著者
森田 とわ 山口 智史 小宅 一彰 井上 靖悟 菅澤 昌史 藤本 修平 飯倉 大貴 田辺 茂雄 横山 明正 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ea0348, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 膝蓋骨骨折や膝蓋腱断裂,大腿四頭筋断裂などでは,膝伸展筋の機能不全によって歩行時に膝折れを呈し,膝伸展位保持が困難になる.この膝折れを防止するために,膝伸展位保持装具(以下,膝装具)が使用されることがある.支持性の良い膝装具は膝伸展筋力を代償するだけでなく,他の関節周囲筋の筋活動を変化させる可能性がある.しかしながら,膝装具使用時の歩行時筋活動量について言及された報告はない.本研究では,膝装具が歩行時の下肢筋活動量へ及ぼす影響を検討した.【方法】 対象は健常成人9名(年齢:24.4±2.8歳,身長:1.73±0.04m,体重61.2±6.3kg)とした.課題は20m/minに設定したトレッドミル上での膝装具装着および非装着の2条件の歩行とした。膝装具は,両側支柱付きのニーブレース(アルケア株式会社)を使用し,十分な練習後に装着非装着での歩行,装具装着での歩行の順番で課題を行った. 表面筋電図の測定には,筋電図記録用システム(Delsys社)を使用した.記録筋は,両側下肢の大殿筋(GM),内側ハムストリングス(MH),大腿直筋(RF),ヒラメ筋(SOL),前脛骨筋(TA)とした.電極は,筋腹上に能動筋電を貼付し,サンプリング周波数は1kHzで記録した.また,両側の母趾球部と踵部にフットスイッチを貼付し,歩行周期の特定および時間距離因子(重複歩幅,歩行率,立脚期割合)の算出をした.得られた筋電図波形は、全波整流後30歩行周期分を加算平均して平滑化した後,フットスイッチの情報から,立脚相と遊脚相に分け,それぞれの積分値(μVs)を算出した.また歩行時の重心動揺を計測するため,小型加速度計(ワイヤレステクノロジー社)を使用した.加速度計は,第三腰椎棘突起部に伸縮ベルトで固定し,サンプリング周波数60Hzで記録した.加速度データは,10歩行周期分のデータを加算平均し平滑化した後,時間で2回積分し変位を算出した.その変位から1歩行周期における左右移動幅を算出した.統計解析は,装具の有無による各筋活動量と時間距離因子,重心動揺の違いを検討するため,対応のあるt検定を用いた.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属機関の倫理審査会により認可され,事前に全ての対象者に研究内容を説明し,同意を得た.【結果】 装具着用により,装着下肢の立脚相においてGM,MH,RF,TAの筋活動量が有意に減少した.装具着用側の立脚相における各筋の平均積分値は(装具あり条件、装具なし条件)で,GM(6.33μVs,7.98μVs),MH(4.22μVs,5.39μVs),RF(1.43μVs,1.80μVs),TA(2.71μVs,3.53μVs)であった.一方,SOLについては,装具あり条件7.79μVs,装具なし条件7.88μVsで統計的有意な差を認めなかった(p=0.783).遊脚相においては,いずれの筋でも筋活動量に有意な差を認めなかった.また,装具非装着側の立脚相および遊脚相においては,いずれの筋でも装具着用の有無による有意な筋活動量の差を認めなかった.時間距離因子については,装具着用の有無による有意な差を認めなかった.重心の左右移動幅は,裸足歩行17.7cm,装具歩行23.8cmで装具装着により有意に増加した.【考察】 膝装具は,膝伸展筋以外の筋活動量も減少させることが示された.GM,MH,RFの筋活動量の減少は,膝装具によって体重支持に必要な筋活動が代償されたためだと考えられる.重心の左右移動幅が増大したが,これは膝関節を伸展位に保持したことにより,下肢を振り出すために生じた体幹側屈や分回し歩行などの代償動作が影響していると推察される.分回し歩行では,初期接地において通常より底屈位での接地になり,このことが,荷重応答期におけるTAの筋活動量が減少につながった可能性がある.また,立脚相のSOLにおいては,有意な変化を認めなかったことから,SOLの役割である下腿が前方へ倒れていく速度の制御に必要な筋活動は,膝装具によって影響をうけないと考えられた.しかしながら,本研究においては各関節の関節運動に言及することはできないため,今後,三次元動作解析装置などを用い検討する必要があると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 膝装具を使用することにより,膝関節周囲筋だけでなく股関節や足関節の筋活動量も減少することが示唆された.膝装具を適用する際には,他の下肢筋の負荷をも軽減できる一方で,筋力低下の誘引にもなると考えられ,十分な配慮が必要である.
著者
藤本 修平 中嶋 静香 大高 洋平
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.17-22, 2012 (Released:2012-11-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1

