著者
二宮 祐 小島 佐恵子 児島 功和 小山 治 浜島 幸司
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-25, 2020-03-01 (Released:2020-03-30)
参考文献数
14

本論の目的は,「第三の領域」と呼ばれる分野で働く新しい専門職のキャリアと職務に関する意識に関して,ファカルティ・ディベロッパー,キャリア支援・教育担当者,インスティテューショナル・リサーチ担当者,リサーチ・アドミニストレーション担当者,産官学連携コーディネート担当者を事例として取り上げて,聞き取り調査の結果を分析することによって明らかにすることである。各分野で概ね共通して認識されていることは次の通りである。任期付雇用のために,必ずしも十分には目標を達成することができず,職能形成にも課題がある。また,求められる知識・スキルが多様であること,専門とは異なる仕事を任されること,そもそも仕事の目標さえ曖昧であったりすることゆえに,何が評価の対象とされているのかがわからず,専門職としてのアイデンティティが揺さぶられている。他方,裁量を発揮することは可能であり,やりがいを感じることもある。
著者
高田 英一 森 雅生 関 隆宏 大石 哲也 川辺 聡史
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.67-80, 2018-03-01 (Released:2019-03-27)
参考文献数
12

本研究では,国立大学における内部質保証のためのIRによる支援の実施状況に関するアンケート調査を行った。調査結果によると,IRの内部質保証への支援は,十分に行われているとは言えない状況であった。また,IR担当の組織・人が存在する大学では,IRによる評価への支援が多く行われていた。しかし,IRによる改善への支援や支援の有用性を高める要因は明確にならなかった。このため,今後,IRの組織・人以外のIRによる支援の有用性を高める要因を検討する必要がある。
著者
竹中 亨
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.19-39, 2021-03-01 (Released:2021-03-24)
参考文献数
48

本論文の目的は,ドイツにおける大学への基盤交付金の制度を紹介することである。基盤交付金は,ドイツの高等教育の基幹をなす州立大学にとって,主たる財源をなすものである。基盤交付金は,固定的な基礎経費の部分と,アウトプット指標,業績協定のそれぞれから算定される成果連動的部分からなる。このうち,基礎経費は過去踏襲分と,インプット指標からの算定とで決定される。大学財政の安定性を考慮して,前者の比重が圧倒的に大きい。アウトプット指標による算定では,指標数を少数に絞り,かつ算定割当額を小規模にとどめるという方針がとられている。予算額の過度の変動を防ぐためである。大学政策の鍵になるのは業績協定である。これは政府と個々の大学が,大学ごとの特性やヴィジョンを踏まえて目標を定めて締結する。これにより,大学の個別性を反映することが可能になり,高等教育全体として,学術の多様性を担保する仕組みとなっている。
著者
竹中 亨
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
pp.2021.22001, (Released:2020-07-17)
参考文献数
48

本論文の目的は,ドイツにおける大学への基盤交付金の制度を紹介することである。基盤交付金は,ドイツの高等教育の基幹をなす州立大学にとって,主たる財源をなすものである。基盤交付金は,固定的な基礎経費の部分と,アウトプット指標,業績協定のそれぞれから算定される成果連動的部分からなる。このうち,基礎経費は過去踏襲分と,インプット指標からの算定とで決定される。大学財政の安定性を考慮して,前者の比重が圧倒的に大きい。アウトプット指標による算定では,指標数を少数に絞り,かつ算定割当額を小規模にとどめるという方針がとられている。予算額の過度の変動を防ぐためである。大学政策の鍵になるのは業績協定である。これは政府と個々の大学が,大学ごとの特性やヴィジョンを踏まえて目標を定めて締結する。これにより,大学の個別性を反映することが可能になり,高等教育全体として,学術の多様性を担保する仕組みとなっている。
著者
山本 進一
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.27-38, 2020-03-01 (Released:2020-03-30)
参考文献数
18

URA(University research administrator)と呼ばれる新しい職種が2011年以降導入されてきた。主に米国を見習ったこの職種について,我が国の現在のURAはその職務内容や役割が極めて多様である。この多様性をもたらした原因について,米国におけるこの職種のあり方や現状について紹介し,その定義と導入の経緯の主な理由を検討した。そして,URAが現在果たしている機能と役割,実績と効果について公表資料を参考に列記し評価した。それらを基に,URAが現在抱える課題について質保証を中心にまとめ,今後の方向性について指摘した。
著者
渋井 進 赤川 裕美 土屋 俊
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
pp.2022.23001, (Released:2021-10-14)
参考文献数
35

