 哲也 蜂須賀 研二
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.281-286, 2013-07-25 (Released:2013-07-25)
参考文献数
8

要旨:前脳基底部健忘は,重度の前向性および逆向性健忘・人格変化を伴う作話・見当識障害・病識の欠如を特徴とする.今回経験した3症例では,前脳基底部に損傷が比較的限局した症例では,作話や記憶障害を認めたが遂行機能障害はなく,人格変化は比較的軽度で薬物により症状は改善した.一方前脳基底部を含めて前頭葉にまで病変が広がっている場合,遂行機能障害の合併,多動や多幸感などの人格変化,作話の持続が長い傾向があった.健忘の重症度やリハビリの効果においては両者で大きな違いはなく,エピソード記憶の改善は少なかったが,スケジュールノートを利用した反復訓練により日課的な日常生活は支障なく可能となった.
著者
蜂須賀 研二
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.184-192, 2014-06-30 (Released:2015-07-02)
参考文献数
40
被引用文献数
1

Marin はアパシーを意識障害,認知障害,感情障害によらない動機付けの減弱と定義し,Levy & Dubois は1)情動感情処理障害によるもの,2)認知処理障害によるもの,3)自己賦活障害によるものの3 タイプに分類した。アパシーは臨床症状にもとづき診断され,やる気スコア,Neuropsychiatric Inventory,必要に応じて標準意欲評価法を用いて評価されるが,MRI や脳受容体シンチグラフィーで客観的に責任病巣を確認する必要がある。薬物療法としてドパミン系薬剤,ノルアドレナリン系薬剤,アセチルコリン系薬剤が用いられる。非薬物療法としては,促し,チェックリスト,面接と外的代償,行動の構造化,音楽療法等の報告はあるが十分なエビデンスはない。今後,原因疾患,責任病巣とアパシーのタイプ,重症度とその経過に配慮して,訓練方法の研究が必要である。
著者
榊 泰輔 蜂須賀 研二
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.180-183, 2006 (Released:2008-06-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

急激なテンポで社会の高齢化が進む中,医療・介護の現場でロボット技術への期待が膨らんでいる.高齢者に発症が多い脳卒中では片麻痺により歩行が困難になる例が多く,自立支援・社会復帰をめざすリハビリテーションが施されるが,長時間・頻回の訓練を実現するにはロボット等の活用が考えられる.理学療法士が担当する運動療法において,特に歩行機能の回復を支援するロボットの課題について述べる.
著者
飯田 真也 加藤 徳明 蜂須賀 研二 佐伯 覚
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.202-207, 2018-04-25 (Released:2018-05-18)
参考文献数
8
被引用文献数
1

現在,高齢運転者の認知症対策を強化した改正道路交通法が施行され,ニュース等で取り上げられる高齢者の自動車運転に関する話題も多い.自動車運転は「知覚→判断・予測→運動」に至る複合的な機能が動員される複雑な作業であり,本稿ではまず,高齢者の運転特性について,次に高齢者の運転適性を行うにあたり路上運転評価よりはるかに簡便な簡易自動車運転シミュレーターを使用した自動車運転に必要と考えられる高齢者の認知機能面の特徴について論述する.
著者
田中 宏太佳 緒方 甫 蜂須賀 研二 合志 勝子 丸山 泉
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.459-463, 1990-11-18
被引用文献数
5

健常中高年男性を対象に,万歩計での歩行量の測定と体部CTでの大腿中央部の筋横断面積の算出,それにCybex IIでの大腿四頭筋とハムストリンクスの筋ピーク・トルク値の計測を行った.日常生活の活動性中等度群(1日平均歩行量4.0×10^3以上8.0×10^3未満)の大腿四頭筋の筋ピーク・トルク値の平均は,軽度群(1日平均歩行量4.0×10^3未満)に比べて有意に大きかった.筋横断総面積やハムストリンクスの横断面積の値は,日常生活の活動性中等度群では軽度群に比べて有意に大きかった.したがって健常中高年者では廃用性筋萎縮を防ぐために,1日約4.0×10^3以上の日常生活の活動性を維持することが大切である.
著者
安藤 徳彦 上田 敏 石崎 朝世 小野 浩 大井 通正 緒方 甫 後藤 浩 佐藤 久夫 調 一興 菅井 真 鈴木 清覚 蜂須賀 研二 山口 明
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.979-983, 1991-10-10

