著者
松田 博公
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.156-165, 2008 (Released:2008-09-02)

内外の情勢は、 日本の鍼灸界に日本鍼灸学の構築を要求しています。 日本鍼灸の特色の一つを、 自然治癒力思想を根幹とすることだと考え、 そのルーツを探るのが本発表の課題です。 現在われわれが口にする自然治癒力思想を顧みると、 それは、 中国伝統医学を継承したものではなく、 江戸中期に輸入された蘭学由来のものであるという仮説が浮かび上がります。 幕末に刊行された江戸期最大の養生書 『病家須知』 に記された<自然作用力>というキーワードに着目し、 和田啓十郎の漢方復興運動の論拠となった<自然良能>の思想などを振り返りながら、 日本の鍼灸家が親しんできた自然治癒力思想が、 西洋のヒポクラテス医学のものであることに迫ります。 そして、 江戸期の日本人がヒポクラテス医学の自然治癒力思想を受け入れた背景には、 <邪正一如>という日本独自の治癒力思想があったという仮説も提出して、 検討に供したいと思います。
著者
松田 博貴
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.297-308, 2009-04-25 (Released:2010-04-01)
参考文献数
34
被引用文献数
3 4

Dolomite (dolostone) is a common carbonate rock in the geological records and is also a very important carbonate reservoir rock, which stock about 40% of global oil reserves. Most of the dolomites in the geological record are considered to be of replacement origin, although some were precipitated directly from pore-fluids. A variety of dolomitization models in different diagenetic environments are currently proposed for interpreting ancient dolomites: (1) evaporative dolomitization including sabkha and seepage-reflux models, (2) mixed-water dolomitization, (3) marine dolomitization, (4) burial dolomitization, (5) hydrothermal dolomitization. The dolomites formed by each dolomitization model have different geological, petrographical, mineralogical and geochemical features. Based on these features, we can, therefore, identify dolomitization models and diagenetic environments of ancient dolomites. A dolomite reservoir is often of as good quality as a limestone reservoir. Dolomitization affects carbonate reservoir characteristics, such as porosity and permeability, and, as a result, reservoir characteristics are significantly changed from those of primary carbonate rocks. The important factors associated with dolomitization and controlling the characteristics of carbonate reservoir rocks are: (1) increasing crystal size (2) decreasing porosity due to a net addition of dolomite, (3) developing moldic pores, (4) increasing resistance to compaction, and (5) increasing fractures. Dolomitization and diagenetic history of individual carbonate reservoirs differ from each other and result in the complexity of reservoir characteristics. It is, therefore, indispensable to understand the processes that formed each dolomite reservoir.
著者
根本 学 佐藤 陽二 後藤 英昭 澤田 祐介 行岡 哲男 松田 博青 島崎 修次
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.717-724, 1999-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13

乗車用安全帽(以下ヘルメット)の着用が頭部保護に関し,効果の高いことは周知のごとくである。一方,臨床の場ではヘルメットを着用していたにもかかわらず,頭部・顔面外傷にて救急医療施設に搬送される患者は少なくない。ヘルメットは日本工業規格(以下JIS規格)により3種類(A種,B種,C種)に分類されており,一般使用者の多くはA種もしくはC種を着用している。臨床検討として,過去2年間に経験した着用ヘルメットが判明している二輪車事故患者157例を対象とし,頭部・顔面外傷の有無とその損傷部位,および着用ヘルメットにつき検討した。実験的研究として,同一条件下で市販されているJIS規格AおよびC種ヘルメットの衝撃吸収試験を行った。統計学的検討はχ2検定およびt検定を用いて行い,危険率5%未満を有意とした。また,実験における測定値は,平均値±標準偏差で表示した。臨床例では157例中,A種着用群は56例,C種着用群は101例であった。頭部・顔面外傷の頻度はA種着用群60.7%であり,C種着用群25.7%に対し有意(p<0.001)に多かった。衝撃吸収試験ではA種よりC種が有意差(p<0.001)をもってすぐれた衝撃吸収能を示した。とくに376cmからの落下実験では,A種で脳に損傷を与えるとされている衝撃加速度400Gを超える値が測定された。JIS規格では125cc以下の排気量に対し,A種ヘルメットの着用を許可しているが,今回の検討でA種ヘルメットの危険性が判明した。ヘルメットの生産・販売にあたり,消費者に保護性能を明確に伝え,消費者自身がヘルメットの機能を認識することが大切であり,今後,現状に見合ったJIS規格の再検討が必要と考える。
著者
湯川 秀樹 小林 稔 井上 健 富田 和久 松原 成生 山本 常信 寺本 英 長谷川 洋 長谷田 泰一郎 松田 博嗣
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.180-198, 1968-01

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。座談会
著者
梁 熙俊 嶋田 純 松田 博貴 利部 慎 董 林垚
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.187-205, 2015-05-29 (Released:2015-06-25)
参考文献数
35
被引用文献数
9

