著者
首藤 伸夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学講演会論文集 (ISSN:02857308)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.465-469, 1985-10-30 (Released:2010-03-17)
参考文献数
16
被引用文献数
7 15
著者
首藤 伸夫 三浦 哲 今村 文彦
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

標準的には、津波は海底地震にともなって発生するものとされており、その初期波形を断層パラメーターに基づいて計算するのが現在の一般的な手法である。しかし、断層運動と海底地盤の変動の大小とに一定の関係が存在するという保証はない。(1)2枚の断層からなる1983年の日本海中部地震では、断層運動から推定される津波と現実の津波の間に矛盾があった。その最大の難点は、現実の津波が深浦地点で約2分、能代辺りで約10分早く到達することである北断層では主断層と共役である方向に副断層の存在した可能性があり、これを考慮すると深浦への到達時間は説明できた。南断層では、通常の地震計では記録できない地盤変動が生じたとすると能代周辺の津波到達時間を説明できた。しかし、この時、何故この第1波が能代の検潮記録に記録されなかったかの疑問が残る。当時の写真から第1波のソリトン波列への発達が確認され、検潮所の水理特性により記録されないことが確認された。(2)1992年のニカラグァ津波では、陸地で感じられた地震動が震度2(気象庁震度階)であった。津波発生のメカニズムを検討した結果、地震動を伴ってはいたが、津波地震とするのが適当であることが判った。(3)1993年の北海道南西沖地震で発生した津波の内、北海道西岸を襲った津波第1波は、その襲来が早かった。断層位置から発生した津波は、現実の津波より5分ほど到達が遅い。断層と海岸の間で、地震とは直接関係の無い津波発生機構があった事が強く示唆された。(4)地震動を伴わない津波発生の内、犠牲者3万人を越えると言われている1883年クラカトア島陥没による津波発生を再現した。発生箇所での急激な陥没を不安定を起こさずに計算できる手法を開発した。
著者
首藤 伸夫
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 = The Quaternary research (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.509-516, 2007-12-01
参考文献数
16
被引用文献数
3 8

津波によって過去に生じた地形変化例を,原因となる津波の大きさや流速の判明するものを重視して取りまとめた.観察された現象の裏づけをしようとする流体力学的な説明の試みを紹介し,その課題を明らかにする.<BR>砂州・トンボロ・砂嘴の切断は,津波によるだけでなく,開口後の潮汐の影響をも考慮する必要がある.水路での水深変化の最大値は約10mにも及んでいるが,これを再現する数値計算では,約5mとほぼ半分に止まっている.最大の問題は流速の再現性にある.堤防破壊条件を取りまとめると,流体力学的に見てもほぼ首肯しうる結果となっている.<BR>陸上での堆積厚のほぼ上限値を実例により示した.陸上での堆積作用に関しては,流体力学的解析に必要な諸関係式が整っていない.その手始めとして,堆積物運搬距離と津波諸元との間に満たされるべき関係を示した.
著者
首藤 伸夫
出版者
東北大学
雑誌
津波工学研究報告 (ISSN:09167099)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.101-136, 1992-03
被引用文献数
10
著者
今村 文彦 首藤 伸夫 後藤 智明
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.389-402, 1990-09-24 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14
被引用文献数
15

The linear Boussinesq equation should be used in numerical simulations for distant tsunamis in the Pacific Ocean, because the dispersion effect is not negligible. Its difference equation which can not be expressed by an explicit scheme requires a long CPU time. One of the present authors has introduced a new technique, in which the first term of discretization error in the difference equation of the linear long wave theory was used and controlled to replace the physical dispersion term. This method is applied in the present study. The effect of ocean current on the tsunami propagation is confirmed to be negligible in wave direction and wave height. The 1960 Chilean tsunami is simulated. The Coriolis force has not only the effect on the propagation direction but also the dispersion effect, which is examined by comparing with the computed result without the Coriolis force. Effect of the sea bottom topography is examined in detail in terms of wave energy. About 40% of initial wave energy remains on the continental shelf in the neighborhood of Chile, and the rest is radiated to the Ocean. After scattered and trapped by islands and sea mounts, about 25% of the total energy arrives at Japan. The computed results shows a fairly good agreement with tide records after making correction of the effect of the water depth. For further discussions of the tsunami in shallow seas, simulations should be performed using the shallow-water theory and detailed topography.
著者
首藤 伸夫 渡辺 晃 酒井 哲郎 宇多 高明 阿部 勝征 平沢 朋郎
出版者
東北大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1985

