著者
楠原 健一 西浦 亮介 谷山 茂人 矢澤 省吾 工藤 隆志 山本 展誉 野口 玉雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.750-752, 2005-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
7
被引用文献数
5 5

症例は35歳,男性.ハコフグ注)喫食後に横紋筋融解症,急性腎不全を発症.血液浄化法を導入し,腎機能障害を残さず治癒退院した.アオブダイに含まれるパリトキシン(PLTx)により横紋筋融解症が誘発されることが知られているが,今回患者検体の分析からハコフグに含まれる「PLTx様物質」の関与が示唆された興味深い症例として報告する.注)本症例では魚種を同定できておらず,「ハコフグ科魚類」の意味で「ハコフグ」を使用する.
著者
清水 美保 和田 隆志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.907-915, 2019-05-10 (Released:2020-05-10)
参考文献数
21

「糖尿病性腎症」の病理分類が提唱され,病理所見と予後との関連が報告されている.一方,「糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)」に包括される病態として,顕性アルブミン尿を伴わない糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)低下例では,軽微な糖尿病性糸球体病変とは対照的に,尿細管間質病変及び血管病変が進展した“腎硬化症”の特徴も認められる.さらに,糖尿病例には,糖尿病と直接関連しない腎疾患の合併も認められる.糖尿病に伴う腎障害の早期診断,予後診断ならびに特異的診断において,病理所見による層別化が有用と考えられる.
著者
金子 洋子 楊川 堯基 林 苑子 張 紅 塚原 知樹 松永 恒明 多留 賀功 石津 隆 小林 正貴 野口 雅之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.999-1006, 2019-05-10 (Released:2020-05-10)
参考文献数
6

53歳,男性.浮腫にて受診.蛋白尿,心肥大,四肢疼痛ならびに腎不全を認め,αガラクトシダーゼA(α-galactosidase A:GLA)酵素活性の低下,腎生検にて糸球体上皮細胞内に高電子密度物質の沈着,責任遺伝子変異を認め,Fabry病と診断した.末期腎不全のため透析導入し,酵素補充療法(enzyme replacement therapy:ERT)を開始したが,心肥大は進行し,心不全のため死亡した.病理解剖にて多臓器に高電子密度沈着物を認めた.近親者3症例にERTを継続している.本疾患は,早期に診断し加療介入することが重要である.
著者
祖父江 逸郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.1491-1501, 1985-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
12
著者
中熊 秀喜
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.7, pp.2010-2015, 2012 (Released:2013-07-10)
参考文献数
10

骨髄不全症候群の中で最も多い後天性特発性造血障害のうち再生不良性貧血,発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH),骨髄異形成症候群,赤芽球癆では免疫性造血障害が想定されている.最近,PNHにおいてNKG2D介在性免疫による造血障害,そして標的分子の候補としてMICA/BやULBPなどのストレス蛋白が提唱された.しかし,同一疾患でも免疫抑制療法の効果の予測指標が一つと限らず,標的分子の多様性が予想される.
著者
畠山 公大 二宮 格 小野寺 理 下畑 享良 金澤 雅人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.117-123, 2021-01-10 (Released:2022-01-10)
参考文献数
10

脳梗塞は重度の後遺症を呈する疾患であり,脳梗塞後の機能回復療法の開発が望まれている.これまで,脳梗塞に対して,神経系幹細胞,骨髄由来間葉系幹細胞,骨髄由来単核球ならびにmultilineage-differentiating stress enduring cell(Muse細胞)等を用いた細胞療法の有効性が報告されており,一部の細胞療法については,本邦においても臨床試験が行われている.本稿では,これまでに報告されてきた細胞療法の特徴を概説する.さらに,従来の細胞療法におけるいくつかの問題点と,それを克服するために我々が現在開発に取り組んでいる,末梢血単核球を用いた新規細胞療法につき解説し,細胞療法の今後の展望について述べる.
著者
和田 隆志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.482-487, 2016-03-10 (Released:2017-03-10)
参考文献数
8
著者
木下 芳一 古田 賢司
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.2, pp.480-487, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
27

