著者
原 悠 長澤 遼 田上 陽一 金子 猛
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.1063-1070, 2021-06-10 (Released:2022-06-10)
参考文献数
6

咳嗽と喀痰は,医療機関受診時の主訴として最も多い症候であるため,全ての臨床医が日常診療で遭遇する可能性がある.従って,咳嗽と喀痰を来たす病態や疾患を十分に理解しておくことが重要である.肺結核や肺癌等診断と治療が急がれる疾患,慢性呼吸器疾患等専門医による診療が必要な疾患を鑑別する.また,咳嗽と喀痰の治療の基本は,原因疾患に対する治療を行うことであり,鎮咳薬や喀痰調整薬は対症療法である.
著者
海津 嘉蔵
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1758-1761, 1994-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

多くの重金属は強い腎毒性を有し,類似した徴候を示すが,代謝・排泄系で差異がでる.通常,近位尿細管障害が共通で,診断には尿中酵素と低分子蛋白の測定を行う.カドミウム中毒:慢性では,イタイイタイ病が代表である.中年閉経後の女性で,骨痛と尿細管障害を呈し,進行例では萎縮腎になる.鉛中毒:子供ではFanconi症候群がおこるが,成人では少ない.尿細管上皮細胞内に核封入体が認められる.水銀中毒:メチル水銀は水俣病を惹起する.神経毒性以外に尿細管障害が出現する.
著者
林 雪恵 水尾 浩二 林 肇輝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1611-1612, 1989-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

多発性骨髄腫と悪性中皮腫の重複例は,過去23年間に報告が無い.症例. 79才,男性.全身倦怠感・足背浮腫を主訴として来院.入院後血清IgGが異常高値でM成分(IgGκ)が認められたこと,および胸骨穿刺による骨髄細胞・組織診で異型形質細胞の腫瘍性増生が認められたことより多発性骨髄腫と診断.化学療法経過中に腹水と〓上部の腫瘤を認め,腹部CTで腹膜原発の浸潤性腫瘤が示唆され,腹水細胞診でClass V,悪性中皮腫が強く疑われた.患者は加療1年後に心不全で死亡.剖検の結果,腹腔腫瘤は上皮腫型の悪性中皮腫であることが組織学・組織化学・免疫組織化学的に確認された.
著者
野村 馨
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.1085-1090, 1998-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

褐色細胞腫は二次性高血圧をおこす代表的疾患であり,しばしば著しい血圧の変動を呈することで有名である.高血圧は腫瘍からのカテコールアミン過剰分泌が第一の原因である.しかし腫瘍から放出されたカテコールアミンは交感神経終末に取り込まれ,神経インパルスによりそこから放出される機序がある.これが血圧変動の一因となつている.さらに腫瘍からは機械的圧迫,薬物などの誘因によりカテコールアミンが放出され血圧の変動を来たす.またカテコールアミン過剰により受容体数が減少し感受性の低下がおき起立時の低血圧がおきやすい.高血圧クリーゼは致命的なこともあり,速やかな診断と治療が必要である. α1受容体遮断薬であるレギチーンの静脈投与が基本となる.高血圧発作/高血圧クリーゼの病態,診断および治療について紹介する.
著者
松原 雄 柳田 素子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.865-871, 2018-05-10 (Released:2019-05-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

抗がん薬に伴う急性腎障害は,薬剤性腎障害のなかで抗菌薬や非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)に次いで頻度が高く,白金製剤を中心とした尿細管障害,血管新生阻害薬やゲムシタビンに代表される血栓性微小血管症,メトトレキサートによる結晶性腎障害等がある.さらに,免疫チェックポイント阻害薬による間質性腎炎も注目されている.特異的な治療は存在しないため,薬剤以外の腎障害危険因子を排除しつつ,腎機能を適切にモニターし,早期に介入することが肝要である.
著者
玉置 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.9, pp.1852-1857, 2018-09-10 (Released:2019-09-10)
参考文献数
6
著者
川端 浩
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1173-1179, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2

