- 著者
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家島 彦一
黒木 英充
羽田 亨一
上岡 弘二
川床 睦夫
飯塚 正人
山内 和也
- 出版者
- 東京外国語大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1998
本調査の主たる目的は、イスラム圏における統合と多様性のメカニズムを理解する-助として、当地における交通システムの歴史的変容を解明することであった。この目的を達成すべく、1988年度から2000年度にかけて-連の現地調査と文献調査を実施した結果、以下のような重要な研究成果を得ることができた。1.1988年度から2000年度にかけて行った南イラン・ザグロス山脈越えの古いキャラバン道調査では、バーチューン、アーザーディガーン、ローハーニーなどの地で、これまで記録のなかったキャラバンサライ(隊商宿)、水場、拝火神殿、石碑、城塞等の新たな歴史的遺跡群を発見した。この調査によって初めて、シーラーズ・シーラーフ間の正確なルートが明らかになった。2.2000年初頭に行ったエジプト南部のクース/エドフー(ナイル渓谷)〜アイザーブ(紅海岸)を結ぶキャラバン道調査では、イブン・ジュバイル、アブー・カースィム・アル=トゥジービー、イブン・バットゥータといったアラビア語メッカ巡礼書に登場する地名の同定に成功するとともに、新たな歴史遺跡数か所を発見。時代と場所を確定し、GPSを用いて図面に記録した。また、アバーブダー部族のベドウィンから当地の聖者廟に関する情報を得た。3.2001年初めに行ったホルムズ海峡からオマーンにかけての現地調査では、カルハート、ミルバート、スハールなどの港市遺跡を訪れるとともに、外国人労働者ネットワークの最近の動向について調査を行った。その結果、港湾における諸活動や人間移動の構造と機能は過去も現在もそう変わっていないことが明らかになった。この地域ではまた、最近のダウ船による貿易とダウ造船業の現況に関する調査も実施した。以上の成果を総合した結果、イスラム圏における共生と接触のダイナミズムをより深く理解するためには、交通システムに関する調査が今後も必要不可欠であることが確認された。