著者
解良 武士 河合 恒 大渕 修一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.227-233, 2019-07-25 (Released:2019-07-31)
参考文献数
41

サルコペニアの最初の概念が提唱されてから,サルコペニアの操作的定義はいくつかの変遷を経てきた.2018年,欧州連合学会(EWGSOP2)から新しいコンセンサスが発表された.新しいサルコペニアのコンセンサスの特徴は,筋力をより重視したことと,SARC-Fと呼ばれるスクリーニングツールを使うことを提唱していることである.本稿ではこのSARC-Fについて,その特徴,サルコペニアや他のスクリーニングツールとの関連,妥当性,さらにその問題などについて解説する.
著者
江尻 愛美 河合 恒 藤原 佳典 井原 一成 平野 浩彦 小島 基永 大渕 修一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.125-133, 2018 (Released:2018-04-03)
参考文献数
25

目的 本研究は,都市部の地域在住高齢者における社会的孤立の予測要因を縦断的に明らかにし,その予防策を検討することを目的とした。方法 2012年10月1日時点で東京都板橋区の9町丁目に在住する65歳から85歳の高齢者7,015人を対象として,郵送法による質問紙調査を行った。回答が得られた3,696人に対し,2014年に再度質問紙を送付し,2,375人から回答を得た。孤立は,「別居家族や友人等との対面・非対面接触頻度が合計で月2,3回以下」と定義した。その他の調査項目は,2012年の性,年齢,健康度自己評価,現病歴,手段的日常生活動作(IADL),外出頻度,団体参加頻度,家族構成,主観的経済状況とした。孤立の予測要因を検討するため,上記の調査項目と,2014年の孤立の有無との関連を,t検定,カイ二乗検定およびロジスティック回帰分析で検討した。結果 孤立に関してデータが完備した1,791人中,2014年の孤立者は348人(19.4%),非孤立者は1,443人(80.6%)だった。多変量のロジスティック回帰分析の結果,男性(調整オッズ比,95%信頼区間:1.88,1.41-2.50),加齢(1歳増加)(1.03,1.01-1.06),団体参加頻度が週1回以上の者と比較して,月1~3回の者(1.62,1.04-2.53),主観的な経済状況が苦労していない者と比較して,苦労している者(1.67,1.20-2.32),2012年の非孤立者と比較して,孤立者(10.24,7.60-13.81)と,孤立状態不明者(8.15,3.76-17.67)は,孤立の発現率の高まりと有意に関連していた。また,ベースライン時に孤立していなかった者において,男性(2.39,1.57-3.64),健康度自己評価が非常に健康である者と比較して,健康でない者(3.99,1.33-11.94)は,2年後に新たに孤立する可能性が有意に高かった。結論 都市高齢者の孤立を予防するためには,社会活動への定期的な参加が有効である可能性があり,孤立の危険性の高い高齢男性に対して活動への参加促進を図っていくことが効果的であると考えられた。
著者
江尻 愛美 河合 恒 安永 正史 白部 麻樹 伊藤 久美子 植田 拓也 大渕 修一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-155, (Released:2022-06-30)
参考文献数
27

