著者
鈴木 拓朗
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.19-33, 2021-01-31 (Released:2021-03-23)
参考文献数
33

The aim of this study was to test the association between Stalking-Related Behavior (SRB), urami and communication skills. As variables related to SRB, three factors were investigated: the frequency of SRB, the persistency of SRB and the variation of types of SRB exhibited. As a variable of motivation for SRB, urami was investigated. As variables of communication skills, six factors were investigated: expressivity, assertiveness, decipherer ability, other acceptance, self-control, and regulation of interpersonal relationships. A web-survey was conducted using 191 male and 197 female participants who have been rejected by someone they have loved (hereby referred to as “the target”) within the last five years. The results of a multiple-group analysis revealed a model that was common in both men and women which showed that poor self-control and other acceptance increased urami in the experience of rejection, and urami increased both the frequency and variation of types of SRB exhibited. Furthermore, the results found that as the level of assertiveness decreased, persistency of SRB increased. Finally, the limitations of this study and future prospects about the research of stalking in Japan was discussed.
著者
田口 真二 桐生 正幸 伊藤 可奈子 池田 稔 平 伸二
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-13, 2007 (Released:2018-06-30)
参考文献数
27

A projective questionnaire for measuring male sexual desire was developed. In Study 1, the original Sexual Desire Scale for Males (SDS-M) was developed by referring to information on sexual activities on the Internet, as well as to prior studies on sexual offenders and their victims. The original SDS-M requested participants to judge whether they agreed or disagreed with sentences regarding various sexual behaviors and objects of sexual desire. SDS-M did not inquire about the frequency of sexual activities or the strength of sexual desire. The original SDS-M was administered to 140 males. The factor analysis of their responses revealed that the SDS-M had a 5-factor structure: daily sexual desire, h omo-hetero sexual desire, penis oriented sexual desire, intercourse oriented sexual desire and abnormal sexual desire. Cronback's alpha indicated satisfactory internal consistency and reliability. Study 2, investigated the stability and the validity of the SDS-M. It was administrated to 274 males, and based on the results of confirmatory factor analysis using Structural Equation Modeling, the SDS-M was divided into two subscales: a general sexual desire subscale consisting of the four factors with the exception of the Abnormal factor, and an Abnormal sexual desire subscale. The goodness of fit index of each subscale indicated satisfactory factor validity. Moreover, the SDS-M had reasonable test-retest reliability and satisfactory correlations with the Sexual Attitudes Scale and the Beck Depression Inventory.
著者
河野 荘子 岡本 英生
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-14, 2001 (Released:2018-09-07)
参考文献数
15
被引用文献数
2

Gottfredson & Hirschiは,1990年に,「犯罪の基礎理論」において,自己統制という概念を提唱した.その後,多くの研究者が,犯罪行為と自己統制能力の低さとの関連性を実証してきたが,これらの研究に用いられている手法には,いくつかの問題点が指摘できる.そこで本研究では,それらの問題点をできるだけ解消するため,犯罪者を対象とし,犯罪進度や家庭環境といった,低自己統制が形成される客観的要因も含めた検討をおこなう.その結果,以下のことが指摘された.(1)20歳までの警察補導などの経験は,犯罪進度を示す重要な指標の1つとなりうる.(2)実父の欠損は,子どもが犯罪を行なうか否かに大きな影響を及ぼす.(3)一般的に不適切と思われる行動の多い親によって,不安定な家庭環境の中で育てられると,自己統制能力が低くなる可能性が強まる.
著者
大淵 憲一 石毛 博 山入端 津由 井上 和子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-12, 1985

<p>レイプを合理化する誤った信念をレイプ神話と呼ぶが,本稿では特に,被害者である女性の側の条件を強調した4種類のレイプ神話を取り上げ,質問紙によってその測定を試みた。取り上げられたレイプ神話は,女性の暴力的性の容認,女性の潜在的被強姦願望,女性のスキ,それに女性による強姦のねつ造,である。まず研究1において,大学生男女の比較を行なったところ,レイプ神話が予想通り女性より男性によって強く支持され,これが女性の性行動に関する誤った見解に基づくことを示した。研究2では,性犯罪者にこの質問紙を施行して性犯罪とレイプ神話の関係を検討した。その結果,性犯罪者は,一般犯罪者や大学生に比べて,女性が被強姦願望を持っていると信ずる傾向が強かった。この結果の解釈としては次の3点が提起された。(1)レイプ神話がレイピストの女性に対する支配欲求を喚起して,レイプを動機づける;(2)多くの男性においては,女性への暴力に対しては内的抑制が働いているが,レイプ神話はその抑制を中和して,女性に対する暴力を実行させやすくする;(3)犯行時において,被害女性が性的強制を受け入れてくれるものと,レイピストに誤った知覚をさせる。</p>
著者
大江 由香
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.35-47, 2015-01-05 (Released:2017-07-19)
参考文献数
58
被引用文献数
1