はじめに 障害者が健常者と同様に働く権利を持っていることは現在は当然のこととされている.国連の「障害者の権利に関する宣言」(1975年12月9日)第7条には「障害者は,その能力に従い,保障を受け,雇用され,また有益で生産的かつ十分な報酬を受け取る職業に従事し,労働組合に参加する権利を有する」と述べられている.また国際障害者年(1981年),国連障害者の10年(1983~1992年)などの「完全参加と平等」の目標を実現するための行動綱領などにも常に働く権利が一つ重要なポイントとして掲げられている. また現実にも,障害者,特に重度の障害者の働く場はかなり拡大してきている.障害者の働く場は大きく分けて①一般雇用,②福祉工場,授産施設など,身体障害者福祉法,精神薄弱者福祉法,精神保健法などの法的裏づけのある施設での就労(福祉工場では雇用),③法的裏づけを欠くが,地域の必要から生まれた小規模作業所での就労,の3種となる.このうち小規模作業所は,共同作業所全国連絡会(以下,共作連)の調査によれば,全国に約3,000か所,対象障害者約3万人以上に及んでおり,この数は現在の授産施設数およびそこに働く障害者数のいずれをも上回っている.小規模作業所で働いている障害者は,一般雇用はもとより,授産施設に働く障害者よりも障害が重度であったり,重複障害を持っている場合が多い.その多くは養護学校高等部を卒業しても,その後に進路が開けなかった人々であり,彼らの就労の場として小規模作業所が開設されたわけであるが,それは親たちや養護学校の教師たちの運動で自主的につくられてきた施設が多い.また最近まで就労の道が開かれていなかった精神障害者に対し,以前から広く門戸を開いてきたのも小規模作業所であり,その社会的役割は非常に大きい. しかし,障害者が働くことに関しては,医学的側面から見て種々の未解決の問題が存在している.現在もっとも重要視されていることの一つは,重度の身体障害者,特に脳性麻痺者における障害の二次的増悪である.すなわち,以前から存在する運動障害が,ある時期を境として一層悪化し始める場合もあれば,感覚障害(しびれ,痛みなど)が新たに加わる場合も多い.そして,その結果,労働能力が一層低下するだけでなく,日常生活の自立度まで低下し,日常生活に著しい介助を必要とする状態に陥る者も少なくない. すでに成人脳性麻痺者,特にアテトーゼ型には二次的な頸椎症が起こり,頸髄そのものの圧迫または頸髄神経根の圧迫により種々の症状を生ずることが知られている.しかし,二次的な障害増悪がすべてこの頸椎症で説明できるものではないようであり,さらに詳細な研究が必要である. また逆に,働くことがこのような二次障害の発生を助長しているのかどうかという問題も検討する必要がある.廃用症候群の重要性が再認識されつつある現在,たとえ重度障害者であっても働くことには心身にプラスの意味があるに違いない.しかし一方,働きすぎ(過用,過労)がいけないことも当然である.問題は重度障害者における労働が心身の健康を増進するものであって,わずかなりともそれにマイナスとなるものでないように,作業の種類,作業姿勢,労働時間,労働密度,休憩時間,休憩の在り方などを定めることであり,それには労働医学的な研究が十分なされなければならない. 以上のような問題意識をもって,1990年,共作連の調査研究事業の一部として障害者労働医療研究会が結成された.同研究会には脳性麻痺部会と精神障害部会を置き,前者においては主として上述の二次障害問題を,後者においては精神障害者にとっての共同作業所の機能・役割,また障害に視点を当てた処遇上の医療的な配慮などについての研究を進めている. そして,障害者労働医療研究会の最初の仕事として,以上のような問題意識に基づいて脳性麻痺者の二次障害の実態調査を行った.その詳細は報告書としてまとめられているが,ここではその概要を紹介する.なお,この研究では小規模作業所と授産施設との間の差を見る目的もあって,前者の全国的連合体である共作連と授産施設の全国連合体である社団法人全国コロニー協会(以下,ゼンコロ)との協力を得て行った.
著者
一瀬 豊日 中村 早人 蜂須賀 研二
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.47-52, 2013-10-01
被引用文献数
1

平成25(2013)年6月1日現在で産業医科大学医学部は2,875名の卒業生を輩出している.うち産業医として就業している人が526名,修学資金返還免除対象職務となる本学教員252名,労災病院219名,健診中心の労働衛生機関84名となっている.義務年限中の職種として多い臨床研修医を含めた卒後の修練医等は473名である.卒業生産業医は全国に分布している.その多くは日本の大規模事業所の分布にほぼ一致する太平洋ベルト地帯を中心とした都市圏である.この10年程度の卒業生産業医数の増加は義務年限を修了しても産業医を継続する者が多くなった結果,従事者数が増加したことが大きく影響しており,要因として卒後修練課程の充実や修学資金が考えられるが,多くの要因が含まれているので単純単一の要因として導くことは難しい.企業の産業医を経験した教員,労災病院医師や開業医等による産業医育成能力向上や産業保健体制充実の影響もあると考えられ,今後これらの分析も進める必要がある.
著者
蜂須賀 研二
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.269-273, 2007 (Released:2011-07-05)
参考文献数
8
被引用文献数
2

【要旨】高次脳機能障害があり自動車運転をして自損事故を生じた2症例を報告する。症例1は脳出血後の左片麻痺で半側空間無視を有する患者であり、医師の運転禁止の助言を守らず自動車運転を再開し自損事故を起こした。症例2は外傷性脳損傷患者であり、症例1の経験を踏まえ自動車運転適性評価と再開手順を定め、これに準拠して運転再開したが自損事故を生じた。安全運転助言検査を用いて外傷性脳損傷者の自動車運転特性を分析すると、外傷性脳損傷患者は健常者よりも認知反応時間のばらつきが大きいことが判明した。高次脳機能障害者の自動車運転は社会的にも重要な問題であり、今後の学際的臨床研究が必要である。
著者
田中 正一 緒方 甫 蜂須賀 研二
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.369-372, 1990-09-01
被引用文献数
3

北九州市における地域リハビリテーション・システムを検討する目的で, 北九州市立障害福祉センターが行っている巡回機能訓練の実態調査を行った. 対象は巡回機能訓練に参加している52名(男性30名,女性22名)で平均年齢は61.2歳であった. 調査として, 面接による参加者のプロフィール, ADL評価(Barthel Index), QOL評価を行った. 訓練には満足している人が多く, その理由として, 同病の仲間の存在や外出の機会となる点をあげている反面, 訓練回数が少ないという不満があった. ADL評価は高得点でほぼ自立していたが, QOL評価は中等度の得点であった. 今回の調査から, 匡療との適切な業務分担と連携, 医療とは異なった観点からの訓練プログラムの作成, 訓練参加メンバーの長期固定化という検討課題が明らかとなった.(1990年5月15日 受付,1990年6月12日 受理)