目的 住民主体の通いの場の支援では運営に関わる住民の負担軽減と心理社会的健康の維持が必要である。本研究では,通いの場における役割の違いによる課題認識について把握し継続支援方法を検討すること,役割と心理社会的健康との関連を明らかにすることを目的とした。方法 2018年に,島嶼部を除く東京都内53区市町村の担当者を通じて住民主体の通いの場活動を行う自主グループへ調査員訪問による自記式質問紙調査への協力を依頼し,40区市町155グループ2,367人より回答を得た。グループの運営における役割は,グループのメンバーをまとめるリーダー,リーダーとともにグループを運営するサポーター,とくにグループの取りまとめに関する役割のない参加者の3種類から選択させた。対象者を,通いの場活動における課題(10種類)を1つでも感じている者とそうでない者に分けた。心理的健康はWHO-5精神的健康状態表を,社会的健康はLubben Social Network Scale短縮版(LSNS-6)を尋ねた。役割と認識している課題の内容との関連をカイ二乗検定で,役割および課題認識の有無と心理社会的健康の関連を二元配置共分散分析で検討した。結果 有効回答者数は2,096人で,リーダー174人,サポーター296人,参加者1,626人だった。課題を感じていない者は,リーダー8.6%,サポーター27.7%,参加者53.6%であり有意な関連が認められた(P<0.001)。リーダーは運営メンバー不足,グループの高齢化などの課題を参加者よりも多く認識していた。二元配置共分散分析の結果WHO-5とLSNS-6のいずれも役割の主効果のみ有意であり(いずれもP<0.001),役割と課題認識の交互作用は認められなかった(それぞれP=0.729, P=0.171)。役割間の多重比較の結果リーダーとサポーターは参加者よりWHO-5とLSNS-6の得点が有意に高かった。結論 通いの場において運営に関わる役割を担う者ほど活動時の課題を多く認識し,運営に関わる課題は役割間の認識の差が大きく,役割間での課題の認識のされやすさに応じた支援が有効であると考えられた。一方,課題認識の有無に関わらず,リーダーやサポーターは参加者より心理社会的健康が高かった。通いの場で役割を持つことが心理社会的健康に良い影響を与える可能性について今後は縦断研究による検証が期待される。
著者
桜井 良太 河合 恒 深谷 太郎 吉田 英世 金 憲経 平野 浩彦 鈴木 宏幸 大渕 修一 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.251-258, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
19

目的 本研究では,大規模郵送調査によって日常的に自転車を運転している高齢者の割合を明らかにした上で,(1)地域在住高齢者の自転車関連事故(自転車運転中の事故および歩行中の自転車に起因した事故)の発生率・傷害の程度および(2)傷害を負ったにもかかわらず警察に通報されていない事故,すなわち潜在的な自転車関連事故がどの程度存在するのかについて明らかにすることを目的とした。方法 住民基本台帳に基づいて東京都板橋区在住の高齢者7,083人に対して調査票を郵送し,調査を行った。性別,年齢,高次生活機能(老研式活動能力指標),過去 1 年間の自転車関連事故の発生の有無,自転車関連事故に伴う傷害の有無と警察への通報について質問紙にて調査した。この際,過去 1 年間の自転車関連事故の発生の有無については,自転車運転中と歩行中の自転車に起因した事故のそれぞれについて調査した。結果 返信された調査票(3,539人:回答率50.0%)から欠損回答のないものを抽出し,運転中の事故の解析については3,098人(平均年齢±標準偏差=72.8±5.6,女性53.9%)を解析対象とし,歩行中の自転車に起因した事故の解析については2,861人(平均年齢±標準偏差=72.8±5.6,女性54.0%)を解析対象とした。日常的に自転車を運転している高齢者は1,953人(解析対象高齢者の63.0%)であった。そのうち9.4%(184人)が自転車運転中の事故を経験しており,事故経験者の76.1%(140人)が何らかの傷害を負っていた。他方,歩行中では3.4%(98人)が自転車に起因した事故に巻き込まれており,そのうち55.1%(54人)が何らかの傷害を負っていた。また自転車運転中および歩行中の事故で“通院が必要となった傷害”を負った高齢者のうち,それぞれ70.2%(59人),76.9%(20人)は警察への通報をしていなかった。結論 日常的に自転車を運転している高齢者の9.4%が自転車乗車中に事故を経験しており,調査対象の3.4%の高齢者が歩行中に自転車事故の被害を受けていたことがわかった。また“通院が必要となった傷害”を負った高齢者であっても,約 7 割が警察に通報していないことが明らかとなった。ここから主管部局が管理している事故統計と実際に発生している傷害を伴う高齢者の自転車関連事故に大きな乖離が生じている可能性が示唆された。
著者
大渕 修一 新井 武志 小島 基永 河合 恒 小島 成実
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.185-190, 2009 (Released:2009-05-28)
参考文献数
14
被引用文献数
14 6

