著者
門脇 則光
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.2, pp.301-307, 2020-02-10 (Released:2021-02-10)
参考文献数
10

造血器腫瘍には免疫細胞がアクセスしやすいことから,固形がんに比べ,免疫療法が効きやすいと期待でき,実際,Hodgkinリンパ腫に対する抗PD-1(programmed cell death 1)抗体療法やB細胞性腫瘍に対する抗CD19 CAR(chimeric antigen receptor) T細胞療法ならびに二重特異性抗体療法が顕著な効果をあげている.今後早い治療ラインでの適用,さまざまな併用療法,輸注T細胞の改良,新たなワクチン療法ならびに細胞内抗原の標的化といった多様な側面からの開発を進めることによって,有効性が向上すると共に骨髄系腫瘍にも適応が拡大され,造血器腫瘍治療における免疫療法の重要性がさらに増すことが期待できる.
著者
山口 正雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.1114-1118, 2019-06-10 (Released:2020-06-10)
参考文献数
8

喘息の主病態は,Th2(T helper cell type 2)リンパ球及び2型自然リンパ球(group 2 innate lymphoid cells:ILC2)が引き起こす2型免疫であり,IL(interleukin)-4,IL-5ならびにIL-13といった2型サイトカインが関与している.これらサイトカインは,重症喘息に対する生物学的製剤の治療標的としても重要である.非2型免疫の病態も存在し,その代表としては,Th17リンパ球が引き起こす好中球性炎症がある.患者における気道炎症を把握することは,治療薬の選択に結び付く点において重要である.
著者
渡部 龍 山田 真介 橋本 求
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.2160-2165, 2021-10-10 (Released:2022-10-10)
参考文献数
8

JAK(Janus kinase)阻害薬は,経口投与可能な低分子化合物であり,生物学的製剤と異なり,複数のサイトカインの細胞内シグナル伝達を阻害することにより,関節リウマチに対して有効性を示す.現在,我が国では5剤のJAK阻害薬が投与可能である.生物学的製剤と同等またはそれ以上の有効性を示すが,帯状疱疹等の副作用に注意を要する.今後,本邦における長期安全性の検証が重要である.
著者
鈴木 慎吾 上原 孝紀 生坂 政臣
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.2568-2573, 2017-12-10 (Released:2018-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

外来診療における診断を目的とした医療面接は,問診票をみた段階で疾患を想起することから始まる.患者の話を頭のなかで映像化しながら,まずはopen questionで概要と問題点,患者ニーズを把握し,続いてclosed questionで想起した疾患仮説の妥当性を検証する.器質的疾患の見逃しを防ぐには精神疾患の除外が重要であり,代表的な精神疾患の特徴を理解し,積極的に診断する訓練が欠かせない.
著者
田倉 智之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.2899-2906, 2014-12-10 (Released:2015-12-10)
参考文献数
11

米国の医師技術料は,技術やストレスをも包含する提供負荷(relative value unit:RVU)と資源消費をベースとしたRBRVで論じられてきた.これは,技術提供に伴う医療資源消費をRVS(relative value scale)という総合指数で規定する.その算定には,主な18診療科で多くの専門医師が関与し,領域横断的なコンセンサスが形成される一方で,技術特性間の調整と多様な診察の分類が課題として挙げられた.今後の医師技術評価は,提供者の視点が中心のRBRV方式に加え,患者や国民等の享受者や負担者の立場によるアウトカム評価も望まれる.
著者
住谷 昌彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.2070-2076, 2019-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
10

「痛み」は,“組織の実質的ないしは潜在的な傷害と関連した,あるいはこのような傷害と関連して述べられる不快な感覚的,情動体験”と国際疼痛学会により定義されており,身体器質的な原因を有する侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に加え,身体器質的な原因を有さない非身体器質的疼痛に分類される.ただし,このような分類は,今後の見直しが必要であることが国際的に共有されている.
著者
平山 幹生 武藤 多津郎 中崎 繁明 郡 大裕 藤木 典生 中尾 直樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.1736-1737, 1988-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

症例は不明の発熱,頸部リンパ節腫大, LDHの高値を認めた男性で,リンパ節生検の結果,亜急性壊死性リンパ節炎と診断された.経過中の血清gamma-interferon値が6U/mlと高値を示した.本症における不明の発熱の原因および病態にgamma-interferonが関与している可能性が推定された.
著者
平塚 昌文 岩崎 昭憲
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.1624-1630, 2012 (Released:2013-06-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

