著者
茅野 恒秀
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集 = Shinshu studies in humanities (ISSN:24238910)
巻号頁・発行日
no.7, pp.99-123, 2020-03

日本各地に再生可能エネルギーが急拡大するとともに「メガソーラー」の存在が定着しつつある。しかし、とりわけ山林開発を伴う事業をめぐって社会紛争が増え、推進側と反対側、そして土地所有者との間での社会的亀裂を生じさせている事業も少なくない。 本稿は、全国のメガソーラー問題の多くが、共有地の性格を有してきた土地に外来型開発として計画・建設されていることに着目し、地租改正や農地改革など近代的土地所有制度の確立過程、そして高度成長期・バブル経済期の国土開発など、土地問題を規定する政策や動向の連続線上にメガソーラー問題を位置づける。そのための方法として、まず立地地域における人と自然との関係を規定してきた環境史・開発史を明らかにし、その知見をもとに問題を分析した。 長野県諏訪市四賀に計画されている長野県下最大級のメガソーラー事業は、近世以来の入会林野・牧野を戦後に分割解放した土地に計画された。この事業を事例に、土地所有者である地元牧野農業協同組合を取り巻く社会的状況の分析を行い、牧野から林野へ、そして観光開発へと資源利用の転換が起こる中で旧来より山元として有していた地位がことごとく裏目に出た結果として、メガソーラー事業への土地売却が企図されたことが推論できた。
著者
茅野 恒秀
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集 (ISSN:13422790)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.99-123, 2020-03-15

日本各地に再生可能エネルギーが急拡大するとともに「メガソーラー」の存在が定着しつつある。しかし、とりわけ山林開発を伴う事業をめぐって社会紛争が増え、推進側と反対側、そして土地所有者との間での社会的亀裂を生じさせている事業も少なくない。 本稿は、全国のメガソーラー問題の多くが、共有地の性格を有してきた土地に外来型開発として計画・建設されていることに着目し、地租改正や農地改革など近代的土地所有制度の確立過程、そして高度成長期・バブル経済期の国土開発など、土地問題を規定する政策や動向の連続線上にメガソーラー問題を位置づける。そのための方法として、まず立地地域における人と自然との関係を規定してきた環境史・開発史を明らかにし、その知見をもとに問題を分析した。 長野県諏訪市四賀に計画されている長野県下最大級のメガソーラー事業は、近世以来の入会林野・牧野を戦後に分割解放した土地に計画された。この事業を事例に、土地所有者である地元牧野農業協同組合を取り巻く社会的状況の分析を行い、牧野から林野へ、そして観光開発へと資源利用の転換が起こる中で旧来より山元として有していた地位がことごとく裏目に出た結果として、メガソーラー事業への土地売却が企図されたことが推論できた。
著者
茅野 恒秀 阿部 晃士
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.31-42, 2013-07-19 (Released:2014-08-31)
参考文献数
7
被引用文献数
5

東日本大震災によって,岩手県大船渡市は人口の約1%にあたる住民が死者・行方不明者となり,7割近い人が住居や仕事に震災の影響を受けた.市は早くから復興計画策定に取り組み,震災発生から40日後の2011年4月に基本方針を,7月に復興計画骨子を決定し,10月に復興計画を決定した. 市は基本方針で市民参加による復興を掲げ,市民意向調査やワークショップ,地区懇談会などの手法を用いて復興計画に住民の意見を反映させることを試みた.しかしながら広域かつ甚大な被害に対して速やかな生活環境の復旧が強く求められる状況下,市は復興計画を早急に策定するという目標を設定する一方,国等からの復興支援策が具体化せず数度にわたりスケジュール変更を余儀なくされた.このため,復興計画の詳細にわたる充分な住民参加の実現という点では課題を残した. 筆者らの意識調査によれば,住民は復興計画に強い関心を持つが,自ら策定過程に参加した人はごく限られており,丁寧な住民参加・合意形成を前提としたボトムアップ型の復興と,行政のリーダーシップの下でのスピード感あるトップダウン型の復興とを望む対照的な住民意識があることが明らかになった.今後,地区ごとの復興が進められる段階で,復興に対する意識がどのように推移していくか,見守っていく必要がある.
著者
茅野 恒秀
出版者
法政大学サステイナビリティ研究所
雑誌
サステイナビリティ研究 (ISSN:2185260X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.27-40, 2014-03

