- 著者
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藤井 良知
- 出版者
- 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
- 雑誌
- The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.6, pp.1099-1107, 1987-06-25 (Released:2013-05-17)
- 参考文献数
- 7
セフチゾキシム坐剤 (CZX坐剤, エポセリン®坐剤) は藤沢薬品工業 (株) が開発したセフチゾキシム (CZX, エポセリン®) を主薬とし, 吸収促進剤としてカプリン酸ナトリウム (CA-Na) を配合し, 京都薬品工業 (株) と共同で開発された小児用坐剤である.年, 坐剤による直腸内投与は注射剤又は経口剤の投与が困難な小児を含む患者に対し, 有用な薬物投与手段としてその存在価値が見直され, 直腸からの薬物の吸収性に関する研究が盛んに行われている。すでに, 解熱鎮痛剤, 制癌剤では坐剤が市販され, 抗生物質についても高い有用性が期待されているが, その吸収性に難点があり, 坐剤として治療に用い得るものは極めて少なかつた。しかし, 最近β-Lactam系抗生剤の吸収促進剤としてCA・Naが見出され, アンピシリン坐剤 (ABPC坐剤) 1) に続いて, 本来腸管からは吸収されないとされているCZXについても直腸からの吸収性が大幅に改善され, CZX坐剤が開発されるに至つた。主薬のCZXは7位にAminothiazolylmethoxyiminoacetamido基を有し, 3位に置換基のない構造を有する注射用の第5群Cephem剤である2)(Fig.1)。CZXは種々のβ-Lactamaseに対し安定で広範な抗菌スペクトルを有し, グラム陽性菌ではStreptococcuspneumoniae, Streptococcus sp.(Enterococcus faecalisを除く), グラム陰性桿菌ではEscherichiacolf, Klebsiella sp., Haemophilus influenzae, Proteusmirabilis, インドール陽性Proteus sp.に強い抗菌力を有する。更に, 第1, 2, 4群のCephem剤と異なりSerratia sp., Enterobacter sp., Citrobacter sp.及びBacteroides sp.を含む嫌気性菌などにも強い抗菌力を有する3)。CZXはすでに市販され, 成人及び新生児・未熟児を含む小児の諸種感染症にその有用性が認められている