本稿では,特に大きな変化のあった性犯罪者の処遇を例に挙げて,ポジティブ心理学的アプローチが評価されてきた理由と,同アプローチに対する批判的見解の双方の視点から検証し,同アプローチを導入することの利点と注意点について考察した。犯罪者に対する責任や問題点の直面化を重視するという処遇方法には,進め方を誤れば犯罪者の自尊感情の低下を招いたり,処遇に対する動機付けを高めにくかったりするといった短所が少なくないが,ポジティブ心理学の観点が追加されることによってそうした短所を補うことができると見られた。ただし,ポジティブ心理学に対する批判は軽視できないことから,ポジティブ心理学的アプローチはあくまで既存の処遇の浸透性を高めるために補足的に使用することが望ましいと考えられた。
著者
森 武夫
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.43-56, 2019-08-15 (Released:2019-08-28)
参考文献数
13

戦後新しい法律が制定され,心理職が制定された。最高裁判所,法務省,警察庁や児童相談所に心理職が設けられた。その結果心理学関連の学部を持つ大学が増えた。臨床心理士制度ができた結果,臨床心理学の大学院も増えた。日本犯罪心理学会が1963年に発足した。今では会員が犯罪心理学を講義する大学は日本中に広がっている。犯罪心理学の専門書は出版され,犯罪心理学者はマスコミ界で主要な役割を果たしている。
著者
市川 守
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.18-44, 1988
被引用文献数
1

<p>本研究は,1980年に全国の少年院を出院した男子3,320人について,出院後2年間の再逮捕状況を調査し,少年の処遇類型別に再犯の有無と11要因(①出院時の年齢,②施設収容歴,③出院時の引受人,④在院日数,⑤在院1月当たりの面会回数,⑥少年院送致決定にある非行の種別,⑦非行時の学職状況,⑧非行時の所在,⑨知能指数,⑩非行時の実父母の有無,⑪非行時の家庭の生活程度)との関係を分析したものである。その結果,全体では施設収容歴の有無が最も再犯の有無と密接な関係にあったが,初等少年院一般短期処遇の出院者では非行時の居住状態が,特別少年院の出院者では在院期間が,それぞれ施設収容歴と同様に再犯の有無と密接な関係にあることがわかった。一方,中等少年院で交通短期処遇の出院者や人格の未熟な処遇類型に分類された少年では,施設収容歴がさほど再犯と密接に結び付いていなかった。比較的非行性の浅い者を処遇する中等少年院交通短期処遇や非行性の進んだ者を処遇する特別少年院では,全体で行なった分析結果よりも処遇類型別に行なった分析結果の方が予測の効率は高まった。今後の研究の課題としては,より優れた再犯原因の理論とそれに裏打ちされた因子の測定,及び最適な確率モデルの作成を行ない,合わせて実務に即した研究を行なっていくことが必要である。一方,再犯により刑務所に収容されていた144人の意識調査によれば,出院後における家庭環境の悪化とともに,離職一家出一暴力団への加入一覚せい剤濫用という,典型的な再犯に至る課程が明らかにされ,出院後の出来事に対する対処の仕方や更生への意欲が再犯に大きな影響力を持ちうることが再確認された。</p>
著者
白岩 祐子 小林 麻衣子 唐沢 かおり
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.105-116, 2018-08-27 (Released:2018-09-19)
参考文献数
23

本研究は2000年に始まった意見陳述制度と2008年に始まった被害者参加制度に着目し,両制度を実際に行使した犯罪被害者遺族がこれらの制度をどのように評価し,またその意義や問題点をどのように理解しているのかを検討した。交通事犯や殺人などの遺族97名から協力を得て制度に対する評価を求めたほか,「制度の意義」「制度の問題点」「行使するとき留意した点」につき自由記述を求めた。その結果,両制度はいずれも遺族から高く評価されており,とくに「心情・意見を直接被告人や裁判官に伝えられる」「思考や気持ちの整理ができる」点が肯定的な制度評価につながっていること,逆に,「自分の話を被告人や裁判官がどのように受け止めたか分からない」「専門家や経験者による支援があればよかった」という点が否定的な制度評価につながっていることが明らかになった。
著者
宮田 千聖 湯川 進太郎
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.1-10, 2014-01-31 (Released:2017-07-30)
参考文献数
31

