- 著者
-
茅野 恒秀
阿部 晃士
- 出版者
- 東北社会学会
- 雑誌
- 社会学年報 (ISSN:02873133)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, pp.31-42, 2013-07-19 (Released:2014-08-31)
- 参考文献数
- 7
- 被引用文献数
-
5
東日本大震災によって,岩手県大船渡市は人口の約1%にあたる住民が死者・行方不明者となり,7割近い人が住居や仕事に震災の影響を受けた.市は早くから復興計画策定に取り組み,震災発生から40日後の2011年4月に基本方針を,7月に復興計画骨子を決定し,10月に復興計画を決定した. 市は基本方針で市民参加による復興を掲げ,市民意向調査やワークショップ,地区懇談会などの手法を用いて復興計画に住民の意見を反映させることを試みた.しかしながら広域かつ甚大な被害に対して速やかな生活環境の復旧が強く求められる状況下,市は復興計画を早急に策定するという目標を設定する一方,国等からの復興支援策が具体化せず数度にわたりスケジュール変更を余儀なくされた.このため,復興計画の詳細にわたる充分な住民参加の実現という点では課題を残した. 筆者らの意識調査によれば,住民は復興計画に強い関心を持つが,自ら策定過程に参加した人はごく限られており,丁寧な住民参加・合意形成を前提としたボトムアップ型の復興と,行政のリーダーシップの下でのスピード感あるトップダウン型の復興とを望む対照的な住民意識があることが明らかになった.今後,地区ごとの復興が進められる段階で,復興に対する意識がどのように推移していくか,見守っていく必要がある.