鉄は生命にとって必須な微量元素であるが,過剰に存在すると肝障害や糖尿病,心不全などの原因になり感染症のリスクも増加する.細胞レベルでの鉄の取り込みにはトランスフェリン受容体が重要で,この発現は鉄制御蛋白(IRP)により転写後調節されている.個体レベルでの鉄代謝機構には十二指腸からの鉄の取り込み系と網内系を介した鉄のリサイクル系があるが,いずれも肝臓から分泌されるヘプシジンによってコントロールされている.
著者
岸本 暢将 駒形 嘉紀 要 伸也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.2173-2180, 2021-10-10 (Released:2022-10-10)
参考文献数
5

近年,分子標的治療薬を含む薬物療法の進歩により,乾癬性関節炎(psoriatic arthritis:PsA)や体軸性脊椎関節炎[代表疾患:強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)]に代表される脊椎関節炎患者の予後は大きく改善している.それに伴い,早期診断を目的に分類基準が整備された.また,2020年以降,本邦においてもIL(interleukin)-17阻害薬のX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non-radiographic axial spondyloarthritis:nr-axSpA)への適応追加,新規IL-23阻害薬や経口分子標的治療薬であるJAK(Janus kinase)阻害薬もPsAの治療薬として登場し,関節リウマチより多くの分子標的治療薬が承認されている.本邦や欧米の治療推奨やガイドラインを熟知し日常診療の治療選択の一助としていただきたい.
著者
高塚 祥芝 宇都宮 與 川畑 久 竹内 昇吾 牧野 虎彦 中原 勝志 下高原 茂巳 魚住 公治 花田 修一 有馬 暉勝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.707-709, 1999-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6

症例1は, 63歳,男性.汎血球減少と右下腿の重症峰窩織炎で入院.骨髄像では芽球が78%を占めAML (M0)と診断.症例2は, 47歳,男性.発熱と白血球増加で入院.骨髄は,低形成で芽球32%,好酸球24%認AML (M4Eo)と診断.入院時肛門周囲膿瘍を併発していた. 2例とも感染症の治療を優先して抗生剤での治療中にAMLの自然寛解を得た. AMLの自然寛解は稀であり貴重な症例と思われ報告した.
著者
中尾 俊之 松本 博 岡田 知也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.2304-2308, 2000-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
4 2

慢牲腎不全・透析患者では,感染防御に対する解剖学的・生理学的機構の障害や好中球,単球・マクロファージをはじめTリンパ球, Bリンパ球の異常を認め,免疫不全の状態にあり易感染性宿主となっている.一般細菌感染症では下気道や尿路および透析用血管内留置カテーテルの感染が多い.また肝炎ウイルス感染や結核症の罹患率は一般人に比べて著しく高いことが注目される.腹膜透析患者の腹膜炎では,明らかな感染源なしの自然発症細菌性腹膜炎の頻度が高い.
著者
前澤 善朗 竹本 稔 横手 幸太郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.124-130, 2019-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
10

全身において,実際の年齢よりも早く老化の徴候がみられる疾患は早老症と称され,DNA(deoxyribonucleic acid)修復関連遺伝子や核膜蛋白の異常により惹起される多様な疾患を含んでいる.日本人に多いWerner症候群(Werner syndrome:WS)は,20~30代から低身長や白髪,白内障等が出現し,40代で内臓脂肪蓄積を背景に糖尿病や脂質異常症等を生じ,悪性腫瘍や難治性皮膚潰瘍を高率に合併する疾患である.RecQ型DNAヘリカーゼであるWRN遺伝子の変異による常染色体劣性遺伝疾患であることが判明しており,近年の研究に基づき,診断基準や治療ガイドラインが策定されている.また,原因遺伝子であるWRN蛋白のDNA修復やテロメア維持における役割等,分子レベルの病態解明も進みつつある.超高齢社会を迎えた本邦において,「ヒト老化のモデル疾患」であるWSの研究は,一般老化のメカニズム解明のためにも重要な課題であると考えられる.
著者
山中 寿
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.451-456, 2016-03-10 (Released:2017-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1
著者
山中 寿 田中 榮一 中島 亜矢子 古谷 武文 猪狩 勝則 谷口 敦夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.2638-2644, 2017-12-10 (Released:2018-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