大学機関別認証評価における,政府公表データの利用について検討した資料を提示する。客観的に比較可能なデータを用いて,評価対象となる個別の大学や属性別に分けた複数の大学の,全大学の中での位置づけや経年推移を比較可能な形で可視化することは,評価の透明性・公平性の確保の観点から重要と言える。本報告では,教育成果の状況を把握するための指標として大学が政府に毎年報告して公表されている,医師,歯科医師,薬剤師,看護師の4種類の保健系分野の2017年から2020年の4年間の国家試験合格率を対象に,合格率の度数分布の状況および,国公私立大学別の経年的な推移について可視化を行ない,その動向について分析した。以上をもとに,評価の根拠資料としての利用可能性を中心に考察を加えた。
著者
武谷 慧悟
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-18, 2021-03-01 (Released:2021-03-24)
参考文献数
36

学習にかかわる調整方略の組み合わせパターンは,学習者によって異なるであろう。そして,調整方略の組み合わせ方によって,授業へのエンゲージメントに対する効果も異なる可能性がある。学習者の授業に対する意欲を引き出し,学習を動機づけるためには,学習者の調整方略に関する指導・助言が有用である。そこで,本研究の目的は,学習者の授業に対するエンゲージメントを高めたり,低下させたりする調整方略の組み合わせを明らかにすることである。調整方略の複合的効果を明らかにすべく,質的比較分析(QCA)によって,学習にかかわる調整方略とエンゲージメントの関係性について検討した。分析の結果,行動的エンゲージメントを高めるうえでの感情的エンゲージメントの重要性が示されるとともに,感情的・行動的エンゲージメントを高めるための調整方略の組み合わせパターンが複数明らかにされた。分析結果に基づいて,理論的・実践的意義について議論した。
著者
林 隆之
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.1-22, 2018-03-01 (Released:2019-03-27)
参考文献数
61

大学機関別認証評価は第三サイクルを迎えるにあたり,大学の内部質保証機能を重視した評価制度へと転換することが求められている。しかし,内部質保証とは何であり,それを実現するシステムの要素には何が必要かは明確でない。本稿では,主に国外の先行研究のレビューを通じて内部質保証の論点を明らかにするとともに,大学改革支援・学位授与機構が策定した「教育の内部質保証に関するガイドライン」の内容をその中でどのように位置づけられるか分析する。内部質保証は,質および保証の概念ともに多義的であるため,学内外の多様なステークホルダーが抱く定義を包含する柔軟性が求められる。日本では,海外同様に教育プログラムの点検・評価を内部質保証の中核とすることで,具体的な教育活動や学修成果の改善と結びつけることが当面望まれる。内部質保証概念の柔軟性ゆえ,「ガイドライン」は大学が内部質保証を構築し相互学習するための参照枠組みとなることが求められる。
著者
渋井 進 浅井 美紀
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
pp.2021.22002, (Released:2021-02-17)
参考文献数
27

2004年度から導入された認証評価制度により,全ての大学,短期大学,高等専門学校が,7年以内ごとに文部科学大臣に認証された評価機関の評価を受けることが義務付けられた。2020年度で制度導入から17年目を迎え,認証評価は3巡目に入っている。本稿では,大学改革支援・学位授与機構で認証評価を受けた大学に対して行っているアンケートを用い,1巡目・2巡目における回答の推移に着目して統計的に分析することで,大学の認証評価に対する意識の変化について明らかにした。また,アンケートにおいて大学の意識の変化が見られた項目については,回答に変化が生じた理由について,認証評価制度の改善へ向けて望まれている,改善効果の充実,作業負担の軽減,社会からの理解と支持,との関連を中心に考察を加えた。
著者
蝶 慎一
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-17, 2020-03-01 (Released:2020-03-30)
参考文献数
74

本稿の目的は,「学生担当職」の担い手の実態と役割,必要な資質・能力を歴史的に考える上で,そのルーツを考察することである。具体的には,1950年代半ばの「学生部職員名簿」に基づき,実態,資質・能力の諸相を明らかにする。更に,「第3回研修」を事例に,そこで参画していた「学生担当職」が,その後各大学で「厚生補導」の要職に就いていった可能性に言及した。本稿の知見を整理すれば,以下の3点である。第1に,「学生担当職」は,教員,事務職員の双方が「学生部」という組織を乗りあいにして業務を担っていた。第2に,教育的かつ実践的な資質・能力が求められていた。第3に,全国規模の研修では教員,事務職員の双方が「講師」や「助言者」を担当していた。しかし,教員,事務職員の双方がどのように協働しながら各大学で「厚生補導」を普及・推進させていくのか,という現代に至る学生支援の課題は,既に1950年代半ばに析出されていた。