The purpose of this study was to clarify factors that influenced stress in mothers with handicapped children. Thirty mothers (Age±SD: 37.5±4.8) living in Aomori were participated in this study. We assessed the mother's stress using the Japanese version of the Zarit Caregiver Burden Interview. We also investigated child's age, sex, body weight, type of diseases, birth order, Barthel Index of activities of daily living (ADL), the behavior disturbance index with handicapped children, mother's job, whether mother has back pain or not, whether there is enough family cooperation or not. Multiple regression was used for statistical analysis. The results revealed that the factors influencing mothers' stress were child's body weight, behavior disturbances, and cooperation of their family (p<0.05). Child's ADL didn't influence the mothers' stress indicating that the care of child's ADL has been accepted as one of the mother's proper roles. On the other hand, they were hard to accept child's behavior disturbances. These results suggest that children's behavior disturbances have to be taken into consideration when rehabilitation is performed in handicapped children.
著者
今 法子 藤本 修平 中山 健夫
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.18-24, 2016 (Released:2017-06-23)

医療上の治療方針の決定やその評価の際に、患者の価値観への配慮は不可欠である。診療上で、患者の価値観を尊重して合意を形成する方法に、Informed Consent(IC)とShared decision making(SDM)がある。両者は患者と医療者のコミュニケーションに基づくという点で共通だが、SDMは意思決定過程を共有することが重視される。しかし、両者が混同され、SDMのもつ本来の意義が明確にされていない場合も少なくない。そこで、リハビリテーション分野の論文で、ICに対する言及とSDMの定義を比較することで、SDMの意義を明確にすることを目的に文献レビューを実施した。文献の検索には、7つのデータベース(MEDLINEのPubMed、 Cochrane database、 Web of Science、Physiotherapy Evidence Database(PEDro)、Occupational Therapy Systematic Evaluation of Evidence(OT seeker)、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature(CINAHL)、医中誌Web(医中誌)を用いた。検索式は、ICをタイトルに含み、リハビリテーションの語を本文中に含む文献(英文・和文)とした。データ検索日は、2014年10月31日とし、その時点で各データベースの最新の文献までを対象とした。包含基準は、1)全文が入手可能であること、2)記載言語が英語または日本語であること、3)原著論文であることとした。除外基準は、1)総説、レビュー論文、症例報告、レター論文、会議録であること、2)ICについての記載がないこと、3)研究倫理についての内容であることとした。対象文献に記載されたICの定義にCharlesの示すSDMの必須4要素1)少なくとも医師と患者が参加する、2)医師と患者が情報を共有する、3)医師と患者が希望の治療について同意を形成するステップをふむ、4)医師と患者が実施する治療についての合意に達するが含まれているか否かを2名の評価者が独立に評価した。ICの定義にSDMのどの側面が含まれているかを検討するために、それぞれの項目が含まれる数とその割合、ならびにどの項目が含まれていたかを記述した。データベースの検索により、65件の文献が抽出された。そのうち、包含基準を満たした論文は54件であり、除外基準に従い選択をした結果、9件が選択されたこの中にSDMの言葉を含む文献はなかった。ICの定義にSDMの必須4要素のいずれかが含まれているか評価した結果、全ての文献で1)少なくとも医師と患者が参加すること、が含まれた。2)医師と患者が情報を共有すること、が含まれた文献は6件(67%)、3)両者が希望の治療について同意を形成するステップをふむこと、が含まれた文献は2件(22%)、4)実施する治療についての合意に達すること、が含まれた文献は2件(22%)であった。この9件のうち、4要素全てを含む論文は1件(11%)、3要素を含む論文は2件(22%)、2つを含む論文は3件(33%)、1つのみ含む論文は3件(33%)であった。ICを主題とし、SDMの言葉は含んでいないにもかかわらず、1/3の文献でSDMの必須4要素のうち3要素以上を含んでおり、両者の明確に使い分けられていないことが示唆された。
著者
藤本 修
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.175, 2006

