著者
倉田 敬子 松林 麻実子 武田 将季
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.119-127, 2017-05-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

研究データ共有に関して,新しい研究のあり方のビジョン,国・地域を超えた標準的ルールの設定,国・地域としての推進策などが議論されている。しかし,研究におけるデータ共有を推進するための具体的な施策については,海外でも事例報告や現状調査がなされだしたところである。本稿では,日本の大学・研究機関における,研究データの管理,保管,公開の現状に関して行った質問紙調査の結果を報告する。494機関に対して,研究データのオープン化の現状認識,研究データに関するガイドラインおよび管理計画,研究データ公開のための機関としての整備状況などについて尋ねた。その結果,データ管理計画もデータ保管のための整備もほとんど進んでいないこと,研究不正行為への対応のためのガイドラインのみ対応がなされていることが明らかになった。
著者
蟹瀬 智弘
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.84-92, 2013-05-01 (Released:2013-05-01)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

欧米をはじめとして世界中の図書館で広く使用されているAACR2は,2010年に改訂されてRDAとなった。名称が変更になったのは,図書館の所蔵目録を作成する規則から,資源にアクセスするためのツールを作成する規則へとその役割が変わったためである。内容としては昨今の資料種別の多様化に対応するため,従来の資料種別ごとの章立てから,FRBRの各実体を中心に据えた構成へと大きく変貌を遂げた。さらにその規定の対象は記録するデータそのものに限定され,データの格納や表示の仕方はそれぞれのシステムに委ねることにより,多様なシステムに対応するようになった。
著者
安岡 孝一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.67-73, 2007 (Released:2007-05-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

ケータイを使ってインターネットにアクセスする際に,最も注意しなければならないのは,絵文字の問題である。ケータイの絵文字をインターネット上で使うと,ほぼ確実に文字化けする。文字化けが起こるのは,各社が勝手な文字コードをケータイ上に実装しており,その結果,文字コードによる情報交換の一意性が,ケータイの絵文字に関してはまったく保証されなくなってしまっているからである。しかしながら文字化けの問題は,ケータイのみの問題というわけではない。実はMicrosoft Windowsが採用しているCP932においても,文字化けの問題が内在している。その意味では,JISやUnicodeに従わない文字コードというのは,常に文字化けの危険性を伴っている,ということである。
著者
杉野 博史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.157-165, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)

2014年3月より,NTTデータはバチカン図書館の保有するマニュスクリプト(手書き文献)のデジタルアーカイブ事業を開始した。NTTデータはその中で,長年にわたって蓄積してきたデジタルアーカイブや検索に関する技術・ノウハウを活用することで,バチカン図書館のデジタル化された資料の唯一のポータルとなるデジタルライブラリー(DigiVatLib)を構築した。構築するにあたり,新たに長期保存に関する国際標準であるOAIS,画像データの長期保存に適したフォーマットであるFITS,画像を相互に閲覧する規格であるIIIF等の機能を組み込むことで,長期保存のみならず,利活用にも優れたプラットフォームを提供した。本稿ではその詳細について寄稿する。
著者
小谷 允志
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.79-87, 2010 (Released:2010-05-01)
参考文献数
2

2009年6月,日本で初めての公文書管理の基本法である「公文書管理法」が制定された。この法律は,公文書を民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源と位置付け,公文書管理に関する基本的事項を定めることにより,国と独立行政法人が適切で効率的な行政運営を行い,説明責任を全うすることを目的としている。この法律が制定されるまでの経緯,制定の意義並びにこの法律のポイントと特長,これからの課題等について解説する。
著者
大園 隼彦 片岡 朋子 高橋 菜奈子 田口 忠祐 林 豊 南山 泰之
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.719-729, 2018-01-01 (Released:2018-01-01)
参考文献数
15