1)地震断層運動の特性:強震動継続時間の方位依存性から、断層長さと破壊の伝播方向を推定する新方法を開発した。日本海中部地震時の比較的大きな余震震源を、遠地での中周期P波及び長周期SH波から精密に決定した。これらの手法は他の地震にも適用され、良い結果を与えた。2)海底地盤変動と津波初期波形:南北2断層運動間の休止時間が津波分布に及ぼす影響を検討した。この休止が原因で、最高で10%程度の波高差が生ずる。津波記録を歪ませうる験潮井戸特性を14箇所について調査し、補正曲線を作製した。いくつかの井戸では、水位差1mを回復するのに10分以上かかり、日本海中部地震津波の記録に大きな影響を与えた事が立証された。3)エッジボアの理論と実験:大型水槽での実験から、津波進行方向にほぼ沿った斜面境界上で渦が発生し、海岸線に平行に津波と共に走っていく事を発見した。実験水槽奥部に置かれた川の内部での津波変形を追跡した。4)津波数値シミュレーション:高次近似の非線形分散波方程式を誘導し、1より大きいアーセル数に対する、摂動パラメタ(相対水深)の4次近似迄入れた式が他式に比べ精度が良い。非線形問題での数値解析誤差評価に、疑似微分方程式の解を使用する方法を開発した。空間格子寸法の決定に海底地形を考虜に入れる方法を示した。5)津波先端部形状の決定法:砕波段波の波形から最大衝撃圧を推定する手法を開発した。波状段波の変形過程を適当な渦動粘性係数の導入で追跡できる事を示した。巻き波型砕波の数値計算を行い、波頂から飛び出た水塊の運動及びそれにより引き起こされる運動についての知識を得た。6)津波先端部の破壊力:ブロックが完全に水没し最大水平波力が作用する瞬間、最も不安定になる。被災規模が大きくなるのは、津波先端に生じたソリトン列の連続性が原因である。
著者
首藤 伸夫
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.147-157, 1998-02-25
被引用文献数
1

最近,数値計算が発達したため,津波の事は全て判ったとの誤解が生じているようである.しかし,津波の実像を知る上で様々な難問題が残されている.まず,出発点である津波初期波形が一義的に決まらない.計算途上で不安定が起こり易く,また誤差の集積が結果の精度を落としかねない.計算結果の検証にあたっては,潮位記録にはフィルターがかかっている事,津波痕跡は往々にして大きい値のみが測定されており良い検証材料とは言えない場合もある事,等の問題がある.我が国の津波対策は,3つの方策を組み合わせて行われる.ハードな対策としての構造物,ソフトな対策としての防災体制,そして防災地域計画である.
著者
首藤 伸夫 今村 文彦 越村 俊一
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

大洋を伝播して沿岸部に来襲する遠地津波の予報精度向上を目指し,本研究グループは,(1)外洋から大陸棚に入射した遠地津波の多重反射と津波エネルギーの捕捉・減衰特性の解明,(2)リアルタイム観測情報を用いた津波波源域の推定,(3)津波伝播途上における波数分散効果の解明の3点について,研究を行った.(1)では,外洋から陸棚斜面に入射した津波の伝播・減衰特性を理論的に解析した.岸沖方向に有限な陸棚斜面を想定し,沖合からの任意の入射波形に対する斜面上の津波伝播を表す理論解を求め,さまざまな入射条件において得られた理論解を整理し,特に斜面上における津波の多重反射現象に着目し,津波の捕捉・増幅・減衰特性に関する知見を得た.(2)では,従来からの地震波解析から得られる震源過程の情報に加えて,観測される津波の波形から津波波源域の空間的な諸量をリアルタイムで推定する手法を開発した.地震波解析から即時的に得られる震源要素は,震央位置,震源深さ,マグニチュード,メカニズム解である.これらの情報に加え,津波の解析を行うためには断層面の空間的な広がりを知る必要があった.従来までは余震観測により断層面の空間スケールを決定していたが,これでは津波の量的な予報には間に合わない.断層の空間スケールが発生する津波の波形に反映されることに着目し,津波の観測波形から断層面の幅と長さをリアルタイムで推定することにより,最大でも20%以内の誤差で波源推定が可能であることを示した.(3)では,特に遠地津波の予測に重要な波数分散効果を,津波発生域から遡上までのすべての伝播過程において評価できる数値モデルを開発し,日本海中部地震津波の再現を試みた結果,従来では困難であったソリトン分裂による津波増幅を良好に再現できることが分かった.
著者
首藤 伸夫 米地 文夫 佐藤 利明 豊島 正幸 細谷 昂 元田 良孝
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.終戦直後の開拓事業から展開してきた岩手山麓の農業は販売農家率が高く、後継者の同居率が高い。当該地帯は、被災後にも農業再建を目指す潜在力が高いと判断された。2.岩手山の約6000年前の噴火と、磐梯山1888年噴火は極めて類似しており、磐梯山での住民の対応記録の分析で学んだことは、岩手山で災害が生起した際の避難行動のために、役立つ。3.住民の郵送調査と面接調査、防災マップの収集と分析、行政のヒアリング等を行い、高齢者の避難や冬季の避難の対策、防災マップのノウハウの蓄積が重要であることを示した。4.火山活動情報が岩手山周辺の宿泊施設等への入り込み数に与える影響の数量分析、宿泊施設への聞き取り調査、雲仙普賢岳に事例を比較した総合的な考察を行った。5.災害の発生予測、被害緩和と訓練との関係の認知、予想被害の深刻さの認知、地域社会との関係の認知、避難訓練の参加コストの見積もり等が、住民の防災への対応に影響することを示した。6.災害時の通信に関しては、有効な方法をすべて調査し無線LANの優位性を示した。次に無線LANベースの情報ネットワークを構築し、その上でインターネットを利用する安否情報システムを開発した。さらに双方向ビデオ通信システムを開発し、実験で有効性を確認した。7.社会福祉分野における危機管理として、住民への直接的情報伝達におけるユニバーサルデザインの配慮が求められる。また、災害時の情報伝達システムには、ケアマネジメントとの連動、ニーズ変化等動的情報への対応、サポートネットワーク変容への視点が重要である。8.被災者の医療・看護体制に関しては、被災が予想される地域住民の健康状況及び防災調査の結果に基づき、災害弱者の避難方法、治療継続の保証を確保することに重点をおいて対策を実施した。弱者救援の組織化と慢性疾患患者の自己管理の情報提供である。