実践の概要 『地区マップ』というと今までは、模造紙など紙面を利用したものや大きな板を活用したもの等があった。しかし、情報の更新や写真等の貼り付けなどに限界があり、継続的な地域教材としては活用が難しい面があった。 そこで、Webページ形式を用いた『デジタル地区マップ』の作成を前任校で行った。これにより、たくさんの画像などやカテゴリーなど情報量を増やすことができたことと児童のパソコンに対しての取組の良さが重なり、児童の地区に対する興味関心を高めることにつながっていった。 今年度、この環境マップに地図の学習がプラスすることができるのでGISを活用することを試みた。具体的な内容は、次の2点とした。(1)桃井小の近くの施設や児童の活動の場になっている場所の紹介(図1)(2)県内等で、校外学習の場になっている施設の紹介その際、作成したGIS環境マップを本校webページの1カテゴリーに加えることで保護者等にも閲覧可能とした。 桃井小学校Webページ http://www.momonoi-es.menet.ed.jp/教材の活用例 環境マップは、以下の学年、教科で利用できる。・小学校第2学年 生活科『まちたんけん』・小学校第3学年 社会科『地域めぐり』『市内めぐり』・小学校第5学年 国語・社会科『地域のニュースの発信』・全学年 校外学習事前学習 また、授業の中での活用例として2点あげる。(1)導入での活用・生活科や社会科における地区学習・校外学習事前ガイダンス(2)まとめでの活用・身近な地域のことやニュースにしたことを「GIS環境マップ」上にアップする。研究の成果 以下の2点を考えた。(1)自分の地区をより正確な地図でみることができたので、児童の興味・関心が高まった。また、本校児童の活動写真もあるということでやる気もわいてきたようだ。(2)調べたことがインターネットを通して発表できたことで、充実感が味わえたとともに、地図上にアップできたことで地区に対する愛着も感じられたようである。今後の課題 実践を終えてみての課題を以下にあげる。(1)小学生にとって複雑な操作もあるので、児童向けマニュアルなどがあるとより効果的な使い道がでてくると思われる。(2)Webカテゴリーということで、保護者への地区情報の提供にもなるので、保護者からもアップした方がよい情報を聞き、ツーウェイ化を図っていきたい。(3)今回作成した「GIS環境マップ」は、様々な教科・学年での活用も考えられるのでこれからも情報の更新をしていくなどして充実を図っていきたい。
著者
藤本 修平 大高 洋平 高杉 潤 小向 佳奈子 中山 健夫
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.38-47, 2017 (Released:2018-02-20)
参考文献数
27

【目的】理学療法士(以下,PT)の診療ガイドラインの利用,重要度の認識とエビデンスに基づいた実践(以下,EBP)への態度,知識,行動との関連性を明らかにすることとした。【方法】対象は千葉県のPT1,000 名としEBP や診療ガイドラインの利用,重要性の認識の項目を含む無記名自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。統計解析は診療ガイドラインの利用,重要性の認識に関連するEBP の関連項目を明らかにするために多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】診療ガイドラインの利用,診療ガイドラインの重要性の認識と関連が強いものは「EBP に関する必要な知識や技術を学びたいと思いますか」(OR = 10.32, 95%CI: 1.82–197.16) であった。【結論】千葉県のPT において診療ガイドラインの利用は十分ではなく診療ガイドラインの利用や重要性の認識に関連する要因は,EBP の必要性の認識とEBP を行ううえで必要な行動であった。
著者
藤本 修平 熊谷 一郎
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
流体工学部門講演会講演論文集 (ISSN:13480251)
巻号頁・発行日
vol.2014, pp."1029-1"-"1029-2", 2014-10-25