本研究は,サイコパシー特性と自伝的記憶の想起特性との関連を検討することを目的とした。大学生172名を対象に,質問紙調査を行った。記憶特性質問紙を用いて,感情的にポジティブ,ネガティブ,中性な自伝的記憶の想起特性の評定を求めた。同時に,日本語版一次性・二次性サイコパシー尺度を用いて,感情・対人関係面の特徴を表す一次性サイコパシー(PP)と,行動面の特徴を表す二次性サイコパシー(SP)の評定を求めた。その結果,PP特性が高いと,時間情報や知覚的感覚を鮮明に想起するというような,ポジティブな自伝的記憶の想起に及ぼすポジティブ感情の影響が弱かった。また,SP特性が高いと,出来事を何度も想起し,意味を見いだす傾向が低かった。さらに,PPとSPのいずれにおいても,サイコパシー特性が高いと,出来事の明確性が低かった。これらの知見から,サイコパシー特性が自伝的記憶に影響を及ぼすことが示唆される。
著者
横田 賀英子 渡辺 昭一 渡邉 和美
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.21-33, 2002 (Released:2018-09-07)
参考文献数
16

本研究では,我が国で過去に発生した人質立てこもり事件87件を分析し,犯人の投降に影響を与えた状況要因について検討した.その結果,以下のことが明らかとなった.1 事件中に,犯人が人質を死傷させた場合には,犯人が投降する確率が低かった.2 発生場所が建物内である場合,犯人がマスコミ報道を要求している場合,犯人と人質問に会話があった場合には,犯人が投降した確率が高かった.3 立てこもり事件の終結においては,犯人の投降もしくは立てこもり継続への意思決定と,警察の強行制圧もしくは交渉継続の意思決定の双方が影響していたことが示唆された.本研究の結果により,我が国における過去の人質立てこもり事件において,どのような状況要因が,犯人の投降に影響したのかが,明らかになった.今後は,犯人,警察,人質問のダイナミックスについて,さらに研究を進める必要がある.
著者
阿部 晋吾 高木 修
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-8, 2006 (Released:2018-06-29)
参考文献数
8

In this study, participants (229 students) responded to a questionnaire on how they express and are expressed anger. Results indicated that the anger expression caused by “broken promise and betrayal” occurred more often in the intimate relationship than in the estranged relationship. It was also suggested that the anger expression caused by “broken promise and betrayal” tended to be evaluated more justifiable, and had more positive interpersonal effects. Therefore, it could be said that the prior promise has important implication for the social function of anger expression.
著者
笹竹 英穂
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.33-44, 2014-01-31 (Released:2017-07-30)
参考文献数
22

女子大生の防犯意識は,性に関する危険な出来事の被害体験によってどのような影響を受けるのかについて,楽観主義バイアスの視点から明らかにすることを目的とした。性に関する危険な出来事の被害は,変質者に出会うということに限定した。楽観主義バイアスは,被害にあう確率を他者と比較するという楽観主義バイアス(頻度)と,被害にあった場合の結果の重大性を他者と比較するという楽観主義バイアス(程度)の2つを設定した。そしてそれぞれの楽観主義バイアスを直接法および間接法によって測定した。中部地方の女子大学生329人に対し,平成21年1月に調査を行った。その結果,被害体験がある場合には楽観主義バイアス(頻度)が低くなるが,防犯意識の形成にまでは至らないことが示された。また防犯意識を従属変数にし,被害体験と楽観主義バイアス(程度)を独立変数にした分析では,直接法では被害の有無にかかわらず,楽観主義バイアス(程度)が高いと防犯意識が低いことが示された。同様の分析において間接法では交互作用が認められ,特に被害体験がある場合には,楽観主義バイアス(程度)が高いと防犯意識が低いことが示された。
著者
石毛 博 糟谷 光昭
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.31-37, 1991

