著者
高島 郁夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.61-66, 2013-06-15 (Released:2014-01-08)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

Tick-borne encephalitis (TBE) and Crimean-Congo hemorrhagic fever (CCHF) have been known as tick-borne viral infectious diseases. Recently, severe fever with thrombocytopenia syndrome (SFTS) emerged as a new tick-borne viral infectious disease. TBE is prevalent in Russia and many European countries. CCHF is prevalent in Russia, Central Asia, Europe and Africa. SFTS is now prevalent in China and Japan. This article reviews Tick-borne encephalitis and Crimean-Congo hemorrhagic fever in detail and describe present situation of SFTS.
著者
田中 智久 田上 銀平 山崎 真大 高島 郁夫 迫田 義博 落合 謙爾 梅村 孝司
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.607-610, 2008-06-25
被引用文献数
1 2

2005年度冬季に北海道で大量死した野鳥のうちの13羽について,病理検査とインフルエンザ,ウエストナイル両ウイルスの検出を行った.病理検査では全身性の急性循環障害が共通して認められ,ウイルス検出は陰性であった.これら検査結果,冬季限定の発生状況および文献検索から,融雪剤中毒の可能性が高いと考えられた.また,融雪剤を投与した鶏雛は急性経過で死亡し,野鳥と類似の病変を示した.鶏雛で血漿Na濃度の上昇があったことから,野鳥の死因の確定には罹患症例の電解質検査が必要と考えられた.
著者
有川 二郎 杉山 和良 高島 郁夫 森松 組子 王 華 CLARENCE Peters WANG Hua CLARENCE Pet 宋 干 李 徳新 ANTTI Vaheri BO Niklasson 網 康至 伊勢川 裕二 五十嵐 章
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

1. 研究分担者、杉山和良らは中国、北京市と西安市近郊で野生げっ歯類の捕獲調査を実施し、2地区より100例のげっ歯類が得られ抗体および抗原の分布を明らかにした。2. 中国側研究分担者、李徳新を3カ月間、日本側研究機関に招聘し、得られた材料の解析を行い、中国由来2株のウイルスの遺伝子配列が一部決定され、日本側流行株よりもむしろ韓国由来株に近縁であることが明らかになった。3. 研究代表者、有川二郎と研究分担者、森松組子は米国側研究分担者、Petersを訪問し、世界各地での本ウイルス流行状況と遺伝的解析方法についての最新情報を得た。4. 研究分担者、Vaheri(フィンランド)をわが国に招聘し、北欧地域調査と北欧由来およびアジア由来ウイルスの相互比較の可能性について情報交換と将来計画を検討した。5. 研究代表者有川と研究分担者、高島は、英国、オーストリアおよびスロバキア側研究分担者の所属研究機関を訪問し、欧州におけるハンタウイルス感染症流行地域拡大に関する情報を得た。病原性の高い血清型(Dobrava型)である可能性についても情報を得た。6. 研究分担者、森松、苅和は英国側研究分担者の研究所を訪問し、遺伝子再集合ウイルス作製法ならびにReverse genetics法に関する最新の情報を得た。7. 研究代表者、有川および研究分担者、森松、高島、苅和は、韓国側研究分担者、李鎬汪の研究所を訪問し韓国流行株との比較解析に関する情報収集を行った。8. 中国側研究分担者(王 華)をわが国に招聘し、中国の人と動物由来ウイルスの遺伝子の相互関係の解析を実施中である。現在までに約50株の遺伝子の増幅に成功した。9. 中国側研究分担者(陳 化新)をわが国に招聘し、中国の野生げっ歯類の生態とハンタウイルス流行との関係について情報収集を行った。
著者
高須 俊明 WAGUR M.A. YASMEEN Akba SHAHANA U.Ka AKRAM D.S. AHKTAR Ahmed 五十嵐 章 上村 清 土井 陸雄 石井 慶蔵 磯村 思无 吉川 泰弘 山内 一也 近藤 喜代太郎 SHAHANA Kazmi U. AKHANI Yasmeen AHMED Akhtar M.A.WAQUR SHAHANA U Ka D.S.AKRAM 橋本 信夫 高島 郁夫 WAQUR Anwar AKBANI Yasme AHMED Akhtar
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