[目的]超音波画像計測装置を用いて測定した大腿前面の筋厚が,膝関節伸展筋力を含めた身体機能と関係しているのか,また筋厚から膝関節伸展筋力の推定が可能かを調査した。[対象]地域在住の女性高齢者98名とした(平均年齢72.7 ± 5.4歳)。[方法]対象者の大腿前面の筋厚を超音波画像計測装置にて計測した。また身体機能として,等尺性の膝関節伸展筋力(N),握力(kg),通常歩行速度(m/分),開眼片足立ち時間(秒),下肢のしなやか度を測定した。[結果]大腿前面の筋厚は膝関節伸展筋力,握力,開眼片足立ち時間と有意な正の相関が認められた。一方,重回帰分析の結果では,膝関節伸展筋力を予測する因子としては,大腿前面筋厚の寄与率は低いことがわかった。[結語]超音波画像計測装置で計測した大腿前面の筋厚は,地域在住女性高齢者の身体機能を反映する指標とはなりうるものの,膝関節伸展筋力を推定するためにはさらに検討が必要と考えられた。
著者
里見 佳昭 仙賀 裕 福田 百邦 河合 恒雄
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.909-916, 1984-06-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

腎細胞癌に対する化学療法の第4報として, インターフェロンの有効性について, リンパ芽球由来の human lymphoblastoid interferon (α型) を用いて検討した.1) 転移のある腎細胞癌患者19例に対し, 連日投与60回以上できた症例について効果を判定した. CRはなく, PR 2例, MR 3例, NC 4例, PD 5例で, 有効率は35.7% (5/14) と従来の抗癌剤にない高い有効率を示した. 現段階では腎細胞癌の第1選択薬剤として使用すべきと考える.2) 効果の発現は20回から60回投与の間で起こり, それ故, 効果の判定は60回以上投与後に行うべきと考える.3) 性, 年齢, 腫瘍の大きさは有効率を左右しない. low grade 症例は4/7の有効率であり, high grade 症例は1/7で, 特に low grade の腎細胞癌には第一選択剤として使用する価値のある薬剤である.4) 最大の副作用は全身倦怠と食欲不振で, しばしばこのために治療中止をせざるを得なくなる. 骨髄抑制はじめ他の副作用は軽微である.
著者
伊藤 久美子 河合 恒 西田 和正 江尻 愛美 大渕 修一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.22-083, (Released:2023-02-10)
参考文献数
11

目的 介護保険法改正により基準緩和型サービスが創設され,地域住民が担い手として介護サービスに参加できるようになったが,その具体的な方法は示されていない。我々は通所型サービス事業所(以下,事業所)に教育機能を付加し,地域住民をサブスタッフ(介護予防の一定の知識・技術と守秘義務を持ち,職員の支援のもと自立に向けたケアを有償で提供する補助スタッフ)として養成する「サブスタッフ養成講座(以下,養成講座)」を開発した。本報告では,養成講座を自治体の介護予防事業等で実施するために,実践例の紹介と調査を通して,実現可能性と実施上の留意点を検討した。方法 養成講座は4か月間のプログラムで,介護予防等の知識の教授を目的とした講義(1時間/回,全16回)と,サービス利用者のケアプランの目標や内容を把握し職員の支援のもと介護サービスを提供する実習(半日/回,全13回)で構成した。修了後の目標は事業所での活動や地域での介護予防活動とした。2015~2017年度に東京都A市,B市,千葉県C市の14事業所にて養成講座を実施した。評価は,修了率,養成講座参加前後の活動の自信・介護予防の理解度の変化と修了後の地域活動状況,サービス利用者が受講生から介護サービス提供を受けることによる精神的影響,事業所職員の仕事量軽減の認識について,受講生,サービス利用者へのアンケート,事業所職員へのインタビューにより行った。活動内容 養成講座修了者は104人中96人(修了率92.3%)であった。受講生へのアンケートの結果,参加前後で事業所での活動の自信や介護予防の理解度が有意に向上し,65.3%が修了後に事業所での活動を含む新しい地域活動の実施に至った。サービス利用者へのアンケートの結果,受講生から介護サービス提供を受けた利用者は受けていない利用者と比べ負の精神的な影響が多くなかった。養成講座を実施した事業所の85.7%が地域住民のサービス参加により仕事量が軽減されたと回答した。結論 養成講座は受講生の活動の自信・介護予防の理解度を向上させ,半数以上が新しい地域活動への実施に至っていた。受講生の介護サービスへの参加は利用者への負の影響が少なく,事業所にとっても仕事量軽減につながることが示唆された。これらのことから,養成講座の介護予防事業等での実現可能性は高いと考えられた。
著者
西田 和正 河合 恒 伊藤 久美子 江尻 愛美 大渕 修一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.17-25, 2022-01-15 (Released:2022-01-28)
参考文献数
26

