著者
池田 次郎 多賀 谷昭
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.397-410, 1980 (Released:2008-02-26)
参考文献数
16
被引用文献数
4 5

全国の地方集団,男性706,女性609を用い,6項目の生体計測値からみた日本列島の地域性を多重判別分析法を用いて検討し,次の結果をえた。i)最も明瞭な地域差は,北海道,本州•四国•九州を含む本土,および南西諸島の間に存在する。ii)本土集団のなかでは,南九州がやや特異な地域である。iii)東中国,近畿,東海,南関東の集団と,奥羽,北陸の集団との差は,比較的顕著である。iv)北海道,南西諸島間の差は大きく,本土集団のうち両集団に近いのは,前者には奥羽,次いで北陸,信越であり,後者には北陸,信越,次いで南九州である。v)地域性は,女性より男性でより明瞭であるが,その傾向は完全に一致する。
著者
石田 肇
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.137-148, 1990
被引用文献数
11

近世においてアムール河流域とサハリン島には,アイヌ,ニブフ,ウリチなどの民族集団が数多く分布していた.今回は,サハリンに住むサハリンアイヌとニブフ,アムール河流域のウリチ,ナナイ,ネギダールおよびオロチの6集団と靺輻文化のトロイツコエ遺跡から出土した頭蓋骨を用いてその計測的および非計測的特徴を調査した.ソ連の人類学者がバイカル型と分類している群に含まれるアムール河流域の4集団は互いによく類似する.レヴィンによりサハリン•アムール型とされたニブフは頭蓋形態でははっきりとした独自の形質を持たないようである.頭蓋形態小変異では近世のアムール集団と似るトロイツコエは,計測値を用いた場合,他と大きく異なる.一方,サハリンアイヌはすでに先学が指摘しているように,残りのモンゴロイド集団とは形態学的に異なるようである.
著者
木下 太志
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.98, no.3, pp.317-336, 1990
被引用文献数
3

山形県天童市の旧山家村に残る1760年から1870年にわたる宗門改帳を使って,江戸時代における東北地方の農民の結婚と出生を分析した。結婚に関しては,男子の場合,初婚年齢,既婚率ともに経済的要因によって強く影響されるが,女子の場合にはこのことは必ずしも言えない。この理由として,男女間の社会的,経済的地位の差が考えられる。また,山家村の出生率は時代とともに増加しているが,これは主に有配偶出生率の増加に起因し,生涯未婚率の低下が補助的に出生率の増加に寄与している。出生率の増加には,労働形態の変化,雇用機会の増大,賃金の上昇等が関与しているものと考えられろ。
著者
須田 昭義 保志 宏 江藤 盛治 芦沢 玖美 北条 暉幸
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.185-194, 1973 (Released:2008-02-26)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