<p>交通短期保護観察対象者の交通非行歴を,数量化3類及びクラスター分析によって分類したところ,速度違反及び物損事故,その他の違反及び人身事故,無免許運転及び暴走行為,並びに飲酒運転の4グループに別れた。</p><p>各群の特徴を把握するため,運転態度検査とSensation Seeking Scaleを実施した。</p><p>一般的な交通違反や交通事故を起こす群には安全配慮不足運転態度が指摘され,無免許運転・暴走経験群には低年齢少年が多かった。</p><p>交通非行群は男子大学生に比べて,スリルや危険を伴う活動は好まない半面,社会的抑制を無視して自由な欲望充足を図ろうとする特性が高かった。飲酒運転経験群は,新しい経験を求める特性は低い半面,社会的抑制を無視して自由な欲望充足を図ろうとする特性が高かった。</p>
著者
藤野 京子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.33-46, 2010-02-28 (Released:2017-09-30)
参考文献数
20

本研究では,児童虐待の経験を乗り越えていくプロセスを明らかにすることを目的とした。そのため,児童のころ親から虐待を受けた経験を有しながらも,調査時点においては自身を主観的に幸福であると感じている30歳代の女性16名を対象に,その被虐待経験によってどのような影響を受け,さらにどのような経過をたどって今日に至っているのかについて,当事者の視点から明らかにすることを試みた。半構造化面接による面接調査を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析を行った。その結果,虐待されても当初はその行為を十分問題視できないものの,それが不当であると気づくことが,受身の被害者のままでいることからの脱却の試みにつながること,また,虐待への恐怖心が少なくなるにつれ,虐待がなぜ生じたかを多角的視点から理解しようとし,虐待をしてしまう親に対する洞察も深められるようになっていくことが明らかになった。加えて,虐待場面のみならずそれ以外の生活場面も含めて,自己効力感に気づけるような体験をすることが,社会適応を促す原動力となっていることも明らかになった。なお,虐待を受けなくなって以降も,虐待を受けたことや虐待を受けた自身に対する内的処理が変容していくことが示された。
著者
谷 真如 高野 洋一 髙宮 英輔 嶋根 卓也
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.1-17, 2020-01-30 (Released:2020-04-03)
参考文献数
22

This study compared the psycho–social characteristics of newly entered inmates to penal institutions across Japan with and without partial suspension of execution committed simulant drug related offenses. Inmates with partial suspension of execution were significantly more likely than those without to report engaged experiences in medical care and peer support, criminal history by substance use offences, psychiatric comorbidity and early first time simulant drug use. Furthermore, inmates with partial suspension of execution were found to have a higher degree of problems related to drug use measured by The Drug Abuse Screening Test-20 (DAST-20) than those without. Additionally, results from decision tree analyses indicated that some psycho–social characteristics influence judicial sentencing about imprisonment with partial suspension of execution. The groups with psycho–social characteristics that are likely to be inmates with partial suspension of execution had higher severity of drug use problems than those without them. In the light of these findings, justice decision making of imprisonment with partial suspension of execution seems to be determined with sufficient consideration of treatment needs and responsivity for preventing reoffending.This study compared the psycho–social characteristics of newly entered inmates to penal institutions across Japan with and without partial suspension of execution committed simulant drug related offenses. Inmates with partial suspension of execution were significantly more likely than those without to report engaged experiences in medical care and peer support, criminal history by substance use offences, psychiatric comorbidity and early first time simulant drug use. Furthermore, inmates with partial suspension of execution were found to have a higher degree of problems related to drug use measured by The Drug Abuse Screening Test-20 (DAST-20) than those without. Additionally, results from decision tree analyses indicated that some psycho–social characteristics influence judicial sentencing about imprisonment with partial suspension of execution. The groups with psycho–social characteristics that are likely to be inmates with partial suspension of execution had higher severity of drug use problems than those without them. In the light of these findings, justice decision making of imprisonment with partial suspension of execution seems to be determined with sufficient consideration of treatment needs and responsivity for preventing reoffending.
著者
小菅 律 藤田 悟郎 岡村 和子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.13-27, 2011-03-31 (Released:2017-09-30)
参考文献数
32

本研究の目的は,暴走族集団の特徴に基づき類型化を行い,各群に分類された暴走族少年の特徴を分析し,類型別に効果的な対策を提言することである。都道府県警察で質問紙を配布し,共同危険型暴走族集団に現在加入している152人,かつて加入していた224人の男子少年を対象とした。多重対応分析の結果,集団の組織化程度,集団の人数の2次元が得られた。この2次元の成分スコアに基づきクラスター分析を行い,以下の3群に分類した。HoM群は高組織化・中人数の群で,非行経験が多く,学校・家庭への適応が悪いため,組織化程度を下げ,他の居場所を作るという対策を提示した。MoL群は中組織化・多人数の群で,学校・家庭への適応がよく,非行経験は少なく,暴走族の非行集団以外の側面に魅力を感じた可能性が考えられ,こうした興味に対処することを提起した。LoS群は低組織化・少人数の群で,自発的な集団結成の可能性が示唆され,取締りの必要性を指摘した。また,3群には地域差が見られた。
著者
大江 由香 森田 展彰 中谷 陽二
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.1-13, 2008-12-31 (Released:2017-09-30)
参考文献数
38