1 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)多発の動向と原因(1)多発の動向:(i)パキスタンのカラチではなお(1991〜93年)SSPEの多発が続いており、カラチ市民病院では3年間に総計36例(毎年9〜16例)が登録された(人口100万対年間1.3)。そのうち36%は2歳未満罹患麻疹(early measles)から、64%は2歳以上罹患麻疹(late measles)からの発生であった(高須)。麻疹罹患者のSSPEの罹患率は10万対22、early measles 罹患者からは10万対22、late measles罹患者からは10万対21となり、late measles罹患者からの発生が多い傾向が続いている(高須)。(ii)麻疹の発生は減少傾向にあり、1978年には15歳未満人口10万対2888であったのが、1987年には15歳未満人口10対380であった。カラチにおける地域調査では麻疹流行期には麻疹罹患年齢が高年齢側に広がり、非流行期の麻疹では比較的低年齢層に罹患年齢が集中する傾向がみられた(磯村)。麻疹ワクチンの普及は進みつつありカラチの調査地域では15歳未満児で66%、5歳未満児では82%に達しているが、臨床的有効率は比較的低く(76%)、ワクチン接種者で麻疹未罹患である児の中和抗体保有率は75%に留まっていた(磯村)。以上のように多発はなお続いているが、麻疹ワクチンの普及、麻疹発生の減少に伴なってSSPEが果して、いつごろから減少し始めるかに強い関心が持たれる。(2)多発の原因:(i)ケースコントロールスタディでは妊娠母体の異常および分娩時の合併症、新生児期の異常、early measlesおよびSSPE発病前の疾患罹患がリスクファクターと考えられた(近藤)。(ii)カラチの小児の免疫能の検査によって、麻疹ウイルスと他の病原微生物の混合感染の頻度が高く、免疫系の初期発達に対する過度の負担のため麻疹合併症や麻疹ウイルスの持続感染が成立する可能性の高い低生活環境レベルの小児が多く存在すること、および種々の病原微生物との接触機会が少なく、免疫系の発達が不十分なままlate measlesに罹患した場合ある種の接続感染が成立する可能性が考えられる高生活環境レベルの小児が存在することの両方がカラチにおけるSSPE多発の要因である可能性が示唆された(吉川、寺尾)。(iii)麻疹ウイルスの遺伝子変異が持続感染の可能性を高めたり持続感染後のSSPE発病を促進したりする可能性が考えられるが、これらは今後実証されるべき課題として残っている。このように多発の原因には生活環境のレベルが関与している可能性が強くなってきたと考えられるが、なお今後SSPE多発とのつながりを解明して行く必要があり、麻疹ウイルスの遺伝子変異と共に大いに興味が持たれる。(3)その他:(i)インド亜大陸のいくつかの地域(ボンベイ、バンガロール、ベロール、マドラス)では一つの病院で毎年5〜36名のSSPE患者の新患があり、多発を推測させる(高須)。(ii)タイの疾患サーベイランス制度はそれなりに機能しており、特に下のレベルほど統計が生きており、事務的な保健統計よりもはるかによく活用されていることがわかった。パキスタンのシンド州の調査により、疾患サ-ベラインス制度を樹立する可能性について肯定的な結果が得られた(近藤)。2 日本脳炎(JE)様脳炎の病原(i)1992年に採取した急性脳炎髄液からPCR法により24検体中それぞれ8検体、1検体に西ナイルウイルス、JEウイルスの核酸塩基配列を検出した。IgM-ELISAでも1989〜92年に集めた39髄液検体のうち7検体で両ウイルスに対する抗体が陽性であり、9検体は西ナイルウイルスにのみ陽性であった。これらの結果から、カラチでは1989年以後の急性脳炎の病原として西ナイルウイルスが重要な役割を果しているが、JEウイルスも急性脳炎の病原の小部分となっていることが示唆された(五十嵐)。(ii)1990〜92年にカラチとカラチから87kmの所にあるハレジ湖岸の野外で採集したコダタイエカ118、756匹(779プール)からの西ナイルウイルス、JEウイルス分離は陰性であった。このことは急性脳炎の病原となるウイルスがカラチおよび周辺地域に常在はしないことを意味するものと考えられた(上村)。以上のようにカラチのJE様脳炎の病原の本態がようやく明らかになってきたが、今後ウイルス分離によって知見をより確実なものにする必要がある。
著者
高島 郁夫
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.97-99, 2002-12-26 (Released:2010-05-31)
参考文献数
3
著者
高島 郁夫 苅和 宏明 森田 公一 只野 昌之 竹上 勉 江下 優樹 水谷 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究において、日本に存在しているかまたは侵入の可能性のあるフラビウイルス感染症の流行予防のための診断法の開発、病原性の解明および蚊の調査に関する研究を実施して以下の成果を得た。1.診断法の開発1)ウエストナイル熱について、RT-PCR RFLP法、リアルタイムPCR法およびRT-LAMP法による遣伝子診断法を開発した。この方法によると簡便な設備により、ウエストナイルウイルスと日本脳炎ウイルスおよびウエストナイルウイルス株間の簡別診断が可能となった。2)ダニ媒介性脳炎の迅速な血清診断法として、ウイルス株粒子を用いたヒト用のIgGおよびIgM-ELISA法を開発した。2.病原性の解明1)ウエストナイルウイルスの神経侵襲性毒力がウイルスエンベロープ蛋白への糖鎖付加により決定されることを明らかにした。2)ダニ媒介性脳炎ウイルスの神経侵襲性毒力は、ウイルスエンベロープ蛋白の1個のアミノ酸の置換により電荷が陽性に変化することにより低下することが示された。3)ダニ媒介性脳炎ウイルスの感染性cDNAクローンを用いた解析により、NS5とエンベロープ蛋白における各々一ヶ所のアミノ酸変異が神経毒力の低下に相乗的に作用していることが示唆された。3.蚊の調査1)ウエストナイルウイルスに対する、日本産蚊4種アカイエカ、イナトミシオカ、ヒトスジシマカの感受性、およびアカイエカの媒介能を証明した。2)ウエストナイルウイルス・デングウイルス媒介蚊ヒトスジシマカのJNKタンパクの機能を解析した。
著者
高須 俊明 高島 郁夫 上村 清 橋本 信夫 高橋 三雄 土井 陸雄 五十嵐 章 ANWAR Wagar 石井 慶蔵 磯村 思〓 吉川 泰弘 山内 一也 近藤 喜代太郎 YASMEEN Akba MUBINA Agbor AKRAM D.S. SHAISTA Rauf AKHTAR Ahmed AKBANI Yasmeen AGBOATWALLA Mubina AHMED Akhtar RAUF Shaista WAQAR Anwar
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

