- 著者
-
長田 陽一
- 出版者
- 京都光華女子大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
発達障害(自閉症スペクトラム、AD/HD、学習障害等)は、中枢神経系に高次の機能障害が推測されるものの、今のところ原因を特定できず、時に「目に見えない障害」と言われる。このような発達障害(者)の特徴は、しばしば「障害」をその人のpersonalityに帰属させる傾向を生じさせている。発達障害(者)における、個人的特性と「障害」の区別の困難性は、とりわけ発達障害者との関わりがなかった者にとっては、しばしばpersonalityに関する偏見やレッテル貼りの一因となっていることが考えられる。これらを踏まえ、従来なされてきた本質理解(原因追及)とは異なる観点から、発達障害という言葉(概念)を隠喩(メタファー)として捉えなおし、その諸作用を検討することを目的とした研究の一環として、当該年度は以下の研究を実施した。「発達」や「障害」の概念における、近代以降の目的論的な人間観の影響について文献収集および検討を行った。それぞれの隠喩(メタファー)は、近現代人の価値観(人間主義的、個人主義的、合理主義的、あるいはロマン主義的)と密接に関連している。しかし、近現代人の価値観を客観視する際に、より広範囲な進化の視点がどうしても必要であり、これをこれまでの研究と繋ぎ合わせるための新しい座標軸を検討しているところである。