神奈川県大磯町に沢田美喜女史によって設立された混血児のための施設エリザベス•サンダース•ホームに生活する混血児たちの発育を,同女史のご好意とご協力とによって20年にわたって長期観察を続けることができた。本報告はその第3報であって,第1報は1965年に身長•体重について,第2報は1968年に胸囲坐高について,いずれも人類学雑誌に発表した。今回,分析にとりあげたのは6才から15才まで完全に追跡することのできた男児60人,女児31人である。彼らは,父親がアメリカ白人である者(1-W)と,アメリカ黒人である者(J-N)とにわかれるが,母親はすべて日本人である。父親がアメリカ人でない者,母親が日本人でない者は除外した。計測は毎年2回Martinに従って行ったが,肩峰幅と腸骨稜幅は45cm測径器を用いて測定した。比較資料としては,アメリカ白•黒人のデータがKROGMANによって発表された('70)。これは個人追跡を主体とするもので,その対象児の出生年は混血児のそれとほぼ同じ頃に当る。その点,比較に際して時代差を顧慮せずに済むので好都合である。日本人のデータとしては東福寺('57)と木田ら('57)を用いた(いずれも関東地方人)が,前者は横断的,後者は完全な個人追跡研究である。ただし,木田らの身長は文部省発表の同時代日本人に比して著しく小さいので,比較には東福寺に無い腸骨稜幅とそれに関連する示数のみにとどめた。比較資料の示数項目はすべて本論文の著者らによって平均値から算出されたものである。I.年令変化。絶対値•示数とも,混血児•アメリカ人•日本人の間に差がなく,年令変化の経過は3者ほぼ平行している。従って年令変化の進み方に関しては,人種差も混血児の特殊性も認められない。II.混血児と親群との比較a)黒人系混血児(J-N)と白人系混血児(1-W)との比較。胴長•腸骨棘高•肩峰幅の平均値は男女とも差がない。腸骨稜幅は女子でのみ1-W>J-Nである。比腸骨稜幅は男女とも差がなく,比肩峰幅は男女ともJ-N>J-W。比胴長は男子のみJ-W>J-N,比腸骨棘高は男子のみJ-N>1-Wで,女子はいずれも差がない。肩腰示数•胴脚示数によれば,白人系混血児は黒人系混血児に比して胴がながく脚が短かく,肩がせまくて腰が広い体形であることを示している。これはアメリカの白人と黒人とのちがいをそのまま反映している。b)親群との比較。Table1.は混血児がどちらの親に似ているかを矢印で示したもので,右向きは日本人に左向きはアメリカ人に似ていることを示している。実線は,似ている群とは有意差なく似ていない群とは有意差があることを示し,点線はどちらの群とも有意差は認められないが,平均値は矢印の群に近接しているてとを示し,等号は3者の値が酷似するてとを示す。一見してわかるように垂直方向の項目はすべて日本人に近似している。これはGREULICH,ETOらが在米二世の坐高について,その日本人近似性を指摘している事実と符号する。恐らく日本人の遺伝的要因がかなり強力なのであろうと思われる。しかも混血児は日本人と同じ環境で生育したのであるから,日本人近似性がなお一層強調して現われたものと考えられる。しかしながら横方向の項目は矢印の向きがまちまちである。肩峰幅•比肩峰幅は全部左向き,つまりアメリカ人に近似している。腸骨稜幅•比腸骨稜幅はばらばらであって,しかも8本の矢印のうち,実線は2本しかない。従って統計的検定にかかるほどの差はないとみなしてよいであろう。肩腰示数の傾向は若干の興味を引かれる。白人系混血児は日本人に,黒人系混血児はアメリカ黒人に近接するのであるが,これはまた別の観点からみると,いずれも両親のうち平均値の小さい方に近接しているということなのである。肩腰示数が小さいというてとは,相対的に男性的体形であるてとを表わすもので,混血児にあるいはそのような傾向があるてとを示すものかもしれないが,本研究の範囲内では断定はできない。

1 0 0 0 OA 人口問題総説

著者
篠崎 信男
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.291-304, 1978 (Released:2008-02-26)
参考文献数
57

Institute of Population Problems, Health and Welfare Ministry The population problems are the research theme from ancient times to present times and also towards future times. Accordingly in order to be fruitful to this research, we must develop new idea by an integrated study not only from the viewpoint of socio-economic field but also political and cultural field. Population statistics are one of the data, but now this technic rather preferentially is studied. Therefore the research of population theory or population philosophy etc. which show the important study as population problems, become to be made light. However as shown in Japanese population trend after war, such rapid population changes which mean that birth rate and death rate became half within ten years, could not be realised through the line of old population theory. Then centering around the demographic tendency in Japan, I summarise these population problems as follows.1) What are problems until the reach to the stabilization of population, 2) Leveling up the population quality in future, 3) Regional and occupational population problems, 4) Problems of relation between population and social welfare system, 5) Research project of the magnitude of population quake in future.Above mentioned 5 subjects must be researched as a population-reseacher, especially the problems of population quake are one of new idea, because as they often say the population explosion, we must explore and analyse the meaning or content of it. Therefore under the background of presumption which something like quake may break up before the explosion. I would like to make a plan of the predicted index to contribute to the better population policy plan. Now many anthropologists begin to research the population problems and increase the power of speech or proposal to this problems especially from the point of cultural field. I would like to point out that one of target of anthropology also should be to resolve the population problems.
著者
河内 まき子 山崎 信寿
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.101-118, 1992 (Released:2008-02-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