内科的治療が限界に達した肺気腫に対する外科治療として,Lung Volume Reduction Surgery(LVRS)と肺移植が挙げられる.LVRSは米国での多施設共同試験NETT studyを中心とした報告から,ある程度呼吸機能が温存された上葉優位型の肺気腫がよい適応と考えられている.しかしLVRS後の機能改善は一時的であり,最重症例では術後死亡率も高くなり慎重な適応決定が必要となる.一方,COPDに対する肺移植は1980年代,Cooperらによって導入された.呼吸機能的にはLVRS対象のCOPDより重症例が適応となる.生存延長に関する寄与は少ないもののQOL向上には大きな効力を発揮し,欧米では多くのCOPD症例の肺移植が実施されている.我国では実施は10例程度に止まっているが,臓器移植法改正に伴う脳死ドナー増加で今後は症例数が増加する事が予測される.
著者
川合 眞一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2171-2176, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
6
被引用文献数
3 3

多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)は,原因不明の炎症性ミオパチーであり,自己免疫疾患と考えられている.PMの診断は近位筋の筋力低下,血清筋原性酵素濃度の上昇,筋電図での筋原性変化,筋生検所見によるが,DMでは顔面などに特徴的皮疹を認める.筋外症状としては,急性間質性肺炎合併例の予後は悪い.治療は大量ステロイド療法が一般的だが,メトトレキサートなどの免疫抑制薬や大量免疫グロブリン療法も試みられる.
著者
野村 恭一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.1830-1837, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

傍腫瘍性神経症候群(PNS)は腫瘍と神経組織とに抗原交差性が成立し,正常の神経細胞に対する自己抗体が産生され,自己免疫機序により神経障害を来す疾患である.PNSの治療として腫瘍自体に対する治療と自己免疫に対する治療が考慮され,副腎皮質ステロイド療法,免疫グロブリン静注療法,血漿交換療法などの免疫療法が試みられている.一般に,免疫療法はPNSの中枢神経症候に対して治療効果は乏しく,神経筋接合部を含めた末梢神経症候に対して有効性を示す.
著者
宗 祐人 小山 洋一 中林 正一 八尾 恒良 佐々木 悠 池田 稔 二宮 健
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.1083-1084, 1990-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3

多くの内分泌疾患が受容体異常症の概念で捉えられ注目されている.症例は20才男子.著明な女性化乳房,尿道下裂手術既往,染色体46XY,血中テストステロン, 5αジヒドロテストステロン,エストラジオール高値, LH・RH負荷正常,睾丸生検組織像などよりアンドロゲン不応症のReifenstein症候群と考えられた1例を報告した.本症の本邦報告例は十数例を認めるに過ぎない.
著者
大野 恭太 平井 利可子 長谷川 和範 高橋 利和 大橋 一 山本 欣宏 橋本 泰樹 松森 良信 筒泉 正春 大石 哲也 辻本 大治 志村 利之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.1091-1093, 1999-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

29歳の初回妊娠の女性が検診にて血小板数の異常低値を発見されEDTA (ethylene diamine tetraacetic acid)依存性偽性血小板減少症と判明し女児を出産した.この出生女児においても出生直後には母親と同様のEDTA依存性の偽性血小板減少症が認められたが1年8カ月後には消失していた.本例における母子発生の機序として抗血小板抗体の経胎盤性移行を推定して.
著者
大黒 浩 斉藤 由幸
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.1790-1795, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10
被引用文献数
2

傍腫瘍性網膜症は腫瘍細胞に本来網膜にのみ存在する網膜特異抗原が異所性発現することにより腫瘍細胞と網膜との間に共通抗原が生じ,自己免疫機序により神経網膜が障害される疾患である.本症では網膜の進行性変性に伴い視感度の低下,視野狭窄などの症状を呈する.癌の原発病巣としては,肺癌,特に小細胞癌が最も多く,次いで消化器系および婦人科系の癌の頻度が高い.診断としては上記の臨床症状に加えて血清中に抗網膜抗体が証明されれば診断が確定的となる.現時点では確立された治療法はないが,分子病態が明らかになってきており,分子病態に基づく新しい治療法の開発が模索されつつある.
著者
石原 智彦 小澤 鉄太郎 根本 麻知子 新保 淳輔 五十嵐 修一 田中 惠子 西澤 正豊
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.141-143, 2007 (Released:2009-12-01)
参考文献数
8

イヌ回虫性脊髄炎は幼虫移行症の一つであり,まれな神経感染症である.症例は左半身のしびれ感にて発症した21歳女性で,頻回に生の牛レバー食歴があった.脊髄MRIで第4~8胸椎レベルに病変を認め,脳脊髄液中の好酸球出現と血清IgE上昇を認めた.血清,脳脊髄液中のイヌ回虫抗体価上昇を認め,イヌ回虫性脊髄炎と診断した.アルベンダゾールの内服で臨床症状は改善し,抗体価も低下した.脊髄炎の鑑別診断の一つにイヌ回虫性脊髄炎も考慮すべきと考え,報告する.