沖縄県南大東島における淡水レンズは貴重な水資源として用いられており,その形状と成因を明らかにするため,本研究では,15ヶ所の観測井における電気伝導度の観測結果を用いて淡水レンズの形状を推定し,地形,地質,地下水位の時系列解析によりその成因を評価した。本地域の地下水位は,潮汐の主要5分潮の周波数で高いシグナルを示し,潮位変動の影響を受けることが明らかになり,島の南側に位置する観測井で相対的に高い透水性がみられ,西側と北東側で低い透水性がみられた。本地域における淡水レンズ(電気伝導度2000μS/cm以下)は,西側と北東側で確認でき,淡水レンズの厚さは,中央低地で10~13m,西側で5~8m,北東側で3~6mであった。なお,透水性の違いや島の西側に多くの池沼・湿地が分布する地形的な理由から,西側の淡水レンズにおいて季節変動がみられた。
著者
寺本 英 日高 敏隆 河合 雅雄 川那部 浩哉 伊藤 嘉昭 松田 博嗣
出版者
京都大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1986

昭和58〜60年度の3年間におよぶ本特定研究の研究成果は下に述べるとおりであるが、本年度はそれらの研究成果をもとに国際シンポジウム「生物の適応戦略と社会構造」が計画され、この分野で活躍する外国の専門研究者17名の参加を得て実施された。本シンポジウムはいろいろな動物群あるいは数理モデル等の各分野の専門家が一同に会して動物の社会構造や社会行動についての諸問題を議論したユニークなものであり、本特定研究の研究成果に国際的な評価を与えるものとなった。シンポジウムの内容は特定研究の研究成果を含め英文報告書として取りまとめられた。また、それとは別に「生物の社会構造」と題する和文の啓蒙書も出版されている。3年間の本特定研究の研究成果は次のとおりである。昆虫における真社会性の進化、昆虫および甲殻類の交尾戦略・繁殖戦略の研究では、野外調査を主体に、特に南西諸島での本格的な調査とともにいくつかの事実の発見があり繁殖戦略・社会構造の理論の発展を得た。脊椎動物では魚類,鳥類,哺乳類を中心に調査研究が組織的に遂行され、交尾・育児・採餌行動と社会構造の詳細な比較検討が行なわれた。霊長類についてはニホンザルの調査を中心に、新しい調査方法によって採餌戦略・繁殖戦略によるサル社会の分析がなされ、個体群維持機構に関する事実が見い出された。ヒトに関する研究は旧来の伝統的風習や制度の残る沖縄や東北の僻地社会で重点的な調査が行なわれ貴重な資料が集収された。またそれに基づく社会構造と生存戦略の分析をとおしてヒト社会の特徴が抽出された。これらの広い研究対象で明らかにされてきた種々の動物行動の適応戦略的視点からみた統一的理論および社会構造形成モデル理論の探求が個体群動態論と適応戦略論の融合した理論として世界に先がけて精力的に行なわれた。
著者
松田 博子 名取 和幸 破田野 智美
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.69, 2019-03-01 (Released:2019-06-23)
参考文献数
26

好きな色がパーソナリティと関係すると思っている人は少なくないが,パーソナリティが色の好みに影響を及ぼす理由についてはほとんど解明されていない.本研究は調査の季節,場所,対象者の年齢,職業を限定し,11年間継続して,延べ2026名(男性931名,女性1095名)の大学生の調査を行った.75色のカラーチャートから,「好きな色」,「着たい色」,「よく着る色」を選択するよう求め,後日YG性格検査を実施し,約半数の色にパーソナリティとの関係が示された.さらに,選択した「好きな色」,「着たい色」,「よく着る色」の色イメージ得点と,選択者のYG検査のパーソナリティ特性の12尺度得点との相関を求めた.男女とも相関が見られ,自らのパーソナリティによく似たイメージの色を好み,着たいと思い,よく着るという知見が得られた.また情緒安定性,協調性,思考的外向に男女の違いが見いだせた.
著者
宇野 彰 金子 真人 春原 則子 松田 博史 加藤 元一郎 笠原 麻里
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.130-136, 2002 (Released:2006-04-24)
参考文献数
33
被引用文献数
23 13

発達性読み書き障害について神経心理学的および認知神経心理学的検討を行った。はじめに, 読み書き検査を作成し健常児童の基準値を算出した。次に, 検査結果に基づいて 22名の発達性読み書き障害児を抽出し対象者とした。7~12歳までの男児 20名と女児 2名である。WISC-III, もしくは WISC-Rでの平均IQは 103.0, 言語性IQ 103.1, 動作性IQ 102.4であった。パトラック法による SPECTでは, 左側頭頭頂葉領域で右の同部位に比べて 10%以上の局所脳血流量の低下が認められた。音韻情報処理過程と視覚情報処理過程に関する検査を実施した結果, 双方の処理過程に問題が認められた児童が多かった。以上より, 発達性読み書き障害は局所大脳機能低下を背景とする高次神経機能障害であると思われ, 音韻情報処理過程の障害だけでなく, 少なくとも視覚情報処理過程にも障害を有することが多いと思われた。
著者
松田 博志 淀川 英司
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.105(2004-ICS-137), pp.49-54, 2004-10-29

