著者
堀内 一穂 柴田 康行 米田 穣 大山 幹成 松崎 浩之 箕浦 幸治
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

年縞堆積物中のベリリウム10を分析し, 同一の堆積物から得られた既存の炭素14記録や, 本研究にて新たに分析されたアイスコアのベリリウム10記録と比較することで, 最終退氷期の太陽活動変動曲線を抽出することに成功した.その結果, 太陽活動は退氷期の古気候変動を支配するものではないが, 気候変動イベントのトリガーには成り得ることが分かった.また, 古木から単年分解能で効率的に炭素14 を分析する手法や, 年縞堆積物から単年分解能でベリリウム10を分析する手法が確立された
著者
後藤 和久 箕浦 幸治
出版者
The Sedimentological Society of Japan
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.105-117, 2012-10-06 (Released:2012-11-08)
参考文献数
38
被引用文献数
4 4

津波堆積物研究は,いまや国や自治体の防災計画に直結するものとなった.本稿では,2011年津波発生後の対応と今後の津波堆積物研究の課題を議論する.2011年津波直後の緊急地質調査は,網羅的に実施されたとは言い難いが,津波の浸水過程と堆積物の分布様式の関係や堆積物の供給源,地球化学的な津波遡上範囲の推定など,新たな知見も得られている.古津波堆積物の理解には,最近の津波で形成された津波堆積物の研究は不可欠で,災害直後のデータ収集を行い続けなければ,津波リスク評価方法を改善していくことは難しい.今後の災害直後の調査では,情報共有と学会レベルで網羅的かつ組織的な調査を実施することが望ましい.また,将来の巨大津波に備え,工学や防災科学の研究者と連携しながら古津波堆積物研究を推進する必要があると同時に,人の一生を超える災害がイメージできるように,地学の素養を防災教育に取り込んでいくことが重要である.
著者
箕浦 幸治 今村 文彦 今泉 俊文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,砂の堆積現象が最も広範囲に現われた869年貞観仙台沖地震津波による堆積物運搬の様式を粒度組成及び堆積相から類推し,津波による流れの水理学的実体を理解するための初期条件を求める堆積学的検討を行った。また,静岡県南伊豆町入間において東海地震津波によって形成された丘陵状の集積土砂堆積物も研究対象とし,堆積物運搬過程の検討を行った。申請設備備品であるレーザー回折式流度分析装置による粒子組成解析結果からは,貞観津波堆積層を構成する砂層の明瞭な陸側細粒化現象が検出された。この現象は堆積物の移動と集積を試行する水槽実験装置の再現結果と調和しており,堆積層の細粒化様式が溯上津波のエネルギー散逸を反映する重要な基準として扱い得る可能性が示されるとともに,水理学的結果と堆積作用の理解から,我が国において特に顕著な災害を及ぼした貞観地震津波・東海地震津波による破局的な流れの堆積学的作用が明らかにされた。この基準は,海岸とその後背平野の成り立ちを理論的に理解する自然地理的条件を与え,更に海岸平野に於ける都市・産業基盤整備に不可欠の知識を与えるものと期待される。また,タイ南西部海域において採取した堆積物試料を用いて古生物学的解析を行い,津波前後での底生有孔虫群集の変化を明らかにするとともに,引き波によって生じた混濁流が海底に津波の痕跡を残しうることを示した。したがって,海域における堆積物掘削により,津波発生の履歴を知ることが出来る。平成19年7月にイタリア・Perugiaで開催されたIUGG総会において,これらの結果を津波災害と堆積現象の実例として紹介し,注目を集めた。
著者
箕浦 幸治 今村 文彦
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

大規模な砂の堆積・移動現象がみられた2011年東北日本太平洋沖地震津波(以下3.11津波)による堆積物運搬の様式を粒度組成と堆積相および珪藻群集から類推し,津波による上げ波と戻り流れの水理作用を解明するための堆積学的条件を解明した.3.11津波発生直後に仙台湾沖の海浜と沖浜で採取した多くの採砂泥試料の組成解析により,系統的な海側細粒化と淡水汽水珪藻類の沖浜での再堆積が認められた.この現象は堆積物の移動と集積を試行する水槽実験装置の再現結果と調和しており,溯上津波のエネルギー散逸を反映する重要な基準として扱い得る可能性が明らかとなった.
著者
今村 文彦 高橋 智幸 箕浦 幸治
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、地滑り津波の発生機構の解明および解析手法の確立を目的とし、非地震性津波の発生する可能性のある地域を評価する手法を提案することを目指している。今年は、現地調査、水理実験、数値モデルの開発を行ったので、異化に実績を報告する。まず、現地調査の対象地域は地中海沿岸であり、ここでは非地震性津波の多くがエーゲ海を中心とし歴史的なイベントが多い。昨年の1999年トルコ・イズミットおよびマーマラ海での調査に引き続き、トルコ共和国エーゲ海沿岸での調査を実施した。ダラマンにおいては、津波の堆積物を発見し、3層構造、各層の中にも2から3の異なる構造を持つことが分かった。これは、地震による液状化、津波の数波の来襲を示唆している。その他の地域では、津波による堆積物を確認することは出来なかった。次に地滑り津波発生モデルの基礎検討として、地滑りが流下し水表面に突入し、津波を発生する状況の水理実験も実施し、既存のモデルとの比較を継続して実施した。斜面角度、底面粗度、乾湿状態などを変化させ、土石流の流下状況と津波の発生過程を観測し、モデル化を行った。実験で明らかになった点として、押し波に続く引き波の存在があり、これは土砂の先端波形勾配に最も関係していることが分かった。さらに2層流のモデルの適用性を検討し、抵抗のモデル化(底面摩擦、拡散項、界面抵抗)をさらに改良した。最後に移動床の水理実験も同時に実施しており、陸上部に堆積する土砂のトラップ条件と水理量との比較検討を行った。津波の遡上後、引き波で砂が戻る前に、トラップ装置を落下させ、砂の移動がないように工夫し、陸上部において、詳細に体積量を測定することが出来た。流速の積分値と堆積量がもっとも関係あることが分かった。