研究代表者らは、昭和57年度以後の調査研究で、カラチでは亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の発生頻度が日本や欧米の大多数国に比べ数十倍以上高く、また血清学的にみて日本脳炎(JE)が疑われる患者が発生していることを知った。この事実に立脚して、今回SSPE多発の要因解析とJE様脳炎の病原研究に取り組んだ。成果の概況としては亜急性硬化性全脳炎(SSPE)については著しい進展があり、特にSSPEおよび麻疹の疫学やウイルス学での成果が目立っている。しかし、日本脳炎(JE)様脳炎については目立った進展は得られなかった。1.パキスタンにおけるSSPE多発の要因解析SSPEは麻疹ウイルスが個体に持続感染している間に生じた変異株が遅発性に脳を侵して起こる疾患である。今回の研究で、パキスタンにおけるその多発の要因は、以下の点でかなり明らかになった。(1)疫学的成果:SSPE患者の麻疹罹患年齢がパキスタンでは日本や欧米の大多数国と異なりearly measles(EM;2歳未満罹患麻疹)0.353、late measles(LM;2歳以上罹患麻疹)のうち5歳未満罹患麻疹(LM5>)0.340、5歳以上罹患麻疹(LM5≦)0.307(いずれも全measlesに対する比率)とLMが大多数を占めているという事実が判明した。これに基づき麻疹罹患年齢層別に計算されたパキスタンにおける麻疹罹患者からのSSPEの発生率は、EMからは308.1×10^<-6>、LM5>からは197.4×10^<-6>、LM5≦からは585.2×10^<-6>、麻疹罹患者全体からは280.2×10^<-6>と推定され、いずれも日本におけるそれぞれの数値に比べ高く、特にLM5>は46倍、LM5≦は296倍と著しく高いことがわかった。一般人口からの麻疹発生率のパキスタン対日本比は麻疹罹患年齢で層別しても高々2倍に留まる。したがって、パキスタンにおけるSSPE多発の最大の理由は、麻疹罹患者からのSSPEの多発、特にlate measlesからの多発にあると考えられた。[高須]第2に、SSPEのcase control studyの結果、患児は対照に比べて生下時体重が低く、出生後頭部外傷やけいれんに罹患している頻度が高い傾向がみられたことから、麻疹罹患前および後の環境因子がSSPEの発生に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された
著者
後藤 仁 明石 博臣 酒井 健夫 高島 郁夫 橋本 信夫 品川 森一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1985

我が国で分離されている代表的なアルボウイルスとして、日本脳炎ウイルス(JEV),ゲタウイルス(GTV),アカバネウイルス(ABV)があげられる。日本脳炎の発生は近年日本では激減しているが、東南アジアではしばしば流行して多数の患者が出ている。GTVは馬に発疹,浮腫を伴う熱性疾患を起こし、ABVは牛の死、流産の原因となり,ともに周期的に流行している。またダニ脳炎ウイルスも分離されているが、その生態学的意義は不明である。本研究では、日本各地の家畜についてウイルス抗体の変動,ウイルス分離,抗原分析などからこれらウイルスの動物間での動向を明らかにしようと試みた。その結果、北海道で収集した馬血清のGTV抗体は道南と道北で抗体保有率が高く、7月〜11月間に本ウイルスの伝播のあったことを明らかにした。一方、1985年6月札幌近郊で豚のJEVによる異常産の発生と媒介蚊の収集成績から自然界におけるJEVの基本的な存続様式に新たな問題を提起した。JEVの全国的動態では、牛の血中抗体を指標とした場合、南部の鹿児島県から北部の岩手県に、4月から9月にかけて抗体陽性牛が漸次北上する傾向を明らかにした。ABV日本分離株10株とオーストラリア分離株2株のフィガプリント法によるRNAの解析では、両国分離株間はもちろん、日本分離株間でも相違がみられ、本ウイルスの変異がかなりの頻度で起こっていることが推定された。このことは単クローン抗体によるウイルス抗原蛋白の分析でも確認され、ABV感染の疫学を解明する上に極めて重要である。次にダニ脳炎ウイルスの根岸株の単クローン抗体による中和反応の機序に関する基礎的研究では、多種類の抗体を混和したとき、本ウイルスの中和活性が著しく増強され、この反応系はmulti-hit modelとなることが示唆され、今後のアルボウイルスの基礎的研究に大いに寄与するものと考えられる。