著者
小林 啓二
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.350-354, 2015-11-05 (Released:2017-06-08)

平成23年に発生した東日本大震災では,多数の航空機が救援活動に従事した.一方,一般に災害発生から72時間が経過すると被災者の生存率が激減すると言われているが,同震災においては救援航空機,特にヘリコプタによる初動時の迅速な救援活動を妨げる要因も顕在化した.宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,総務省消防庁,自治体消防,災害派遣医療チーム(DMAT)等の災害対応機関と連携して大規模災害時における救援航空機の安全かつ効率的な運航管理を実現する技術の研究開発を進めており,消防防災ヘリやドクターヘリ等の実運用下での評価実験を実施してきた(「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」の研究開発).平成25年度からは,このD-NETを発展させ,航空宇宙機器(航空機・無人機・人工衛星)の統合的な運用による災害情報の収集・共有化,及び航空機による救援活動を支援する「災害救援航空機統合運用システム(以下,本システム)」の研究開発を進めている.本稿では,救援航空機の運用課題を整理し,安全かつ効率的な救援航空機の運用を実現する本システムの研究開発状況と今後の展望について紹介する.
著者
浅井 圭介 鈴木 一義
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.247-249, 2023-09-05 (Released:2023-09-05)
参考文献数
3

二宮忠八(以下,忠八)は我が国の航空技術の先駆者である.飛行原理発見に至る思考過程を文書に残し,模型飛行機を製作して飛行実証を行ったという点で,忠八は航空技術史上において特別な存在だと言える.忠八考案の有人飛行機が実現することはなかったが,彼が作成した様々な技術資料や自作の模型飛行機が,忠八自身が創建した飛行神社や彼の故郷の八幡浜市の施設に保管されている.二宮忠八の動力飛行研究は当時の最先端を走るものであり.航空宇宙技術遺産の第一号認定に値する技術である.
著者
松野 賀宣 菊地 亮太
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.221-227, 2023-08-05 (Released:2023-08-05)
参考文献数
22

航空機運航において,到着予定時刻(Estimated Time of Arrival: ETA)の予測精度は,風予測誤差に大きく影響される.本稿では,風予測誤差の影響を緩和し,ETAの予測精度を向上させるため,確率的風予測手法を提案し,巡航速度誘導則に適用する.確率的風予測では,多数の数値気象予報を行うアンサンブル予報を用いて,風を確率的に推定することで,ETAを高精度に予測する.そして,速度誘導則では,所定の許容範囲内で目標の到着時刻を満たす最適速度を決定する.本稿では,数値シミュレーションにより,確率的風予測を適用した速度誘導則の性能及び有効性を評価する.確率的風予測を適用することで,典型的な飛行管理装置に比べ,ETA予測精度が向上し,目標の到着時刻を満たすための不必要な速度変更回数を低減することができるため,航空交通管制による軌道予測性の向上や,燃料消費量の削減効果が期待される.
著者
石川 芳男 井上 正史 小宅 康博 山極 芳樹 栗木 恭一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.41, no.471, pp.205-212, 1993-04-05 (Released:2010-12-16)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

In coming new space age, we will have frequent trips between the ground and mission orbits by large rockets to realize the large projects such as space stations and solar power satellite systems. In such cases a great deal of rocket effluents should be released in the atomosphere. But, its effects on our environment is still unknown, and therefore various studies on these problems are expected. About such environmental problems, some studies were performed which motivated by so called “ionospheric hole” observed when Skylab-I was launched, May 14, 1973. It was certified by later scientific studies that the phenomenon was caused by the chemical reaction between rocket effluents and ionized particles in the ionosphere, by which the electron density of the ionosphere suddenly decreased to about a half values of that in its normal state in the range of about 1, 000km in radius centering about rocket trajectory and it took about 4 hours to recover. In this study, the results of these fundamental studies are applied to the engineering problem, that is, the numerical simulation of the change in electron density in the ionosphere is carried out in consideration of the diffusion of rocket effluents released along arbitrary trajectory in upper atomosphere and their chemical reactions with the ionospheric constituents.
著者
藤本 圭一郎 和田 英一 沖田 耕一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.230-235, 2015-07-05 (Released:2017-06-08)

月や火星などの地球低軌道以遠への有人宇宙探査を実現させるためには,飛躍的に高い信頼性・安全性を有する大規模システムを現実的な開発及び運用コストで作り込む新しいリスク管理法の確立が必要である.本研究では,その鍵である数値シミュレーションを中心とした定量的リスク評価による開発プロセスを提案した.また,定量的なクルー安全性評価法の提案も行い,爆発ハザードからの離脱成功確率評価への適用を通し,その有効性を示した.定量的リスク評価による開発プロセスは,設計の手戻りの防止,大規模試験数の削減による開発コスト低減,設計マージンの適正化,及び上流段階での信頼性・安全性検討の強化を実現するものであり,広く他産業分野においても適用可能なものである.