目的 2015年度に介護予防・日常生活支援総合事業が導入され,住民主体の介護予防活動は,より重要性が増している。自治体の介護予防事業においても,終了後に参加者を住民主体の介護予防活動へ効果的に繋げることが必要である。本研究では住民主体の介護予防活動への参加を促進する取り組みを行った介護予防事業終了者の,その後の住民主体の介護予防活動への参加要因を明らかにすることを目的とした。方法 東京都A区の一般介護予防事業の2教室を対象とした。この教室では,心身機能改善とともに事業終了後の参加者の自主グループ化を支援するための学習やグループワークを導入している。本研究では,2016・2017年度に同事業参加者に対して実施した,事業開始3か月後(以下,T1)と事業終了6か月後(以下,T2)の自記式アンケートを分析した。有効回答数は216人(男性:51人,女性:165人,年齢:65-95歳)であった。T1では参加教室,健康度自己評価,基本チェックリスト,ソーシャル・キャピタルの「近隣住民との交流」,「グループや団体への参加の有無」,「近隣住民への信頼」,「近隣住民が他の人の役に立とうとすると思うか」を調査した。T2では住民主体の介護予防活動として,介護予防自主グループへの参加の有無を調査した。住民主体の介護予防活動への参加の有無と調査項目との関連をロジスティック回帰分析で検討した。結果 参加群は113人(52.3%),不参加群は103人(47.7%)であった。住民主体の介護予防活動への参加の有無を従属変数,各調査項目を独立変数として個別に投入した単変量のモデルでは,「参加教室」(オッズ比:0.31,95%信頼区間:0.15-0.63,P=0.001),「近隣住民への信頼」(オッズ比:5.30,95%信頼区間:1.46-19.16,P=0.011)が介護予防活動への参加と有意に関連していた。すべてを独立変数として投入した多変量のモデルでは,「参加教室」(オッズ比:0.29,95%信頼区間:0.14-0.62,P=0.001)が有意な関連要因であった。結論 事業における積極的な取り組みを通して約5割が住民主体の介護予防活動へ繋がっていた。住民主体の介護予防活動参加の関連要因は,「参加教室」であり,教室の開催頻度などプログラムの内容が事業終了後の住民主体の介護予防活動参加に影響すると考えられた。
著者
江尻 愛美 河合 恒 安永 正史 白部 麻樹 伊藤 久美子 植田 拓也 大渕 修一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.459-467, 2021-07-15 (Released:2021-07-20)
参考文献数
26

目的 住民主体の通いの場の増加に伴い,住民がよりよい活動を継続できるよう自治体や専門職が支援する「継続支援」の重要性が増している。しかし,有効な通いの場の継続支援方法に関する知見は十分に蓄積されておらず,通いの場参加者が活動時に感じている課題の内容についても明らかになっていない。そこで本研究では,参加者が抱える課題の内容を活動期間に基づいて分析し,活動の時期によって変化する課題を明らかにすることで継続支援の方法を考察することを目的とした。方法 2018年に,島嶼部を除く東京都内53区市町村の担当者を通じて住民主体の通いの場活動を行う自主グループへ調査員訪問による自記式質問紙調査への協力を依頼し,40区市町で活動する155グループ2,367人より回答を得た。通いの場における課題は,10種類の提示からあてはまるものを選択させた。活動期間は,自己申告を基に,1年未満,1年以上2年未満,2年以上4年未満,4年以上の4群に分類した。活動期間と課題認識の関連を検討するため,活動期間を独立変数(参照カテゴリ:1年未満),各課題の認識の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を,Crude,性・年齢で調整したModel1,Model1に加えてグループの活動内容で調整したModel2の3つのモデルで行った。結果 分析対象者は2,194人(男性14.5%,平均年齢76.9歳)だった。活動期間により有意差が認められた課題(オッズ比)は,2年以上4年未満群では,グループの高齢化(1.92),グループの運営メンバーの不足(1.61),参加者の健康・体調(1.47)であり,4年以上群では,グループの高齢化(3.24),グループの運営メンバーの不足(2.63),参加者の不足(2.12),参加者の健康・体調(1.95),活動内容のマンネリ化(1.62),場所の確保(1.48)だった。結論 通いの場の参加者が感じている課題は活動期間により異なっており,継続支援においては活動期間を考慮した支援を実施する必要性があることが示唆された。2年以上の段階では,高齢者特有の健康問題への対処についての情報提供,運営メンバー確保のためのマッチングが必要である。また,4年以上では口コミによる新規参加者獲得促進のため,参加効果を実感させる働きかけが必要である。
著者
影山 進 上田 朋宏 山内 民男 続 真弘 米瀬 淳二 河合 恒雄 井田 時雄
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.1021-1025, 1994-11