本研究では,J-SOAP-II (Juvenile Sex Offender Assessment Protocol-II) の尺度を用いて,性犯罪少年の類型を作成し,その再非行リスクアセスメントや処遇選択への適用性を検証することを目的とした。方法:1998年から2006年までの間に,接触する性非行で少年鑑別所に入所した男子115名を対象に,保管されている書類から必要な情報を抽出した。2ステップ・クラスター分析の結果,反社会的・衝動的群,非社会的・性固執群,一過的/潜伏群の3群に分類され,この3群はJ-SOAP-IIの尺度や性格などだけではなく,一般的な非行や性非行の再非行率も異なっていた。これらの特徴の差を考慮すると,各群に適した処遇計画を立てることが適当と考えられ,本研究で得られた類型は臨床で利用可能であると示唆された。
著者
大上 渉
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.29-45, 2017

<p>本研究は,1952年から2015年までの間に,日本においてロシア諜報機関(KGB-SVR, GRU)に獲得・運営された32名の情報提供者のタイプとその特徴を調査した。情報提供者に関する詳細情報の収集にはWeb上の新聞記事データベースを用いた。7つのカテゴリー,すなわち情報提供者の年齢,職業,提供した情報の内容,提供した諜報機関,情報の入手方法,情報提供者になった経緯及び動機について,クロス集計分析と多重対応分析が行われた。その結果,情報提供者は4つのタイプ,すなわち「自営業者型」,「自衛官型」,「国家公務員型」,「メーカー社員型」に分類された。情報提供者の特徴は各タイプで相違した。この相違は,情報提供者の職業に関連しているとみられる。この知見は日本におけるスパイ防止活動や機密情報の漏洩防止に貢献するだろう。</p>
著者
宮田 千聖 湯川 進太郎
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.1-12, 2013

<p>サイコパス臨床群には感情情報処理に問題があり,中性情報よりも感情情報が記憶されやすい感情バイアスが生じないことが報告されている。本研究では,このサイコパス臨床群と同様の記憶における感情バイアスの低下が,サイコパシー傾向の高い健常者でも生じるという仮説を検討した。一次性・二次性サイコパシー尺度に回答した45名の大学生を対象に,記憶における感情語の影響を測定する感情記憶課題を行った。その結果,先行研究と一致して,高サイコパシー群は低サイコパシー群より感情バイアスが低下していた。さらに,高サイコパシー群に見られた感情バイアスの低下は,ポジティブ感情に顕著に見られた。これらの結果より,サイコパシー特性を持つ健常者でも臨床群と同様に感情情報処理に問題があることが示されただけでなく,サイコパシー特性はポジティブ感情を伴う記憶に影響する可能性があることが示唆された。</p>
著者
大塚 祐輔 横田 賀英子 小野 修一 和智 妙子 渡邉 和美
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.1-15, 2016-01-31 (Released:2017-03-23)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究では,文書を用いた恐喝事件に関する基礎的な知見を提供することを目的として,事件の類型化を行い,各類型と犯人特徴の関係について検討した。分析データとして用いたのは,2004年から2012年の間に全国のいずれかにおいて発生して解決した文書を用いた恐喝事件に関する情報である(N=414)。多重対応分析を行った結果,「匿名性の程度」と「罪悪感利用の程度」の2次元が見出された。次に,多重対応分析によって得られたオブジェクトスコアを基に階層的クラスター分析を行った結果,「匿名性低―罪悪感利用低群」,「匿名性低―罪悪感利用高群」,「匿名性高群」の3類型が見出された。類型と犯人特徴の関連について分析したところ,「匿名性低―罪悪感利用低群」は20代以下の犯人が多く,友人・知人を犯行対象としていること,「匿名性低―罪悪感利用高群」は怨恨・憤まんを動機として,配偶者・恋人や情交関係にあった者を犯行対象にしていること,「匿名性高群」は50代または60代以上の犯人が多く,生活費・借金苦を動機として会社等に対する恐喝を行っていることが示された。