大部分の逆流性食道炎例ではその治療は難しくはない.プロトンポンプ阻害薬(PPI)を用いた標準治療を行うと8週間で逆流性食道炎例の90%の食道びらん・潰瘍を,80%の自覚症状を消失させることができる.問題はPPI治療に抵抗する少数例の治療をどうするかである.標準的なPPI治療が不成功となる最も重要な原因はPPIによる胃酸分泌抑制が不十分であることである.そこでPPI治療抵抗性の逆流性食道炎の治療では胃酸分泌抑制をより強力にすることを目的として(1)PPIの投与量を増やす,(2)PPIの食前投与や2分割投薬を行う,(3)PPIの種類を変える,(4)PPIに加えて胃酸中和薬やヒスタミンH2受容体拮抗薬を追加投薬する,などの対応をおこなう.これらの治療を行うことで,逆流性食道炎例の自覚症状を消失させ,またLos Angeles分類grade C,Dの重症例では症状を消失させるだけではなく合併症を予防することが可能となる.
著者
鈴木 登
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.1097-1105, 2001-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
19

代表的な膠原病である慢性関節リウマチ(RA)では神経,内分泌,免疫系の相互作用がその病態形成に関わる. RAでは,関節滑膜細胞によって分泌された炎症性サイトカインが関節局所の炎症を惹起し,同時に,全身性の急性炎症反応を引き起こす.それに伴い,患者では神経・内分泌・免疫軸の強い変化をきたす.RA患者では視床下部・下垂体・副腎軸の欠陥,血中プロラクチンレベルの上昇,さらに血中性ホルモンレベルの異常が報告されている.これまでに中枢,末梢神経系による神経ペプチドを介した滑膜細胞機能の調節の不調がRAの炎症の惹起の少なくとも一部に関わることが示唆されている.我々の研究室では神経-内分泌-免疫軸の相互作用に関わる効果分子である内分泌ホルモン,オピオイド,神経伝達物質および神経ペプチドがRA関節滑膜細胞機能の調節に働くことを報告した.それらは実際,関節局所で産生・分泌され,またそれらの受容体は炎症関節内の各種細胞に発現されている.神経ペプチドや各種ホルモンはRA患者の全身性急性期反応に働くだけでなく, RA関節局所の炎症に直接作用する. RAでは神経ペプチドや各種ホルモンの不調が関節炎症を悪化させ,さらに全身性の免疫系,神経系,内分泌系そのものあるいはそれらの相互作用の不調をもたらすと考えられる.神経-内分泌-免疫の相互作用を,ホルモン,神経伝達物質,神経ペプチドなどの分子レベルで解析し,それらを応用することがRA治療への新しいアプローチとなる.
著者
島田 馨
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.649-653, 1987-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
11
著者
高橋 幸利
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1608-1613, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

抗てんかん薬による神経・筋障害は軽度のものを含めるとかなり高頻度に見られ,眠気のように共通したものから,抗てんかん薬ごとに特徴的な副作用まで多岐にわたる.バルプロ酸では,致死性肝毒性(意識障害,てんかん発作増悪)・催奇形性(神経菅閉鎖不全)・高アンモニア血症などが重要である.カルバマゼピンでは,中毒症状(眠気・複視・失調)・てんかん発作増悪(欠神発作・ミオクロニー発作など)が重要である.フェニトインでは,急性PHT中毒(水平性眼振,複視,失調)・進行性ミオクローヌスてんかんの悪化(失調,てんかん発作の悪化,退行)・精神障害(統合失調症様の症状)が重要である.ゾニサマイドでは,認知・精神症状(意欲の低下,幻覚,焦燥,うつ,不安)が重要である.ガバペンチンでは,眠気・部分発作の増悪が重要である.フェノバルビタールでは,行動変化(小児の行為障害,注意欠陥多動障害)・認知障害が重要である.トピラメートでは,精神症状(不安,焦燥,うつ)・認知障害・部分発作の増悪が重要である.
著者
大西 健児
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.2307-2312, 2005-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

臨床医がその存在を知っておくべき寄生虫による肺疾患として,肺赤痢アメーバ症,胸腔赤痢アメーバ症,ヒト回虫性肺炎,ブタ回虫性肺炎,イヌ回虫性肺炎,ブラジル鉤虫性肺炎,糞線虫性肺炎,肺イヌ糸状虫症,熱帯性肺好酸球症,肺吸虫症,肺包虫症が挙げられる.これらの疾患のうち,ヒト回虫性肺炎,ブタ回虫性肺炎,イヌ回虫性肺炎,ブラジル鉤虫性肺炎,糞線虫性肺炎,熱帯性肺好酸球症,肺吸虫症では末梢血あるいは気管支肺胞洗浄液の好酸球増多を伴う症例が多い.診断はこれら寄生虫による肺疾患を思い付くことが重要で,一般的には症状,画像所見,食歴,旅行歴,血清学的な抗体測定結果を総合して診断されている.
著者
仲瀬 裕志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.1145-1152, 2020-06-10 (Released:2021-06-10)
参考文献数
15