We present a case report of a relapse to the mediastinal lymph node alone, 38 months after orchiectomy on surveillance for stage I typical seminoma. The patient, a 63-year-old man, was treated with high inguinal orchiectomy for left testicular tumor and close follow-up. After 38 months from the initial treatment, the chest X-ray film and CT scan revealed mediastinal tumor. Fine needle aspiration cytology performed under the bronchoscopy showed seminoma cells. Complete remission was achieved after three courses chemotherapy of cisplatin, vincristine, methotrexate, peplomycin and etoposide (COMPE). He has continued to be clinically disease-free 8 months after completion of the treatment. According to the available data in the literature, 94% of the recurrences was detected within 3 years after orchiectomy, and 92% involved retroperitoneal lymph node metastases. This is a rare case who had a late relapse in the mediastinum alone.
著者
西原 賢 久保田 章仁 丸岡 弘 原 和彦 藤縄 理 高柳 清美 磯崎 弘司 河合 恒 須永 康代 荒木 智子 鈴木 陽介 森山 英樹 細田 昌孝 井上 和久 田口 孝行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0675, 2007

【目的】運動時の活動電位を観測する研究は多いが活動電位の伝導方向や神経筋の部位まで調べる試みは少ない。現在、画像診断で筋構造を大まかに観測することは可能であるが、神経または筋の神経支配領域までを調べるには不十分である。これらが調べられることによって、運動に関る神経・筋の機能的評価が可能となり、臨床上大変有用となる。さらに、神経の走行部位を予測して、筋肉注射時に神経損傷を予防する場合にも役立つ。そこで、これまでわれわれが開発した筋電図処理技術を応用して、神経や筋の組織解剖学的研究と照し合せながら本研究の検証を行う。<BR>【方法】19-22歳の健常人男性12人を対象にした。被験者は右手首に1kgの重垂バンドを装着し、肩屈曲30°肘屈曲90°で上腕二頭筋収縮、肩外転45°で三角筋収縮を1分間持続させた。上腕二頭筋では、被験者の内側上腕二頭筋の中心に双極アレイ電極を筋の方向に沿って取り付けた。三角筋では、肩峰から腋窩横線までの距離から下3/8の地点を中心に筋の方向に沿って取り付けた。各筋から4チャネルの生体アンプで検出した筋電図を計算機に保存した。筋電図原波形のうちの5秒区間を、本研究のために開発した計算機プログラムを用いて、設定閾値以上のパルスのピークを検出して加算平均した波形を算出した。チャネルによる加算平均パルスの向きの逆転(+側か-側か)や遅延時間の方向から(パルスが順行性か逆行性か)、電極装着部位を基準にした神経支配領域の位置を推定した。<BR>【結果】上腕二頭筋において、12被験者のうち8人で、加算平均パルスの向きの逆転があった。4人はパルスの向きの逆転は観測されなかったが、遅延時間が順行性に変化した。三角筋において、12被験者のうち、加算平均パルスの向きの逆転があったのは2人だけであった。残りのうち2人は遅延時間が順行性に、3人は逆行性に変化し、4人は解析困難であった。<BR>【考察】(1)上腕二頭筋の神経支配領域の推定:加算平均パルスの向きが逆転されたチャネル付近に神経支配領域が存在する。結果により、12被験者のうち8人の神経支配領域の位置が特定された。残り4人は電極装着部の近位に神経支配領域あることが考えられる。(2)三角筋の神経支配領域の推定:12被験者のうち2人だけが神経支配領域の位置の推定ができた。残りのうち2人は電極装着部の近位に、3人は遠位に神経支配領域があると考えられる。(3)上腕二頭筋と三角筋の比較:三角筋は上腕二頭筋と比較して神経支配領域の位置の特定が困難であった。上腕二頭筋は紡錘状筋で、筋線維は筋の方向に沿って均一に走行している。それに比べて三角筋は羽状筋に近く、筋線維は筋の方向に対して斜めで不規則に走行している。三角筋の場合はさらなる調査が必要であるが、かなり詳細な筋構造が皮膚表面で調べられることが明かになった。
著者
西田 和正 河合 恒 解良 武士 中田 晴美 佐藤 和之 大渕 修一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.518-527, 2020-08-15 (Released:2020-09-01)
参考文献数
28

