- 著者
-
舩橋 晴俊
- 出版者
- The Japan Sociological Society
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.1, pp.4-24, 2006-06-30 (Released:2009-10-19)
- 参考文献数
- 28
- 被引用文献数
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「理論形成はいかにして可能か」を問うためには, まず, 理論の役割とは何か, 理論の基本性格をいかに分類するかを考える必要がある.理論の役割には, 「規則性の発見と説明」「意味の発見」「規範理論の諸問題の解明」の3つがあり, 社会学理論は, 基本性格の差異に注目するならば, 「中範囲の理論」「基礎理論」「原理論」「規範理論」「メタ理論」の5つに分類することができる.理論形成を支える諸要因として, 学説研究, 実証研究, 問題意識と価値理念, メタ理論的な信念, 他の研究者との相互作用, 現実の社会問題との直面を提示できるが, これらが理論形成において果たす作用の比重は, 理論のタイプによって異なる.中範囲の理論や特定領域の基礎理論においては, 実証を通しての理論形成という方向づけに基づいた「T字型の研究戦略」が理論形成に有効であろう.この研究戦略に基づいて創造的な理論形成を達成したいくつもの先例が存在する.これに対して, 原理論においては, 独自の問題意識に基づいて, 先行研究の蓄積から鍵になる概念や論理を発掘し再編成することによって創造的な理論形成を成し遂げうるということが, 存立構造論によって例証される.中範囲の理論においては, 相対的に通常科学的な理論形成の比重が大きいのに対して, より根底的な水準の基礎理論や原理論においては, 認識の前提としての観点と価値理念の再定義を伴う科学革命的な理論形成が重要な意義を有する.