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)の病態解明に基づく新薬開発により,IBD治療の進歩は著しい.特に抗TNF(tumor necrosis factor)-α抗体の出現は,IBD患者治療体系のパラダイムシフトをもたらした.それと共に,治療目標は,臨床症状の改善から内視鏡的粘膜治癒へと変化した.生物学的製剤のみならず,低分子化合物による治療も行われている.しかしながら,IBDと診断された全ての患者がこれら新規薬剤を必ずしも必要としない.臨床医は,IBD治療の基本が従来の治療法を最大限に活用することであることを今一度認識すべきである.
著者
太田 保世
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.819-823, 1995-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

宇宙飛行に際して人間が経験するのは,引力圏を脱する時の大きな重力加速度(G)と,宇宙空間での無重力状態である.前者は戦闘機の訓練などに関連して早くから研究が進んできた.後者は,航空機の放物線飛行による無重量状態が本格的な研究の出発点であった.宇宙ステーションあるいはスペース・シャトルの誕生によって,真の無重量状態での医学的研究が大きく進歩した.本稿は,その無重量状態での呼吸機能の変化について,筆者らの睡眠と上気道抵抗に関する研究を含めて解説を加える.睡眠中の上気道抵抗には重力の影響がきわめて大きいこと,機能的残気量が減少すること,循環血液の再分布で,肺内血液量が増加し,肺拡散能力およびその膜成分(Dm)の増加することなど,多くの変化が確認されている.ある意味で宇宙医学は,地球上で重力の影響に適応をしてきた形態や機能の再順応,再適応の医学である.
著者
三浦 偉久男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.2, pp.503-508, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
8

悪性リンパ腫のKiel分類がリンパ性腫瘍のREAL分類になり,さらに骨髄増殖性疾患・骨髄異形成症候群・急性白血病の分類であったFAB分類を包含し,WHO分類(2001)となった.現在用いられているWHO分類(2008)はその改訂版である.WHO分類では,特徴的な染色体異常を持つ急性白血病は独立した病型になる.このことは,この分類を用いるには染色体検査が必須であることを示す.その他は形態を中心に分類されるが,新知見が集まれば特異的異常を持つ独立した病型がさらに抽出されていくことが予想される.したがって,将来にむけ各症例の形態・免疫形質に加え,染色体検査結果を記載しておく必要がある.WHO分類における染色体異常の記載には,まだ必ずしも多数の同意を得ていないものも含まれるので注意が必要である.
著者
南 祐仁
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.64-68, 2020-01-10 (Released:2021-01-10)
参考文献数
6

本邦で非アルコール性脂肪肝炎/非アルコール性脂肪性肝疾患の新規治療薬として開発されていた薬剤として,selonsertib(第III相)とobeticholic acid(第II相)があるが,十分な有効性が確認できず,国内での単剤での開発は中止されている.ClinicalTrials.govのホームページ(https://clinicaltrials.gov/)で検索すると,国内では,その他に5つの薬剤が第II相試験中であり,今後の結果が注目される.海外では,さらに多くの薬剤が開発中であるが,単剤だけでなく,新薬同士の併用試験もいくつか実施されており,今後の成果が期待される.
著者
竹中 克斗 赤司 浩一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, pp.1753-1764, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
21

急性リンパ性白血病(ALL)は,BまたはT/NK系統へ分化決定した段階のリンパ系前駆細胞での腫瘍化と考えられている.ALLでは,t(9;22),t(12;21),t(4;11),t(1;19)などの染色体異常が高頻度に認められ,特定の細胞系統や分化段階,予後と強い相関を示す.これらの染色体異常では,正常には存在しない融合遺伝子が形成され,白血化の最初のイベントと推測されている.近年のマルチカラーフローサイトメトリーによる細胞純化技術の進歩と,免疫不全マウスを用いたヒト腫瘍細胞アッセイシステムの開発により,多くのがんで少数の自己複製能をもったがん幹細胞の存在が証明されている.ALLにおいても,病型特異的にみられる染色体異常を指標として,免疫不全マウスを用いて白血病幹細胞の同定が試みられ,白血病の多様な細胞の構成モデルが解明されつつある.