目的 我々は,フレイル高齢者では,地域における役割がないことが,社会からの離脱を早め,二次的に心身機能維持の意欲が低下していると考え,地域保健モデルであるコミュニティアズパートナー(Community As Partner:CAP)に基づく介入によって地域における役割期待の認知を促す,住民主体フレイル予防活動支援プログラムを開発した。本報告では,このプログラムを自治体の介護予防事業等で実施できるよう,プログラムの実践例の紹介と,その評価を通して,実施可能性と実施上の留意点を検討した。方法 プログラムは週1回90分の教室で,「学習期」,「課題抽出期」,「体験・実践期」の3期全10回4か月間で構成した。教室は,ワークブックを用いたフレイル予防や地域資源に関する学習と,CAPに基づく地域診断やグループワークを専門職が支援する内容とした。このプログラムの実践を,地域高齢者を対象としたコホート研究のフィールドにおいて行った。基本チェックリストでプレフレイル・フレイルに該当する160人に対して案内を郵送し参加者を募集し,プログラムによる介入と,介入前後にフレイルや地域資源に対する理解度や,フレイル予防行動変容ステージについてのアンケートを行った。本報告では,参加率やフレイルの内訳,脱落率,介入前後のアンケートをもとにプログラムの実施可能性と実施上の留意点を検討した。結果 参加者は42人で(参加率26.3%),プレフレイル25人,フレイル17人であった。脱落者は10人であった(脱落率23.8%)。介入前後でフレイルの理解は5項目中4項目,地域資源の理解は,11項目中6項目で統計的に有意な向上を認めた(P<0.05)。フレイル予防行動変容ステージは,維持・向上したものが26人(81.2%)だった。結論 住民によるグループワークを専門職が支援するプログラムであっても,専門職が直接介入する従来型プログラムと同程度の約3割の参加率があった。一方,脱落率はやや高く,事前説明会で参加者に教室の特徴を理解させることや,教室中はグループワークに参加しやすくするための専門職の支援が重要であると考えられた。また,アンケート結果から,プログラムによってフレイルや地域資源への理解度が向上し,フレイル予防行動の獲得も示唆された。
著者
光武 誠吾 河合 恒 大渕 修一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100956, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】リテラシーとは、もとは読み書き能力のことを示す用語であるが、健康情報に関連した文脈におけるリテラシーは、ヘルスリテラシーと呼ばれ、健康づくりのために必要な情報を得て、適切に活用するための能力とされる。ヘルスリテラシーが高いことは、望ましい健康行動や身体的、精神的な健康状態の良さに影響することが示されており、米国の健康政策指標であるHealthy People 2020でもヘルスリテラシーの向上が重点分野の一つとして定められている。健康分野におけるヘルスリテラシーの影響や介入研究について英語で記載されている文献については文献研究が試みられているが、我が国におけるヘルスリテラシー研究について整理した報告は不十分である。欧米諸国に比べ、我が国は単一民族国家で識字率も高いことから、我が国でのヘルスリテラシー研究を整理することは意義がある。本研究では、我が国におけるヘルスリテラシー研究を概観し、ヘルスリテラシー研究に関する今後の課題を特定する。【方法】英語文献の検索には、米国国立医学図書館が提供する文献データベース MEDLINEを用い、"health literacy"と"Japan"をキーワードとした。また、日本語文献の検索には、医学中央雑誌(医中誌)を用い、「ヘルスリテラシー」をキーワードとして検索した。いずれのデータベースでも2012年11月15日を最終検索日とした。採択基準は、1.英語か日本語で記述、2.ヘルスリテラシーが主要な研究対象、3.我が国での研究、4.査読付き雑誌掲載論文、と設定し、タイトルと抄録、本文から論文の内容を筆者が精査した。MEDLINEでは31件、医中誌では21件の文献が抽出され、2つのデータベースで重複していた3件を調整し、合計で49件が検出された。そのうち、採択基準をすべて満たした26件と文献リストより、採択基準をすべて満たした2件、合計28件を文献研究の対象とした。【結果】ヘルスリテラシーの概念整理や米国における健康教育施策に関する紹介を目的とした文献研究が6件、ヘルスリテラシーの尺度開発や健康項目との関連を検討した横断的質問紙調査研究が16件、半構造面接等の質的分析手法を用いた研究が4件、介入による前後比較研究が2件であった。我が国で用いられているヘルスリテラシーの概念や尺度の多くは、Nutbeamが提案する機能的ヘルスリテラシー、相互作用的ヘルスリテラシー、批判的ヘルスリテラシーの3つから成るモデルに準拠していた。欧米では機能的ヘルスリテラシーに焦点を当てた尺度であるThe Test of Functional Health Literacy in Adults (TOFHLA)やRapid Estimate of Adult Literacy in Medicine (REALM)を用いることが多い一方で、我が国では、相互作用的、批判的ヘルスリテラシーに着目した尺度が開発され、質問紙調査にて用いられていることが多かった。また、Nutbeamのヘルスリテラシーモデルでは、ヘルスリテラシーは臨床場面において、患者の治療への理解や医療従事者と患者間のコミュニケーションに影響する「リスク」と、公衆衛生場面において、健康教育や健康づくりのアウトカムとして個人の健康を決定する「資産」として考えられている。我が国でも、臨床場面では糖尿病を呈した者を対象とし、公衆衛生場面では、会社員や市区町村における一般市民を対象とした研究も散見されるが、米国における研究の蓄積と比較すると不十分である。相互作用的、批判的ヘルスリテラシーの高さは、糖尿病患者における糖尿病の管理状態や自己管理に関する自己効力感の高さに関連があることが示され、一般成人では、健康的な生活習慣や適切なストレス対処行動にヘルスリテラシーの高さが関連することが示されていた。さらに、精神的な疾患のセルフケアに関連するメンタルヘルスリテラシーや健康情報の中でも栄養に関する情報に特定した栄養リテラシー、健康情報源の中でもインターネット上の健康情報を扱う能力であるeヘルスリテラシーといったより限定的な文脈でのヘルスリテラシーに関する概念整理や尺度開発が検討されていた。【考察】欧米と比較すると我が国は単民族国家で識字率も高いため、機能的ヘルスリテラシーよりも、相互作用的、批判的ヘルスリテラシーに着目した研究を今後も蓄積していくことが求められる。具体的には、多様な疾患を呈する者を対象とすること、大規模横断調査や縦断調査を用いて、より精度の高いヘルスリテラシーの役割に関する根拠を示していくこと、が課題として挙げられる。【理学療法学研究としての意義】臨床場面における患者との適切なコミュニケーションの確立や、健康づくりの促進のために、ヘルスリテラシーに合わせた健康情報の提供方法やヘルスリテラシーの教育プログラムを検討することは理学療法学研究においても意義深い。
著者
河合 恒祐 立川 昌子 後藤 新平
出版者
岐阜県畜産研究所
雑誌
岐阜県畜産研究所研究報告 (ISSN:13469711)
巻号頁・発行日
no.6, pp.49-54, 2006-07