日常診療に基づくreal world data(RWD)に基づくreal world evidence(RWE)は,良質な日常診療のために近年,その必要性がますます高まっている.Real world dataの1つである関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者の大規模コホートIORRA(Institute of Rheumatology,Rheumatoid Arthritis)は,2000年以来17年間に亘る患者調査を行い,診療実態の変遷,治療薬の変化,合併症の状況,薬剤経済学的検討,ゲノム情報の影響等多岐にわたる研究を行い,既に123編の英文論文を発表してきた.その結果,臨床医が日常診療で感じていることを経時的に定量的に示すことができ,多くが臨床医の実感を裏付けるものであった.多くの内科医が日常遭遇する慢性疾患の長期的アウトカムを示すことのできる観察研究データベースは,ますます重要性が増すものと考えられ,多くの疾患分野において同様の研究が行われることを期待する.
著者
山本 一彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.10, pp.2380-2386, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10

関節リウマチ(RA)は早期より関節破壊が進むこと,早期の治療開始がそれを抑止しうることなどから,早期の診断が重要である.しかし,診断の基本であるアメリカリウマチ学会の分類基準は早期における感度が高くない.鑑別すべき疾患は多くあり,臨床所見,血清学的検査,画像所見を組み合わせ,関節破壊の進行が予想される症例を把握する必要がある.治療開始後も,治療効果,副作用の有無を定期的にチェックし,治療薬の継続,変更を常に考慮し,治療の目標である寛解を目指すことが求められる.
著者
内田 立身 田中 鉄五郎 海野 政治 七島 勉 国分 令子 油井 徳雄 木村 秀夫 室井 秀一 松田 信 刈米 重夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1401-1407, 1981-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

日本人女性の鉄欠乏の頻度と成因を明らかにするため,次のごとき調査を行なつた.福島市およびその近郊,避地農村,化学工場,女子高校生999名を対象に,ヘモグロビン値,トランスフェリン飽和率,血清フェリチン値を測定した.その結果,鉄欠乏の頻度は,鉄欠乏性貧血8.4%,潜在性鉄欠乏4.2%,前潜在性鉄欠乏37.4%,正常38.0%,その他12.0%となり,日本人女性の50.0%に何らかの鉄欠乏があることが判明した.この鉄欠乏の成因として,人口構成年令が進むにつれて,血清フェリチン値が上昇することから,月経,分娩などによる鉄の喪失によることが考えられた.また女子高校生の食事鉄量の調査から,摂取鉄量1日あたり10.8~13.4mg,吸収鉄量1.5~1.6mgとなり, iron balanceは負に陥る傾向のあることも明らかとなつた.このように,広範にみられる鉄欠乏の対策として,欧米で実施されている鉄添加食品(iron fortification)の利用が考慮されるべき時期にあることを指摘した.
著者
谷口 敦夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.2500-2505, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2

シクロホスファミドとアザチオプリンは膠原病領域の重篤な病態を中心に用いられることが多い.シクロホスファミドはDNAなどを架橋することにより作用を発揮する.経口投与,あるいはパルス静注療法が用いられる.総投与量が多くなると悪性腫瘍の発生が増加する.アザチオプリンはプリンヌクレオチド合成経路を抑制し,活性代謝物がDNAなどに組み込まれることで作用を発揮する.副作用では消化器障害が最も多く,アロプリノールとの薬物相互作用に注意する必要がある.
著者
亀田 秀人 小川 祥江 鈴木 勝也 長澤 逸人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.2506-2511, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
9

シクロスポリン(CsA)とタクロリムス(Tac)は,カルシニューリンの脱リン酸化酵素活性阻害を介したT細胞の活性化制御を主作用とする薬剤である.CsAはシクロフィリン,TacはFKBP12と結合して作用を発揮するという相違もあって,2つの薬剤の副作用や疾患に対する効果に差異が見られる.難治性病態に対しては,従来の核酸代謝拮抗薬との併用療法の有用性が期待されている.