日本国内において,機関リポジトリに登録されたコンテンツのメタデータは,junii2を標準的なメタデータスキーマとして,国立情報学研究所(NII)の学術機関リポジトリデータベース(IRDB)を介して広く流通している。近年の学術情報流通をめぐる国際的な状況の変化や技術的な発展に対応し,日本の学術成果の円滑な国際的流通を図るため,オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)では,junii2に代わる次世代のメタデータスキーマとして,2017年10月に「JPCOARスキーマ ver1.0」を公表した。本稿では,策定過程での議論も含め,新しいメタデータスキーマの考え方と概要を紹介する。
著者
金山 博
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.791-801, 2013-02-01 (Released:2013-02-01)
参考文献数
7

自然言語処理の技術が盛んに研究されており,検索・翻訳・自動応答・校正など,さまざまな分野での実用化が進んでいる。IBM Research(基礎研究部門)における当分野の取り組みとして,2011年に米国のクイズ番組において人間と対戦した質問応答システム「Watson」のほか,大量の文書からビジネスに有用な知識の発見を補助するテキストマイニング技術「TAKMI」などがある。これらの成功に共通する点は,人間が苦手とする処理をコンピューターに代替させたこと,人間が持つ言語に関する知識をコンピューターに与える手段を確保したこと,そして人を驚かせる結果を出したことである。情報が日々増大する中で,どのような技術を研究開発し,また活用していくべきか,計算言語学の研究者の観点から論じる。
著者
池田 貴儀
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.193-203, 2015-06-01 (Released:2015-06-01)
参考文献数
21

インターネット時代における灰色文献の動向について,灰色文献の定義の変容,灰色文献資源の政策策定に関するピサ宣言の2つの視点を中心に,さまざまな角度から考察する。まず,灰色文献の定義について整理する。次に,定義に関連して,インターネット時代における灰色文献の現状や課題について触れる。最後に,2014年に公表された,灰色文献資源の政策策定に関するピサ宣言を取り上げ,灰色文献をめぐる最新の動向について紹介する。
著者
長谷川 世一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.343-352, 2015-08-01 (Released:2015-08-01)
参考文献数
23

2015年現在,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは今やインターネット上における著作権に関するパブリックライセンスのグローバル・スタンダードとなった。また,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの活用方法も日々さまざまな形で変化し続けており,日本においても独特な活用事例がいくつか見られるようになっている。世界におけるクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの普及状況を報告した後,日本におけるクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの活用事例を紹介する。
著者
平本 健二
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.799-808, 2015-02-01 (Released:2015-02-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

日本において情報交換の基盤になるのが,文字情報交換の仕組みである。文字情報基盤は,個人の氏名を正確かつ使いやすく実装する仕組みとして政府が整備してきており,フォントや画数などの文字情報等を,誰でも無料で利用できるように提供している。ツールへの実装,自治体への導入も進み始めており,多くの自治体では,従来もっていた外字の同定作業も実施している。国際標準への対応を進めるとともに,単に文字数を増やすのではなく,JISを活用した日常での簡易な活用方法を提案する等,今後の日本の社会の基盤となる仕組みといえる。本稿では,現在の取り組みとその将来展望について解説を行う。
著者
大澤 剛士
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.11-19, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)
参考文献数
24

G8オープンデータ憲章以降,オープンデータという言葉が広く流通するようになり,主に行政や研究の分野においてすでに定着したようにもみえる。しかし,オープンデータという言葉自体には厳密な定義が存在しないため,それらがもたらす恩恵や,何によって恩恵がもたらされるのか,その可能性を担保するために必要なこと等,オープン化のソフト面について,興味はもちつつも具体的なイメージを描きにくい方が多いのではないだろうか。今後さらにさまざまなデータのオープン化を推進していくにあたり,具体事例の提示や現状の課題を広く共有することは重要である。本稿は,筆者がこれまで実施してきたオープンデータの再利用にかかわる研究の紹介を通し,オープンデータがもたらす恩恵の具体例を提示するとともに,その恩恵は何によってもたらされうるのかについて議論したい。