Aimed at improving the quality and the efficiency of the coating, we have investigated the motion of liquid particles in an actual airless spray by using a high speed video camera. In this study two-dimensional velocity vectors of the particle were quantitatively obtained by the mean shift algorithm and the particle tracking method. We show the statistical analysis for the particle size, the direction, and the velocity of the liquid particles in the actual spray, and discuss their roles on the quality and the efficiency of the paint coating.
著者
佐久間 華 戸矢崎 満雄 藤本 修三 藤山 哲朗 林 健太郎 大畑 幸恵 Hana SAKUMA Mitsuo TOYAZAKI Shuzo FUJIMOTO Tetsuro FUJIYAMA Kentaro HAYASHI Yukie OHATA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2013
巻号頁・発行日
2013-11-25

本稿は、瀬戸内国際芸術祭2013 春の部(2013年3月20日[春分の日]~4月21日[日])の一環として参加した「沙弥島アートプロジェクト by 神戸芸術工科大学」で行われた全ての活動について、成果物の画像を交えながらその内容を述べたものである。成果物として挙げられるのは、次の4つ、①香川県坂出市沙弥島内3カ所(西ノ浜、ナカンダ浜、旧沙弥小中学校)を舞台にした本学の教員(助手・実習助手含む)6名による作品展示・建築作品の公開、②準備期間中に行った地元の子供・親子を対象にしたワークショップ、③会期中に行った一般客及び地元住人を対象にしたイベント、④大学院の選択科目のひとつである大学院総合プロジェクト「沙弥島アートプロジェクト」において、担当教員の指導のもと、学生が行ったポスターや周辺地図などの印刷物およびスタッフ用パーカーなどのグッズ企画・制作である。This report assesses all the activities carried out in 'Shamijima Art Project by Kobe Design University' which was held as a part of Setouchi Triennale 2013 Spring term (20th March and 21st April 2013), together with the images of the project outcomes. The following four types of work have been completed in the project; ① Works of art and architecture created by six teachers of KDU(including assistants and a research assistant) in three different venues (Nishinohama Beach, Nakandahama Beach and Fomer-Shami Elementary and Junior High School), ②Workshops for the local people held in the preparation period, ③ Events for both the local and general visitors during the Triennale period, and ④ Poster, map and other graphic design works and goods productions such as staff costume created by students under the supervision in the one of the Kobe Design University graduate school's optional subjects which is also called 'Shamijima Art Project'.
著者
夏目 誠 太田 義隆 藤本 修 南野 壽重 浅尾 博一 藤井 久和
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-15, 1985-01-20
被引用文献数
8

職場不適応症の病態生理学的特徴を明らかにするため,同症の代表的タイプといえる中核タイプ25名および脱落タイプ14名,計39名に眼球運動,脳波や顔面表情筋筋電図などの精神生理学的指標を用いて,ポリグラフの記録を行い,健康成人16名(対照群)のそれと比較検討するとともに,臨床的特徴との関連についても考察を加えた.得られた結果は以下のとおりである.1.職場不適応症の中核および脱落タイプは,対照群に比べ,安静時に低振幅急速眼球運動(r)の出現回数は少なく,シュウ眉筋筋放電振幅も低い値を示した.2.暗算刺激負荷により,中核タイプは安静時よりrの出現回数が増加している例数が,対照群に比べ多かった.シュウ眉筋においても同様の傾向を示した.一方,脱落タイプでは,両指標ともほとんど変化を示さなかった.3.暗算刺激終了後も,中核タイプは安静時より,rの出現回数の増加と両表情筋筋放電の高振幅が持続しているのに対し,脱落タイプでは,これらの特徴が認められなかった.以上の結果と同症両タイプの臨床的特徴との関連について,考察を加えるとともに,両タイプの発症機制解明に精神生理学的検索の有用性を明らかにした.