- 著者
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羽田 亨
- 出版者
- 日本財政学会
- 雑誌
- 財政研究 (ISSN:24363421)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.294-310, 2005 (Released:2022-07-15)
- 参考文献数
- 7
地域を越えて汚染物質あるいは汚染源が移動して環境汚染による負の外部性が地域間で相互に及ぶ状況を想定する。このとき,各地域の地方政府に地方環境税の税率の自主決定権を与える完全な分権的環境税システムにおいて,汚染物質が越境移動するケースでは,最適な水準に比べて過小な水準に,汚染源が越境移動するケースでは,過大な水準に税率が設定されることにより非効率が発生する。また,全地域一律に均一税率を適用する中央集権的環境税システムも効率的ではない。各地域の地方政府が設定できる地方環境税の税率に上限および下限を設けて,その範囲内で自由な税率の選択を認める部分的な分権的環境税システムが,一定の条件のもとで中央集権的環境税システムおよび完全な分権的環境税システムに対して優位な制度であることを示す。