自律的に行動するエージェントにとって、知識量は対応限界を意味する。自律性を保持しつつ知識を増加させ、対応能力を高めるためには、エージェント自らが知識を獲得する必要がある。そこで、未知のオブジェクトに対して試行錯誤的に既知である行動の知識の適用を試みることで、オブジェクトの知識を後天的に学習し、同時にエージェントを個性化するために、試行錯誤時に受けた感情の変化を学習するモデルを作成した。これによって、各エージェントのオブジェクトに対する印象の違いを利用した、個性を実現できると考える。本稿では、作成した刺激と反応による後天的学習情動モデルの概要を述べ、グリッドワールドでシミュレーションした結果についても述べる。
著者
松田 博子 名取 和幸 破田野 智美
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.161, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
5

松田・名取・破田野(2019)では,色そのものが持っている色イメージ(感情的意味)を通して,色の好みとパーソナリティとの関係性を分析した.色イメージ(新編カラーレンジマニュアル100の印象評価)とパーソナリティ特性の相関を求め,有意な差がみられ,特定のパーソナリティの人がその色を好む理由として自分のイメージに似ているから好むことが示唆された.今回はさらに進めて,75色カラーチャートから選択した自分自身の「好きな色」の印象評価と自己イメージとの関係を調査した.男女大学生を対象として「好きな色」を3色選択し,その色のイメージ評定をし,後日好きな色と同じ16の形容詞対による5件法で自己イメージを評定させ相関を求めた.併せて YGパーソナリティ性格テストを試行しパーソナリティとの関係も検討した.自己イメージと好きな色のイメージの同一尺度間での相関(0.24≦|r|, p < .05)は,女性の場合「軽い」「澄んだ」「派手な」「きれいな」「かたい」「情熱的な」「女性的な」の7項目(全16項目の43.8%)に見られ自己イメージに似たイメージの色を好むことが明らかになった.
著者
松田 博嗣
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.691-694, 2011-09-05 (Released:2019-10-22)

1961年,基礎物理学研究所の長期研究会として,Dynamical Problems in Statistical Physicsが取り上げられ,それに付随する短期研究会として,不完全結晶の格子振動,振動子系の力学過程が4年間各地で開かれた.戸田先生は終始この研究会の指導的役割を果たされ,参加者も研究方向に対する意見を自由に述べあい,格子振動グループと呼ばれるようになった.当時の雰囲気や戸田格子の発見などこのグループがその後の統計力学や数学の諸分野に及ぼした影響について概観する.
著者
春原 則子 宇野 彰 金子 真人 加我 牧子 松田 博史
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.122-129, 2002 (Released:2006-04-24)
参考文献数
14

言語性の意味理解力障害を認める小児の臨床像について検討した。言語性意味理解力障害が疑われた15名を対象に,各種神経心理学的検査とSPECTによる局所脳血流量の測定を行った。その結果,神経心理学的検査では言語性の課題において同年齢の健常児に比して低得点であった。また,非言語性の意味理解は可能であったが,言語性の意味理解力に障害を認めた。意味理解力障害は聴覚的過程,視覚的過程のいずれにも生じていた。復唱や音読といった音韻処理課題は良好であっても意味理解力が低下していたことから,音韻処理能力と意味処理能力に乖離があると考えられた。   各症例に共通した局所脳血流量の低下部位は左大脳半球側頭葉だった。左側頭葉損傷による成人失語症例においても言語性の意味理解力障害が生じることが知られており,後天性の損傷例の病巣と類似した部位の機能低下によって言語性の意味理解力障害が出現していることが示唆された。
著者
宇野 彰 春原 則子 金子 真人 加我 牧子 松田 博史
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.388-392, 1999-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

特異的言語機能障害 (SLI: specific language impairment) 児の言語的発達と非言語的発達について認知神経心理学的な障害構造から検討した.その結果, SLI児では音読や復唱は可能であるが意味を理解することが困難であることから意味理解障害が中心症状と考えられた.SLI児は言語に関する意味理解力は障害されている一方で, 非言語的意味理解力は正常に発達していると思われた.同じ先天的障害例である, 非言語的能力も障害されている特異的漢字書字障害児と対称的であった.以上から, 言語的能力と非言語的能力は共通に発達していくだけでなく, 意味能力に関しては独立して発達していることが示唆された.