近年、赤玉卵の需要が増加傾向にある。当所でロードアイランドレッド種(48系)雄とコロンビアンロック種(47系)雌との組合せから作出した高品質赤玉鶏(48×47鶏)と、市販外国銘柄2鶏種、さらに(独)家畜改良センター岡崎牧場および県内民間育種研究所の交配鶏について、産卵性と内部および外部卵質を重点に経済性調査を実施した。1.140日齢までの育成率は、いずれの区も95%以上の育成率であった。141日齢から448日齢までの生存率は、市販外国銘柄鶏(D)区が最も高く、次いでYA×LA区が高かった。2.50%産卵日齢は、市販外国銘柄鶏(D)区が最も早く、市販外国銘柄鶏(C)区が最も遅かった。3.ヘンディ産卵率、及びヘンハウス産卵個数で、市販外国銘柄鶏(D)区が最も優れ、次いで48×47区が優れていた。4.平均卵重は48×47区が、日産卵量は市販外国銘柄鶏(D)区が優れていた。5.飼料要求率は市販外国銘柄鶏(D)区が最も優れ、YA×LA区、48×47区が次いで優れていた。6.卵殻強度はA×B区及び市販外国銘柄鶏(C)区が、卵殻厚は市販外国銘柄鶏(C)区が優れていた。市販外国銘柄鶏(D)区では卵殻強度が他区より劣っていた。7.ハウユニット(HU)は市販外国銘柄鶏(D)区が最も高く、肉斑出現率はYA×LA区が最も少なかった。8.卵殻卵重比は市販外国銘柄鶏(C)区が、卵黄卵重比は48×47区が最も高かった。9.卵殻色については、48×47区が最も濃い傾向を示した。10.鶏卵1kg当たりの平均価格は、何れの区も213.0-214.6円/kgの間にあり、市販外国銘柄鶏(D)区が最も高く、48×47区が最も安くなった。11.成鶏開始時1羽当たりの粗利益は、市販外国銘柄鶏(D)区が2184円と最も多く、次いで48×47区が2067円で、A×B区では1865円で最も少なかった。48×47鶏は市販外国銘柄鶏と比較して、ヘンディ産卵率及び平均卵重で優れており、卵質においては卵黄卵重比で優れた成績を示した。このことから高品質国産赤玉鶏として有望である。
著者
大久保 雄平 福井 巌 坂野 祐司 吉村 耕治 前田 浩 米瀬 淳二 山内 民男 河合 恒雄 石川 雄一 山本 智理子
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1138-1141, 1996-09-20