和文:2011年8月に成立した再生可能エネルギー特措法によって2012年7月に発足した「固定価格買取制度 (FIT)」は、エネルギー転換に向けた大きな節目と期待される一方、再生可能エネルギーが豊富に賦存する東北地方では、以前から「風力植民地」と形容されるように、中央資本の進出による再生可能エネルギー資源の開発が主流となってきた。本稿は、岩手県を事例に、FIT導入後に県内で展開される再生可能エネルギー事業の動向把握を試みた。岩手県は再生可能エネルギーによる電力自給率を2020年までに35%に引き上げる計画を持ち、大規模太陽光発電所(メガソーラー)用地に関する情報を集約・公表するなど、再生可能エネルギーの立地を推進している。2012年、買取価格が決定すると、多くの企業が県外から進出し、40以上にのぼるメガソーラーの立地が相次いだ。筆者の集計ではメガソーラー事業の85%以上が、県外企業によるものか、県外企業が関与するものであることが明らかになった。風力発電や木質バイオマス発電などにおいても県外企業の進出がほとんどである。現在の FIT 制度の下では、設備の大型化によって多くの収益を確保しようとする事業者の進出が促進されており、初期投資の巨大化、「早い者勝ち」の状況が形成され、地元企業の参入の道が閉ざされる可能性を秘めていることを指摘した。英文:The July 2012 introduction of the feed-in-tariff scheme for renewable energy in Japan is seen as a major milestone in the country's energy policy conversion. However, most renewable energy investment has been made by outside companies, and this is especially true for the nation's Tohoku region, which has significant potential in terms of renewable energy. Situation of Aomori Prefecture is derided "colonial of wind power generation". The aim of this paper is to clarify renewable energy business trends observed since the introduction of the feed-in-tariff scheme based on a case study of Iwate Prefecture in the Tohoku region. The Iwate Prefectural Government plans to increase the area's power self-sufficiency ratio by the use of renewable energy to 35% by 2020. To this end, it collects and publishes information on large-scale photovoltaic power generation sites (commonly known as "mega-solar" sites) to promote investment in renewable energy. Since the Ministry of Economy, Trade and Industry's 2012 setting of the purchase price for power produced from renewable energy, more than 40 mega-solar projects have been implemented. Over 85% of these have been funded by investment from outside companies or joint investment involving outside companies and local companies. The situation is similar for biomass power generation and wind power generation. The current feed-in-tariff scheme promotes the expansion of business with the intent of boosting revenue by increasing the scale of equipment used. The field is characterized by a need for massive initial investment and connection to the power grid on a first-come-first-served basis. As a consequence, there are concerns that local businesses are being shut out of investment in renewable energy.
著者
舩橋 晴俊 寺田 良一 中筋 直哉 堀川 三郎 三井 さよ 長谷部 俊治 大門 信也 石坂 悦男 平塚 眞樹 小林 直毅 津田 正太郎 平林 祐子 金井 明人 仁平 典宏 土橋 臣吾 宮島 喬 壽福 眞美 池田 寛二 藤田 真文 鈴木 宗徳 羽場 久美子 茅野 恒秀 湯浅 陽一 須藤 春夫 佐藤 成基
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-05-31

本年度は, 年度途中で廃止になったが, それでも, 下記の研究実績を上げることができた。【公共圏とメディアの公共性班】法政大学サスティナビリティ研究所内の「環境報道アーカイブス」に蓄積した東日本大震災及び福島原発関連の映像に付されたメタデータの分析を行った。分析から, 震災・原発関連番組の論点の変化や報道対象地域の偏りなどを見出した。【エネルギー政策班】『原子力総合年表一福島原発震災に至る道』を2014年7月に公刊した(すいれん舎刊)。また, 青森県下北半島における核燃料サイクル事業の動向を把握するため, 『東奥日報』を基に詳細年表を作成し, 地域社会の長期的な構造変動を追跡可能な情報基盤を整えた。エネルギー戦略シフトに関し, 各地の市民団体の調査および支援を実施した。【年表班】英文環境総合年表(A General World Environmental Chronology)を刊行した。英文による包括的な年表は世界初の試みであり, 環境問題に関する国際的なデータベース構築の第一歩を記した。また, その年表の成果をもとに, 7月に国際シンポを開催し, 各国の研究者との交流を図った。【基礎理論班】2013年12月に開催した国際シンポと講演会を基に, 論文集『持続可能な社会に向かって―ドイツと日本のエネルギー転換(仮題)』(法政大学出版局, 2015年)の編集作業を継続している。並行して, 『ドイツ・エネルギー政策の形成過程1980~2014―資料集』(新評論, 2015年)の本文編集作業はほぼ終了し, 現在は巻頭論文を執筆中である。【食・農と包括的コミュニティ形成班】学内の「食・農」に関する社会的活動拠点でもある「スローワールドカフェ」の活動に関与しながら, 個別に研究を進めてきた。研究成果は, 社会学部授業科目「社会を変えるための実践論」と「多摩地域形成論」に一定程度反映させてきている。