足の大きさに伴うプロポーションの変化を明らかにし,靴型のサイズ展開における靴型各部の変化量が適正であるか否かを評価するために,日本人成人男子528名,女子500名の右足の測定データのアロメトリー分析および市販靴24種の靴型形状との比較を行なった。足長の変化に伴い,幅径,高径,周長項目は一般に劣成長を,長径項目は等成長を示すため,足長が大きいほど足は相対的に細身となる。また,足長が一定の場合,足囲の変化に伴って外果端高以外の高径項目および女子の足幅が等成長を示し,幅径と周長項目は劣成長を示す。踵部の幅はボール部の幅ほど急速に増加しないため,足囲が大きいほど足が相対的に前広がりになる。サイズ展開における靴型の変化は,大きさの変化に伴うこのような足の形状変化と一致しない部分が多い。さらに,足と靴との適合性を向上させるうえでの問題点を,足の寸法•形状の時代変化およびサイズ展開技術の観点から検討した。
著者
山田 博之 小木曾 力 寥 健源
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.473-479, 1986
被引用文献数
3

歯の大きさ,とくに歯冠近遠心径ならびに頬舌径に関する研究はこれまで数多く報告されている.しかし歯の大きさに関する相関係数は歯冠近遠心径と頬舌径が別々に記載されているか,あるいはある特定の歯群について報告されているもので,歯冠近遠心径と頬舌径の相関係数をすべての歯種について表記したものは少ない.<br>今回,日本人と福建系中国人の男性と女性について歯の大きさの基本統計量と相関係数とを将来の比較資料として掲載した.これらの資料は日本人については山田(1977),小木曾(1982),福建系中国人については廖(1984)の上下顎石膏模型による歯冠近遠心径と頬舌径のデータである.なお,第3大臼歯の計測値は含まれていない.ここに掲載した基本統計量と相関係数行列は上記に示した歯の大きさの28計測項目すべてを含んでいる個体を対象に算出したため,すでに報告された結果と多少数値を異にしている.
著者
安部 国雄
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.71-84, 1981
被引用文献数
1

著者は1978年12月と1980年1.月に南インドのNilgirisに住む諸部族の調査を行なってToda-男31女42,Kota-男55女35,Kurumba-男38女42,Irula-男48女70の合計361人の形質人類学的資料を得た。その結果から各部族の生体計測学的特徴を明らかにすると共に,各部族間の形質の比較検討を行なった。Todaの形質は南インドに古くから住むKurumbaやIrulaとはかなり異なっており,IrulaはTodaと最も対照的な形質を有する。Kurumbaの計測値や示数はIrulaと非常に近似しており,この2部族は同一の種族に属すると考えられる。Kotaの主な計測値や示数はTodaと他の2部族の中間にあって,このことからKotaは嘗てTodaの1支族がKurumba或はIrulaと混血した部族であると考えられる。
著者
八幡 一郎
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.330-332, 1931-09-15 (Released:2010-06-28)
著者
八幡 一郎
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.20-26, 1937-01-15 (Released:2008-02-26)
著者
八幡 一郎
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.292-294, 1941-05-25 (Released:2008-02-26)
著者
八幡 一郎
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.266-269, 1942-05-28 (Released:2008-02-26)
著者
八幡 一郎
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.198-200, 1931-05-15 (Released:2010-06-28)