44歳,家婦。1年3ヵ月来の肉眼的血尿,排尿困難を主訴に1994年6月初診。経膣的な触診にて膣前壁に柔らかい腫瘤を触れ尿道腫瘍を疑った。尿細胞診では腺癌を疑わせる多数の悪性細胞集塊を認めた。尿道膀胱造影にて尿道憩室を2つ認め,尿道鏡にて尿道括約筋の近位と遠位の2カ所にそれぞれの憩室口を認めた。膣からの圧迫により近位の憩室から表面平滑な小豆大の腫瘍が突出したのでこれを切除したところ,病理学的には低分化型の移行上皮癌が疑われた。尿道憩室癌の診断にて8月9日前方骨盤内臓器全摘術,インディアナパウチ造設術施行。近位憩室内に認められた腫瘍は病理学的に管状,乳頭状および嚢胞状など多彩な腺様構造を呈し,核が上皮細胞の表面に突出した,いわゆるhobnail(鋲くぎ)パターンを認め,mesonerphric adenocarcinomaと診断した。術後,局所に放射線照射を追加し退院。術後1年4ヵ月の現在再発,転移を認めていない。女子尿道mesonephric aenocarcinomaはその組織発生に関していまだ統一された見解はなく,自験例は文献上44例目と思われる。
著者
里見 佳昭 仙賀 裕 福田 百邦 河合 恒雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.909-916, 1984
被引用文献数
9

腎細胞癌に対する化学療法の第4報として、インターフェロンの有効性について、リンパ芽球由来のhuman lymphoblastoid interferon(α型)を用いて検討した。1)転移のある腎細胞癌患者19例に対し、連日投与60回以上できた症例について効果を判定した。CRはなく、PR2例、MR3例、NC4例、PD5例で、有効率は35.7%(5/14)と従来の抗癌剤にない高い有効率を示した。現段階では腎細胞癌の第1選択薬剤として使用すべきと考える。2)効果の発現は20回から60回投与の間で起こり、それ故、効果の判定は60回以上投与後に行うべきと考える。3)性、年齢、腫瘍の大きさは有効率を左右しない。low grade症例は4/7の有効率であり、high grade症例は1/7で、特にlow gradeの腎細胞癌には第一選択剤として使用する価値のある薬剤である。4)最大の副作用は全身倦怠と食欲不振で、しばしばこのために治療中止をせざるを得なくなる。骨髄抑制はじめ他の副作用は軽微である。